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2004/09/22

C60内でβ崩壊が加速

Yahoo!ニュース経由の産経ニュース(9/21)放射性元素の寿命1%短縮 東北大チーム、実験で確認 半世紀にわたる常識覆した

 放射性のベリリウム7原子を、C60と呼ばれる球状の炭素分子の内部に入れると、ほかの原子へと崩壊する現象が加速され、放射性元素の寿命を表す「半減期」が1%近く短くなることを大槻勤・東北大助教授(核・放射化学)らの研究チームが二十一日までに実験で確認した。ベリリウム7の半減期が0・1%前後変わることは知られていたが、これほど大きな変化が確認されたのは初めてで、これまでの常識を超える発見となった。

 C60にさまざまな原子を入れて新しい機能を持たせ、ナノテクノロジーに利用する研究は各国で進められており、今回のような実験でC60内部の状態解明が進めば、ナノテクノロジーの進歩にもつながりそうだ。

 C60は炭素原子六十個がボールの表面に並んだ形の分子で、直径約一ナノメートル(ナノは十億分の一)。内部は中空になっている。大槻助教授らはC60と炭酸リチウムを混ぜ、陽子を照射することで、リチウム原子から変わったベリリウム7の原子一個を内部に含むC60を作り出した。

 C60内部のベリリウム7原子は自らの電子一個を原子核に取り込み、リチウム7に崩壊する。グループは、その際に放出されるガンマ線を百七十日間測定し、C60内部に閉じ込められたベリリウム7原子の半減期が五二・六八日であることを突き止めた。これは金属のベリリウムの中にある場合の半減期である五三・一二日よりも0・83%短かった。
 大槻助教授は「今後は中に入れる原子の種類を変えるなどして、C60内部の状態を詳しく調べたい」と話している。

 ■中原弘道東京都立大名誉教授(放射化学・核化学)の話 「イタリアの物理学者のエミリオ・セグレが、半世紀前に半減期の変化を理論や実験で示して以来、変化があったとしても0・1%程度と考えられていた。その常識を覆す発見だ。変化の原因はC60内部の電子状態に異常があるためだろう。今後の原因解明に期待したい」

半世紀にわたる常識を覆した成果の割には、何故かマスコミ各社はほとんど取り扱っていないようだ。それにしても、放射壊変の速度が条件で変わるものなのか! 太陽系の寿命などのような数十億年もの年月を測定する物差しとしても使われているというのに。。

元論文はPhysical Review Letters、解説記事が、news@nature.com に載っている。このネイチャーのニュース記事によると、

Atoms of beryllium-7 decay by grabbing electrons from their surroundings. The electron is absorbed into the nucleus, where it combines with a proton to make a neutron, transforming the atom into a different element, lithium-7.

The rate of this kind of decay depends on the chance of an electron straying into the nucleus and getting absorbed. So increasing the density of electrons surrounding the atomic nucleus can speed up the decay.

At least, that is the idea. But the changes seen previously have been tiny.

ということで、原子の周囲の電子密度を高くすることで、β崩壊を早めることが可能と理論的には考えられるが、従来は大きく変えることは出来なかったらしい。で、今回の実験では、
Once the beryllium atoms are trapped, the carbon cage surrounds them with a dense cloud of electrons. This makes it more likely for an electron to get into the trapped atom's nucleus and induce decay.
ということで、C60の内部に閉じ込められたベリリウムの周りの電子密度が高いので電子が原子核に入り込みやすくなり、崩壊が加速されるという説明だ。本当かなぁ?? 半減期50日程度の現象に対して170日間もγ線の測定をして、約 0.5日の半減期の差を見出した、ということで測定精度そのものは大丈夫そうだけど。

理論的にはありえると予測されていたみたいだから、常識が覆されたと言えるかどうかは微妙かな。 もっとも、C60の中に原子1個だったら、電子密度の計算は容易にできそうなものだから、半減期の加速が理論的に説明できるかどうかの定量的な議論も可能だと思うけど。

これに関連する資料を探してみると、平成10年度黎明研究の課題の29番に「極限条件下におけるフラーレン内包EC壊変核種の寿命精密測定」として選ばれており、

 放射性原子核の寿命は外部の条件に無関係と信じられて来た。しかし最近、極限環境、あるいは特別な条件下でコントロールが出来るかもしれない、という可能性が出て来た。本研究者はフラーレンに内包された核種の中でβ崩壊寿命が変るという注目すべき発見をしている。これが事実とすれば将来実用に大きな影響のあるテーマである。
とコメントされているが、随分長期間にわたる研究のようだ。平成16年度黎明研究採択課題の25番によると、「フラーレン中の放射性核がその半減期を変化させているらしいとの研究は賛否の両面から注目されている」とあるぞ。フーム。。

なお、今回の実験でベリリウムをC60の中に入れるのには、異原子内包フラーレンの可能性を探るに大槻さんが説明されている、高エネルギーで無理やり放り込む方法を使ったようだ。

*何の役に立つのか? ネイチャーニュースでは、これを応用して放射性廃棄物を少しでも早く処理できないか、なんて書いてあったけど。。

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