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2004/09/20

「科学の最前線で研究者は何を見ているのか」

日経サイエンスに連載されていた対談「時空の旅」全18回分を収録したもの。

科学の最前線で研究者は何を見ているのか
 瀬名 秀明 著 bk1amazon

全4部構成で、読みやすく、しかも読み応えがある本だった。科学系の対談集としては、メタルカラーの時代とかプロジェクトXなんかが有名だが、それらがどちらかというと、物作りとかエンジニアに焦点を当てているのに対して、こちらは相手が研究者で、研究内容が中心となっている点が大きく異なる。

著者の瀬名さんが生物・薬学系の研究者だったこともあるのか、この対談でも生物や人類を扱った対談が、充実していて、興味がそそられる内容になっているような気がする。特に後半出てくる、宇宙やコンピュータを対象とした対談は、何だか消化不良気味のように感じてしまう。

ということで、読後のワクワク感で言えば、冒頭の「人類のはるかな足跡」:馬場悠男、「人間はいくつまで生きられるのか」:白澤卓二、「類人猿のゲノムで探る人間らしさの起源」:斎藤成也、の3篇が断トツで、徐々に(それでも十分に読ませてくれるが)尻すぼみのような。。

対談相手は、正に現役の研究者で比較的若い人達が多い。まだまだ答えの出ていない問題について、最前線にいる研究者の話が直接聞けるというのは幸せで、こちらが共感できるかどうかは別にしても、何が研究を進める力となっていて、どんな夢を見ているのか、等の研究者の内面が垣間見える気がして楽しい。

それぞれの対談では、それなりに深く突っ込んだ最新のトピックが語られるのだが、非常にわかりやすい説明がされていることに感心させられる。その意味では、一流の研究者は、その研究の概要や面白さを一般の人に対してうまく伝える力も持っているのかもしれないし、或いは瀬名さんがうまく引き出しているとも言えるのだろう。本当は、一つ一つの対談はもっと深く突っ込んだ話も聞きたいと思わせるものも多いのだが、それでも18も集まると380ページもの分量となってしまう。

いずれにしても、かなり広い範囲の科学分野のトピックスを見ることができると共に、それぞれの分野における日本の研究者達の横顔や仕事の内容を知ることができる。その意味では、理科系に漠然とした興味を持っていて、今後の進路を考えている高校生あたりにも向いている本かもしれない。

日本の研究が必ずしも世界の主流ではないという点も注意する必要はあるが、日本にこのようにオリジナリティある研究を進めている人達がいることも知っておきたいものだ。でも、何故か今回登場する人達は、日本とか東洋とかを、独自性のよりどころとしすぎているみたいで、少し違和感も感じた。

本書で紹介された研究が更に発展し、いつか新たな成果として報道された時に、改めて本書を読み返すなんて楽しみもありそうな気がする。

著者の瀬名秀明さんのサイトを見ると、いろいろと関連情報が見られる。9月一杯は、オンライン書店bk1に 瀬名秀明書店 なんてのがあって、今購入すると著者オリジナルエッセイPDFがダウンロードできる特典があるらしい。

橋本大也さんが、最近の若者の科学離れの傾向と絡めて、書評を書かれている。

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コメント

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白澤先生の情報です!

投稿: ^^ | 2006/02/25 09:25

^^ さん、トラックバックに失敗しているみたいで、肝心の白澤先生の情報にたどりつけません。

投稿: tf2 | 2006/02/26 21:54

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