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2004/09/08

宇宙太陽光発電の新技術

中日新聞(9/8)の記事。宇宙太陽光で発電 宇宙航空機構など開発

 宇宙空間で太陽光を集めレーザーに変え、地上に送って発電する-。そんな夢の実現を目指す宇宙航空研究開発機構とレーザー技術総合研究所(大阪府吹田市)は、従来の二十倍近い37%という高い効率で太陽光をレーザーに変換する技術を開発した。

 実用化に一歩近づく成果で、宇宙機構の森雅裕・高度ミッション研究センター長は「二〇一〇年までに太陽光の変換装置を搭載した人工衛星を打ち上げ実証実験を始めたい」としている。

 宇宙での太陽光発電は大気や雲で太陽光が弱められる地上に比べ、集められる光の量が圧倒的に多いという利点があり米航空宇宙局(NASA)なども研究中。ただ地上にエネルギーを送るために損失の少ないレーザーに変えねばならず、その変換効率は約2%にとどまっていた。

 宇宙機構などは、イットリウムやアルミニウムなどでできたYAGという物質にクロム原子を加え、高温処理し、セラミックYAGという物質を開発。光が通ると一部をレーザーに変える「レーザー媒質」に使った。

 従来のレーザー媒質は太陽光中のさまざまな波長の光のうち、ごく一部しかレーザーに変換できなかった。セラミックYAGではクロムの働きで変換可能な光の波長帯が飛躍的に拡大。変換効率が37%に達することが実験で確かめられた。

 同研究所の内田成明主任研究員は「変換効率を上げる原理は確立できた。今後は衛星に載せる変換装置の設計を急ぎたい」と話している。

 <宇宙太陽光発電> 静止軌道などに人工衛星を打ち上げ、太陽光を利用して発電するシステム。地上での太陽光発電は日中に限られるが、宇宙では昼夜の区別なく太陽エネルギーを使えるのが利点。太陽光をレーザーに変換して地球に向けて照射し、地上の施設で発電する方式や、巨大な太陽電池パネルを備えた衛星を使って軌道上で発電し、電力をマイクロ波で地上に送る方式が研究されている。

人工衛星が太陽電池を広げて軌道上で発電し、マイクロ波で地上に伝送するという良く知られた(?)方法ではなく、太陽光をレーザー光に直接変換して地上に送り、地上で発電する方式らしい。

もっとも JAXA(宇宙航空研究開発機構)のページにある太陽光発電の説明だと、

宇宙太陽光発電の構想では、高度3万6000キロメートルの軌道上に大型の太陽電池衛星を設置し、ここで発電した電力を、いったん高度20キロメートルの低空に浮かぶ飛行船にレーザーで中継し、さらに地上のアンテナへはマイクロ波や光ファイバーで送信するという方法が考えられています。
となっており、先の記事とはレーザーの使い方が異なり、一旦太陽電池で発電してからレーザー伝送する計画のようだ。

もう一方の当事者であるレーザー技術総合研究所のサイトには、宇宙レーザーのページでは、「宇宙の太陽光エネルギーをレーザー技術を駆使し有効にエネルギー変換-伝送し地上でエネルギー源に用いる」と書かれており、太陽光をレーザーに直接変換するように読めるが、レーザーエネルギー伝送のページには、「太陽光発電衛星のエネルギーをレーザー光に変換して地球に送る」と書かれており、一旦発電してからレーザーに変換するように読める。よくわからないぞ??

さらに探してみると、同じレーザー技術総合研究所の発行するレーザー・クロスという雑誌に太陽励起レーザー宇宙太陽光エネルギー利用システム(L-SEUS)という関連記事がみつかった。これによると、最初の新聞記事にあるように、太陽光エネルギーを直接レーザー光に変換し、レーザー光を地上に送るシステムを想定しており、地上では水の分解によって水素エネルギーに変換する計画のようだ。

太陽光をレーザーに変換する素子についても、太陽光直接励起型固体レーザーの開発に詳しく書かれており、レーザー方式とマイクロ波方式との比較もされている。

それにしても、変換効率を20%として、原発1基分程度の1GWの発電のためには、直径2km程度の集光鏡、200m四方という大量のYAG(ファイバーを束ねたものでよいらしいが)が必要になるなど、想像を絶するスケールだ。それ以外にも確立すべき技術は山積のようだが、夢のある技術でもあり、注目したいところだ。

他にも参考になる資料としては、マイクロ波送電技術が中心だが、
  気になる化学探検隊「家庭のコンセントか宇宙へ繋がる 宇宙太陽光発電衛星構想」
  市民的危機管理入門 未来エネルギー論
  NEDO海外レポート NASA、宇宙空間での太陽光発電に再挑戦
など。

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コメント

宇宙太陽光発電! 最高です。大好きです。子供の頃夢見たなぁ……。
素朴な疑問なんですが、レーザーに変換したとしても、飛行船で発電やらの中継ではなく地上に送るなら、天候の影響とかは受けないものなんですか? レーザーっちゅうのは曇ってても大丈夫なんでしょうか。もしダメなら、微妙に何やってるんだかわからないオチになりそうな気がするんですけど。

投稿: 石倉由 | 2004/09/11 12:06

うぅ、鋭い質問です。

上空20km程度に浮かぶ飛行船までレーザー光で送る場合には、飛行船は雲の上でしょうから問題なさそうですが、地上に送る場合はどうなるのでしょう? 上でも引用した「レーザーエネルギー伝送」のページでは、

 大気の透過率は、レイリー散乱の影響により、可視領域の短波長側では、大気の散乱による損失が大きくなる。この点で、1μmの波長では晴天時の大気垂直透過率が92%程度と高く、この波長帯がエネルギー伝送に適している
とあり、波長1μm程度のレーザー光を使うことを考えていることがうかがえます。晴れていれば、この波長は散乱が少なくて良好ということらしいですが、曇りや雨の日はどうなんでしょう? 

キリヤ化学のQ&Aで、http://www.kiriya-chem.co.jp/q&a/q25.html">レイリー散乱とhttp://www.kiriya-chem.co.jp/q&a/q41.html">水の吸収スペクトルの説明が載ってますが、確かに波長 1μm程度の赤外線はレイリー散乱は少ないようですが、水による吸収が可視光に比べてかなり大きいことがわかります。

ということは、レーザー光が雲を抜けてくる間に相当ロスしてしまいそうな気もしますが、逆にそんな高エネルギーを雲に吸収させたら、あっという間に雲が蒸発して、そこだけ晴れたりしないかな??

NASAも本腰を入れて研究しているようですから、よもや雨の日はダメなんてことはないと思うのですが、これ以上は今の所は不明です。どなたか、ご存知の方がいたら教えていただけると幸いです。m(__)m

投稿: tf2 | 2004/09/11 17:15

宇宙太陽光発電はパラメトリックスピーカーを搭載し、宇宙からのマイクロ波の到達度を地上の一般人被験者で実験しているらしい。
パラメトリックスピーカーはマイクロ波・赤外線・超音波に音声を乗せ、遠方にいる人物の人体にそのビームを照射する事で音声を届けるシステムだが、その被験者は本人の承諾無く無断で行われているそうだ。
噂だと韓国や中国、創価学会の人工衛星から行われているとも言われている。

皮膚火傷や内臓疾患、人体にあらゆる疾患を生じさせ、人体に甚大な影響があるらしい。その実験の結果が電磁波攻撃と言われ大変問題になっている。

投稿: 武器転用反対 | 2013/04/26 09:09

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