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2004/10/15

HIV感染予防薬

中日新聞の10/15の記事。エイズ予防薬、サルで実験成功 米・スイスの研究チーム 人の感染予防に光

 性行為を介したエイズ感染を予防する可能性のある薬剤を米国とスイスの研究チームが開発し、サルでの実験に成功した。異性間の性交渉はエイズウイルス(HIV)の主要な感染経路となっており、同チームはこの薬が人の感染予防にも有効とみている。論文は十五日付の米科学誌サイエンスに掲載された。

 この実験薬は、天然のヒトたんぱく質をもとに合成したもので、HIVが細胞表面にある「CCR5」という受容体に結合するのを妨げる働きを持つ。CCR5はHIV感染の主要な受容体の一つで、これを先天的に欠く人はHIVに感染しないとの研究がある。

 研究チームは、ウイルスに感染しやすくした雌のアカゲザル三十匹を五匹ずつ六グループに分け、それぞれ濃度を変えた実験薬を膣(ちつ)の表面に塗布。十五分後に大量のHIVを膣内に投与したところ、最高濃度のグループは五匹すべて、二番目のグループでも四匹で感染を防いだ。

 研究チームは、人の場合、今回の実験で用いたよりもっと少ない量で効果があるのではないかとみている。

 <国立感染症研究所・エイズ研究センターの仲宗根正主任研究官の話> CCR5をブロックし経膣感染を完全に防いだ研究は初めてで科学的にはインパクトが大きい。用量や用法、効果の持続時間など、人での実用にはかなりハードルが高いが、予防に少し可能性が出てきたとは言える。

ということで、エイズの予防に向けて大きく前進する成果かもしれない。何しろ、世界的に見れば HIV が人類の大きな脅威であることは間違いない(参考:3/25のブログ)。

この論文のアブストラクトは、Scienceで読める。このニュースは、向こうでは結構詳しい記事が多く出ている

冒頭の中日新聞の記事で研究の概要はつかめるが、要はこの研究、雌のサルの膣にHIVウィルスブロック薬を塗布した結果、感染を防ぐことができたというもの。現時点では局所に塗布するわけだから、実用性という意味では色々と問題がありそうだ。(完全にブロックするためにはどうやって塗るんだ?とか、持続時間が15分となると実効性あるのか?とか、実際の性行為では新たな傷ができてしまうんじゃないか?とか)

しかし、news VOA comの記事には、

Many women around the world do not have the power to refuse sex or require their partners to use condoms, so public health officials have been seeking an odorless, tasteless compound a woman could apply privately to block HIV infection.

A new product shown to work in female rhesus monkeys may be what they have been looking for.

とあり、世界的に見ると、HIVへの感染を他に防ぐ手段を持たない女性も多く、この手の薬が待ち望まれていると書かれている。

また、BBC NEWSによると、

The virus uses certain cell surface molecules to get into cells and infect them.

One of these is called CCR5 and it had already been shown that people who lack this surface molecule on their cells are almost completely protected from acquiring HIV.

But HIV can use other target molecules to get into cells.

Dr Lederman's team set out to investigate whether blocking CCR5 would be enough to prevent simian HIV (SHIV) transmission.

ということで、色々なルートでの感染が考えられる中で、今回の研究により、CCR5をブロックするだけでHIVの感染を有効に防ぐことができそうだ、というのが大きな成果のようだ。

エイズのついての一般知識は、エイズ予防情報ネット、用語集は中四国エイズセンターなどが充実している。

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