京都議定書発効の見込み
YOMIURI ON-LINE(10/1)の社説、[CO2削減]「ロシアの批准で現実化する難題」
「京都議定書」の採択から七年。紆余(うよ)曲折を経ての大きな前進である。他紙がまだ本件を社説で扱っていない時点で、読売新聞がいち早くこの問題に対応したことは評価できる。先進各国に、二酸化炭素など温室効果ガスの削減を義務付けた議定書が、米国抜きで発効する見通しになった。ロシア政府が批准同意案を閣議決定し、近い将来の批准が確実になったことによる。
議定書は、日本など百二十四か国と欧州連合(EU)が批准している。発効するには、批准した先進各国の二酸化炭素の排出量(一九九〇年)の合計が、先進国全体の排出量の55%以上になることが必要だ。ロシア議会が批准すれば、この条件を満たす。
議定書が発効すれば、日本が世界に公約した二酸化炭素などの削減が現実の課題となる。政府は早急に、実効ある削減対策を打ち出し、国内対策の道筋をつけなければならない。
議定書の発効により日本は、二〇〇八―二〇一二年の温室効果ガスの平均排出量を、一九九〇年の基準年比で、6%削減する義務を負う。
ところが、九〇年以降も温室効果ガスの排出は増え続け、二〇〇二年度には基準年比で7・6%上回った。6%と合わせ13・6%もの削減を迫られている。
省エネ先進国である日本は、これ以上の省エネには限界がある。6%の削減でも厳しい。13・6%の削減となると、省エネ策や革新的な環境技術の導入などが中心の現在の対策では、目標達成は極めて困難だ。
(中略)
温室効果ガスの排出の八割は企業が関連している。各企業の正確な排出量の把握が削減対策の前提になる。企業が排出量を公表する制度作りも欠かせない。
化石燃料に課税し、使途を温暖化対策にあてる「温暖化対策税」の本格的な検討も課題となる。
ところで、2002年の排出量が1990年の +7.6%だとして、目標の -6%に対して 13.6%削減する必要があるというのはおかしくないか? 小学校の算数の問題みたいだが、1990年を 100とした時、目標値が 94、2002年が 107.6ということで、普通に考えたら必要削減量は 13.6/107.6となり現時点に対して 12.6%となるのだが、1990年の排出量に対しては 13.6%となると言いたいのかな?
それと「温室効果ガスの排出の八割は企業が関連している。」というのも、何だか違和感がある。調べてみると、環境省の2002年度の温室効果ガス排出量についてにデータが載っている。排出量を誰に割り当てるか?は難しい問題ではあるが、発電等の一次エネルギーに伴う排出をその使用者に割り当てる方法によると、2002年度の二酸化炭素の排出量と1990年度に対する増減は、
エネルギー転換部門 6.6% -0.3%
産業部門 37.5% -1.7%
運輸部門 21.0% +20.4%
業務その他部門 15.8% +36.7%
家庭部門 13.3% +28.8%
工業プロセス 3.9% -14.0%
廃棄物 1.9% -43.2%
となっている。確かに、家庭部門以外の86.7%を企業に関連した排出と言えるんだ。 しかし、各部門の1990年の排出量に対する比を見ると、運輸・業務・家庭部門での伸びが著しく、コンビニを始めとした最近のライフスタイルが影響していると思われる。何故増えたのかを論じずに、企業に対して一方的に削減努力を要請するのも筋が悪いと思うのだけど。
今日のところは、関連記事としては
朝日:京都議定書、05年にも発効へ ロシアが批准へ閣議決定
読売:京都議定書、来春にも発効…露政府が批准法案を承認
読売:露の京都議定書批准にも米報道官「議定書正しくない」
毎日:京都議定書:ロシアが批准法案を閣議決定
毎日:京都議定書批准:ロシア決定 WTO加盟にEUの支持狙い
毎日:京都議定書:露批准案決定 排出量削減、重い課題に--産業界、一層の対策迫られ
毎日:豪総選挙:京都議定書の批准問題 争点として急浮上
なんてところ。毎日が多面的な記事を書いているように見える。
排出量取引き等の取り組みに加え、環境税の導入検討や企業への更なる努力要請は当然としても、それに加えて「ライフスタイルを変える必要があるぞ!」という主張を誰がしてくれるのか楽しみにしていよう。
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コメント
13.6%というのは、単位をポイントと読み替えれば正しい表記になると思います。
しかし新聞の環境系記事って、科学部が片手間でやっているのか、それとも自称「環境に関心があります」ってだけの人を使っているのか、あまり良くないのが多いですね。
投稿: ESD | 2004/10/04 02:30
ESDさん、お久しぶりです。
ポイント表示するにしても「90年の排出量に対して」と書かないといけない、と思いませんか。13.6ポイント削減する必要があると書かれると、現時点からと考えるのが普通だと思いますし。
これは、例えば2002年の排出量が90年に対して4%削減できていたとした場合でも一緒ですが、この場合はどちらをベースに計算しても、あと2ポイントとなるので問題ないんですよね。
#そもそも、学校では「ポイント」なんて便利な単位は習わなかったような気がする。
それはともかく、環境系に限らず、科学系の記事も同じかもしれないですね。特集記事を組んで大きく取り扱う時にはそれなりに質の良い記事になるようですけど、特に短い記事は要注意のようですね。
もちろん、環境やバイオ等のホットな問題について、新聞社が自分達の立場を明確に持ち、なおかつ個々の科学技術を十分に理解した上で記事を書くことまでを期待するのは無理だと思いますが。
投稿: tf2 | 2004/10/04 20:09