京都議定書関連社説比較
10/1には読売新聞の社説を取り上げたが、他紙の社説も出揃ったので、一通り目を通してみた。
読売新聞(10/1):CO2削減 ロシアの批准で現実化する難題
朝日新聞(10/3):ロシアの批准――京都議定書が生き返る
毎日新聞(10/2):京都議定書 米中にも呼びかけ本腰を
日経新聞(10/3):議定書発効、論より行動を
産経新聞(10/2):京都議定書 原発へのシフトしかない
タイトルを読めば、言いたいことが見えてくるが、何と言っても産経新聞がぶっ飛んでいる。他紙がロシアが批准する背景、アメリカが離脱したままであること、日本の産業界が消極的なことを中心に、当たり障りのない抽象論に留まっていて、日本の進む道についての具体的なイメージを何ら提示できていないのに対して、原発へのシフトしかない、とはその思い切りに恐れ入る。産経の主張(社説)の一部を引用すると、
(前略)ということで、タイトルが「原発へのシフトしかない」と挑発的な割には、内容は論理性が欠けていて説得力がないような。。 せっかく、この機会に原発へのシフトを論じるのなら、こんな行きがけの駄賃みたいなセコイ論理では駄目だと思うけど。(そもそも原発へのエネルギー転換を推進するのは確かに一つの見識だけど、今から議論していて間に合うとは思えないし。)ロシアが批准することで、これまでは努力目標だった京都議定書が拘束力をもつ国際約束となるが、それだけ日本の責任も重くなる。例えば、日本は一九九〇年を基準年としてCO2の排出量を二〇〇八年から二〇一二年までに6%削減しなくてはならないが、現段階では逆に7%も増加した。このため差し引き13%の削減が必要だ。
政府の地球温暖化対策推進本部(本部長・小泉純一郎首相)は、「地球温暖化対策推進大綱」の見直し作業中だが、省エネの徹底、環境税の導入、バイオ発電などの開発に偏り、CO2の国内排出量の四分の一を占める化石燃料発電からの直接的なCO2削減・排除策には消極的だ。
わが国の場合、省エネ技術は世界最高の水準であり、これ以上効果ある省エネ技術の開発は困難だ。また環境税の導入にも「環境税が化石燃料の利用削減につながるとは思えない」との識者の意見も多い。
結局、効果が期待できるのは化石燃料発電の大幅削減だ。にもかかわらずその代替としての原子力発電には国民も政府も消極的だ。京都議定書発効を機に“脱炭素”を目指したエネルギー政策の抜本改革に取り組まなければ、日本発の“条約”を自ら破った国との国際非難を浴びることになる。
本当にこんな結論でいいのだろうか? もしかして、これは2ちゃんねるで言う所の「釣り」って奴かな? これを契機に地球温暖化問題や原発問題についての議論を巻き起こすのが狙い??
まあ、どの新聞も自分たち(一般の市民)は何もしなくても良いかのようで、真剣に問題意識を持っているようには見えない。最近はアメリカでもハイブリッドカーを持つことがステータスシンボルになり始めているらしいけど、正にこのようなエコプレミアム(資源やエネルギーを使わずにリッチな生活をするというコンセプト)が一つの方向だろうと思うのだが。。
例えば、自動車メーカーが販売する全車の燃費の総合計値(販売台数×燃費:カテゴリー毎に平均走行距離補正をする)が90年に対して削減できれば、その分をメーカーへの何らかの形で利益還元するとか、企業のCO2排出量から差っ引くというような形で、トータルの温室効果ガスの排出削減にインセンティブが働くような仕組みを作れないものだろうか? 細かな所までの整合性を取ろうとすると複雑になりすぎて困難なのは予想がつくが、思い切って大雑把にしてみたら良いのに。(どうせ完璧な仕組みはできないんだから)
それにしても、人々の価値観の転換を図るためには、マスコミの役割がとても大きいのだけど、大手マスコミにその認識が足りないのが一番の問題なのではないか、と考えさせられる各紙社説の論調に脱力。。
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