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2004/10/25

新幹線の脱線は安全神話の崩壊なのか?

新潟県中越地震の被害が予想よりも大きかったのか小さかったのかを議論することは、被害に遭われた方々に対して非常に失礼に当たると思うが、今後への教訓を得るためにも、冷静な解析が必要だろうと思う。

新幹線がその歴史上初めて脱線したことが大きく取り上げられている。Google News。中には、河北新報のように、安全神話の回復を願う、なんて記事もある。普通、安全神話ってのは崩壊するもので、本来安全ではないものを根拠もなく安全だと信じることを指すのではないのだろうか? 安全神話を回復するよりも、真の安全を目指した方が良いと思うけど。。

一方、FujiSankei Business iによると、台湾や中国では今回の地震で脱線はしたけど、人的被害がなかったことを高く評価しているようで、同じ事態に対する評価は立場によって随分変わるものだ。

asahi.com(10/25)の新幹線脱線、安全性に死角によると、

 新幹線の地震対策の中心は、速度の速い初期微動(P波=縦波)を検知して、本格的な主要動(S波=横波)が来る前に列車を停止させる早期検知システムだ。JR東日本は沿線20キロごとに地震計を設置している。P波の実測値をもとに120ガル以上のS波を予測したり、40ガル以上のS波を実際に観測したりした場合は送電を止め、強制的に列車を停止させる。P波検知から停電までの時間は3秒かからないという。

 震源が離れた場所にあるプレート境界型地震は、P波とS波との時間差が大きくなるため、システムは機能する。一方、直下型地震では両波の時間差がほとんどないから、効果は薄い。今回もP波とS波はほぼ同時に到達したとみられる。

 脱線現場近くの地震計は846ガルを観測。阪神大震災で山陽新幹線の地震計が観測した561ガルを大きく上回った。「とき325号」は、停電でスピードを緩める余裕がほとんどないまま脱線した可能性がある。

とあり、直下型であったこと、揺れが非常に大きかったことが指摘されている。

それにしても、どんな構造物にも設計基準というのがあるわけで、今回の新幹線の脱線を議論する際に、設計基準からみて、この脱線は想定される事象だったのかどうかを出発点とすべきだろう。しかし、ニュースを見る限りは、今回のような地震で脱線してもらっては困る、という前提で皆さん議論しているようだが、本当だろうか? 本来は設計に関わった人のコメント(脱線だけで済んだのは運が良かったのか、運も実力のうちなのか、それとも想定外の被害だったのか)が欲しい所だが、さすがに今の時点では下手なことを言えないだろうけど。。

*某大臣は、これは奇跡的だ、というようなコメントを早々に出したようだが、果たしてどこまで考えて言っているやら。。 建前でも、犠牲者ゼロで済んだのは日頃の対策が機能したからだ、というようなことは言えないのだろうか?

新幹線の地震対策については、ウィキペディアのユレダスの記事からのリンクが参考になる。他には新潟地震から30年「未来への記憶」の記載などを見ると、どうやら新幹線はマグニチュード8程度或いは関東大震災クラスの大地震に対して致命的な被害が出ないことを目標としているようだ。

いろいろ探していたら、自民党の山本議員のサイトで施設の耐震性確保というページを見つけた。ここでは、新幹線や高速道路等の施設の設計は、

①供用期間中に1~2度発生する確率をもつ一般的な地震動(レベル1地震動)に対する設計基準
  ⇒機能に重大な支障が生じないように設計

② ①を超えるより巨大な地震動(レベル2地震動)に対する設計基準
  ⇒機能に支障が生じたとしても、被災により人命、周囲に大きな影響を与えないように設計

とあり、極めて妥当な考え方が提示されているのだが、残念ながら、レベル1とか2の地震動の大きさがよくわからない。ところがこのページの末尾には、原発の耐震設計基準となる「およそ現実的ではないが理論的には想定される大きな地震動」であるS2地震動を、浜岡原発は600ガルとして設計している、とある。これで本当に大丈夫か??

ともかく、今回の地震動では新幹線は脱線しない設計となっていたのに脱線したのか、それとも想定地震動を超えていたのかをはっきりさせよう。専門的な原因究明はもちろん必要だし、より大きな地震に対しても有効な対策が現実的に可能であるのならばもちろん展開したいところだ。でも、どこまでコストを掛けても、リスクをゼロにはできないわけで、一方で新幹線以外でも対策を必要とする箇所は沢山あるはずだ。対策は大局的観点から、冷静にバランスよく行いたいものだ。

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コメント

マスコミってのはだいたい半可通の集まりで、何か事件・事故が起こると悪者を作り上げて多勢の側に立って叩くものなんですよ。
そして大半の視聴者は鵜呑みにしてしまう。
世の中はそういう風になっているんです。残念ながら。

投稿: into | 2004/10/25 23:19

intoさん、コメントありがとうございます。

ご指摘の通り、TVは特に最近その志の低さが目だってるように思いますが、新聞はもう少し頑張って質の高い報道をして欲しいものです。

各新聞社共に政治的なことについては、ある程度自社の立場や考え方を守った上で報道しているように思えるのですが、科学的内容となるとポリシーも大局観も何もなしに、書き流している記事が多いようにも感じます。

投稿: tf2 | 2004/10/26 00:01

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