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2004/10/28

温度調光ガラス

化学工業日報(10/28)の記事。

産総研、温度変化で自動調光する窓ガラス開発

 産業技術総合研究所のサステナブルマテリアル研究部門は27日、30度Cを境に自動的に調光量が切り替わる窓ガラスを開発したと発表した。高断熱、紫外線遮断、光触媒によるセルフクリーニング機能などの機能を付与することも可能で、画期的な機能を持った省エネルギー快適窓ガラスとして応用が期待される。今後、大型ガラスへ展開を進め、ガラスメーカーと共同して実用化を目指す。

 同グループが開発したのは、温度の変化に応じて太陽光熱を自動調整できるガラス。サーモクロミック材料である酸化バナジウムを用い、膜厚などを最適化、さらに機能性薄膜で挟むサンドイッチ構造としたことで、可視光透過率を従来の4割から6割までと大幅に向上させると同時に、調光率も従来の倍以上を実現させた。

 この新機能性ガラスは、季節の変化に応じ、夏は日射の約6-7割を遮断するが、冬は高断熱とともに暖かさを感じさせる赤外光を多く室内に取り入れる。その切り替えは30度Cを境界に自動で替わる。これまで夏の日射を遮断する熱線反射ガラスは製品化されているが、光学特性は一定だった。一方、温度で光学特性が変化する調光ガラスの研究はあるが可視光透過率が低く、断熱性が乏しいという課題があった。

産総研の10/27のプレスリリースに詳細説明があるが、文章ばかりでイメージがつかみにくい。研究グループのサイトを探していてみつけたのが、環境応答機能薄膜研究グループの説明。ここには正にこの自動調光ガラスの光透過率の温度依存性のグラフがある。

非常に見事に1μm以上の赤外線領域の透過率だけが温度によって変わっている。しかも、ただのガラスよりも TiO2コーティングにより可視光域の透過率が向上しているのも面白い。ただし、このグラフは20℃と80℃の比較なので、30℃付近ではこんなに極端には違わないのだろうけど。

ということで、このガラス、住宅やビルのガラスに使うと確かに効果が大きそうだ。可視光の透過率には影響がなく、周囲温度が高い時には赤外線を透過し、低いと透過しないというのは、非常に優れものだと思う。これだと確かに冬の暖房した室内の熱も赤外線放射という形では外に逃げにくいはずだ。しかもこの切り替えは特に応答スピードを要求されるわけでもないし。

ところで、このガラスを車の窓に使ったら効果が大きそうに思える。でも、もしも屋外に放置しておいて、一旦車内温度が車外温度より高くなる状況が起こってしまったら逆効果になりかねないような気もする。ガラス以外からの熱の侵入や強烈な可視光の影響を考慮するとどうなのだろう?

と思ったら、車のガラスには調光ミラーを考えていて、こちらは、可視光も遮断してミラー状にしてしまう。しかもその切り替えは電気的に行う(エレクトロクロミック)というものらしいが、これだと真夏の炎天下でも涼しい状態に保てるのかな?

なお、よくある光で色の変わるサングラスは、フォトクロミック材料と呼ばれ、ハロゲン化銀などを使っていて、こちらは紫外線が切り替えの引き金となっている。

冒頭のサーモクロミックガラスだが、ニュースでは酸化バナジウムと書かれているが、よく見るとこれはニ酸化バナジウム、VO2ではないか。一般的にはバナジウムの酸化物は V2O5なので、結構珍しい。日本原子力研究所のページによると、こいつはこの温度域での結晶の相転移によって、光透過率だけでなく電気抵抗も大きく変わることも知られており、なかなか有望な材料のようだ。恐らく相転移温度をうまく制御する方法も見つけたんだろうと思われる。

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» 光をオン・オフ [そ、それも今日までですか・・・]
気に入って読んでいるサイトの1つのココが、温度調光ガラスを取り上げていました。 [続きを読む]

受信: 2004/10/31 15:26

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