化学物質の大気中濃度マップ公開
化学工業日報の10/6の記事。NITE、200物質の大気中濃度マップ作成
製品評価技術基盤機構(NITE)は、PRTRデータの活用を支援するため「大気中の濃度マップ」を作成、ホームページ上で公開した。PRTR対象化学物質354のうち大気に放出される約200物質について、2002年度の排出量データを基に作成したもの。日本全国を対象に、気象データと事業者が届け出たPRTRデータなどから推計した有害化学物質の大気中濃度を電子地図の上に表示した。濃度の度合いに応じて色分けされており、容易に全体の傾向を把握することができる。何故か一般紙では全く報道されなかったようだ。PRTR制度により、対象化学物質がどこからどれだけ排出されたかという一次情報が、信頼性や完全性はともかくも、一般に公開されるようになった。→ 環境省 PRTR公式サイト しかし、このデータはさすがに一般の人には敷居が高く、わざわざ生データを見て何かに使おうとは考える気にならない。
今回公開された、PRTR 大気中の濃度マップは、PRTRで集計された1次データを用い、これを産総研の化学物質リスク管理研究センター(CRM)で開発した AIST-ADMERというソフトを用いて、全国を5kmメッシュに区切り、メッシュごとの化学物質濃度を推計したもの。視覚化されているから、その気になれば、誰でも自分の身近な場所での大気中の化学物質濃度がわかる。
計算の元となる排出量はPRTRデータのメッシュ別集計方法によると、いわゆるPRTRで公開されている工場等からの排出量はもちろん、一般事業所からの排出量、農業などからの排出量、一般家庭からの排出量、車などからの排出量等も、それぞれ考慮して推計されているようだ。
実際に少し使ってみると、自分になじみのある特定の場所での特定物質の大気中濃度が一目瞭然にわかるというのは結構面白い。必ずしも直感的な操作ではうまく動かないこともあるが、まあまあ容易に欲しい情報にたどり着ける。
例えばベンゼンの全国大気濃度マップはこんな感じだ。地図をクリックすると拡大図が見られ、更に倍率を変えて詳細地図までたどり着ける。これを見ると、日本全国で随分濃度に差があることがよくわかる。これと、例えば男性胃がん死亡比マップのような、健康に関わる統計データとリンクさせてみると面白いかもしれない。直感的には、大気濃度が地方と都市部で極端に異なる割には、がん等の死亡率の差は大きくないような気がするけど。。
実は、いくつかの石化コンビナート地区で、いくつかの物質の発生源マップや濃度マップを見てみると、その物質を排出していそうな工場の位置で必ずしも濃度が高くなっていない所も見られるようだ。 その工場できちんと処理されているのか、あるいはPRTRの届出が不完全なのか、それとも大気マップ化に問題があるのかわからないが、もう少し調べてみる必要があるかもしれない。
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コメント
環境情報科学センターのhttp://www.prtr-net.jp/index.html">PRTR & Risk Communicationで、PRTRを基に全国の物質別排出量と大気濃度のマップを公表している。
http://www.prtr-net.jp/data/index.php">化学物質の排出量・移動量集計データ・マップ
マップのメッシュが粗いけど、比較してみると面白そうだ。
投稿: tf2 | 2004/10/18 18:13
あのマップは重要なものが抜けていると思います。
たとえばアメリカのEPAはTRIという制度をとっていますが、これは拡散濃度や健康リスクなどの二次的な情報ではなく、排出源の位置と排出量という一時的な情報に重点をおいているように見受けられます。
日本では発生源の情報を拡散というフィルターをかける事で隠蔽しているように感じられます。
PRTRなどの制度の基本理念としてリスクコミュニケーションの形成が挙げられると思います。
EPAのような発生源の情報がはっきりとわかる方法と、発生源ははっきりしないが暴露量やリスクのみ把握できる方法ではどちらがリスクに関するコミュニケーションを形成しやすいかを考えれば日本の制度が形だけのものであることがはっきりするのではないでしょうか。
個人的にはここ(http://www.toxwatch.net/">http://www.toxwatch.net/)で手に入る排出源の情報のほうが役に立つと思います。
投稿: neat | 2004/10/30 00:27
neatさん、コメントありがとうございます。
製品評価技術基盤機構や環境情報科学センターのマップは、あくまでも環境省が集計して公表したPRTRの一次データを用いて、必要に応じて加工してわかりやすく見せようとしたものだと思います。
確かに、環境省のhttp://www.env.go.jp/chemi/prtr/risk0.html">PRTRインフォメーション広場では、集計されたデータしか公開されていないようですね。一次データは別途有料で開示請求しなくてはならないようです。ご指摘のような隠蔽に当たるとは思いませんけど、情報公開の姿勢が不十分なのは確かでしょう。
その点、ご紹介いただいた有害化学物質削減ネットワーク(Tウォッチ)のhttp://toxwatch.gotdns.org/SearchPRTR/Search.aspx">PRTRデータベースは、一次情報についてもとても充実してますね。参考にさせていただきます。
ただ、一次情報が必要な場合と加工した情報(例えばここで紹介したような拡散後の大気中濃度)が必要な場合があるだろうと思いますから、用途に応じて使い分ければ良いのだと思います。その位置付けをはっきりさせれば、棲み分けても良いのではないかと思います。いずれにしても、従来なかったデータが公開されることは歓迎していいのではないでしょうか。
それと、多少無駄な点もあるかもしれないけど、少なくとも初期段階では、同様の情報を複数の機関が公表することは、お互いのデータの信頼性を高めるためにも有用だと思います。それと同時に、環境省自身がTウォッチ以上の積極的な情報公開をする必要がありそうですが。。
アメリカのTRI(Toxics Release Inventory)という制度については、不勉強で詳細を知りませんので、今後PRTR制度との相違などを勉強させていただきます。ありがとうございました。
投稿: tf2 | 2004/10/30 01:34