無鉛圧電セラミックス
日本経済新聞(11/1)の記事。「セラミックス、鉛含まず 電子部品用、環境に配慮 豊田中研など」
トヨタグループの豊田中央研究所(愛知県長久手町、石川宣勝所長)とデンソーは、有害な鉛を含まない電子部品用セラミックスを開発した。スピーカーやセンサー、ラジオチューナーなどに幅広く利用されている「圧電素子」として応用できる。研究成果は英科学誌「ネイチャー」の電子版に掲載される。ここで鉛を含む材料とされているのは、いわゆるPZT、チタン・ジルコン酸鉛系のものと思われる。PbTiO3で Pbの含有量は68重量%、PbZrO3で 60重量%となるので、影響は確かに大きそうだ。今の所、豊田中央研究所のサイトにもデンソーのサイトにも、これに関するニュースは掲載されていない。
このセラミックスは電圧を加えると変形する一方、力を加えて変形させると電気が流れる「圧電効果」を持つ。開発した材料はカリウムとナトリウム、ニオブの酸化物で作ったセラミックス。
セラミックスを産業応用した圧電素子は、国内で難関42億個生産されているが、ほとんどが鉛を含む材料を使用しており、環境対策上の課題となっている。
今回開発したセラミックスは独自製法で結晶粒子を規則正しく並べ、圧電素子として動作するようにした。圧電効果の大きさや耐熱性などの性能も、鉛を含む従来の圧電素子とほぼ同じだった。今後は製造コストを低減し、実用化を目指す。
産総研のサイトで、低鉛含有ペロブスカイトの研究成果が載っているが、(Na,K)NbO3 と PbTiO3 の複合系で研究しているようだ。鉛系の添加量がゼロのデータも見られるが、鉛を含まないものは性能的に不十分ということらしい。
更に調べていたら、産総研の楠本さんが個人的に開設しているサイトで、無鉛圧電体に関する非常に充実したページを見つけた。無鉛圧電話題では、そもそも鉛使用セラミックスが環境に悪いのかどうか、ヨーロッパの鉛規制、鉛系セラミックスの特性、および代替候補の長所と短所などが網羅されている。さらに、無鉛・鉛系圧電材料に関する研究、開発動向では、最新の業界の動向をウォッチングしている。この分野の動向については、このサイトでほぼ完璧だろう。
どうやらニオブ酸アルカリ系の問題点は、製造工程でアルカリの蒸発に伴い、緻密な焼結体が得られにくいことなどがあるようで、冒頭の記事でも調製方法に工夫を加えたように読める。
ちなみに、圧電セラミックスの自動車への応用例として、ノックセンサー、バックセンサー(ソナー)や圧電雨滴除去ミラーなどが見つかるが、例えばデンソーのCAR PARTS WEBでは、自動車の様々な部品のオンラインカタログとなっており、その豊富なラインナップと簡単な解説がメカ好きの人は楽しめるかもしれない。
以前、PZT系の圧電アクチュエータの開発に携わったことがあり、ちょっと懐かしい分野だけど、しばらくぶりに見てみると、比較的枯れた分野というか、あまり驚くべき進歩もしていないみたいだ。無鉛圧電体というのは、無鉛ハンダ以上にその必要性に疑問がないではないが、貴重な資源を使わずに安価にできるのならば、もちろん大歓迎だ。
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