新規たんぱく質「ドロンパ」
日経新聞の11/19朝刊の記事。「明滅繰り返す蛍光たんぱく質 理研、新薬開発に応用」
理化学研究所は光ったり消えたりをレーザー光の照射で制御できる特殊なたんぱく質を開発した。繰り返し明滅させることができる蛍光たんぱく質は初めて。細胞内の様々な分子の動きを観察する目印として有用で、がんなどの病気の解明や新薬開発の新たな実験道具になるという。というもので、新たに開発したたんぱく質にドロンパという名前をつけたのだそうだ。成果は今週の Science に 掲載(Abstract)されているが、ここにはドロンパという名前は出てこない。宮脇敦史チームリーダーらが沖縄のサンゴの遺伝子をもとに開発、明滅する様子から「ドロンパ」と名付けた。紫色レーザーを当てるとすぐに緑色の蛍光を放ち、青色レーザーを当てると消える。いったん光らせると消すことができない従来の蛍光たんぱく質に比べて、実験で複雑な分子の動きを追跡しやすいという。
また、このたんぱく質をガラスに塗り、書換え可能な光メモリーとして動作させる基礎実験にも成功した。
理化学研究所のプレスリリースは非常に詳しく書かれているが、字が込み合っているせいか、すごく読みにくいぞ。
普段は、青色領域に吸収をもっており、青色のかなり弱い光を当てると明るい緑色の蛍光を発します。ところが、青色の光を非常に強く当てると、その吸収帯がなくなって、変わりに紫色領域に吸収が現れてきます。次に、紫色の光をそっと当てると、瞬時に、最初の状態にもどります。異なる2つの波長の光で、緑色蛍光のオン(青色領域に吸収がある場合)と緑色蛍光のオフ(紫色領域に吸収がある場合)とを繰り返すことができます。という説明もわかりにくいのだが、この可逆的なフォトクロミック現象のメカニズムは一体どうなっているのか、興味があるがその辺には今回は余り突っ込んでいないのかもしれない。
ドロンパは英語名?が Dronpa となっていて、名前の由来は
緑色蛍光の消失、出現を、それぞれ、“Dron(忍者用語で姿を晦ますこと)”、“pa(光活性化、photo-activationに由来)”になぞらえ、このタンパク質を「Dronpa(ドロンパ)」と命名しました。とある。ほー、「ドロン」は忍者用語だったんだ。ドロンパと言えば、何と言っても「オバQ」に出てくるこいつが有名だと思うのだけど。。
dronpaで検索してみると、同じ理化学研究所の、微妙に違う分野の報告書の中で、新たに見つけた遺伝子を dronpa と名付けたとある。理研の中には同じような言語センスの人がいるということなのだろうか?
ところで、今回の研究はもちろん可逆的に蛍光を明滅させることができるたんぱく質を開発したことがニュースになったのだが、使い方としては、細胞内の分子にドロンパを融合させてラベル化することで、細胞内の特定分子の動き(特に細胞質と細胞核間の移動)をモニターするというものらしい。細胞内分子のサイズとドロンパのサイズの関係が見えないけど(ドロンパは単量体ということで結構小さいタンパクらしいが)、生体分子にくっつけちゃうと本来の動きを変えてしまわないものなのだろうか?
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コメント
>本来の動きを変えてしまわないものなのだろうか?
いろいろな意味でありえます。
特にdronpaに限らず蛍光蛋白質全般に当てはまる問題ですが。できるだけ影響を及ぼさないように単量体化してみたり、特に特徴のある細胞内分布をしめさないことを論文内で示してはいますが影響は完全に取り除くのは不可能です。
だから実際に使うときは蛍光蛋白質をつけない、細胞内に元からある目的蛋白質と蛍光蛋白質をつけた目的蛋白質の場合とで局在の比較をしたり、蛍光蛋白質をつけても蛋白質の機能的に問題が無いことを示したりします。
投稿: ある大学院生 | 2004/11/19 22:31
ある大学院生さん、疑問にお答えいただきありがとうございます。
確かに、あらゆる意味で何の影響も与えない、ということは不可能でしょうから、現実には、少なくとも注目している機能に関しては大きな影響を与えない、というものをマーカーとして選び出すことになるのでしょうね。
でも、今回着目しているような運動に関しては、どうしても重いおもりを付けられたみたいなもので、動きが鈍くなりそうな気がします。本当にオバQに出てくるドロンパ君のように身軽な奴だったらありがたいのでしょうけど。
投稿: tf2 | 2004/11/19 23:34