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2004/11/03

「デジタル維新の一番走者」

シリーズ「メタルカラーの時代」は文庫版は文庫専用の編集で発行されている。今回は、そのシリーズ第7弾。第6巻「ロケットと深海艇の挑戦者」については、4/17のブログで紹介している。第7巻は 7月に発売されていたのだが、気付かずに読むのが遅れてしまった。既に第8巻も発売されている。

小学館文庫
 文庫版 メタルカラーの時代 7
 デジタル維新の一番走者
 山根 一眞 著 bk1amazon

タイトルから想像が付くように、各種デジタル機器の初期の開発苦労話が中心となっている。取り上げられているテーマは、衛星通信、携帯電話、液晶、LD、CD、デジタルビデオなど。それぞれの対談が行われたのは1993~1995年頃。約10年前の話が文庫本になったわけだ。

そのためか、読んでいると、既に一昔前の製品や規格となったものたちを懐かしく思い出しながら、古き良き時代を振り返る、というような趣きがある。パソコンの高精細ディスプレー向けのCRTのシャドウマスク製造技術だとか、富士の100MBのZipディスクなどが華々しく取り上げられているし。

山根さんは、この辺のデジタル技術や超微細加工技術について、本当はどの程度知っているのかわからないが、一般読者のために、わざと何も知らない人となって、いろんなことを聞きまくってくれる。でも、不思議なことに、それに対する技術者側の答えが必ずしもわかりやすくないのに、あっさりと理解してしまい、追求の手を緩めることも結構あるのだ。本当はもう少し突っ込んで欲しいのに、と思うのはこちらが理科系すぎるのだろうか?

それとすごく目に付くのが、○○μm とか△△nm という単位が出てくると、決まって、1mm の□□分の一ですね、という換算をするけど、一般の人にはこういう説明がわかりやすいのだろうか? 却ってわけわからなくなるような気もするのだが。。

考えてみると、ビデオテープの規格でVHSとβに分かれ、LDはVHDと争い、今も次世代DVDでは規格統一が難しそうな状況だが、CD(とDVD)はうまく世界共通規格が成立したわけだ。本書では、CDが世に出るまでの開発の歴史やエピソードが何話かに分かれて掲載されているが、フィリップスとソニーが主導して規格が決まった話の辺りはなかなか感動的で面白い。

実は、文庫本限定の解説として掲載されているパイオニアの市川さんの話もとても面白かった。

 どうにも不思議なのが、信号伝送における「音」の変化です。デジタル信号は一度確定したら、その後は伝送によって信号の「本質」は変わらないのですが、「音」は変化するのです。「1001010」が「1010011」にはならないのですが、実際に聞き比べると違った「音」に聞こえるのです。私たちはこれを「聴感上の変化」と呼んでいます。(中略)デジタルで、原波形は変化していないのに、出てくる「音」が違うことを認識し、それを単なる「不思議」に終わらせたくない、ということが今もっとも私の気になるところであり、それを考えることが、ハードメーカーに在籍しながら、ソフト作りをしているテーマにもつながっています。
という、一見トンデモなオーディオマニアのような話にも聞こえるけど、近い将来にこの辺を解明するような発見があるのだろうか? どっちにしろ、僕の耳には区別がつきそうもないけれど。。

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