« 「デジタル維新の一番走者」 | トップページ | 最新の地球温暖化シミュレーション »

2004/11/04

ナンキョクオキアミが大幅減少

Yahoo!ニュース経由の共同ニュース(11/4)の記事。南極のオキアミ8割減少 温暖化に関連、鯨に影響も

 南極の食物連鎖を支えるナンキョクオキアミの量が1970年代から80%近くも減少したという解析結果を英国南極調査所やカナダ、南アフリカなどの共同研究チームが4日付の英科学誌ネイチャーに発表した。
 鯨など捕食者からオキアミを守るとされる海氷が、温暖化に伴う海水温上昇で縮小したことと関連しているという。研究チームは「オキアミを食べる鯨やペンギンなどに悪影響の出る可能性がある」としている。
 研究チームは日本など9カ国の調査結果をまとめたデータベースを構築。1926―2003年にかけ、オキアミの生息密度の変化を調べたところ、76年以降、約80%も減ったことが分かった。逆に暖かい水を好むクラゲの一種は同期間に80%以上増えていた。
という記事。アミというと佃煮を思い浮かべてしまうが、佃煮で食べるアミはイサザアミという種類で霞ヶ浦あたりで取れるらしい(参考)。 ちなみに、アミは英語で krill、漢字では 醤蝦 と書くらしい。海老を醤油で漬けた料理を連想してしまうけど。。

さて、日本ではあっさりとしか報道されないが、欧米では結構きちんと報じられている。中でも、地図や写真入りでわかりやすいのが、BBC NEWSだ。

"Krill feed on the algae found under the surface of the sea ice, which acts as a kind of 'nursery'," Dr Atkinson said.

"The Antarctic Peninsula, a key breeding ground for the krill, has warmed by 2.5C in the last 50 years, with a striking decrease in sea ice. We don't fully understand how the loss of sea-ice here is connected to the warming, but we believe that it could be behind the decline in krill."

南極半島付近は世界でも最も温暖化が顕著な地域で、海洋を漂う海氷の寿命が30日以上短くなったらしい。それにしても、この50年で2.5℃というのは半端じゃない。何しろ今話題の地球温暖化現象は、20世紀の100年間で約 0.6℃温暖化したと考えられている程度なのだから。何故この地域の気温上昇がこんなに激しいのかはよくわかっていないらしい。

オキアミは海氷の下に豊富に存在する植物性プランクトンを食べて育つので、温暖化がオキアミの生存環境に影響しているのだろうという推定らしい。もちろん、因果関係はそんなに単純とは限らないのだが。

それにしてもこのBBCの記事に載っている写真を見ると、ナンキョクオキアミという奴はいやに大きいみたいだ。調べてみたら、水産庁のサイトでよくまとまった資料が見つかった。なんと体長6cmにも達するんだ。しかし、この資料を読む限り、2000年頃の調査でも特にオキアミ資源量の激減なんて兆候は見られない。今回の研究で見積もられた具体的な数字が見当たらないので比較できないのが残念だ。

Natureの記事のAbstractは、こちらで読める(要登録)。

オキアミが減少している反面、共同の記事では「暖かい水を好むクラゲの一種」と書かれているが、salpa という種が増えている。日本語でもサルパというらしく、こちらに写真入りで載っているが、透明なゼラチン質の大型プランクトンらしい。こんなに大きくてもプランクトンなのか? 何か気味悪い奴だが、当然オキアミを食べる種とサルパを食べる種は異なっているので、オキアミ減少分をサルパが増えて補うというわけにはいかないようだ。何となくオキアミは鯨の食べ物と思っていたけど、実はペンギン、アホウドリ、あるいはアザラシなどなど多くの動物の貴重なエサとなっているようなので、影響は大きい。

何せ南極近くの海の話だから、何十年も前のデータの信頼性もよくわからないけど、もしも本当にこんなに大幅に生物の分布が、それも食物連鎖のかなり始めの方にいる奴が変わってしまうと、相当に大規模な影響が出てきそうな心配もある。クジラつながりで日本には影響の大きなニュースと思うんだけど、ほとんど報じられていないのが不思議だ。

|

« 「デジタル維新の一番走者」 | トップページ | 最新の地球温暖化シミュレーション »

コメント

タイミング良く、水産庁が南極海のオキアミの調査をするということを発表したようだ。EICネットニュース(11/5)

http://www.eic.or.jp/news/?act=view&serial=8865&oversea=0">鯨類捕獲調査と連携し、南極海での総合的な生態系調査実施へ

  水産庁は2004年12月6日から2005年3月22日まで、同庁の漁業調査船開洋丸を使い、南極海で鯨類の餌生物ナンキョクオキアミを中心とした生態系調査を実施することにした。
 南極海はナンキョクオキアミを主たる餌として、鯨類をはじめとする豊富な捕食者群が維持されるという特徴的な生態系の構造を持っているが、これまで、ナンキョクオキアミから鯨類に至る生態系全体や海洋環境を総合的に調査した事例はほとんどなかった。
 今回の調査は、水産庁が1987/88年から実施している南極海での鯨類捕獲調査(JARPA)と連携して行うもので、海洋環境や動物プランクトンなど食物連鎖の下位にいる生物の分布・生物量に関する情報を収集し、捕獲調査で得られる南氷洋鯨類の分布・食性、摂餌量のデータとあわせ、南極海生態系の構造・機能の総合的な解明を行うとしている。また、南極海の環境変動が鯨類・オキアミに及ぼす影響について基礎資料を収集することもめざしている。

投稿: tf2 | 2004/11/05 18:51

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ナンキョクオキアミが大幅減少:

« 「デジタル維新の一番走者」 | トップページ | 最新の地球温暖化シミュレーション »