フラーレン強化ラケット
日刊工業新聞の11/8の「ヨネックス/軽さと強度を両立したカーボンラケット」という記事。
スピーディーに動ける薄くて軽いラケットが欲しい。でももろいのはイヤ!-ヨネックスのサイトには、製品情報が載っているが、あまり詳しいことは書かれていない。日経のプレスリリースを探すと、詳細資料が掲載されている。この説明によると、ヨネックス(03・3836・1221)は11月下旬、カーボンラケット「NANO SPEED(ナノスピード)7000」を発売する。シャフト全体にナノカーボン「フラーレン」を複合し、強度とともに反発性能・スウィングスピードを向上させた。カラーはブライトレッド、2サイズ。価格は2万2050円。
グリップ側に重量を配分し操作性を向上させた「トップライト(先軽)」設計。シャフトの肉厚を20%薄く、全体の重量を15%軽量化した。さらにフレーム角部にもフラーレンを複合、ラケット同士の接触による破損を防ぐ。
「フラーレン」は、60個の炭素原子が0.7ナノメートル大のサッカーボール状に結合したもの。カーボン繊維を束ねる樹脂に複合することでカーボン同士の結合力を向上させ、軽量で高強度の構造を実現した。
直径約0.7nm(ナノメートル)の大きさで、60 個の炭素原子がサッカーボール状に結合し、形成された「フラーレン」。樹脂の中に複合すると、カーボン繊維同士の引きあう力を増大させます。とある。そのために、軽量化が可能となり、また、耐衝撃強度も向上し、反発性能も向上したことが確かめられたそうだ。C60を樹脂中に均一に分散させるのは結構大変そうだし、この説明を聞いても、強度アップのメカニズムは本当かな? という印象がないでもない。
カーボン繊維を束ねる樹脂(接着剤)にフラーレン分子を複合し、繊維同士の引き合う力を増大させ、軽量かつ強い構造を実現させました。
カーボンだのチタンだの、スポーツの世界は新素材をいち早く実用化してきた実験場のような位置付けもあるので、フラーレンが使われるのもわからないではないのだが。少し調べてみると、テニスでは既に2001年にカーボンナノチューブ(CNT)を使用したラケットがダンロップによって実用化されていた。CNTはその強度が注目される素材であり、軌道エレベータなんて話もあるし、結構まじめに検討されていそうだ。この手の複合材料は、PNC(Polymer Nano-Composites)と呼ばれているようだ。
一方、C60となると球形分子であり、何となく強度アップとは直接イメージが結びつかないのだが、スポーツ業界は何でも貪欲にテストするようで、既にマルマンのゴルフクラブで実用化されていた。もっともこの説明は「ノーベル化学賞ナノテクフラーレン採用」と書かれているだけだが。。
阿修羅の掲示板によると、マルマンのゴルフクラブの場合は、金属チタンとC60を複合化して機械特性が向上し、結果として軽量化され、飛距離が15ヤード伸びるのだそうだ。また、ここにも書かれているが、C60のスポーツ応用というと、ボウリング球なんてのもある。こちらは強度ではなく、ボール表面性状を変えることでレーンとの摩擦に変化が生じるようだ。
ということで、こうやって見てみると、CNTやC60が高性能スポーツ素材として使用され始めているようだけど、その使われ方はそれぞれ異なっていて、まだ定番という感じにはなってないことが見て取れる。CNTやC60は医薬や電子材料への応用が本命だと思われるのだが、スポーツ業界がこのように積極的に(実験的に)先進材料を使うことで市場を立ち上げていく牽引力も侮れないのかもしれない。
*でも、これらの製品の場合、確かに性能が向上したのだろうけど、それが本当に直接この新素材の効果なのかどうかはわからないような気もする。
C60周辺については、有機化学美術館が美しく、内容も充実している。
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