水系暴露解析モデル(SHANEL)
産総研のプレス・リリースに11/11に掲載された記事。河川流域における化学物質の濃度を詳細に推定できるシステムを開発
独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という) 化学物質リスク管理研究センター【センター長 中西 準子】は、水系における化学物質のリスク評価とリスク削減対策を評価できる「産総研-水系暴露解析モデル(AIST-SHANEL*)Ver.0.8」を開発した。ということで、詳しい説明がされているのだが、残念ながら現時点ではまだバージョン0.8βということで、Web上では公開されていない。化学物質リスク管理研究センターでは、大気拡散モデル(AIST-ADMER)等が既に開発されており、環境濃度予測モデルで公開されている。今回の水系の拡散解析モデル、AIST-SHANELについても、専用のサイトができている。他には、探してみるとCRMニュースレターで紹介されているが、既に9月に公開されていたようだ。しかし、これらのサイトを見て回ったが、このモデルの中身について、相当に複雑なモデルとなっていそうだが、具体的に、どういう前提で何についての計算を行っているのかが、今ひとつ判然としない。* National Institute of Advanced Industrial Science and Technology - Standardized Hydrology-based AssessmeNt tool for chemical Exposure Loadの略
(中略)
産総研 化学物質リスク管理研究センターでは、PRTRの排出量データと、流域に関する気象や地理、下水道や工業統計に関する情報を入力することにより、水系暴露濃度を1日ごとに1kmメッシュ単位で推定できる一連のモデルを開発した。このモデルを用いることにより、流域内のどのあたりで排出量が高いのか、暴露濃度は排出量の高い地域と対応しているのか、あるいは河川の流量が多くなるとどの程度濃度が低下するのかなどの情報を簡単に把握することができる。さらに、水生生物に影響が出る濃度を超える確率を求めることによって、生態系に与える影響を評価すること、すなわち生態リスク評価を行うことができる。生態リスクの削減が必要な場合、誰でも簡単なモデル入力を行うことにより、工場からの化学物質排出量削減や下水処理場での除去率向上が、化学物質濃度の低減にどのような効果を持つかの推定が可能となる。
この成果は、化学物質の排出事業者や河川流域を管理する地方自治体のみならず、一般ユーザーが河川流域の化学物質のリスクについて検討するときに、実際にどのような対策を取るべきかという課題に対して、解決への道を拓いたものといえる。
今後は、日本の主要な広域水系や二級河川のような局所的な排出源の影響を受けやすい流域でも適用できるように機能を拡張して、AIST-SHANEL Ver.1.0として公開する予定である。
一番詳しいのが冒頭に紹介したプレス・リリースの解説のようだが、これを読む限りは、化学物質の水系での分解や吸着、沈降、巻き上げなども考慮されているようだ。考えてみると、河川水の上流域ではきれいだった水が、下流にいくに従って、様々な汚染源によって汚染され、一方では合流によって水量が増えて希釈されていくわけだ。ここに載っている例では、ノニルフェノールエトキシレート濃度が下流域で高い様子が示されているが、通常、測定点はそれこそ点々としか存在しないので、このように面で示してくれるといろいろと見えてくるものがありそうだ。
普通の人がこのツールを使うことはほとんどなさそうだけど、10/8のブログで紹介した、PRTR 大気中濃度マップのように、水中の濃度マップが示されると面白そうだ。
*ところで、SHANELという名前はともかく、そのホームページに「著作権登録管理番号 H16PRO272」というのが載っている。こんな表記はあまり目にしないけど、この場合の著作権とはたぶん SHANEL というプログラムの著作物についてなのだろう。(名前を保護するとしたら商標登録だろうし。) もともと、著作権は申請したり登録したりするものではないのだが、ややこしいことに著作権登録制度というのがあるようだ。
文化庁のサイトに 著作権登録制度 という説明があるが、本件に関連するのは、「プログラムの著作物の著作者が,当該プログラムの著作物が創作された年月日の登録を受ける。」という部分。 実務については、SOFTICという財団法人がプログラム著作物登録を行っている。なるほどと思って、ここで検索してみたら、登録番号の書式が全然異なっている。ということは、まさか、一時話題になって、今も日本弁理士会が警告を発している、民間業者の「知的所有権(著作権)登録」ではないだろうな?(参考:知的所有権協会)
同じ化学物質管理センターが開発したソフトウェアである、Risk Learning も、東京湾簡易リスク評価モデル も同様の著作権登録管理番号を表示しているな。気になる。。
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