COP10:ポスト京都議定書の議論開始
NIKKEI NET(12/6)の記事。温暖化防止締約国会議開幕、「京都議定書」後を協議。
約190の国・地域が参加する温暖化防止条約の第10回締約国会議が6日、アルゼンチンのブエノスアイレスで始まる。先進国に温暖化ガス削減を義務づける京都議定書が来年2月に発効することを踏まえ、削減の枠組みに入っていない米国や途上国をどう加えて世界全体の体制をつくるか、「ポスト議定書」の議論が実質スタートする。京都議定書が来年2/16に発効することが決まったばかりだが、もうポスト京都議定書の議論がスタートするわけだ。京都議定書の約束期間は2008~2012年であり、これから議論されるのはその後の第二約束期間、2013~2018年をどうするのかということだ。今回は準備段階で、本格的に枠組を決めるのは来年以降になるようだ。会議は15日から閣僚級会合に移り、17日に閉幕する。日本は小池百合子環境相が出席する。現在、最大の温暖化ガス排出国である米国は同条約を締結しているものの、削減義務を伴う議定書からは離脱。また、議定書では中国など途上国に削減義務がない。会議では議定書の約束期限が切れる2013年以降の削減体制が焦点となり、欧州と米国・途上国が対立するのは必至だ。
ところでこの会議、正式には、気候変動枠組条約第10回締約国会議(The 10th sesion of the Conference Of the Parties to the United Nations Framework Convention on Climate Change : 通称 COP10)と呼ばれ、第1回会議から丁度10年、節目となるわけだが、議論される内容も、ポスト京都ということで、新たな一歩ということになるのだろうか。
京都議定書が採択されたのは、COP3(第3回:1997年)であり、UNFCCCのホームページに行ってみると、京都議定書が発効するまでのカウントダウンが表示されている。京都議定書は約束期間の開始まで丸10年の猶予があったのに、発効するまでに7年も経過してしまったわけで、スタートまで丸3年となってしまった。そして、これから議論を始めるポスト京都議定書については、約束期間の開始までもう8年しか残ってない。残り時間の少なさと、より切迫する状況(途上国の経済発展、温暖化の現実化、先進国にも決め手がない現状等々)を考えると、極めて厳しい議論になることと思われる。
日本の場合には、ポスト京都議定書の議論より前に、京都議定書への約束をどう果たすのかさえ全然まともな議論になっていない状況なので、当然のことだけど、この会議はニュースとしての扱いも極めて小さい。一方、アメリカでは USA TODAY を読むと、アメリカが新たな枠組にどう取り組むべきか、という話はほとんど書かれておらず、自分たちの排出量が世界一であることを棚に上げて、中国やインド等が参加しなくては意味がないという論調のように読める。
また、アメリカの影であまり目立たないが、京都議定書を批准していない大きな国の一つがオーストラリアであり、ABC (Australian Broadcasting Corporation) Onlineによると、アメリカよりは柔軟な姿勢というか、この枠組に参加するかしないか、まだ悩んでいるみたいだ。(もっとも、京都議定書ではオーストラリアの削減目標は+8%であり、1990年よりも増えても良いのだが、現実にはかなり排出量が増えているようだ。(参考:安井先生のサイト)
いずれにしても COP会議は、当初の姿勢はともかく、今では科学的な議論というよりも、純粋に政治的な駆け引きの場という印象が強い。飢えで苦しんでいる国もあれば、戦争や紛争の真っ只中の国もある。一方で、温暖化により直接国家の存続が脅かされる可能性の高い島国などもある。このまま物質的に豊かになることを求め続けて良いのだろうか? なんていう疑問が議論されるだけでも日本はまだましなのだろうと思う。
このように、各国の抱える問題の優先順位があまりにも違いすぎて、同じテーブルで地球環境の将来を議論することの難しさは想像に難くないけど、このポスト京都議定書の議論がどういう方向に進むのか、人類の将来を見据える意味でも成り行きに注目したい。
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