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2004/12/28

サイエンス、今年のブレークスルー

恐らくこれが、このブログの本年最後の記事となるのだが、今年を締めくくるタイミングにふさわしいニュースが出ている。CNN.co.jpの記事(12/28)。今年の科学10大ニュース、首位は火星探査 サイエンス誌

ワシントン――火星に水が存在していた「証拠」を見つけた米航空宇宙局(NASA)探査車の成果が、米科学誌サイエンスによる「今年最大の科学的進歩」に選ばれた。同誌が挙げたベストテンにはこのほか、小型の新種人類とされる化石の発見や、韓国の科学者グループによるヒトクローン胚の研究が含まれている。

同誌はNASAが火星に送り込んだ2台の無人探査車「スピリット」「オポチュニティー」について、「地球以外に生命が存在した可能性のある場所を発見するという、人類初の偉業を成し遂げた」と、高い評価を与えた。ドナルド・ケネディ編集長は「今年のトップにはほとんど異論がなかった」と強調。特に、ロボット技術を駆使した探査車の性能に注目し、「火星や月への有人飛行計画を重視するあまり、ロボット探査をおろそかにするべきではない」と、NASAに注文をつけた。

同誌が今年の第2位に選んだのは、「ホモ・フロレシエンシス」と名付けられた人類の化石だ。今年9月、インドネシア東部のフロレス島で発見された。身長1メートル、脳の容積は現代人の3分の1以下で、約1万8000年前まで現代人の祖先と共存していたとみられる。

また3位には、ソウル大のファン・ウソク教授らによるクローン研究が挙げられた。同教授らのチームは最近、ヒトのクローン胚から、人体のあらゆる細胞に成長する能力を持つ胚性幹細胞(ES細胞)を作ることに成功したと発表した。

4位は、米国とオーストラリアの研究者らによるグループが、超低温でのみ現れる物質の状態「ボーズ・アインシュタイン凝縮(BEC)」を、困難とされていた粒子グループ「フェルミオン」で実現した研究。続いて、遺伝情報を持たず「ジャンク(くず)」と呼ばれるDNAに重要な役割があることを指摘した複数の研究が5位を占めた。さらに、新たな中性子星の発見(6位)、絶滅危機にある生物についての新たな報告(7位)、水を取り巻くなぞに迫る研究(8位)、世界各地で進む官民共同の医薬品開発(9位)、海水や地中から採取された新種の遺伝子の解明(10位)――がベストテン入りした。

ということで、Science の12/17号でBreakthrough of the Yearという特集記事が組まれている。残念ながら Science誌は、有料購読者でないと、ユーザー登録をしていてもほとんどの内容が読めない。

Science誌が選んだということで、かなり専門的な視点で選ばれているようだし、日本での受け取り方とはまた異なる面もありそうだ。それでも 1位から 3位まではさすがに、ニュースとして記憶にあるし、3位のヒトクローン胚からES細胞という話は 2/12にこのブログでも取り上げている。

でも 4位以下については、タイトルを見ても具体的に何の話なのかよくわからない内容がほとんどだ。Boston.comには、各項目の簡単な紹介が載っているが、それを読んでも、こんなニュースは日本で報道されたっけ? というようなものもある。

ところで、無料登録で全文が読めるEditorialには、ここに上げられたポジティブな10大ニュースの他に、ネガティブなニュースについても触れられている。

Each year, some disappointments ("Breakdowns") accompany the successes, reminding us that the scientific venture is fragile and dependent on public regard. Underscoring that point: This year's Breakdowns recognize a widespread crack in the social contract between the science community and the polity. That kind of disaffection was evident in Europe, as Italian scientists demonstrated to protest planned losses of tenure and French scientists went on strike to win some government concessions.

A Breakdown of a different kind was evident in the United States, where exchanges of tough rhetoric between the president's science adviser and a number of leading scientists made front-page news. Scientists objected, some of them on this page, to the use of political tests in the appointment of government science officials and the members of scientific advisory committees. There were sharp disagreements between many scientists and administration positions on stem cells and global climate change. And in more local and direct interactions with the American public, scientists faced a steady increase in challenges to the teaching of evolution in the public schools. It appears, alas, that this kind of tension is growing and that it may become a chronic feature of the landscape.

前段では、主としてヨーロッパの科学界と政治との衝突について言及されているようだが、イタリアのtenureをめぐる事件とかフランスのストライキの話とかは、全く思い当たるところがないので、多分日本ではほとんど話題に上らなかったのだろう。

後段のアメリカでの科学界と政治(ブッシュ政権)との衝突については、我々も比較的目にする機会が多いが、ここでは、ヒトクローン研究、地球温暖化問題、進化論の教育問題が例としてあげられている。これらはそれぞれ異なる意味で問題となっているわけで、同列に扱うべきではないようにも思うのだが、逆に言えば、色んな分野で問題が噴出してきている表れとも言えるのだろうか? 何だかんだ言っても世界全体への影響力の極めて大きいアメリカという国のことだけに、問題はアメリカだけでは収まらない、という意味で確かに危機感を感じさせられる。

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2004/12/27

クモの糸の人工合成

CNN.co.jp(12/27)の記事。イスラエルの科学者ら、人工の「クモの糸」開発

強くて弾力性のあるクモの糸を人工的に作り出す方法を、イスラエルの科学者らがこのほど開発した。遺伝子工学を駆使して、大量生産への道を開いた。医療や電子工学への活用が期待される。

クモの糸の主成分はタンパク質。カイコから採れる絹よりもさらに強靭(きょうじん)で、優れた特性を持つ。クモが移動する際に道標として使い、ぶら下がる時の命綱となる「しおり糸」は、特に切れにくいことで知られる。だがクモはカイコと違い大量飼育が困難なため、これまで糸の商品化は不可能とされてきた。

ヘブライ大の生物学者、ユリ・ガット博士らは、独ミュンヘン大、英オックスフォード大のチームと協力し、2年前から研究を進めてきた。その結果、クモの遺伝子を使って、天然のしおり糸とほぼ同じ組成の糸を実験室で作り出すことに成功したという。「クモの細胞を遺伝子組み換えウイルスに感染させることにより、糸のタンパク質を大量に生産する方法を編み出した」と、ガット博士は説明する。できあがった糸は直径1000分の1ミリと非常に細く、手術用の糸や防弾ベスト、電子部品の配線、光ファイバー、釣り糸など、幅広い用途が考えられるという。

なるほど、言われてみるとクモの糸は積極的に利用されているように見えないが、それはカイコみたいに飼育して効率よく生産させることができないからなのだな。それにしても、この記事では、肝心のどうやって作り出したのかの記述がよくわからない。特に「クモの細胞を遺伝子組み換えウイルスに感染させる」という表現は何だかおかしくないか?

調べてみると、このニュースは11月の末に欧米で報道されているもので、Science Dailyの記事が詳しくて、わかりやすそうだ。ポイント部分を引用すると

In their laboratory experiments, the researchers introduced the genes, which encode the two dragline silk proteins, into an insect-infecting virus, known as baculovirus. These genetically engineered viruses were then grown in cultures of cells derived from a type of caterpillar called the fall armyworm.

"Since spiders and insects are both arthropods and since their genomes are more closely related to each other than to those creatures with which prior experiments were conducted, we felt that we would be able to produce spider fibers using these insects," said Dr. Gat. "For this purpose, we developed a methodology for producing great quantities of the appropriate proteins, which is based on infecting the insect cells with the genetically engineered virus, in order to produce the fiber."

となっており、クモの糸を構成するタンパク質(ADF-3とADF-4の2種類)を生産する遺伝子をバキュロウイルスに導入し、これを fall armyworm(ヨトウガの一種)の幼虫から得た細胞中で培養するという手順のようだ。先のCNNの変な文章の元の英文は、"infecting the insect cells with the genetically engineered virus"のようだ。ここでは insect はクモではなくて、蛾のことを指すのだが、そこを間違えてしまっているようだ。

バキュロウイルスとは昆虫に感染するウイルスで、バキュロウイルスを使ったタンパク質生産については、カイコを宿主とした例もあるが、今回の実験は実験室で昆虫細胞を培養する方法を採用しているようだ。

なお、今回の研究内容については、Microbial Cell Factoriesのサイトで論文が全文公開されているが、素人にはちょっと内容が難しい。

ところで、クモの糸ってのは粘着性が強いイメージがあるが、ここの説明によると、粘着性があるのは横糸だけで、粘着球というのを糸にくっつけているのだそうだ。今回合成を試みた糸は「しおり糸」(dragline silk)というのは、このページの表記では「牽引糸」と書かれているもののようだ。こいつは、同じ太さのナイロンやスチールファイバーよりも強くて弾力性があるようだ。クモの糸は、Wired Newsでも、時速30kmで飛んでくるハチを捕まえられる強度があることなどから、防弾服を含めて様々な応用が期待されていることが書かれている。

ちなみに、クモの糸を実際に束ねて強いロープができるかどうかを所さんの目がテン!で実験したけど、うまくいかなかったらしい。

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2004/12/24

小惑星衝突?25年後の13日の金曜日

asahi.com(12/24)の記事。25年後に小惑星が衝突? 確率300分の1、NASA

 2029年に小惑星が地球に衝突するかもしれない――。そんな見通しを、米航空宇宙局(NASA)の専門家が示した。23日、AP通信が伝えた。危険性を正確に予測するためのデータはまだ十分でないが、大きさは約400メートルとみられ、衝突すれば大きな被害が避けられない。

 この小惑星は今年6月に発見された「2004MN4」。NASAジェット推進研究所のイエオマンス部長によると、衝突の危険度によって小惑星を「0」~「10」の11段階で格付けするトリノ・スケールで、暫定評価ながら初めて「2」に格付けされた。

 同部長は「この小惑星が2029年4月13日に地球に衝突する確率は300分の1だ」と述べ、衝突の際のエネルギーは広島型原爆の約10万倍にあたる1600メガトンほどと推定した。平野部に衝突すれば大都市と周辺部を壊滅させ、海に落ちても大津波を引き起こす恐れがあるという。

 今後、数カ月間ほど地球から観測できるため、NASAは詳しいデータを集める予定だ。

クリスマス・イブのニュースらしく、なかなかロマンとインパクトがあるが、25年後の特定の日にちまでわかっていて、確率が1/300というのは、どうやって算出したのやら。トリノスケールというのもちょっと調べておこう。

Google Newsで探してみると、Sci-Tech Todayなどの記事があるが、そんなに詳しく書かれているわけでもない。さすがに欧米らしいのは、衝突予定日が13日の金曜日であることを強調しているところだ。

NASAのNEO(Near Earth Object)サイトのNewsに、この小惑星と地球の軌道図が載っており、当日の地球と月と小惑星の位置関係のアニメーションも見られる。現時点では、地球に再接近した時の距離は地球から月までの距離の約2倍程度と推定されるが、軌道計算の不確実性を考慮すると、地球に衝突する可能性が1/300程度と見積もられるようだ。

もっとも、このサイズの小惑星が月までの距離の2倍以内を通過するのは、5年に1回程度の頻度で起こっていることで特別な事態ではないようだ。 (だから今回も大丈夫とは言えないはずだけど。 だって、確率だけを比べると、年末ジャンボ宝くじで 1万円のラッキー賞が当たる確率とほぼ同等だぞ。。)

トリノスケールについては、横浜こども科学館の地球接近天体の衝突危険度がリンクや資料が充実していてわかりやすい。今回初めて "2" にランクされたが、先のNASAのサイトでも、

According to the Torino Scale, a rating of 2 indicates "a discovery, which may become routine with expanded searches, of an object making a somewhat close but not highly unusual pass near the Earth. While meriting attention by astronomers, there is no cause for public attention or public concern as an actual collision is very unlikely. New telescopic observations very likely will lead to re-assignment to Level 0 [no hazard]."
ということで、観測データが集まってくると、通常はレベルゼロに格下げになると見込まれるようだ。

12/9のブログで紹介した「トンデモ科学の大冒険」でも、1章を費やして小惑星の衝突について論じられていた。その中に書かれていたのだが、Closest Approaches to the Earth by Minor Planetsを見ると、月までの距離(0.0026AU)よりも近くを通った天体が 22個も載っているが、そのうち 21世紀になってからのものが18個もある。これは、決して最近になって接近する天体が増えたのではなく、観測網や技術の進歩によって多く見つかるようになったということで、今まで気付いていなかったけど、実は結構頻繁にニアミスしていたってことらしい。さて、今回の小惑星が今後の観測でどんな評価となるのか、楽しみでもある。。

それにしても、明日の天気予報でさえ随分とはずれているのに、25年も先の小惑星の位置がそんなに正確に推定できるものなのか。 多体問題は結構難しいと聞いたような気がするのだが。。。

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2004/12/23

「農から環境を考える」

2001年発行なので、少し古いのだが、帯には「地球人口ただいま 6,100,000,000人 環境を守りながら、農業はこの人口に、安全で十分な食料を供給できるのか!? いまこそ、意識革命をしなければ、人類は生き残れない。」とある。ちなみにそれから 3年たった、現時点での世界人口は既に64億人程度となっている。

環境問題を考える上で、増え続ける地球人口は大きな問題だし、それを支える食糧問題についての解決の道筋についてのコンセンサスがなくては、先進国の人間がとても身勝手なままということになる。その意味で、本書は目次を見るとグローバルな問題からドメスティックな問題まで、農業および林業のあり方に焦点を当てており、参考になるかな、ということで読んでみた。

集英社文庫 0092G
 農から環境を考える -21世紀の地球のために
 原 剛 著 bk1amazon

著者は、元毎日新聞の論説委員。その後早稲田大学大学院の教授に転身された。

本書では、地球環境問題(温暖化、オゾン層、化学物質汚染)、日本の土地開発の問題、農林業の荒廃、世界人口問題といった点を論点として、客観的データや取材、インタビューを交えた展開となっている。

確かに、かなり広い分野をそつなくカバーしており、現在の基本的な問題点を総合的に認識するには悪くない本だろうと思う。ただ、読み進むにつれて、人類が今後生き残るためにはどうするべきなのか? という視点が薄れ、何故か最後は、有機農法だとか市民農園の話を中心に日本の農業の改革のあり方のような方向に向かって終わっているみたいだ。

地球全体の増え続ける人口が飢えずに済むためには、どうするのか?という問題について様々な切り口で考えておきながら、日本の農業を守るためには、手間暇を掛けた環境にやさしい農業をしようという提案には全くついていけない。。

日本人を始めとする先進国の人々は安い食料を輸入したり食べたりしないで、高価でもより安全な食料を食べ、安価な食料は(多少安全に問題があっても)貧しい国の人達に食べてもらおうということであるなら、それはそれで一つの見識だとは思うのだけど。(もちろん、じゃあ誰がそんな安い食料を大量に生産するんだ?という問題もある。)

もちろんこの問題にそんなに簡単な答えがあるわけもないのだが、識者と言われる人であるならば、やはり地球全体の食糧問題を俯瞰しながら、その流れの中で日本のあり方を論じて欲しかった。

それにしても、生産性を高めるために肥料や農薬を多量に投与すると、いずれそれが土地の荒廃や他の環境問題を引き起こすという問題や、人々がより高い収入を得ようとすれば、結局農業従事者や農地が減っていくという現実問題など、考え出すと憂鬱になる問題が山積だ。

なお本書の中で、中国やインドで増え続ける人口に対し、誰が食料を供給するのか?といった問題について、かのレスター・ブラウン教授が悲観的な見通しを述べているのに対して、インドの緑の革命の指導者である、モンコンブ・スワミナタン博士が、特に中国の農業生産拡大について比較的楽観的な見通しを示しているのが興味深い。

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2004/12/22

ハウス栽培と炭酸ガス

MSN-Mainichi INTERACTIVE(12/22)の記事。炭酸ガスで花生き生き 新銘柄「CO2シクラメン」人気--県花き植木農協 /奈良

 色鮮やかで、贈答品としても使われる冬の花シクラメン。奈良は全国有数の産地だが、二酸化炭素を吸わせて育てる「CO2シクラメン」という新しい銘柄が、この冬、人気を集めている。鉢花のせりを行う県花き植木農業協同組合(田原本町)は「シクラメンでは全国でも初めての試みだと思う。花は色も良くて日持ちするようなので、特産として宣伝したい」と前向きだ。

 シクラメンは通常、ホルモン剤を使って色や花の育ちを良くする。しかし、室内に置かれることが多い花であり、同農協に出荷する生産者グループが「できれば薬剤を使わずに、自然に育てられないか」と検討。バラやイチゴで実績のある、炭酸ガスを吸わせて花を活性化する方法を思いついた。

 県農業試験場(橿原市)が昨年、試験栽培したところ出来が良く、今年から商品化に踏み切ったという。

 橿原市常盤町の生産者、脇山徳治さん(49)は約1万5000鉢のうち2000鉢で試みた。午前5時から3時間と、午後4時から1時間、2台のファンヒーターでハウス内で炭酸ガスを発生させて育てた。

 「シクラメンは、イチゴやバラのように(炭酸ガスで)実や花の数が増えるわけではないが、色は鮮やかに感じる。ホルモン剤は霧吹きで噴霧しなければならず、手間もかかるので、CO2が軌道に乗れば効率も上がる」と、脇山さんは期待する。

 同農協の別所矩佳参事は「色のさえが良く、値崩れしていない。これからの売れ筋になる予感がしている」と話している。

確かにCO2は植物の光合成の原料の一つだから、その濃度が高いと反応速度が速くなりそうな気はする。シクラメンに関しては、奈良県農業技術センター H12報告書など、結構古くから奈良県で検討していたようだ。

イチゴについては、群馬県の例や、兵庫県の例が見つかる。前者では炭酸ガスボンベでのCO2供給だが、後者は灯油を燃やして炭酸ガスを発生させるようで、写真を見ると、まさに植物工場といった雰囲気だ。

他には、バラや、メロンでも炭酸ガスを導入したハウス栽培が一般化しているようだ。いずれのケースもCO2濃度は750ppmが大体の目安となっているようだ。現在の大気中のCO2濃度のほぼ2倍というのが興味深い。

検索して見つけた、寝太郎という炭酸ガス発生剤なるものも、結構古くから使われているようだ。ここのリンク先の新聞記事を見ると、ハウス栽培ではハウス内の空気組成が一日の中で変動し、特に夕方にはCO2濃度がかなり低下するので、不足分を補充することは効果が高いという考えのようだ。

もっとも、この製品、100gの炭酸ガス発生剤50袋を10アールのハウスにセットして、50日くらい持つというが、これが全部CO2だとしても CO2発生量は最大でもトータル 2500Lにしかならないから、ハウスの内容積5000m3とすると、全量を一気にガス化しても 500ppm程度にしかならないから、いくらCO2が重くて下に溜まるといっても、この効果は限りなく気のせいかもしれない。。

地球温暖化関係で、CO2濃度と光合成速度の検討なども当然なされているが、この場合には、CO2濃度の上昇と共に光合成速度は増加するが、当然だけど限界があって頭打ちになっている。CO2濃度を高くすれば良いというものではないのだ。ということで、750ppm は理に適っているようだ。

この辺の詳細な検討としては、光合成の反応速度論が難解だが参考になる。要するにCO2だけが豊富にあっても、それを炭酸同化するための光合成酵素が律速となってしまうということのようだが、大気中のCO2が徐々に増えれば、植物中の光合成酵素も徐々に増加して、相乗的に光合成能力が増加していく可能性もあるかもしれない。

シクラメンといえば、WBSのトレンドたまごで紹介されていた、エコシクラメンなんてのもある。こちらは酸素放出能が通常の2倍だそうで。。

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2004/12/21

蚊の繁殖は罰金:シンガポール

たまたま見つけたReuter(12/18)の記事。Singaporeans risk fines in drive against dengue fever

Singapore is to fine people who allow mosquitoes to breed in their homes in a bid to curb dengue fever, a sometimes fatal disease that has soared to a 10-year high in the island-state.

First-time offenders, previously let off with a warning letter, will be fined S$100 ($60.72) starting next February, the Straits Times reported on Saturday.

Repeat offenders will be fined S$200, the daily added.

Singapore, with a population of just over four million, recorded 8,597 dengue cases by Dec. 17 -- a near 80 percent leap over the same period in 2003.

Three people have died from the disease this year.

"fine" は「罰金を課す」という意味の動詞として登場している。シンガポールでは、デング熱の流行が深刻な問題となっているようで、デング熱を媒介する蚊が繁殖しやすい状況を放置していると罰金が課せられるということらしい。

ちょっと調べてみると、1996年の記事のようだが、「海外赴任者のための感染症対策」というページに既に、「シンガポールでは「ぼうふら」を発生させるような汚水が住居の近くに発見されると、罰金が課せられることさえあることは周知の話であるが、それでも蚊が皆無とは言えない。」と書かれている。

今回の記事によると、実は今まで、初犯の場合には警告だけで済んでいたのが、来年2月からは即 100シンガポールドルの罰金、2回目以降は倍、しかも"daily added"となっているから、改善が見られるかどうか毎日チェックされるのかもしれない。シンガポールでは庭に池を作るとか、水槽を置いて生き物を飼うなんてことはしてはいけないのかもしれない。

シンガポール七不思議などを読むと、防虫対策として日常的に殺虫剤を撒いているようで、シンガポールの街中には虫がほとんどいないのだそうだ。そして、蚊を繁殖させているかどうかの取り締まりは、神風特攻隊かステルス機か?などの話を読むと、抜き打ちの取り締まりがあるようで、これはこれでなかなか大変そうだ。

シンガポールは、タバコやゴミの投げ捨てや唾吐きに罰金があるとか、相当にユニークというか、厳しい罰金制度があるというのは聞いたことがある。海外生活ガイドによると、トイレで水を流し忘れたり、横断歩道以外を横断するのも罰金対象のようだし、ガムの製造・販売・輸入も罰金らしい。こんな国なので、"fine" を「きれいな」と「罰金」にかけて、"fine country" とか "fine city" と皮肉られているそうだ。

デング熱対策としての蚊に対する罰金制度はそれなりに効果が認められているようで、他にも、ブラジルタイも、同様の対策を取っているようだ。所変わればということで、日本では俄かに信じられないが、地球温暖化の影響もあるし、いずれ他人事ではなくなるかもしれない。。

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2004/12/20

室温の氷:アイスナノチューブ

産総研のプレスリリース(12/20)、世界で初めて「室温」のアイスナノチューブを発見

独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)ナノテクノロジー研究部門【部門長 横山 浩】の 片浦 弘道 主任研究員と、東京都立大学【総長 茂木 俊彦】(以下「都立大」という)大学院 理学研究科 真庭 豊 助教授(産総研 客員研究員、独立行政法人 科学技術振興機構(以下「JST」という)CREST)らは、単層カーボンナノチューブ(SWCNT:Single-Walled Carbon Nanotube)内に吸着した水の構造を、大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構(以下「KEK」という)放射光科学研究施設(フォトンファクトリー(PF))におけるX線回折実験により明らかにした。

SWCNT内部の水は、低温で筒状の氷(アイスナノチューブ:以下Ice-NT)を形成し、その融点がSWCNTの直径すなわちIce-NTの直径に依存して大きく変化することを見出した。特に、直径1.17 nm(1ナノメートル:10億分の1メートル)のSWCNT内に成長するIce-NTは5個の水分子が環状に配列したものが積み重なって筒構造をとり、その融点は27℃であることを発見した。

これまで室温の氷は、1万気圧程度の高圧では得られていたが、大気圧以下での室温の氷の観測は世界初であり、ナノ空間に閉じこめられた水分子の挙動に、新たな知見が得られたことになる。また、SWCNTの直径が細いほど氷の融点が高いという、既知の法則(ガラス管等の細管中の氷の融点は細管の直径が細くなるに従って低くなる)とは反対の関係を見出した。この現象は、水分子が作る環状クラスターの安定性と深い関係があると推察されるが、今後のより詳細な実験により、これら水分子の挙動の解明が期待される。

さらに、減圧中で温度を45℃まで上げると、SWCNT内の水は一気に気化し、SWCNTから噴出することがわかった。これはナノジェット機構として、次世代インクジェット等への応用が考えられる。(改行編集 by tf2)

カーボンナノチューブに金属原子を入れたりするのはよくやられているけど、水を入れると、水(氷)がチューブ状の分子構造を作るらしい。この研究では、直径の異なる6種類のカーボンナノチューブ内に水を入れ、温度を変えて、高エネ研のX線回折で構造を解析している。

カーボンナノチューブの内径が細くなるにつれて、内部のアイスチューブの構造は8員環、7員環、6員環、5員環と変わっていくのだそうだ。イラストで見ると、なかなかきれいだけど、こんな構造がそんなに簡単に生成して、しかも安定に存在できるのか。。 しかも、一番小さい5員環構造は27℃まで存在できるということは、相当に安定ということだ。外側のカーボンナノチューブにより強い拘束を受けているということかもしれないが。

それにしても、放射光を使うとX線回折で氷の結晶構造まで見えるのか。しかも、CNTの中に入っていても何とかなるんだ。すごい技術のような気がする。。 実験結果を見ると、X線回折ピーク強度が温度低下と共に徐々に立ち上がっているが、通常の液相→固相の相転移とは様子が異なっているのかもしれない。

CNTの直径と氷の直径の関係を(ここに出ている情報だけから)整理してみると

CNT直径 Ice直径 比率 直径差 融点  構造
1.17nm 0.478nm 41% 0.692nm  27℃ 5員環 
1.30nm 0.560nm 43% 0.740nm   7℃ 6員環
1.35nm 0.645nm 48% 0.705nm -53℃ 7員環
1.44nm 0.732nm 51% 0.708nm -83℃ 8員環

といった感じで、意外とCNTとの隙間が大きいことがわかる。直径比に何か意味があるのかどうか、よくわからない。

アイスナノチューブで検索してみると、本研究のメンバーでもある都立大の真庭助教授と高エネ研の以前の成果が、世界最小の氷チューブ 2002.10.10というリリースで読める。また、SWNTのインターカレーションには、水を含む様々な物質を内部に導入する研究についての解説が載っている。

純粋に現象としてとてもおもしろいのは間違いないが、ナノサイズのインクジェットとして応用可能というのは今一ピンと来ない。。 常温常圧で安定に存在する氷を作ることができる、というのはトリビアになりそうだ。

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2004/12/17

231回目の献血

前回 10/27に続いて、51日ぶりの成分献血。今回も相模大野献血ルーム。前回に続いて血小板成分献血であった。血小板成分献血は血漿成分献血に比べて時間が掛かるのが難点。今日も1時間程度掛かった。

夏場に病気で献血から遠ざかったこともあり、今年は結局、血漿5回、血小板2回の全7回で終わった。

おみやげは、いつもTシャツばかりでは面白くないので、今回は「スノーマン ホーロー製 フリージングボウル 3個組」というのをもらってきた。(そのものズバリが、Yahoo! オークションに出ているな。横浜で献血した人かもしれない。。)フリージングボウルってのはどう使うんだろう? 作った食品を凍らせるための容器のようだけど、ホーローだから電子レンジは駄目らしい。解凍するときには、別の容器に移すのかな?

他に、来年のカレンダーと簡易救急セットとを2種類貰ってきた。この簡易救急セットだが、表に イラストと共に、赤十字のマークと"RED CROSS"の文字が書かれているのだが、それと横並びに、赤い下弦の三日月マークと"RED CRESCENT"の文字が書かれている。この、"RED CRESCENT" とは何者だろう?

国際赤十字は、Red Cross Red Crescentのように、ロゴも文字も両方を並列に並べている。日本赤十字のサイトでみると赤十字・赤新月となるようだ。イスラム教の国々は、十字に対する宗教的な抵抗があるので、新月をトレードマークとしたらしい。 そういえば、イラク戦争関係で赤新月社というのは聞いたことがある。でも、語感が「○○結社」みたいだし、赤のイメージとも合わせて、何だか過激派に関係していそうな怪しい印象がなくもない。

ここの説明によると、最初に赤新月のマークを導入したのはトルコで、そういえばトルコの国旗にも三日月が出てくるが、「オスマントルコ帝国の皇帝が戦線を訪れたとき、三日月と星が輝いた」という故事に由来しているらしい。Wikipediaによると、これは三日月ではなく新月なのだそうだ。

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2004/12/16

「ツキの法則」

この著者の本としては、2/11のブログで 『「社会調査」のウソ』 という本を紹介しているが、とても面白く、しかも参考になる本だった。その時に著者のプロフィールで、ギャンブルに関する統計学的研究をしているということを知り、興味を持っていたのだが、たまたま本屋で本書を見つけたので、7年前に出版された本だけど紹介してみたい。

PHP新書 025
 ツキの法則 「賭け方」と「勝敗」の科学
 谷岡 一郎 著 bk1amazon

表紙裏側部分には

本書では確率・統計理論にもとづき、<必勝法の迷信・誤解><より早く確実に負けてしまう方法>などを説きながら、<ツキの正体>を明らかにしていく。
賭け方・勝敗の意外な関係と、賭けの真の醍醐味を教えてくれる「ギャンブルの科学」。
とある。期待にたがわず、非常に面白く読むことができた。統計や確率のことを大体理解していれば、ギャンブルで勝つことがいかに難しい(確率が低い)かは、容易に想像が付く。ただ、1回毎の勝負の期待値を考えることはあっても、何度も連続して勝負を続けた場合の、トータルでの勝ち負けについてはあまり深く考えたことはなかった。本書は、その勝ち負けのバラツキについて考察を進め、いわゆる「ツキ」の正体を明らかにする。

本書によれば、同じ金額を元手にして、ある程度の長丁場で勝負する場合に、最も早く負けてしまう確率が高い賭け方は、小額ずつできるだけ多数回の勝負をすることである。(例えばスロットマシンで25セントの勝負を延々と続ける。)回数を増やせば増やすほど、統計的な期待値に収束していくのは自明であり、ここまでは納得できなくもない。逆に、負けにくくする、或いはもしかしたら大勝ちする可能性が少しでも高い賭け方は、倍率の高い賭けを少数回行うこととなるようだ。要するに、分散をできるだけ大きく保つことで、(間違って)低い確率の当たりが出る率を少しでも高く維持しようという作戦だ。

本書で説明している要点をまとめると以上のようになるのだが、本書の面白い所は、従来必勝法といわれてきた賭け方についての考察をしているところや、様々な賭け(日本の公営ギャンブル、宝くじ、パチンコ、ラスベガスの様々なゲームなど)について、期待値だけでなく、賭けの面白さという点で多面的な特徴を分析しているところだ。意外だったのは、パチンコの高評価。著者独自の重み付けがされているランキングでは、パチンコが総合的評価で堂々第1位となったのだ。(ちなみに最下位は宝くじ。) なお、種々のギャンブルの期待値の一覧表も、こうやって比較されるととても納得がいく。(いかに宝くじや公営ギャンブルは、客が大損をするようにできていることか。。)

各種のギャンブルをこうして横並びに比較したり、いわゆる必勝法についてこれほどコンパクトに紹介してくれる本は中々ないだろう。それもきちんと統計・確率の面から科学的に評価している。

また、統計・確率から考えていくと、結局儲けることができるのは胴元だけで、賭けないのが最も有利という、味もそっけもない答えになってしまいがちだが、人間はそんなに論理的な行動を取るようにはできていない。本書はもちろん、そこにも踏み込んでおり、心理的効用が実際の損得とどういう関係にあるのか、といった面からも考察されている。

ここの部分は、多少のリスクは覚悟の上で一発大勝負に出るのか、逆に多少の損失は覚悟しても、大きなリスクは避けて通るのか、といった人間心理が係るところであり、賭け事だけでなく、日常のリスク管理やビジネス判断にも通じることとして説明されていて興味深い。

最後に、わかっちゃいるけどやめられない人のためのギャンブルの心得も紹介している。最低限、この本に書かれた統計・確率の話を理解した上で、いい加減な俗説・必勝法に惑わされずに、楽しく遊ぶのが精神的にも財政的にも好ましいだろう。

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2004/12/15

虹彩で病気診断?

NIKKEI NET(12/15)の記事。目の虹彩画像で病気の疑い判断・サイナップス

 人工知能開発のサイナップス・コミュニケーションズ(東京、仁科浩明社長、03・5786・0950)は、旧ソ連のアルメニア共和国の国立研究機関のデータベースを活用し、200万画素程度の携帯電話用カメラで目の虹彩を撮影して疾病の疑いの有無を教える事業を来年末に始める。

 虹彩は角膜と水晶体の間にある円盤状の薄い膜。疾病診断技術に取り組んできたアルメニアの人工知能開発センターが、疾病ごとに虹彩の状態が異なることに着目。相関関係をデータベースに構築した。この成果を使い、インターネットで情報を伝えるサイナップスの技術と組み合わせる。

 利用者は携帯電話で所定のホームページに接続し、指示に従い携帯で撮影した虹彩の画像を送信する。サイナップスは斑点の有無や変形など虹彩の情報を分析、データベースと照合して内臓疾病などの可能性を指摘する。医療行為には踏み込まず、情報提供や食事・運動など健康法の紹介などにとどめる。料金など詳細は詰める。

何だかなあ。。何故にアルメニア共和国? しかも、携帯のカメラで撮影した瞳の画像で疾病の診断なんかできるのだろうか? 今朝の日経新聞の朝刊の記事の見出しには「目の虹彩画像 病気を示す!?」とさすがの(?)日経もクエスチョンマークをつけているのだが。。

サイナップス・コミュニケーションズを見ても、本件関連情報は見当たらない。一方、調べてみると、虹彩での病気の診断は、古来行われてきたことのようで、虹彩学(iridology)と呼ばれるようだ。確かに、病気に罹ると、場合によっては目に変化が現れるとは思うのだが、目の変化から健康状態を判断できるものだろうか? ここには、虹彩を使った診断が、古来行われてきたことが延々と書かれているが、確かにエジプトや中国で昔やられていたことの中には、現在でも通用する知見が沢山あるだろうが、だからといって、彼らが行っていたことが全て正しいわけではないのは自明だろう。

 臓器の状態が耳、舌、皮膚、鼻に投影されるという事実は、未だ医学的には明確にはされませんでしたが、虹彩に関しては医学的に解明されています。

 例えば人体のある臓器に炎症ができた場合、それに対抗するため臓器はより多くのエネルギーが必要になります。この信号が脳から視神経を通して虹彩に伝達されます。信号を受けた虹彩では、より多くのエネルギーを外部から取り入れようとし、該当部位の組織が弛緩します。この弛緩した組織による変化が眼に表われることになります。

 腫瘍ができた場合には、反対にエネルギーが入ってこないように人体は反応するようになります。腫瘍の場合は外部からエネルギーが入ってこられないようにするために、虹彩の該当部位の組織がより一層細かく凝集され、濃厚な色素ができます。このような色素や緻密な組織が虹彩に変化をもたらします。

 こうした過程を経て臓器の状態が虹彩に表われるようになります。虹彩の変化の観察が、病気の診断に役立つことになります。このような診断方法を虹彩診断学と言います。

医学的に解明されているとのことだが、虹彩が外部からエネルギーを取り入れるって、もしかして目から入る光エネルギーで人間は病気と戦うのか?? 何というか。。ちなみに、この虹彩学のサイトは、歴史も含めて結構詳細な記載がされているのだが、何故かアルメニアのことは全く出てこない。。

虹彩というと個人認証、バイオメトリックスへの応用は現実化しているようだ。沖電気の虹彩認証を読むと、虹彩のパターンは2歳頃に固定化した後は一生変化しないとある。まあ、個人認証と虹彩診断では見ている部分が違うのかもしれないが、本当に虹彩で病気の診断ができるなら、虹彩認証の商売をやっているメーカーが放っておくわけはないだろう。 (この記事の「虹彩認証技術のメリット」という画像を拡大すると、「iridology: 医学的に根拠なし」と書いてある。。)

今回の記事によると、医療行為に踏み込まず、あくまでも情報提供ということだから、もしかしたら、この会社も最初から全部承知の上でのシャレだったりするかもしれない。そうすると、アルメニア共和国なんてのも、実はイメージ戦略のためのキーワードと考えられなくもない。虹彩占いの親戚みたいなものだと最初から割り切ってしまえばいいのかもしれないが、これで安易に病気と診断されて、それを真に受ける人が出てくると困ったことにならないだろうか?

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2004/12/14

温室効果ガス12%増加?

NIKKEI NET(12/14)の記事。先進国の温暖化ガス排出量、02年は2番目の高水準

 日本など先進国27カ国が2002年に排出した温暖化ガスの総量が約138億3100万トンだったことが13日、地球温暖化防止条約事務局の集計で明らかになった。アルゼンチンで開かれている温暖化防止の第10回締約国会議に報告された。京都議定書の基準年である1990年に比べると全体では6.3%減ったが、同年以降では2番目に多い排出量。来年の同議定書の発効を目前に控え、削減の実効性が問われる形となった。

 報告では旧ソ連などを除いた先進国全体の2002年の排出量は90年比8.4%増。国別の増加率ではスペインやポルトガルが約40%増とトップ。日本は約12.1%増だった。ロシアやウクライナなどは経済活動が低迷し、約40%の減少となった。ドイツ・英国などが大幅に削減している欧州連合(EU)全体では2.5%減だった。議定書はこれらの国を含めた先進国に90年比5.2%減の削減義務を課しており、全体ではすでに目標を達成したことになる。ただ、国別では未達成国があり、日本などは一層の取り組み強化が求められそうだ。

12/6のブログで紹介した COP10が始まり、具体的な話し合いが始まっているようだ。最新の各国の温室効果ガスの排出量のトータルでは、意外なことに京都議定書の目標をクリアしているようだ。(京都議定書から離脱しているアメリカやオーストラリアの分も含めての数字。)

詳細データは、UNFCCCに載っており、細かなデータも全部見ることができる。各国の温室効果ガスの1990年比の増減は、増減比較グラフで見られる。スペインやポルトガルが +40%というのもすごいが、ラトビアやリトアニアの-60%というのもすごい。-20%以上の国は全て旧ソ連や東欧諸国だ。全体として削減目標を達成しているのは、これらの国々のおかげということになる。

ところで、日本はこのデータでは1990年比で+12.1%となっている。10/1のブログでは、2002年度の排出量が1990年の基準年比で +7.6%であった、というニュースを紹介したのだが、この違いは何だろう?

ということで、環境省のデータUNFCCCのデータを詳細に比べてみると、1990年の数値も2002年の数値も両者全く同一だということがわかる。で、この数値(1990:1187.2、2002:1330.8 Mton-CO2)を用いて、2002年の増減率を計算すれば、+12.1%となる。

じゃあ、環境省が発表した +7.6%という数値は何か? 実は、京都議定書の基準年は、CO2、CH4、N2Oについては1990年だが、HFCs、PFCs、SF6については1995年となっているのである。(京都議定書第3条第8項の規定により、HFCs等3種類の温室効果ガスに係る基準年は1995年とすることができる。)従って、京都議定書の基準年の温室効果ガス排出量は、1187.2ではなく 1236.9となり、これと比べると2002年の排出量は +7.6%となるわけだ。

京都議定書の定義がややこしいのが原因なのだろうが、新聞記事などで必ずしも厳密ではない表現を使うと、このような混乱が起こってしまうことになりそうだ。

国によっては、HFCs等についても1990年を基準年としているところもあるようなので、COP10で今回使われている増減の数値は、必ずしも公正な比較になっていないとも言える。そのHFCs等の排出量を見ると、日本は順調に削減されているのだが、国際的にはそれほど減っていないようで、アメリカはやや増えているし、デンマークなどは何故か15倍に増加している。

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2004/12/13

省エネ自販機

NIKKEI NET(12/13)の記事。自販機、消費電力35%減・松下電器が開発

 松下電器産業は世界で最も消費電力が少ない飲料用の自動販売機を開発した。空気中の熱を取り込む特殊な小型ポンプなどを活用し、既存自販機に比べて消費電力を35%抑えた。国内では飲料自販機が290万台稼働し、約130万世帯分に相当する電力を使っている。環境対応型の自販機として、来春にも製品化する。

 これまでの飲料自販機はヒーターで加温していた。松下は「ヒートポンプ」と呼ばれる小型圧縮機を使い、常温の空気が持つ熱エネルギーを活用して加温する仕組みを開発。冷却には従来と同様に専用の圧縮機を使うが、機構を改良して冷却効率を13%高めた。内部が三室に分かれた標準的な自販機の場合、年間の消費電力量は既存機種より35%少ない約900キロワット時となり、電力料金を年1万円程度減らせるという。7年間使用した場合の二酸化炭素(CO2)排出量も3076キログラムと同55%削減できる。また、圧縮機を小型化することで騒音の大きさを従来機種に比べて3割低下させ、室内でも設置しやすくした。2006年度に2万台の販売を目指す。

という記事。自動販売機では、持続可能なチャンネルで 自動販売機不買運動について書かれている。まあ、自動販売機を作るメーカーとしては、やっぱりこういう方向に精一杯頑張るしかないんだろうなあ、とつくづく思う。でも、それはそれとして、どんな理屈を付けようが、消費電力という観点からは、自販機および飲料を減らす方向がベストな選択であることは揺るがないだろう。何といっても、どうしてここに自販機があるんだ?というケースや、何もこんなに沢山自販機を並べなくてもいいだろうに、というケースが多すぎる。

とは言え、少し現状を調べてみると、日本自動販売機工業会や、全国清涼飲料工業会のサイトで関連情報が公開されている。ざっと、まとめてみると国内の自動販売機は全部で約550万台、その内飲料用が約260万台。1台当たりの年間消費電力は約2600kWh、全部で約74億kWh。国内総電力消費量に対する割合は、0.7%程度で大したことはない、という主張のようだ。

もちろん、自販機の省エネの取り組みはいろいろなされているようで、富士電機リテイルシステムズによると、10年間で何と60%以上の省エネが達成されているようだ。中でも、知らなかったのがエコベンダー。一番暑くなる夏場の昼間に電気を止めちゃうというのだから、確かに逆転の発想だ。

一方、全国清涼飲料工業会の自販機の省エネルギー対策によると、この10年の消費電力の削減は約30%ということで、先の富士電機の数値とは随分違うようだが、今後も全体としての消費電力は順調に減っていくと予想しているようだ。

ところで、松下が自動販売機を作っているとは全く知らなかったのだが、松下のサイトで探しても、何故か自動販売機関係の情報は見つからない。日経の夕刊には、前述の記事の末尾に

国内の自販機市場(2003年)は富士電機ホールディングスが45%でトップ、松下は23%で二位。
とある。トップの富士電機の富士時報 2004/01によると、まだまだ自販機の対環境性能の改良は続くようだけど、
2003年4月からは自動販売機が冷蔵庫やエアコンと同様に「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(省エネルギー法)の特定機器に指定され、省エネルギーの達成目標値が規定される(省エネルギートップランナー方式)。2005年度には2000年度に比べて加重平均で約30%の電力消費量削減を達成するという目標値が設定された。
ということが背景にあるようだ。他にも、グローバルクーリング・ジャパンという会社が、エコバルブなんて商品を展開していたりで、今後も省エネ競争が続きそうだ。もっとも、例えば 3割省エネを達成するのと、3割自販機の台数を減らすのは、どちらが簡単なのか、どちらがより社会に影響を与えるのか? は良く考える必要があるだろう。

それにしても、冒頭の日経の記事に出てくる数字がよくわからないものばかり。

・年間消費電力を35%削減して900kWh
  削減前が1385kWhということは、何故か平均的な機種の約半分程度にすぎない??
・CO2排出量が7年で3076kg CO2原単位を0.38kg-CO2/kWhとすると
  7年で3076kg-CO2ということは、1年平均で 1156kWhとなるけど、この数字は何だろう?
・CO2発生量を55%削減 
  で、どうして55%も減るんだろう??

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2004/12/10

ハップマッププロジェクト?

Yahoo!ニュース経由の共同ニュース(12/10)体質の遺伝情報、ほぼ解読 国際ハップマップ計画

 体質の違いのもとになる遺伝情報を解明しようと、日米など5カ国が2002年10月から進めてきた「国際ハップマッププロジェクト」で、遺伝情報を記録したDNAの塩基配列のうち、目標の約60万カ所の解読が来年2月にも終わる見通しになった。日本の代表研究者、中村祐輔東京大医科学研究所教授らが10日、発表する。

 人の全遺伝情報を解読したヒトゲノム計画に次ぐ国際計画。病気のかかりやすさや薬の効き具合を左右する体質の遺伝的特質を示す「地図」を作るのが目的だ。最終的な地図は来年9月にも完成する予定で、体質に応じて病気の予防や投薬に当たるテーラーメード医療の基盤になると期待される。

 体質の違いは、塩基配列の1カ所の違い(一塩基多型)が関係していると考えられている。一塩基多型は、いくつかがセットになって親から子に受け継がれるため、セット単位で効率よく解析する手法で、約60万カ所の解読を進めてきた。

SNPsを利用したテーラーメード医療とかに関係する話のようだ。ハップマップという言葉が聞きなれないのと、ヒトの遺伝子は2~3万個の筈なのに、60万というのは多くないか?という疑問を感じて、わからないながらも調べてみた。正直言ってすごく難しい。 asahi.comにも記事が出ている。DNAの「測量図」づくりほぼ完成 個人別の治療へ一歩(DNA上の「測量図」、と言われても、よくわからない気がするのだが。。。)

まずは、ハップマッププロジェクトを調べてみると、理化学研究所のプレスリリースや、科学技術振興機構(JST)のプレス発表に、関連した解説が載っているが、ハップマップとはハプロタイプのマップのことで、個々のSNPをすべて解析するのではなくブロック単位で効率的に解析しようというプロジェクトらしい。(公式サイト(日本語)

さらに詳しい情報は、Natureのサイトに中村教授の解説記事が掲載されているが、専門的過ぎてさすがに理解するのが難しい。そもそもハプロタイプとは何かというところからの理解が必要のようだ。ざっと見てみたが、早大柳澤研の説明がなかなかわかりやすいみたいだ。他には、筑波大ユウバイオス倫理研究会のハップマップの説明や、国立医薬品食品研究所の解説などが参考になりそうだ。(が、理解できていない。。)

今回のハップマップは、個々のSNPと病気や体質との関係を直接結び付けるものではなく、そういったことと結び付けるためのとっかかりとなるデータベースということのようだ。一方で、過去に遡る解析にも使えるので、民族的なルーツを探ったりしていくのにも利用できるみたいだ。

この手の技術は前に進めていけば、必ず倫理的な問題にぶち当たる。しかし、倫理問題を考えるためにも、前提条件として、この技術では一体何がわかって、何ができ、何はわからなくて、何ができないのか? という基本的なことを理解する必要がありそうなのだが。

表面的にはここでのリンク先の説明で何となくわかるのだが、根本的な力不足を感じてしまう。やっぱり、お手軽な新書などの一般書ばかり読んでるし、しかもその土台の知識が何十年も前の高校の生物の授業の記憶だからなあ。。 これは一度、基礎から体系的な理解をする必要がありそうだ。。何かいい教科書か何かを探してみるか。

*冒頭の新聞記事のタイトル「体質の遺伝情報、ほぼ解読」はやや抵抗がある。「解読」を、そこに書いてある文字が読み取れた、という意味で使っているのだろうけど、そこに書かれている内容を理解して初めて「解読」と言えるような気がするのだが。。 (まあ、ヒトゲノムも解読しちゃったようだし、ここでは、遺伝情報を解読、と書いてあるから気になるのだとは思うけど。)
 

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2004/12/09

「トンデモ科学の大冒険」

タイトルや装丁には全然魅かれなかったけど、著者が「航空宇宙エンジニア」であることが目に止まり、目次を見てみると結構まじめな内容のようだったので、思わず購入。

トンデモ科学の大冒険 奇説・難問・謎に最先端宇宙科学が挑む
 長谷川 洋一 著 bk1amazon

 第1章 2012年小惑星衝突で地球は滅びるのか!?
 第2章 宇宙からやってきたウイルスが地球を襲う!?
 第3章 国際救助隊「サンダーバード」が地球を救う
 第4章 素晴らしくローテクなロシアの宇宙船
 第5章 巨大構造物「軌道エレベータ」を造る
 第6章 深海の世界へ挑む鯨衛星は値段が安い!?
 第7章 テレポーテーションが実現する!

タイトルから想像される内容とは違って、かなり上質な科学読み物であった。第4章と第6章は取材に基づくドキュメントだし、第3章はまじめな国際救助隊構想だ。第1章もごく常識的な科学的考察に基づいているし、第5章と第7章はまともな科学の領域と夢の領域が混在しているが、内容はまっとうだ。多少ともトンデモ系の話は第2章ぐらいだが、これとても正統な科学の場でまだ議論されている話(SARSウィルス宇宙起源説)であり、いわゆるトンデモとは異なる。冒頭で著者は、

 この本は、いわゆる科学書ではない。紀行文である。宇宙の謎のロマンティックな世界を、読者の皆様と一緒に旅したくて書いた。だから難しい理論は排除。数式は一切カット。筆者の細君にもわかるように書いた。
 予備知識は不要だが、ひとつだけわがままを言わせてほしい。
 まず、大き目のグラスに飲み物を用意しよう。といっても実験を始めるわけではない。飲むだけだ。
と書いているが、確かに、ロシアのロケット工場やエネルギア博物館(ロケット関係の展示がある)を実際に見てきた話だとか、軌道エレベータの最初のアイデアを出したロシア人、チオルコフスキーの家を訪ねる話など、あまり他ではお目にかかれない話がわかりやすく読めるだけでも楽しい。

また、第6章は「観太くん」と名付けられた人工衛星の話だが、林先生と大学生たちのアイデアで、画期的なコストパフォーマンスを達成した衛星の秘密や苦労話が紹介されており、思わず応援したくなる。

宇宙開発は確かに未知の世界への挑戦で、やればやっただけ新たな知見と、そしてまた新たな謎が手に入るという、醍醐味のあるものだと思う。また同時に、GPS、衛星放送、衛星通信など、既にビジネスや日常生活で密接に関わっている分野もある。でも本書では、ビジネスの側面よりは夢の側面に焦点を当てて、宇宙に関する将来を語っている。

もっとも、もしも技術的に実現できたら、例えば軌道エレベータを造るようなプロジェクトが現実にあり得るのか? となると、コスト、エネルギー、資源等とのバランス次第だけど、どうも難しいのじゃなかろうか? でもまあ、そんなことは考えずに、たまにはこういう話を夢見るのも悪くないのかな、とも思う。違うタイトルで、どこかの新書で出したらきっとそこそこ売れそうに思うけどなぁ。

*著者は、有人宇宙システム株式会社というところの人なのだが、この会社、ホームページを見てみるとかなり面白いところのようだ。でも、何と言っても、サンダーバードの日本版として本書で紹介されている、レスキューナウ・ドット・ネットは、本社が東京の氷川神社の中にある、というのがすごく怪しくて楽しいかも。。。

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2004/12/08

高機能繊維:サランアート

The Chemical Daily(化学工業日報)の12/8の記事。旭化成L&L、サラン系高機能繊維を発売

 旭化成ライフ&リビングは7日、従来のポリ塩化ビニリデン(PVDC)系合成繊維「サラン繊維」の感温変色・蓄光・芳香機能を一層高め、玩具用途はもとより一般衣料やインテリア資材など幅広く使用できるサラン高機能繊維「サランアート」シリーズを今月13日から発売すると発表した。新シリーズ製品で2007年度に5億円の売り上げを目指す。
というもので、サランの繊維に、温度で変色、蓄光、臭いといった機能を付与したものを発売するようだ。旭化成のプレスリリースによると、それぞれ、感温変色顔料カプセル、蓄光剤、香料をサラン繊維に練りこんだもののようだ。

サランというと、サランラップが有名だが、サラン繊維も従来から工業用途等で広く使われているようだが、他にも、バービー人形やリカちゃん人形の髪の毛に使われているみたいだ。今回、これらの機能をサラン繊維と組み合わせた理由については、「ドールへア等の玩具用途において、その審美性が高く評価されている「サラン」繊維に感温変色・蓄光・芳香機能をさらに高めました。」とある。想定している用途は、

感温変色繊維
  温度の変化によって色が変るセーター
  温度により柄が発現、または消滅するジャカード生地
  気温の変化によって色が変る造花
  家の内外の温度差によって色が変わったり、柄が変る生地
  水に浸かると色が変わる水着
  色が多様に変化する織ネーム、リボン
  冬は斑点柄、夏はソリッドカラーの縫いぐるみ  など

蓄光繊維
  柄部分が光るジャカード織編地
  暗闇で光る縫いぐるみ、人形の髪の毛
  暗闇で光るスリッパ
  暗闇で非難経路を光って示すカーペット  など

芳香繊維
  布団、枕、縫いぐるみの中綿
  人形の髪の毛
  インテリア商品
  携帯マスコット
  靴の中敷
  造花  など

とのこと。旭化成の感温変色繊維の実例はこちらに写真が載っている。温度で色が変化する材料は、サーモクロミック材料と呼ばれ、結構ポピュラーなもので、様々な種類のサーモクロミック顔料や、サーモクロミックインクなどが売られている。

感温変色繊維についても、例えば、カラーフォーマーという色素を使う例がみつかるし、他にも、光や熱で変色する繊維の例もみつかる。

蓄光については、何といっても根本特殊化学のN夜光が有名どころだろう。(さすがに最近はあまり名前を聞かなくなったけど。。) また、ひかり商会☆分室などを見ると、他にも酸化物セラミックス系の蓄光剤が開発されて売られているようだ。

この手の機能性繊維については、アイデア次第で色々と面白い用途がありそうだが、こういう技術が実用化されたことを知らずにいると、最初はかなり驚かされることになるだろうと思う。

それにしても、何故サランなのか? がよくわからない。。 これらの機能を練り込むことが、サランでしかできなかったとしても、じゃあ、これでセーターだとか水着とかを作って、本来それらに求められる機能については大丈夫なのだろうか??

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2004/12/07

ココログ11か月

ココログを始めて11か月が経過した。カウンターの伸びは、この1か月で20000程度となり、一段と加速した感じだ。

 1か月目:900
 2か月目:4500
 3か月目:11700
 4か月目:19000
 5か月目:32300
 6か月目:43500
 7か月目:54500
 8か月目:72000
 9か月目:87700
 10か月目:105400
 11か月目:125400

この1か月の、Ninjaツールの集計によるアクセス解析結果は、(あまり当てにならないけど)

(1)リンク元
 1位 bookmark (お気に入りに入れてくれた方) 全体の17%(前回1位)
 2位 http://search.yahoo.co.jp (ご存知ヤフーサーチ) 全体の12%(前回2位)
 3位 http://homepage3.nifty.com/junko-nakanishi 全体の6%(前回3位)
 4位 http://www.google.co.jp(ご存知グーグル日本版) 全体の1%(前回4位)
 5位 http://a.hatena.ne.jp 全体の1%(前回4位)

今月は、スラッシュドットジャパンで、このサイトの記事が引用されたので、そこからのリンクでいらっしゃった方も結構多かったようだ。先月の中西さんのサイトといい、メジャーなサイトの影響力は本当に大きい。

(2)検索キーワード
 1位 ナノスピード7000(初登場)
 2位 アメリカ(前回2位)
 3位 肥満(前回5位)
 4位 大豆ペプチド(前回100位以降)
 5位 合計特殊出生率(前回14位)
 6位 グラフ(前回13位)
 7位 アートメイク(初登場)
 8位 ポリ乳酸(前回6位)
 9位 平石クリニック(前回7位)
10位 にんにく注射(前回22位)

「ナノスピード7000」はすごい人気キーワードのようだ。それにしても、先月トップだった「脳力トレーナー」が今月は56位まで落ちているので調べてみると、Yahoo! でも Google でも、このサイトの記事がまともに引っかかってこない。実は「ナノスピード7000」も、一時は上位に位置していたのが、今は随分目立たない所に下がっている。

もちろん日々新たな情報が増えていくので、もともと検索結果は安定したものである筈もないのだが、それにしてもある日突然検索結果から消えたりするので驚かされる。

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2004/12/06

COP10:ポスト京都議定書の議論開始

NIKKEI NET(12/6)の記事。温暖化防止締約国会議開幕、「京都議定書」後を協議

 約190の国・地域が参加する温暖化防止条約の第10回締約国会議が6日、アルゼンチンのブエノスアイレスで始まる。先進国に温暖化ガス削減を義務づける京都議定書が来年2月に発効することを踏まえ、削減の枠組みに入っていない米国や途上国をどう加えて世界全体の体制をつくるか、「ポスト議定書」の議論が実質スタートする。

 会議は15日から閣僚級会合に移り、17日に閉幕する。日本は小池百合子環境相が出席する。現在、最大の温暖化ガス排出国である米国は同条約を締結しているものの、削減義務を伴う議定書からは離脱。また、議定書では中国など途上国に削減義務がない。会議では議定書の約束期限が切れる2013年以降の削減体制が焦点となり、欧州と米国・途上国が対立するのは必至だ。

京都議定書が来年2/16に発効することが決まったばかりだが、もうポスト京都議定書の議論がスタートするわけだ。京都議定書の約束期間は2008~2012年であり、これから議論されるのはその後の第二約束期間、2013~2018年をどうするのかということだ。今回は準備段階で、本格的に枠組を決めるのは来年以降になるようだ。

ところでこの会議、正式には、気候変動枠組条約第10回締約国会議(The 10th sesion of the Conference Of the Parties to the United Nations Framework Convention on Climate Change : 通称 COP10)と呼ばれ、第1回会議から丁度10年、節目となるわけだが、議論される内容も、ポスト京都ということで、新たな一歩ということになるのだろうか。

京都議定書が採択されたのは、COP3(第3回:1997年)であり、UNFCCCのホームページに行ってみると、京都議定書が発効するまでのカウントダウンが表示されている。京都議定書は約束期間の開始まで丸10年の猶予があったのに、発効するまでに7年も経過してしまったわけで、スタートまで丸3年となってしまった。そして、これから議論を始めるポスト京都議定書については、約束期間の開始までもう8年しか残ってない。残り時間の少なさと、より切迫する状況(途上国の経済発展、温暖化の現実化、先進国にも決め手がない現状等々)を考えると、極めて厳しい議論になることと思われる。

日本の場合には、ポスト京都議定書の議論より前に、京都議定書への約束をどう果たすのかさえ全然まともな議論になっていない状況なので、当然のことだけど、この会議はニュースとしての扱いも極めて小さい。一方、アメリカでは USA TODAY を読むと、アメリカが新たな枠組にどう取り組むべきか、という話はほとんど書かれておらず、自分たちの排出量が世界一であることを棚に上げて、中国やインド等が参加しなくては意味がないという論調のように読める。

また、アメリカの影であまり目立たないが、京都議定書を批准していない大きな国の一つがオーストラリアであり、ABC (Australian Broadcasting Corporation) Onlineによると、アメリカよりは柔軟な姿勢というか、この枠組に参加するかしないか、まだ悩んでいるみたいだ。(もっとも、京都議定書ではオーストラリアの削減目標は+8%であり、1990年よりも増えても良いのだが、現実にはかなり排出量が増えているようだ。(参考:安井先生のサイト

いずれにしても COP会議は、当初の姿勢はともかく、今では科学的な議論というよりも、純粋に政治的な駆け引きの場という印象が強い。飢えで苦しんでいる国もあれば、戦争や紛争の真っ只中の国もある。一方で、温暖化により直接国家の存続が脅かされる可能性の高い島国などもある。このまま物質的に豊かになることを求め続けて良いのだろうか? なんていう疑問が議論されるだけでも日本はまだましなのだろうと思う。

このように、各国の抱える問題の優先順位があまりにも違いすぎて、同じテーブルで地球環境の将来を議論することの難しさは想像に難くないけど、このポスト京都議定書の議論がどういう方向に進むのか、人類の将来を見据える意味でも成り行きに注目したい。

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2004/12/03

ルネベルグレンズを使った衛星アンテナ

FujiSankei Business iで見つけた記事(12/2)。日本中の衛星放送を1台で受信できるマルチサテライトアンテナ

 全方向の電波に対して均一特性のアンテナとして作用する「ルネベルグレンズ」に着目し、JSAT(東京都千代田区)と共同で開発した。従来、衛星の方向ごとに複数のアンテナを設置する必要があった各種衛星放送(BSアナログ、BSデジタル、CS、110度CSなど)の電波を1台で受信できるほか、衛星にまっすぐ向ける必要がないため設置の自由度も向上した。

 価格はアンテナ本体が1万9800円、CSコンバーターキットは8900円、柵・壁付けキットが7500円。専用サイト(http://www.luneq.jp/)で販売中。

というもので、この写真を見ても大きさがイメージしにくいが、形も球形だしおよそ衛星アンテナには見えない。専用サイト「ルネキュー40」を見ると、丸く見える部分は直径が40cmの半球状で、これがルネベルグレンズと呼ばれるこの製品のポイントとなる部分だ。共同開発先のJSATのページのプレスリリースは昨年の10月に出ているから、今回の発売まで何故かだいぶ時間が掛かったようだ。

何といっても、この製品1台でBSとスカパーの両方をカバーするというのが最大のメリットだろうが、取り付け方法を見ると、場所によってはベランダの床に平置きすることも可能なようで、そうなるとNHKのアンテナウォッチャーには衛星放送を見ていることを見つけられないかもしれない。

それはともかく、ルネベルグレンズとは何ものか? 球状誘電体で、中心からの距離に応じて比誘電率を変化させる(中心のε=2.0、表面のε=1.0で、ε= 2-(r/R)^2 )ことにより、あらゆる方向の電波に対して均一特性のアンテナとして作用するとあるが、よくわからない。

こちらには、誘電体レンズの絵が載っているが、これだと何となくイメージできる。要するにどの方向から来た電波もきちんと焦点を結ぶということがポイントのようだ。従来のパラボラアンテナは特定の方向から来た電波しか焦点を結ばないから、複数方向の電波を受けるには複数のパラボラ面が必要だったが、こいつだと、一つのアンテナ(ルネベルグレンズ)で複数方向からの電波を受けて、それぞれ(別の場所に)焦点を結ばせることが可能となったわけだ。

従って、従来のパラボラアンテナ程にシビアではないにしても、当然調整は必要で、アンテナの向きを変える替わりに、ピックアップ(コンバータ)の方向と位置を調節することになるようだ。移動中の車輌や船舶用の衛星アンテナも開発中のようだけど、この場合にはピックアップを移動させて追随させるのかな?

大体の商品イメージはわかったのだが、このレンズはどうやって作るのだろう? 比誘電率を連続的に変化させた球体を作るのは相当大変そうだが。。 住友電工のテクニカルレビューに技術的な内容が詳細に書かれている。発泡樹脂(PE)に高誘電率の針状フィラーを分散させ、発泡率やフィラーの量を制御して多層構造を形成して製造しているようだ。

既にモニター製品を使った方のレポートが読める。取り付けた写真を見ると、普通のパラボラアンテナよりもしっかり目立っているかもしれないが、感度は問題ないようだ。

今の所、Web販売のみ。電気屋さんに行っても実物が見られないようなので、購入するにはそれなりの勇気が要りそうだけど、これから注目の製品かもしれない。

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2004/12/02

Googleでワイルドカード

たまたま図書館で、「翻訳に役立つGoogle活用テクニック」という本を見つけて読んでみた。実に実用的というか実戦的な本で、Googleを単なる情報検索としてではなく、表現検索の道具として使いこなそうというものだ。

確かに日本語でも、間違い表記かどうかをチェックするのに、Google様に聞いてみて多数決で判断する、いうのは結構有用なテクニックだし、多数決が必ずしも正しくないにしても、それなりに使われているのではないかと思う。例:うろおぼえ(23300件)、うるおぼえ(3370件)、うろ覚え(214000件)、うる覚え(20900件)。アスタリスク(71900件)、アステリスク(4630件)。

本書は、それと同じことを英語で行えば、英語圏でより一般的に使われる表記を見つけることができる、ということを基本にしている。その上で、単なる多数決ではなく、例えば科学用語の使い方であれば、Nature とか Science といった著名な雑誌からだけ検索してみたり、といった工夫が沢山紹介されている。( サイトオプションの使用、例えば "site:nature.com"、"site:aaas.org"、"site:sciam.com"など)

また、工事用のヘルメットは helmet か hard hat なのか、を確認するような場合には、イメージ検索を使えば一目瞭然などの例も紹介している。

しかし、何といっても、Googleでワイルドカードが使えることは知らなかった。知っている人には当たり前の話なのだろうけど、少し調べてみると、Googleではワイルドカードは公式にはサポートされていない機能のようで、ヘルプにも全く書かれていないようだ。

少なくとも英語の場合には、「*」1文字が one word を示すので、例えば「最も○○な問題」を英訳する際に、"the most * problems"、"the most ** problems"、"the most *** problems"というようにアスタリスクの数を変えてフレーズ入力して検索してみると、the most serious problems、the most important unsolved problems、the most exciting and important problems などの表現が見つかるので、実用的な英作文の参考になる、というわけだ。

なお、Googleは、複数形と単数形や動詞の活用形をあいまい検索してくれないので、場合によっては "the most * (problem OR problems)" というように "OR" でつなぐ必要があるが、逆に単数/複数の使い分けについて調べることができるメリットもある。

ところが、同じ事を日本語でやってみようとすると、今一うまく行かない。このことは多くの人が色々と試しているようで、はてなでも、様々な議論がされている。要するに、日本語の場合にはワイルドカードの動作は保証されていないし、英語に比べると実際に問題が多く、なかなかうまく使えない、ということみたいだ。なお、Yahoo!の場合には、アスタリスクは AND検索の記号として解釈されるようで、英語でもワイルドカードは使えないようだ。

本書では、他にも英単語の使い方を調べるのに有用なテクニックとして、"intitle:"オプションや "inurl:"オプションが紹介されている。例えば、ページのタイトルやURL中に "glossary"、"dictionary"、"about XX"、"faq"等の単語が含まれているページだけを検索対象に指定することで、使用法や解説記事を効率よく見つけようということだ。確かにうまいこと考えるものだ。

まだまだ知られていない使い方が隠されているのではないか、という気もしないではないし、もしもおもしろい発見をしても、そう簡単に他人に伝えるのはもったいない気もするが。まあ、何事も結構奥が深いものだ。。。

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2004/12/01

昆虫の視覚と紫外線

NIKKEI NET(12/1)の新製品ニュース。人には自然光、虫には暗やみ―松下電工が新室内用照明器具

 松下電工は30日、虫を寄せつけにくくした室内用照明器具「ムシベールのあかり」=写真=を12月21日に発売すると発表した。室外用はすでに発売済みだが、室内用は初めて。月間2万台の販売を目指す。

 照明器具のカバーには、虫を引き寄せる410ナノ(ナノは10億分の1)メートル以下の光の波長を出さない特殊加工をした。人間の目には明るく自然な光だが、虫にはその場が暗闇のようになる。虫は70%ほど寄りつきにくくなるという。照明器具から出る紫外線も従来品と比べ99%カットし、写真や絵画の色あせを防いでいるのも特徴。価格は3万5700―13万200円。

ウチでは全く室内の照明器具に虫が寄ってくることはないが、確かに虫が寄り付かない機能が欲しいという人も多いのだろう。それにしても、410nm以下の光をカットすると虫の目には暗闇になってしまうものなのか? 寄って来るかどうかと見えるかどうかは別の話のようにも思える。

確かに誘蛾灯に代表されるような、紫外線による捕虫器なんてものもあるくらいで、昆虫は一般的に紫外線にひき付けられる「すう光性」という性質を持つようだが、では目の波長感度はどうなっているのだろう?

松下のサイトには本製品に関係する資料は見当たらなかったが、例えば紫外線カット蛍光灯紫外線カットコート剤なんてのが売られており、これらのページに昆虫の目の感度図や忌避効果が載っている。確かに、昆虫の目の感度は紫外線域を主としており、可視光域は非常に感度が悪そうだから、紫外線をカットするとほとんど暗闇と言っても良いのかもしれない。 見えるか見えないかはともかくも、多くの昆虫で忌避効果が顕著なのは確かなようだ。

ということで、昆虫の目で見る世の中は随分と異なっていて、可視光では区別がつかないような、花の中心部が目立って見えたり、モンシロチョウやアゲハチョウの雌雄の区別がついたりするようだ。デジカメは紫外線に感度があるので、フィルターで虫の目の世界の再現を試みている方もいるし、こちらはより本格的に専用レンズで紫外線写真を撮っている。

ちなみに、この紫外線カット照明を使っても、恐らく犬や猫などには影響はなさそうだが、お魚には多少影響があるかもしれない。参考1参考2) なお、爬虫類の中には赤外線に感度を持っているものもいるようだが、亀の飼育には紫外線が必要らしく、室内で動物を飼う人は光の波長に注意が必要ということらしい。

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