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2004/12/28

サイエンス、今年のブレークスルー

恐らくこれが、このブログの本年最後の記事となるのだが、今年を締めくくるタイミングにふさわしいニュースが出ている。CNN.co.jpの記事(12/28)。今年の科学10大ニュース、首位は火星探査 サイエンス誌

ワシントン――火星に水が存在していた「証拠」を見つけた米航空宇宙局(NASA)探査車の成果が、米科学誌サイエンスによる「今年最大の科学的進歩」に選ばれた。同誌が挙げたベストテンにはこのほか、小型の新種人類とされる化石の発見や、韓国の科学者グループによるヒトクローン胚の研究が含まれている。

同誌はNASAが火星に送り込んだ2台の無人探査車「スピリット」「オポチュニティー」について、「地球以外に生命が存在した可能性のある場所を発見するという、人類初の偉業を成し遂げた」と、高い評価を与えた。ドナルド・ケネディ編集長は「今年のトップにはほとんど異論がなかった」と強調。特に、ロボット技術を駆使した探査車の性能に注目し、「火星や月への有人飛行計画を重視するあまり、ロボット探査をおろそかにするべきではない」と、NASAに注文をつけた。

同誌が今年の第2位に選んだのは、「ホモ・フロレシエンシス」と名付けられた人類の化石だ。今年9月、インドネシア東部のフロレス島で発見された。身長1メートル、脳の容積は現代人の3分の1以下で、約1万8000年前まで現代人の祖先と共存していたとみられる。

また3位には、ソウル大のファン・ウソク教授らによるクローン研究が挙げられた。同教授らのチームは最近、ヒトのクローン胚から、人体のあらゆる細胞に成長する能力を持つ胚性幹細胞(ES細胞)を作ることに成功したと発表した。

4位は、米国とオーストラリアの研究者らによるグループが、超低温でのみ現れる物質の状態「ボーズ・アインシュタイン凝縮(BEC)」を、困難とされていた粒子グループ「フェルミオン」で実現した研究。続いて、遺伝情報を持たず「ジャンク(くず)」と呼ばれるDNAに重要な役割があることを指摘した複数の研究が5位を占めた。さらに、新たな中性子星の発見(6位)、絶滅危機にある生物についての新たな報告(7位)、水を取り巻くなぞに迫る研究(8位)、世界各地で進む官民共同の医薬品開発(9位)、海水や地中から採取された新種の遺伝子の解明(10位)――がベストテン入りした。

ということで、Science の12/17号でBreakthrough of the Yearという特集記事が組まれている。残念ながら Science誌は、有料購読者でないと、ユーザー登録をしていてもほとんどの内容が読めない。

Science誌が選んだということで、かなり専門的な視点で選ばれているようだし、日本での受け取り方とはまた異なる面もありそうだ。それでも 1位から 3位まではさすがに、ニュースとして記憶にあるし、3位のヒトクローン胚からES細胞という話は 2/12にこのブログでも取り上げている。

でも 4位以下については、タイトルを見ても具体的に何の話なのかよくわからない内容がほとんどだ。Boston.comには、各項目の簡単な紹介が載っているが、それを読んでも、こんなニュースは日本で報道されたっけ? というようなものもある。

ところで、無料登録で全文が読めるEditorialには、ここに上げられたポジティブな10大ニュースの他に、ネガティブなニュースについても触れられている。

Each year, some disappointments ("Breakdowns") accompany the successes, reminding us that the scientific venture is fragile and dependent on public regard. Underscoring that point: This year's Breakdowns recognize a widespread crack in the social contract between the science community and the polity. That kind of disaffection was evident in Europe, as Italian scientists demonstrated to protest planned losses of tenure and French scientists went on strike to win some government concessions.

A Breakdown of a different kind was evident in the United States, where exchanges of tough rhetoric between the president's science adviser and a number of leading scientists made front-page news. Scientists objected, some of them on this page, to the use of political tests in the appointment of government science officials and the members of scientific advisory committees. There were sharp disagreements between many scientists and administration positions on stem cells and global climate change. And in more local and direct interactions with the American public, scientists faced a steady increase in challenges to the teaching of evolution in the public schools. It appears, alas, that this kind of tension is growing and that it may become a chronic feature of the landscape.

前段では、主としてヨーロッパの科学界と政治との衝突について言及されているようだが、イタリアのtenureをめぐる事件とかフランスのストライキの話とかは、全く思い当たるところがないので、多分日本ではほとんど話題に上らなかったのだろう。

後段のアメリカでの科学界と政治(ブッシュ政権)との衝突については、我々も比較的目にする機会が多いが、ここでは、ヒトクローン研究、地球温暖化問題、進化論の教育問題が例としてあげられている。これらはそれぞれ異なる意味で問題となっているわけで、同列に扱うべきではないようにも思うのだが、逆に言えば、色んな分野で問題が噴出してきている表れとも言えるのだろうか? 何だかんだ言っても世界全体への影響力の極めて大きいアメリカという国のことだけに、問題はアメリカだけでは収まらない、という意味で確かに危機感を感じさせられる。

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