「ツキの法則」
この著者の本としては、2/11のブログで 『「社会調査」のウソ』 という本を紹介しているが、とても面白く、しかも参考になる本だった。その時に著者のプロフィールで、ギャンブルに関する統計学的研究をしているということを知り、興味を持っていたのだが、たまたま本屋で本書を見つけたので、7年前に出版された本だけど紹介してみたい。
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ツキの法則 「賭け方」と「勝敗」の科学
谷岡 一郎 著 bk1、amazon
表紙裏側部分には
本書では確率・統計理論にもとづき、<必勝法の迷信・誤解><より早く確実に負けてしまう方法>などを説きながら、<ツキの正体>を明らかにしていく。とある。期待にたがわず、非常に面白く読むことができた。統計や確率のことを大体理解していれば、ギャンブルで勝つことがいかに難しい(確率が低い)かは、容易に想像が付く。ただ、1回毎の勝負の期待値を考えることはあっても、何度も連続して勝負を続けた場合の、トータルでの勝ち負けについてはあまり深く考えたことはなかった。本書は、その勝ち負けのバラツキについて考察を進め、いわゆる「ツキ」の正体を明らかにする。
賭け方・勝敗の意外な関係と、賭けの真の醍醐味を教えてくれる「ギャンブルの科学」。
本書によれば、同じ金額を元手にして、ある程度の長丁場で勝負する場合に、最も早く負けてしまう確率が高い賭け方は、小額ずつできるだけ多数回の勝負をすることである。(例えばスロットマシンで25セントの勝負を延々と続ける。)回数を増やせば増やすほど、統計的な期待値に収束していくのは自明であり、ここまでは納得できなくもない。逆に、負けにくくする、或いはもしかしたら大勝ちする可能性が少しでも高い賭け方は、倍率の高い賭けを少数回行うこととなるようだ。要するに、分散をできるだけ大きく保つことで、(間違って)低い確率の当たりが出る率を少しでも高く維持しようという作戦だ。
本書で説明している要点をまとめると以上のようになるのだが、本書の面白い所は、従来必勝法といわれてきた賭け方についての考察をしているところや、様々な賭け(日本の公営ギャンブル、宝くじ、パチンコ、ラスベガスの様々なゲームなど)について、期待値だけでなく、賭けの面白さという点で多面的な特徴を分析しているところだ。意外だったのは、パチンコの高評価。著者独自の重み付けがされているランキングでは、パチンコが総合的評価で堂々第1位となったのだ。(ちなみに最下位は宝くじ。) なお、種々のギャンブルの期待値の一覧表も、こうやって比較されるととても納得がいく。(いかに宝くじや公営ギャンブルは、客が大損をするようにできていることか。。)
各種のギャンブルをこうして横並びに比較したり、いわゆる必勝法についてこれほどコンパクトに紹介してくれる本は中々ないだろう。それもきちんと統計・確率の面から科学的に評価している。
また、統計・確率から考えていくと、結局儲けることができるのは胴元だけで、賭けないのが最も有利という、味もそっけもない答えになってしまいがちだが、人間はそんなに論理的な行動を取るようにはできていない。本書はもちろん、そこにも踏み込んでおり、心理的効用が実際の損得とどういう関係にあるのか、といった面からも考察されている。
ここの部分は、多少のリスクは覚悟の上で一発大勝負に出るのか、逆に多少の損失は覚悟しても、大きなリスクは避けて通るのか、といった人間心理が係るところであり、賭け事だけでなく、日常のリスク管理やビジネス判断にも通じることとして説明されていて興味深い。
最後に、わかっちゃいるけどやめられない人のためのギャンブルの心得も紹介している。最低限、この本に書かれた統計・確率の話を理解した上で、いい加減な俗説・必勝法に惑わされずに、楽しく遊ぶのが精神的にも財政的にも好ましいだろう。
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