喫煙本数と自殺の関係
MSN-Mainichi INTERACTIVE(1/18)の記事。喫煙:本数が多いほど自殺の危険性大 厚労省研究班
中高年の男性喫煙者では、1日に吸うたばこの本数が多いほど自殺する危険性が高まるとの大規模疫学調査結果を厚生労働省研究班がまとめた。研究班は「たばこの本数の多い人の心の健康に注意を払う必要がある」と提言している。21日から大津市で開かれる日本疫学会で発表する。というものだが、何が発端になった調査なのかはわからないが、ご苦労さんなことだなあ、というのが第一印象ではある。調べてみると、この調査については、厚生労働省研究班による多目的コホート研究のリサーチ・ニュースが元ネタで、さらに詳しい内容が、たばこと自殺について ―概要―で読める。この研究は、喫煙や飲酒を始めとする生活習慣とがんや脳卒中その他の病気との関係を長期間追跡調査する一連の研究のうちのひとつのようだ。研究班は90年と93年に岩手、長野、高知、長崎、沖縄など8県に住む40~69歳の男性約4万5000人の生活習慣などを調べ、00年まで健康状態を追跡調査した。この間に自殺が確認された173人について、喫煙との関係を調べた。
調査開始時は、173人中108人が喫煙者だった。1日20本未満の喫煙者の自殺割合は非喫煙者と同程度だったが、1日30~40本未満のグループは20本未満のグループに比べ1.4倍、40本以上のグループは同1.7倍高かった。吸い始めてからの年数による差は見られなかった。
高知大が昨年まとめた司法解剖例の調査でも、たばこを吸う習慣がある人では、自殺した人の血液中のニコチン濃度が事故や病気で死亡した人よりも高いとの結果が出ている。
分析を担当した国立がんセンター予防研究部の岩崎基研究員は「喫煙と自殺を結びつけるメカニズムはよく分かっていないが、ニコチン依存がうつ病の危険性を高めるという研究結果もある。禁煙によって危険性が下がるかどうかは今後の研究課題だ」と話している。
自殺関連統計としては比較的よくまとまっている、厚生労働省の自殺防止対策には、何故かその原因や動機については全く書かれていないが、警察庁の平成15年中における自殺の概要資料によると、原因や動機は、中高年男性の場合には「経済・生活問題」が圧倒的に第一位で次が「健康問題」となっている。とすると、これと喫煙の関係にどんな関係がありうるのだろう?
というか、この研究でも45000人を追跡調査し、自殺者173名についての生活習慣を調べているわけだから、当然自殺の動機についても何らかの情報を得ているはずである。このテーマで解析をしようとしたら、まず最初に直接の動機を調べて整理するのが普通だと思うのだが、それがこの研究には全く出てこないのが不思議といえば不思議である。
厚生労働省の研究内容の説明や新聞記事のコメントでは、自殺とうつ病の関係に焦点を当てているけれど、これってミスリードじゃないのだろうか? 確かに、色々と行き詰って自殺したとしても、同じように経済面や健康面で悩んでいても死を選ばない人の方が圧倒的に多いのだから、最終的に死を選んだということは、何か精神状態にも要因があるのかもしれないけれど。 それにしたって、喫煙者と非喫煙者で有意差がなかったということは、ニコチンが最後の引き金を引いたとは言えそうもないわけだろうに。。
まあ今回の、喫煙習慣の有無による有意な差はないが、喫煙者の中では本数が多いほど自殺率が高いという結果を説明しようとすると、例えば仕事や生活で追い詰められた時、喫煙習慣のある人は、その本数が徐々に増えていくということは、経験的にも十分にありうる話であり、結果として、喫煙本数がその人の精神や肉体の追い詰められ度を示す一つの尺度になっている、ということじゃないのだろうか?
Wikipediaでも、同様の指摘がなされているが、敢えてニコチンの薬理作用を追及する話でもなさそうな気がする。なお、自殺者中の血中ニコチン濃度が高いという高知大学の研究(参考)も、件数が少なすぎて話にならないように思えるが、それは置いておいても、自殺する前にこの世の最後のタバコを思いっきり吸ったというだけのような気もしないではない。
| 固定リンク
コメント