津波の圧力と破壊力
YOMIURI ON-LINE(1/10)の記事。広島原爆の5分の1に匹敵…タイの津波圧力。
スマトラ島沖地震でタイ南部のカオラックを襲った津波の圧力は、広島に投下された原子爆弾の爆風の約5分の1に匹敵することが、現地調査を行った松冨英夫・秋田大助教授らの分析で明らかになった。という記事だが、津波と原爆の破壊力をどういうレベルで比較しているのか、今ひとつわからない。全体の規模ではなくて、ある点での圧力で比較しているようだが、そういう問題なのだろうか?松冨助教授らは先月30日から今月3日まで現地へ入り、建物の外壁に残る水流の痕跡などを詳しく測量した。その結果、押し寄せた津波の高さは10・6―3・1メートル、スピードは秒速8―6メートルだったと判明。水流の圧力は、1平方メートル当たり6・7―3・7トンと算出された。
広島の原爆の爆風は、爆心地付近で同35トンの圧力だったとされる。その5分の一に近い威力の激流によって、カオラックでは、海岸線から約200メートル内陸までのホテルやコテージが、ほぼ一面になぎ倒された。
一方、カオラックから約50キロ南のプーケット島では、津波の圧力は同1・6―0・9トン。わずかな距離の違いで、津波の威力に4倍もの差がみられた。
1993年の北海道南西沖地震で奥尻島を襲った津波は、高さが平均10メートルを超えたが、速度が最大でも秒速7・3メートルと、カオラックより小さかったため、最大圧力は1平方メートル当たり約5・4トンだった。
それはともかく、1平方メートル当たり数トンという圧力の単位を、もっとポピュラーな単位に換算すると、1 ton/m2 = 0.1 kg/cm2 = 約 0.1気圧 =約 98 hPa となる。従って、今回の津波の最大圧力が約 0.7気圧、原爆の爆心地付近の爆風の圧力は約 3.5気圧ということだろうか。こうして圧力として示してみると、原爆の圧力にしても、津波の圧力にしても、意外にも大した力ではないように感じられるのではなかろうか? これらの破壊力は圧力で比べても仕方ないような気がするのだが。。
例えば、今回の津波の原因となった地震では、東大地震研 山中さんの推定では、150km×560kmの面積が最大13.9mずれたそうだから、平均のずれを7mとしても、その質量は約 6×10^11 tonにもなる。ポテンシャルエネルギーは、その質量の重心が3.5m上昇したとすると、約 2×10^16 ジュールとなる。
一方、広島の原爆については、A-Bomb WWW Museumによると、TNT火薬で15キロトンとある。(確かに爆心での風圧は約3.5気圧らしいが、風速は440m毎秒と音速を超えているようだ。。)TNT15キロトンは、約68兆ジュール(6.8×10^13 ジュール)であり、エネルギー総量で比べると、今回の津波の約300分の一となってしまうのだ。。(エネルギー換算)
というか、原爆の場合には熱エネルギーや放射線としてのエネルギーの破壊力も大きいわけだし、やっぱりその圧力を津波の圧力と比較するのは適当ではないように思うけどねえ。ちなみに津波による被害は、東北大学災害制御研究センターによると、津波の高さで整理されている。
冒頭の記事の、「その5分の一に近い威力の激流によって、カオラックでは、海岸線から約200メートル内陸までのホテルやコテージが、ほぼ一面になぎ倒された。」という表現は、「威力」の定義次第とはいえ、やはり不適切だと思うのだが。。
ちなみに、今回の津波関連リンク集としては、京都大学の防災研究所の2004年スマトラ島沖地震津波災害が研究情報が充実しているようだ。
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