花粉観測システム「はなこさん」
YOMIURI ON-LINE(1/14)の記事。環境省HP、花粉観測システムの情報提供を開始。
環境省は14日、花粉観測システム「はなこさん」の情報提供をホームページで始めた。ということで、環境省のプレスリリースによると、関東地方では一昨年、関西地方では昨年から始めた観測システムで、今年から中部地方も加わったということらしい。個人的には幸いにも花粉に悩まされることがない(らしい)のだが、逆に花粉の飛散については全く注意を払ってこなかったので、ちょっと調べてみることに。関東、関西に続いて、今年から中部地方も対象地区に加わった。23都府県の55地点で観測した花粉の飛散量が、各地の風向、風速とともに一目で分かる。データは1時間ごとに更新される。
今春は、昨夏の猛暑の影響で、花粉の飛散量が昨春の10―20倍に達して、全国的に観測史上1、2位の多さになると予想されている。同省のホームページアドレスは、http://kafun.nies.go.jp/
はなこさんを見てみると、各地方の観測点での現在の測定値や過去の測定値を比較的簡単に見ることができる。どういう観測システムなのかは、システム概要に書かれているのだが、この測定値をどう評価して、どう利用したら良いのかについてなど、少なくとも素人さんが必要としそうな情報は何も書かれていないのが、如何にも不親切だ。。。
これを見ると、観測地点は各都道府県に1~5か所しかないようだけど、これで正しい観測が行えていると言えるのだろうか? 試しに見てみると、関東地方の日光測光所では 1/12に最高70000個/m3を記録していたりして、ほぼ万のオーダーで飛んでいるようだ。でも、群馬県材木育種場では、ピーク時で2600個/m3で、他の日はほとんど飛んでいない。東京の八王子の森林公園ではほとんどのデータが100個未満となっている。2桁以上も飛散量が異なるのか?? そもそも、真冬の今の時期に、しかも日光で、そんなに花粉が飛ぶものだろうか?
まず、問題となる花粉の数の目安や飛散の時期については、例えば東京都福祉保健局の花粉症 Q&Aあたりが情報が充実しているようだ。これによると、
・少ない 1cm2あたりの花粉数が10個未満となっているのだが、単位が全然異なっているので比較ができないではないか。。 測定方法については、東邦大学の花粉症 Learningによると、従来からのダーラム型という自然落下した花粉数を顕微鏡でカウントする方法(単位:個/cm2)に対して、環境省のシステムは大気を吸引して花粉をカウントする全自動花粉モニター(単位:個/m3)を採用しているために、単位が異なるということのようだ。
・やや多い 同10個~30個未満
・多い 同30個~50個未満
・非常に多い 同50個以上
(なお、ここの花粉事典は、色々な植物の花粉の顕微鏡写真も載っていて面白い。欲を言えば、写真にスケールが入っていて欲しかった。)
色々見てみると、どうやら大和製作所のKH-3000という装置がこの世界では広く使われているらしい。この装置は神奈川新聞によると、先の東邦大学の佐橋先生との共同開発ということで、原理としてはレーザー散乱式のパーティクルカウンターなのだが、花粉にターゲットを絞るために、粒径範囲が28~35μmの球形粒子のみをカウントするように設計されているらしい。それでも中日新聞の記事によると、
計測器は、採取した大気にレーザーを照射し、光の散乱光量から花粉量を調べるシステムを採用。顕微鏡で花粉数を調べる従来の手法に比べ、リアルタイムで花粉量を調べられるほか、労力も大幅に削減できる。一方で、レーザーは雪や黄砂など花粉以外の一部の物質にも反応するため、特に降雪日には実際の飛散状況と一致しない場合があるという。ということのようだ。ということは、日光の花粉データが飛びぬけて高い数値を示しているのは雪の影響かもしれない。よく見ると、「はなこさん」のトップページにも、「現在、システムの試験運転中のため、現況と異なるデータが表示される場合もありますのでご留意下さい。(たとえば、雪等を計測して高い値を示すことがあります。) 」と書かれている。。
それにしても、ダーラム型の測定値と花粉モニターの測定値はどういう関係にあるのだろう? 理論的な換算は不可能だと思えるので、実測値をベースに換算するしかなさそうだが、慈恵医大のデータや、和歌山県のデータを見ると、それなりに良好な相関関係は得られるようだが、花粉モニターの測定値の単位があいまいで、結局、換算係数はよくわからない。。そもそも、環境省がこれだけ大々的に採用するなら、従来の測定値との換算の方法ぐらい書いておいてくれても良さそうなものだが。。
花粉症対策は各都道府県が結構力を入れているようで、それぞれ独自の観測網を敷いてモニターしているようだし、花粉症いんふぉのようにボランティアやNPOの測定値をネットワーク化しているところもあるようだ。環境省がそれとは別にモニターするのは構わないけど、せっかくだから、それらを統合するとかして、協力する形で進められないものかなあ?
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