「占いの謎」
著者は東京医科歯科大学の文化人類学の教授。ということで、本書は文化人類学の面から占いやそれに類する様々なことがらを考察したもの。このうち、第二章が「占いと科学」となっており、血液型占いと夢占いを検討対象としている。
実は元日に、例年通り神社へ初詣に行き、習慣でおみくじを引いて、今年は珍しく「大吉」だったので何となく良い気分になったりしたのだが、別に今年の運勢が特に良いと信じているわけでもない。これって恐らく大多数の人の感覚とそれ程ずれてないと思うのだが、これが占星術や血液型占いとなると、人によって随分その捉え方に違いがありそうにも思う。
文春新書 412
占いの謎 -いまも流行るそのわけ
板橋 作美 著 bk1、amazon
文化人類学については全くの門外漢なので、実は本書を読み通すのは、やや単調な所もあって苦労した部分もあるのだが、一方で、占いや迷信に対するアプローチの仕方として「ほー、そういう見方もあるんだね。」という新鮮さが結構あった。
本書では、血液型占いや西洋占星術も、陰陽、五行、九星、四柱推命、風水などと同列に扱っている。また、科学的に根拠のありそうな言い伝えと、どう考えても根拠のなさそうな迷信も一緒に扱っている。おいおい、それでいいのか? と突っ込みたくなりながら読み進むうちに、「なるほど、そういう考えもあるなあ。」と妙に納得できるのが面白い。
本書で論じられているのは、まさにタイトル通り、これらの占いや言い伝えが、何故古くから今まで流行り続けているのか? ということであり、その占いや言い伝えの信憑性は、まあどうでも良いのだ。
簡単にまとめると、人々は、この予測不可能な世の中を無理やりパターン化することによって、世界を体系的に秩序化したものとして理解し、それによって不安から逃れようとしているのだ、というような考え方である。そのために、物事は白か黒か、という具合に二項対立的に分類される傾向があり、本来は必ずしも対立していないはずの、複雑で連続的な事象が対立概念として捉えられるのだ、と考察している。 そういう目で様々な占いや言い伝えを見ていくと、確かにそうかもしれない。血液型占いで、何故かA型とB型の性格は対立するものとなっているなんてこともその一つの表れだろう。
本書には、各地に伝わる言い伝えが非常に沢山収録されており、それだけでも面白いのだが、これだけ集めると、当然のことながら同じ現象を見ても、違う結論を伝えるものもある。 ということは、数ある言い伝えのどれかは、たまには当たるということでもある。占いにしても、はずれたことは忘れられ、当たったことだけが印象に残り、会話の中にも出てきがち、という側面がありそうだ。
本書の「おわりに」で紹介されているのだが、国会図書館におさめられている占いに関する本の数は、1950年代から1990年代までの10年ごとに、11冊、42冊、167冊、323冊、564冊と増加の一途をたどり、さらに2000年が168冊、2001年が101冊、2002年が81冊、2003年が172冊となっているそうだ。この数字から科学離れとの相関を論じるのは無理だろうけど、これだけ科学技術の恩恵を受けている世の中で生活しながら、一方で占いのようなものが流行るというのは、確かに社会的な面から考察するに値するテーマなのかもしれない。
そういえば、自動車免許の更新に行った時に、そこで更新手続きをするために集まっている人達は、ほとんどが同じ星座の生まれだと気付いたことがある。もちろん、少し観察していると、同じ星座の生まれでもいろんな性格の人がいるのがわかるし、随分違う運命の人がいそうで、星座占いとの関係を考えるのも結構楽しかったりする。。
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