脳卒中危険度予測ツールを使ってみた
少し前のことになるが、1/20のNIKKEI NETに茨城県、脳卒中による死亡確率予測ソフトを開発という記事が載った。
あなたが脳卒中で死ぬ確率を診断します――。茨城県は健康診断の数値から、生活習慣病で5年以内に死亡するリスクを簡単に予測するソフトウエアを開発した。2月に市町村に無料配布するほか、ホームページ上で個人利用もできるようにして、生活改善の自覚を促す。ということで、興味を持って、茨城県健康科学センターのサイトを見ていたのだが、このほどこのソフトが掲載され、ダウンロードして使用することができるようになった。(開発したのはニュースになっても、使えるようになったのはニュースにならないようだ。)県健康科学センターが県内38市町村の健康診断受診者9万6000人を8年間追跡調査してデータを蓄積。健診結果と死亡との関連性をはじき出した。地方自治体主導の調査としては全国初の疫学調査という。筑波大学大学院の磯博康教授が開発を指導した。利用者は身長や体重、血圧やコレステロール値などの項目を入力すると、自分の死亡率と県民の平均値、望ましい値が棒グラフで表示される。どの項目を改善すれば、リスクを軽減できるかも試算できる。
このソフト開発の経緯は、脳卒中危険度予測ツールの開発についてに詳しく書かれているが、脳卒中に限らず、がんや虚血性疾患の危険度も計算してくれるもので、この手のソフトとしては日本初らしい。
ということで早速、脳卒中危険度予測ツールからソフトをダウンロードして使ってみた。このソフトは、マイクロソフトエクセルのブック形式で提供されるのだが、動作保証バージョンは Excel 2000以降とのこと。
うちのPCのExcelのバージョンは97とかなり古い。使用する側に進歩がないのか、これで普段の使用には全く支障がないので、バージョンアップしないままでいる。しかし、このファイルを読み込んで、ワークシートに予め書かれている数字を変えようとすると、「Micorsoft Visual Basic 非表示モジュール Sheet1 内でコンパイル エラーが発生しました。」というダイアログが出てしまう。インターネットを少し検索してみると、マクロのバージョン不適合で起こる問題らしいが、こちらとしては、手の打ちようがなさそうだ。
とは言え、エラーメッセージを無視して、強引に数字を入力すると、脳卒中やがんでの死亡率のグラフが変化するので、一応計算はされているようだが、大丈夫かな?(マクロがうまく動かないためか、このままだと、グラフの縦軸の表示範囲が固定されていて、死亡率が小さすぎると読み取れない。各グラフの縦軸の書式設定で目盛範囲を自動に設定すると良さそうだ。)
このソフト、入力する項目は、年齢、性別、身長、体重、最高血圧、尿蛋白、総コレステロール、HDLコレステロール、GOT、GPT、クレアチニン、血糖値、喫煙状況、飲酒量だけである。これで、脳卒中、がん、虚血性心疾患、循環器疾患での5年以内の各死亡率および全死亡率を計算してくれる。
試しに最近の健康診断の結果を入れてみると、5年以内の全死亡率が0.5%程度となったが、この数字をどう受け止めたらよいのだろう? 同年齢の人の望ましい値が0.4%、茨城県の平均が0.6%と出ているので、まあまあ、標準的と言っていいのかな? 一方で、がんでの死亡率が0.3%程度と出ているので、5年以内に死ぬ場合にはがんで死ぬ可能性が6割程度ということか。。
試しに色々と数字を入れ替えて試してみると、死亡率を高くするのは簡単なのだが、死亡率を望ましい値程度まで下げるのは結構難しい。最高血圧を低くするとどんどん死亡率が下がることがわかったが、いくらなんでも最高血圧50mmHgというのは、危ないだろうし。
面白いのは、アルコールのところ。1日当たりの飲酒量が1合~2合というのが最も良さそうで、飲まないよりも死亡率が低い。試しに、禁酒中を選ぶと、一気に倍近くまで上昇するところなど、いかにも疫学的データを使用したらしい雰囲気があって楽しめる。喫煙の有無の影響は、がんでの死亡率が5割増し程度と思ったよりも小さいような気もする。
対象年齢は40~79歳とのことだが、年齢だけを変えてみると死亡率が劇的に変化する。ちなみに対象範囲外と承知の上で90歳にすると死亡率が25%、110歳だと80%超となる。
それにしても、こんな少数の項目だけで、こんな数字を出しちゃって大丈夫かいな? という心配もしたくなる。少し丁寧な健康診断なら必ず含まれているような心電図とかX線検査などの結果がなくても、確かに疫学的には無理やり数字は出せるんだろうけど、どうなんだろう? そもそも一般的な死亡確率ならば、職場や家庭の環境とか、生活習慣などの要因が大きく影響しそうだが、これらが血液検査等の項目に反映されるとも思えないしなあ。。
それに、もしかしたら茨城県特有の食生活や生活環境の影響があるかもしれないし、どちらにしても目安に過ぎないんだろう。でも、それを十分承知した上でも、いざこうやって数字で自分の死亡率が出てくると、何となく占いのような感じや、それよりも少しリアルな変な感触がしてくる。。 これで、もう少し死亡確率の数値が大きくて、改善効果が大きく出るような状況になると、頑張って体質改善をする気になるのかもしれないけど、それはそれで死亡率を下げるために生きているみたいで変な感じだよな。。。
ちなみに成分献血をすると、上記血液検査項目のうち、HDLコレステロール、クレアチニン、血糖値以外の数値は測定してくれる。これらの項目がこの手の病気の判断に重要なら、測定してくれるとありがたいのだが。
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