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2005/02/28

脳卒中危険度予測ツールを使ってみた

少し前のことになるが、1/20のNIKKEI NETに茨城県、脳卒中による死亡確率予測ソフトを開発という記事が載った。

 あなたが脳卒中で死ぬ確率を診断します――。茨城県は健康診断の数値から、生活習慣病で5年以内に死亡するリスクを簡単に予測するソフトウエアを開発した。2月に市町村に無料配布するほか、ホームページ上で個人利用もできるようにして、生活改善の自覚を促す。

 県健康科学センターが県内38市町村の健康診断受診者9万6000人を8年間追跡調査してデータを蓄積。健診結果と死亡との関連性をはじき出した。地方自治体主導の調査としては全国初の疫学調査という。筑波大学大学院の磯博康教授が開発を指導した。利用者は身長や体重、血圧やコレステロール値などの項目を入力すると、自分の死亡率と県民の平均値、望ましい値が棒グラフで表示される。どの項目を改善すれば、リスクを軽減できるかも試算できる。

ということで、興味を持って、茨城県健康科学センターのサイトを見ていたのだが、このほどこのソフトが掲載され、ダウンロードして使用することができるようになった。(開発したのはニュースになっても、使えるようになったのはニュースにならないようだ。)

このソフト開発の経緯は、脳卒中危険度予測ツールの開発についてに詳しく書かれているが、脳卒中に限らず、がんや虚血性疾患の危険度も計算してくれるもので、この手のソフトとしては日本初らしい。

ということで早速、脳卒中危険度予測ツールからソフトをダウンロードして使ってみた。このソフトは、マイクロソフトエクセルのブック形式で提供されるのだが、動作保証バージョンは Excel 2000以降とのこと。

うちのPCのExcelのバージョンは97とかなり古い。使用する側に進歩がないのか、これで普段の使用には全く支障がないので、バージョンアップしないままでいる。しかし、このファイルを読み込んで、ワークシートに予め書かれている数字を変えようとすると、「Micorsoft Visual Basic 非表示モジュール Sheet1 内でコンパイル エラーが発生しました。」というダイアログが出てしまう。インターネットを少し検索してみると、マクロのバージョン不適合で起こる問題らしいが、こちらとしては、手の打ちようがなさそうだ。

とは言え、エラーメッセージを無視して、強引に数字を入力すると、脳卒中やがんでの死亡率のグラフが変化するので、一応計算はされているようだが、大丈夫かな?(マクロがうまく動かないためか、このままだと、グラフの縦軸の表示範囲が固定されていて、死亡率が小さすぎると読み取れない。各グラフの縦軸の書式設定で目盛範囲を自動に設定すると良さそうだ。)

このソフト、入力する項目は、年齢、性別、身長、体重、最高血圧、尿蛋白、総コレステロール、HDLコレステロール、GOT、GPT、クレアチニン、血糖値、喫煙状況、飲酒量だけである。これで、脳卒中、がん、虚血性心疾患、循環器疾患での5年以内の各死亡率および全死亡率を計算してくれる。

試しに最近の健康診断の結果を入れてみると、5年以内の全死亡率が0.5%程度となったが、この数字をどう受け止めたらよいのだろう? 同年齢の人の望ましい値が0.4%、茨城県の平均が0.6%と出ているので、まあまあ、標準的と言っていいのかな? 一方で、がんでの死亡率が0.3%程度と出ているので、5年以内に死ぬ場合にはがんで死ぬ可能性が6割程度ということか。。

試しに色々と数字を入れ替えて試してみると、死亡率を高くするのは簡単なのだが、死亡率を望ましい値程度まで下げるのは結構難しい。最高血圧を低くするとどんどん死亡率が下がることがわかったが、いくらなんでも最高血圧50mmHgというのは、危ないだろうし。

面白いのは、アルコールのところ。1日当たりの飲酒量が1合~2合というのが最も良さそうで、飲まないよりも死亡率が低い。試しに、禁酒中を選ぶと、一気に倍近くまで上昇するところなど、いかにも疫学的データを使用したらしい雰囲気があって楽しめる。喫煙の有無の影響は、がんでの死亡率が5割増し程度と思ったよりも小さいような気もする。

対象年齢は40~79歳とのことだが、年齢だけを変えてみると死亡率が劇的に変化する。ちなみに対象範囲外と承知の上で90歳にすると死亡率が25%、110歳だと80%超となる。

それにしても、こんな少数の項目だけで、こんな数字を出しちゃって大丈夫かいな? という心配もしたくなる。少し丁寧な健康診断なら必ず含まれているような心電図とかX線検査などの結果がなくても、確かに疫学的には無理やり数字は出せるんだろうけど、どうなんだろう? そもそも一般的な死亡確率ならば、職場や家庭の環境とか、生活習慣などの要因が大きく影響しそうだが、これらが血液検査等の項目に反映されるとも思えないしなあ。。

それに、もしかしたら茨城県特有の食生活や生活環境の影響があるかもしれないし、どちらにしても目安に過ぎないんだろう。でも、それを十分承知した上でも、いざこうやって数字で自分の死亡率が出てくると、何となく占いのような感じや、それよりも少しリアルな変な感触がしてくる。。 これで、もう少し死亡確率の数値が大きくて、改善効果が大きく出るような状況になると、頑張って体質改善をする気になるのかもしれないけど、それはそれで死亡率を下げるために生きているみたいで変な感じだよな。。。

ちなみに成分献血をすると、上記血液検査項目のうち、HDLコレステロールクレアチニン、血糖値以外の数値は測定してくれる。これらの項目がこの手の病気の判断に重要なら、測定してくれるとありがたいのだが。

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2005/02/25

食品添加物製の超撥水スプレー

FujiSankei Business i(2/25)のニュース。吸っても安心、撥水スプレー 慶大発ベンチャーSNTが開発

 慶応大学理工学部の白鳥世明(せいめい)助教授が社長を務めるベンチャー、SNT(千葉県市川市)は、体内に吸い込んでも安心な材料を主成分とした撥水(はつすい)スプレー剤を開発した。無色透明で、繊維、プラスチック、ガラスなどに幅広く使え、まずは自動車ボディーの保護向けに採用される見込みだ。

 市販の撥水スプレーは、フッ素系樹脂が多く使われているが、吸い込むと肺障害などを起こす危険があり、換気面で注意を要する。新しいスプレーは「人にやさしい製品」として普及が期待できる。

 SNTは、物質の構造をナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)単位で制御するナノテクノロジーの応用製品を開発している。新しい撥水スプレーを物質に吹きかけると、その表面に数百ナノメートルの細かい凹凸ができる。水がかかっても、この凸部分に水が支えられて水滴になるので、水を弾くというのがミソだ。

 スプレーには複数の無機や有機物質が混合されているが、すべて食品添加物として使用できるものを使った。溶剤も水系のものを使える。撥油性は市販のものに及ばないが、撥水性ではむしろフッ素系よりも優れているという。

というもの。化学的な手段ではなく、物理的に撥水性を実現しているようだ。この白鳥先生のベンチャー、SNTのホームページに行ってみたら、何とSNTとは「白鳥ナノテクノロジー」のイニシャルらしい。。。 今回のニュースについての情報は載っていないようだが、関連記事としてはハスの葉構造で超撥水  環境負担少なく繊維などに微細突起という記事が載っていた。
 開発したのは、繊維や有機系薄膜の表面を水をはじくように加工する技術。繊維や薄膜の表面で二書類の樹脂材料を反応させて大きさが数マイクロ(マイクロは百万分の一)メートルの凹凸を形成する。次にセラミックス溶液につけてから乾かすと、数マイクロメートルの凹凸の表面に数十ナノ(ナノは十億分の一)メートルレベルの微細な突起ができる。

 大きさが違う凹凸構造の組み合わせはハスの葉の表面と似た構造で、水をはじく。水を垂らすと球状になる。

ハスの葉の表面の顕微鏡写真は日立サイエンス ミクロアイで見つかった。実は、ハスの葉の撥水性はその物理的な構造だけではなく、ワックス状の疎水性物質で覆われていることも効いているようだ。

慶応大学理工学部 白鳥研究室で探してみると、超撥水膜の研究に原理が載っていて、超撥水膜の作製についてには、2種の高分子を交互吸着させる方法と溶液からチタニア膜を析出させる技術を組み合わせた超撥水膜の作製法が載っている。

ハスの葉状構造を利用するという点では、同じ慶応大学の理工学部の朝倉研究室でも周期的凹凸構造の形成による撥水性及び光学特性に優れた表面の作成というよく似た研究をしているし、こちらは光散乱性を化粧品に応用しているようだ。

また、従来のフッ素系等の撥水剤の撥水性をハスの葉構造で強化するアイデアは、フロロテクノロジーの製品説明にも出てくるから、既に実用化されている。また、帝人 RECTASという繊維はハスの葉構造を採用した超撥水繊維らしい。

超撥水性の理論的なお話は、ダイキン工業の最もよく水をはじく高分子材料はが参考になる。

今回の技術は、食品添加物として使用できるものばかりを原料として、しかもスプレーによって超撥水膜が形成できるということだから、かなり異なる技術というか、相当に技術的に進歩しているように思える。どうやって対象物の表面と結合させるのか、どうやってスプレーによって特異な表面構造を作るのか、という点が技術上のポイントだろうが、どう実現しているのかは謎だ。。

*数百ナノメートルというのは、以前はサブミクロンと呼ばれていたのだが、今や立派にナノテクノロジーの仲間だ。

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2005/02/24

32000年前の微生物が蘇生

asahi.comの記事(2/24)。3万2千年ぶりに目覚めた 太古の微生物、NASA発表

 アラスカの永久凍土の中で見つかった約3万2000年前の微生物が、氷がとけると活動を始めた。米航空宇宙局(NASA)のマーシャル宇宙飛行センターが23日、発表した。NASAによると微生物は新種で、太古の微生物が生きたまま封じ込められていたのは極めて珍しいという。

 微生物は、常に零下4度に保たれている永久凍土の中で00年に見つかった。約5年かけて分析したNASAの研究者によると、マンモスやサーベルタイガーと同じ時代の更新世の氷河期のものとみられる。永久凍土のサンプルを顕微鏡で詳しく観察すると、氷がとけた水の中を微生物が泳ぎ始めたのが確認された。

 今回の件とは別に、欧州宇宙機関(ESA)は23日、火星の赤道付近に氷の海が存在していると発表している。NASAの研究者は「火星の氷の中にも、微生物が生きたまま封じ込められているかもしれない」とロイター通信に語った。

どんな微生物なのか書かれていないが、大昔の微生物が突然現代に生き返るというのは、SFチックなイメージの膨らむ話である。NASAのサイトを探したのだが、該当する記事がみつからない。LIVE SCIENCEに、少し詳しい情報と問題の微生物の写真が掲載されている。

朝日の記事では「泳ぎ始めた」と書いてあるから、鞭毛とかがついたような生物をイメージしたのだが、写真を見るとそうでもない。どうやらバクテリアの一種のようで、学名は Carnobacterium pleistocenium と書かれている。Carnobacterium属とは乳酸菌の一種だ(参考:よつ葉マガジン 用語集)。この学名で調べてみると、NASAの研究者がこのバクテリアに関して書いた論文の要旨がみつかった。

アイスコアの微生物分析に書かれているように、ヒマラヤや北極の氷河のアイスコアからさまざまな生物が見つかっているようだが、今回のように生き返ったというのは初めてのことらしい。

大昔に地球上で生存していたけど、現在は存在しない生物が生き返るというのは面白い状況だ。(大掛かりな話としては例のマンモス再生計画みたいなのもあるけど。)今回のサンプルは汚染のないように厳重に管理されているのだろうが、考えてみれば、自然に氷が解けて生き返ることもありえない話ではないし、遺伝子プールという観点からは、なかなか興味深いものがありそうだ。

先のLIVE SCIENCEのニュースからリンクされていたWild Things: The Most Extreme Creaturesに書かれているように、微生物はとんでもないと思えるような環境中にも生息しているわけで、火星やエウロパなどに似たような微生物がいてもおかしくないという話も確かに否定できない。

もっとも、一旦凍った生物が温度が上がって解けたら動き出すってのは聞く話。とすると、別に数か月後であろうと何万年後であろうと同じことだという気もする。問題は如何に良い状態が長期間保存されているかということの方だろうか。。

ただし、たまに見聞きすることのある、金魚を液体窒素で凍らせるデモンストレーションは、水商売ウォッチング掲示板の金魚の蘇生スレッドで紹介されているように、表面だけを急速冷凍し、内部は普通に生きている状態ですぐに解凍したりするらしいので、あまり素直に信じ込まない方が良さそうだ。しかし、このツリーの生物の凍結生存で紹介されているように、それなりの条件を満たせば凍結されても死なない生物は結構いるんだそうだ。

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2005/02/23

サメ撃退装置とロレンチーニ器官

CNN.co.jp(2/22)の記事。電流利用のサメ撃退装置が好評、害及ばさずと豪州企業

オーストラリア・アデレード──オーストラリア南部アデレードの企業が開発した、電流を利用したサメ撃退装置「シャーク・シールド」の利用者が増えている。オーストラリアの海岸部ではサメに襲われる事故が後を絶たないが、サメにも人間にも害を及ぼさないとするこの装置を使えば、海中に長時間、安全にいることが出来るとしている。

サメは獲物に襲いかかる際、目を守るために目を閉じ、頭部にある感知器官で、獲物が発する微弱な電流を察知する習性を持つ。

シャーク・シールドの仕組みは、この習性を利用したもの。海中にいる人間の周囲5~8メートルに、サメの吸収能力を超えた強い電流を流し、サメにとって嫌な場所にして撃退する。

強い電流に触れた場合でも、サメの器官を一時的にけいれんさせるだけで、電流の流れている場所から離れれば、けいれんはおさまるという。

装置を開発したシーチェンジ・テクノロジー社によると、この技術は10年以上前に、南アフリカで開発されたものだが、一般向けに商品化されたのは、ここ最近のことだという。

同社では、ダイバーや海中作業者向けのほか、漁師が使う網に取り付ける製品も出している。

サメにも人間にも害を及ぼさずにサメを撃退できるとはなかなか優れものだ。サメによる被害は、NEWS.com.auの記事によると、
The 2003 International Shark Attack Files reported 61 unprovoked shark attacks including seven deaths: two in Australia; two in the US; and one each in Brazil, Egypt and South Africa.

The attacks rose above 57 in 2003, but were fewer than 63 in 2002, 68 in 2001 and 78 in 2000.

However, the attacks have been rising since the beginning of the 20th century, and reached their high point in 1990, with 481 in 10 years, according to the group, which keeps the worldwide statistics.

ということで、全世界でサメに襲われた事件が1年間に数十件、死者は10人以下のレベルであり、予想に反して随分と少ない。20世紀に入ってから増えているが、それは決してサメの側に変化があったわけではなく、単純に海に入る人の数が増えたためということらしい。ということは、CNNのニュースの冒頭にある「オーストラリアの海岸部ではサメに襲われる事故が後を絶たない」というのも大げさなようだな。

一番気になるのは、サメが獲物を襲う際に目をつぶり、代わりに獲物が発する電流を察知するというところ。少なくとも、人は水中に電流を放出したりしないように思えるし、人を襲うときに目をつぶっているものなのだろうか? この記事の元はCNN.comのDivers embrace anti-shark deviceだが、問題の部分は

When a shark comes in to attack, it automatically closes its eyes as a way of protecting them. With no sight, it detects movement with a tiny sensor in its nose, which picks up the electrical current of its prey.
とあり、日本語記事は英文を忠実に翻訳しているようだ。

サメの部屋のサメの感覚によると、確かにサメは獲物を襲うときに瞬膜というもので眼を保護するし、生物の生体電流を感知するロレンチーニ器官というものを備えているのだそうだ。それだけでなく、よく言われるように、嗅覚が非常にすぐれていて、わずかな血の臭いをかぎ付ける能力があったり、視力や聴力も相当に優れているようだ。

このロレンチーニ器官について、今ひとつわからなかったのだが、どうやらサメの海に書かれているように、魚の動きを数十cm以内の距離で感知したり、地磁気を感知する、非常に高感度のアンテナのような物のようだ。獲物が水中に発する電流とは何だろう?と思ったが、そうではなくて生体内の電位の変化(筋電や神経パルス?)を感知するようだ。すごい能力である。。

なるほど、それだけ高感度であれば、水中に微弱の電流を流すだけで嫌がるだろうことは容易に想像できる。SeaChange Technology社のShark Shieldの説明ページに解説記事が載っているが、ざっと見た範囲ではロレンチーニ器官や装置仕様についての詳細情報は特に得られなかった。

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2005/02/22

「世間のウソ」

実は著者のメールマガジン、ガッキィファイター(有料)を購読している。TBSラジオのサイエンス・サイトークというトーク番組の内容が、新潮OH!文庫から3冊出ており(番組は続いているけど、刊行は止まってしまっているのが残念)、著者とはこのシリーズで出会った。著者はもともと文系なのだが、このトーク番組では科学の専門家との対談が、非常に科学的なレベルで成立しているのが印象的で、中西準子さんとも対談している。一方ダイオキシン騒ぎの時に、その虚構をいち早く見抜いた(「文藝春秋」1998年10月号)ことや、「週刊金曜日」や「買ってはいけない」に対して終始論理的に反論してきたことでも一部では有名だ。

新潮新書 099
 世間のウソ
 日垣 隆 著 bk1amazon

本書はかなり良く売れているそうだ。有料メルマガの読者なので、頼めば著者直筆サイン入りの本を入手することもできたようだが、普通に書店で初版を購入した。

毎週のメルマガで見たような話題がほとんどなので、新鮮味はないが、まとまっていることはありがたい。我々が日頃なんとなく「そんなもんだ」と思っていることの根拠がかなり危ういものであることや、日々のニュースに関しても、その裏側を常に意識して受け取らないといけないことを痛感させられる。

といっても、本書は別に誰かの陰謀を暴くことを主眼としたわけではなく、あくまでも、物の見方を少し変えてみると世の中が違って見えるよ、ということを多くの実例をもとに教えてくれるものだ。まあ、いわゆるメディアリテラシーの一つとして多くの人がこのような物の見方を身につけていることが望ましいのだろうと思われるが、著者もまえがきで書いているように、副作用として多少皮肉っぽくなるという問題がありそうだ。

第一章がリスクをめぐるウソ、第二章が事件をめぐるウソ、第三章が子どもをめぐるウソ、第四章が値段をめぐるウソ、第五章が制度をめぐるウソ、ということで全部で15のテーマについて述べられているのだが、残念ながらそれぞれの話題についての突込みが分量の制約なのか浅い傾向があるので、例題として見る分には良いのだが、個々の話題について深く知りたい向きには消化不良気味だろう。

それでも、日々のマスコミ報道に何となく違和感を覚えるようなケース、たとえば、少年犯罪対策として生きる大切さを教えることが本当に有効なのか、有名人の実名報道は行き過ぎていないか、児童虐待は本当に増えているのか、などのテーマにズバリと切り込んでくれていて、考えるきっかけを提供してくれていると思えば許せるだろう。

鳥インフルエンザ問題についても、これをベースとする新型インフルエンザでの世界中の死者を数億人とする科学者たちの予測は恫喝レベルだという著者の主張には、ある程度は同意したいと思うが、あまり軽視するのも逆に危険だと感じさせられた。それはともかく、鳥インフルエンザ騒動のさなかに、ハトやカラスが死んでいたというだけで連日全国ニュースになっているのが異常だと感じるセンスや、この件での日本での直接の死亡者は自殺した養鶏場の経営者だけだったという、極めて皮肉で不幸な事態であったことに気付かせてくれることがすごい。だからこそ、お金を払ってまでメルマガを読む気にさせられるのだ。

これらの問題への著者のスタンスを見ると、まず全体像を捉えることに努め、たとえ専門家が数字を根拠に主張しても、素人なりに別の数値を調べだし、これと比較検討し、何が真実なのかを追求しようとする、非常にシンプルだが素人にはなかなか困難な方法論を貫く姿勢が見られる。

もう一つ重要なのは、著者のこれらの主張が、決して後から冷静になって見直してみたらこうだった、というような後出しジャンケンになっていない点だと思う。毎週有料のメルマガが送られてくるのでわかる(証拠が残っている)のだが、著者は鳥インフルエンザ問題の真っ最中だとか、少年の犯罪事件が起こった直後に、ほぼこの本に書かれているような主張を正々堂々としているのだ。よっぽど洞察力に優れるか、それともとんでもない頑固者か、どちらなのだろうか。

もちろん著者の主張が全て正しいとは思わないし、あくまでもこういう見方もできますよ、という一例として捉えるべきだろうが、それでも、終始一貫して筋の通った見方ができるようになるためには相当に修羅場をくぐってきたのだろうし、これに対して批判するのであれば、覚悟してきちんと論理的に行わないと相手にしてもらえそうもない。

ともかくも、本書はあれよあれよいう間に読み終えられる。それだけ面白いとも言えるのだが、実は新潮新書はページ当たりの文字数が少なすぎるのではないか? 

ということで、手元の各社の新書の1ページの文字数を数えてみた(暇やな~。。)結果を以下に比較して示すが、直感はやっぱり正しかったようで、新潮新書が一番文字数が少なかった。

*あくまでも手元の数冊をざっと見た限りであり、同じシリーズでも本や時期により異なる可能性もある。

岩波新書        42文字×15行=630文字/ページ
岩波アクティブ新書  40文字×14行=560文字/ページ
岩波ジュニア新書   41文字×15行=615文字/ページ
角川oneテーマ21   41文字×16行=656文字/ページ
講談社現代新書    40文字×16行=640文字/ページ
講談社α新書     43文字×16行=688文字/ページ
講談社BLUE BACKS 43文字×15~17行=645~731文字/ページ
新潮新書        39文字×14行=546文字/ページ
集英社新書      42文字×16行=672文字/ページ
宝島社新書      40文字×15行=600文字/ページ
ちくま新書       40文字×16行=640文字/ページ
中公新書        41文字×15行=615文字/ページ
中公新書ラクレ    41文字×16行=656文字/ページ
文春新書        42文字×16行=672文字/ページ
洋泉社新書       41文字×15行=615文字/ページ
丸善ライブラリー    42文字×15行=630文字/ページ
NHK出版生活人新書 41文字×15行=615文字/ページ
PHP新書        41文字×15行=615文字/ページ

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2005/02/21

カルニチン、オルニチンとハイポトニック

NIKKEI NETの新製品ニュース(2/21)から。アサヒ飲料、F1レーサーと共同開発したスポーツ飲料

 アサヒ飲料は3月30日、F1レーサーの佐藤琢磨氏や佐藤氏の所属チームと共同開発したスポーツ飲料「SUPER H2O」を発売する。体液より低い浸透圧に仕上げ、体内に吸収しやすくした。必須アミノ酸とされるBCAAや、オルニチン、カルニチン、有機酸の成分を配合し、運動などの際の持続力を高めるのに配慮した。500ミリリットルペットボトルで140円(税抜き)など。500万ケースの販売を目指す。
いよいよ今シーズンのF1グランプリも後2週間弱で開幕するが、昨シーズンの好調によりすっかり人気の出た佐藤琢磨選手がイメージキャラクターとなったスポーツドリンクのようだ。発売開始が3/30とF1開幕より遅れるのがちょっと残念かもしれない。

この短い宣伝文句の中に含まれるBCAA、オルニチン、カルニチンという用語は一般的にどの程度知られているのだろう? オルニチンとカルニチンは初めて聞いたような気がする。以前、このブログでは鰹だしの疲労回復効果という記事で、アンセリンとカルノシンというジペプチドがカツオのスタミナ物質ではないか、というのを紹介したことがあるがこれは別物のようだ。

アサヒ飲料のニュースリリースによると、

  「SUPER H2O」は、“水のようにクリアな後味で、素早く体を駆け抜ける、いわば水の進化形”という商品コンセプトのもと、素早く水分を体に浸透させるために、体液より低い浸透圧であるハイポトニック設計に仕上げたハイポトニック・スポーツウォーターです。
 また、他のスポーツと同様、またはそれ以上に「集中力」「持続力」が必要なF1レースを考えた中味設定になっています。具体的には、必須アミノ酸(BCAA)、オルニチン、カルニチン、有機酸という成分をプラスしています。味については、佐藤琢磨氏とともに改良を重ね、グレープフルーツをベースとしたフレーバーで、クリアな後味にこだわりました。さらに、カロリーオフで仕上げることによって、様々なスポーツシーンでの飲用はもちろん、日常生活での飲用も意識したものとなっています。
と書かれているが、「素早く体を駆け抜ける」って何だ? 駆け抜けちゃうわけ??  「ハイポトニック」という用語も何気なく使われているが、何だろう? SUPER H2O 専用サイトが出来ているけど、商品の解説は何もない。

浸透圧が体液と同じ状態をアイソトニック(isotonic)、体液よりも低い状態をハイポトニック(hypotonic)と呼ぶようだ。体液よりも高いのはハイパートニック(hypertonic
)ということになる。ポカリスエットとかはアイソトニック飲料だが、これとハイポトニック飲料の使い分けは、ewoman 元気のひみつによると、運動前にはアイソトニック、運動後はハイポトニックを飲むのが良いのだそうだ。味の素のサイトの「アミノバイタル」を科学しよう!の説明によると、今やハイポトニックが主流なのだそうだが、ここの説明は充実している。(結局、アイソトニック飲料を適度に薄めれば良いような気がするが。。)

さて、オルニチンとカルニチンは、アスコム・ダイエットウェブなどで紹介されているように、ダイエットアミノ酸として最近流行りのアミノ酸らしい。カルニチンは肝臓や腎臓でリジンとメチオニンから合成されるペプチドで、脂肪酸をミトコンドリアまで運ぶのに関与したり、ダイエットにも関係している物質らしい。また、オルニチンは筋肉増強ホルモンとして働くアミノ酸で、カルニチンと同時に摂ると脂肪の代謝を促進するとか。。

もう少し詳しい情報としては、オルニチンについては、協和発酵のアミノ酸講座がわかりやすそうだ。また、カルニチンについては、脂肪と血栓の医学というサイトのカルニチンに詳しい。よくみると、アサヒ飲料がそのものズバリカルニチンというドリンクを売っているようだ。

それにしても、この手の用語をインターネットで検索してみると痛感するのが、サプリメントの販売関係サイトの多いこと。。今回のアサヒ飲料のような大手企業が進出する頃には、既にマニアの間では知名度がある程度高まっているというのが前提となっているのかもしれないし、これでオルニチンやカルニチンという用語の知名度が一段と高まるということだろうな。。

ところで、通常の食生活をしている人にとって、これらの成分の充足状況がどんな具合なのだろう? なんか、普通の食品にもそれなりに含まれていそうなんだけど。。 もし不足していたとして、このドリンクをどれだけ摂ればいいのだろう? (成分表も見当たらないし。) とは言え、このドリンクを飲んで頑張る、B・A・R ホンダチームと佐藤琢磨選手の今シーズンの活躍を期待しよう。

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2005/02/18

233回目の献血

前回 1/14に続いて、35日ぶりの成分献血。今回もまた相模大野献血ルーム。血小板成分献血。ここのところ連続して左腕からの採血だったので、前回の場所が跡になっていて、今日は同じ左腕でも針を刺す場所を変えてくれた。そのせいなのか、血の出がやや悪く、返血の際にもやや鈍い痛みがあり、献血終了後もしばらく違和感が残った。後で見たところ、特に腫れたり内出血したりはしていないようだけど。

今回のおまけはTシャツ。色は水色。これで、以前もらった白と濃紺を合わせて無事に3色全部が揃った。

Tshirts3

ところで、日本赤十字のお知らせを見ると、本日2/18付けで英国渡航歴がある方の献血の受入れについてが掲載されている。例の日本での vCJD患者の発生に伴い、

正確な調査結果が判明するまでは、平成17年2月28日から、暫定的に(1980年以降)通算1ヶ月以上の英国滞在歴の有ることが確認できた場合は、献血をお断りさせていただきます。
とある。この話は少し前に聞いた気がするが、まだ実行に移していなかったようだ。実際に、今日の献血の際にも、特にこの辺の基準が変わったとか変わりますというアナウンスはなかったし、問診でも特に聞かれなかったな。。

厚生労働省のサイトには、日本でのvCJD第1症例の確認を受けた献血時の対応についてというお知らせが2/4に掲載されているが、ここには

運営委員会での審議を踏まえ、より予防的な対応として、今回のvCJD患者の渡航歴等が判明し、同部会安全技術調査会での検討を行うまでの間、暫定的に、英国滞在歴1ヶ月以上の献血者の献血を制限することとし、日本赤十字社に対して指導する。
とあり、厚生労働省から日本赤十字への指導が行われて、それを受けて日本赤十字社として方針を発表したのが2週間後の今日となり、実行に移すのに更に10日間かかるというわけだ。vCJDと確定してすぐに(即日)厚労省が献血制限の方針を決めた割には、日本赤十字の対応が遅いと言わざるを得ないような気がするなあ。

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2005/02/17

甘味料「スプレンダ」

NIKKEI NET(2/17)の記事。米飲料2社、相次ぎ新炭酸飲料・消費刺激は不透明

 伸び悩む炭酸系飲料の販売をてこ入れするため、米清涼飲料大手2社が相次ぎ北米で新商品を投入する。コカ・コーラは新たな甘味料を使ったコーラを売り出し、ペプシコはライム味の商品を発売する。昨年両社がカロリー半減を目玉に売り出した新商品は低調とみられ、消費刺激効果を疑問視する声もある。

 コカ・コーラは最近欧米でダイエット志向の消費者に人気が高まっている新甘味料「スプレンダ」を利用する。「ダイエット・コーク」シリーズの7番目の商品として、北米市場で今年前半に発売する予定だ。スプレンダは砂糖が原料だがカロリーはなく、自然な味わいを出せるという。

 ペプシコは4月から5月をめどに「ペプシ」と「ダイエット・ペプシ」の双方にライム味の商品を加える見通しだ。コカ・コーラが昨年初めに発売して人気のあるライム味の「ダイエット・コーク」に対抗する。コカ・コーラは、近く通常のコーラにもライム味を加える予定だ。

ということで、コーラなどの炭酸系飲料には最近ちっとも興味はないのだが、コークが新たな甘味料を採用するということで、「スプレンダ」を少し調べてみた。

まず、コカ・コーラの甘味料を調べてみると、通常のコカコーラが糖類(果糖ぶどう糖液糖、砂糖)で、カロリーは43kcal/100gとなっている。コカ・コーラC2は糖類(果糖ぶどう糖液糖、砂糖)と甘味料(スクラロース、アセスルファムK、アスパルテーム・L-フェニルアラニン化合物)の組み合わせで、カロリーが19kcal/100ml。ダイエット コカ・コーラは、甘味料(アスパルテーム・L-フェニルアラニン化合物、アセスルファムK、スクラロース)だけを使用していて、カロリーは0kcal/100mlとなっている。

さて、スプレンダ入りのコークについてのNEWS RELEASEによると、7番目のダイエットコークとのことだが、これは、Diet Coke, Caffeine Free Diet Coke, Diet Coke with Lime, Diet Coke with Lemon, Diet Cherry Coke, Diet Vanilla Coke に次ぐ新製品ということらしい。名前を見ただけで、無茶苦茶甘そうだなぁ。。そんなに甘いものにこだわらずにお茶でも飲んでりゃいいのに。。

Diet Coke Sweetend with Splenda will feature a blend of Splenda and acesulfame potassium (ace-k) for optimal taste.
とある。 で、スプレンダとは何かというと、低糖質ダイエット向きの甘味料によると、スクラロースの商品名で、甘さが砂糖の600倍、アスパルテームの欠点である熱や酸に対する安定性もあるとのこと。日本では一般向けには販売されていないので、スプレンダを個人輸入するのが流行っているようだ。

スクラロースについては、横浜市衛生研究所の食品添加物データシートにまとまっているが、ショ糖の水酸基を塩素置換したもので、これにより体内で代謝されなくなるためにノンカロリーということのようだ。より詳しい内容としては日本食品化学研究振興財団の資料がある。

実はスクラロースは、ダイエット・コカ・コーラやコカ・コーラC2に既に採用されているのが、今回はその比率を大幅に引き上げるということで、同じノンカロリーでも、甘さの質が異なるということらしい。今度の新製品でも恐らく味の調整のために、スプレンダ単独ではなく、アセスルファムカリウムと共に使われるようだが、アセスルファムKについてはこちら

笑bizによると、アメリカでは甘味料の包装色で種類が判別できるようだが、スクラロースが人気急上昇中で、黄色い袋が急増しているとのこと。(茶色:砂糖系、ピンク:サッカリン系、水色:アスパルテーム系、黄色:スクラロース系)

ステビア、エリスリトール、アスパルテーム、キシリトールなどなど、色んな甘味料があるが、全体を網羅したものとしては、三栄源エフ・エフ・アイの説明や、林原商事の糖の基礎知識などが勉強になる。

なお、L-フェニルアラニン化合物は、アスパルテーム由来でフェニルアラニンが含まれるために表示されているようだ。

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2005/02/16

COPDを知ってるか?

日経新聞の2/16の夕刊の「からだのお話」というコラムに、『呼吸困難招く「タバコ病」COPD』という記事が掲載されていた。

 愛煙家の後輩記者に「COPDを知ってるか」と聞いたら、「なんですか、それ」と返ってきた。COPD(慢性閉そく性肺疾患)とは別名タバコ病。あまり知られていないが、世界保健機構の統計では、現在の世界の死亡原因の4位にランクされる怖い病気だ。「患者の約9割は喫煙者。症状が進むと、呼吸困難に苦しみ、体を動かすこともつらくなる」と、昭和大学付属豊州病院の田中一正助教授は説明する。

 ほこりや大気汚染も原因にはなるが、喫煙の年数と量が多いほど発病する可能性が高い。以前は慢性気管支炎や肺気腫とも診断されていた。有害物質を長年吸い込んできたことが原因で、空気の通り道である気管支が炎症を起こし、肺の細胞が破壊され、呼吸機能が低下していく。

 アレルギー反応などで気管支が狭くなるぜんそくと症状が似ている。ぜんそくよりやっかいなのは、COPDは重症になると呼吸が苦しい状態が持続し、回復させる有効な治療法がないことだ。

 国内の患者数は20万人程度とされていたが、これは実際に治療を受けている人数。COPD疫学調査会が40歳以上の約2700人を対象にした調査では、なんと12人に1人がCOPDと判定された。多くが病気に気がついていなかった。このデータから推計すれば、患者数は500万人を超えることになる。 (後略)

というものだが、2年前までヘビースモーカーだった割には、COPDなんて聞いたことがなかったぞ。COPDは、Chronic Obstructive Pulmonary Disease の略だ。調べてみると、Sankei Web にグラフ付きの喫煙で年間483万人死亡 米研究グループが調査があった。喫煙が原因の死亡の内訳を見ると、心臓血管系の病気がトップで、次が肺がんとCOPDのようだ。

COPD情報ネットには、関連情報が多く掲載されているのだが、COPDの患者数によると、アメリカではCOPDによる死亡率が相対的に増大しているようだ。日本でもCOPDによる死亡者が増えているようだ。

うーむ。何となく怪しげな論理を感じるのは気のせいだろうか? 途上国では先進国よりもCOPDが多いのは、他の有害物質の影響や途上国の喫煙率が高いためかもしれないが、そうだとすると先進国で今でも増え続けているのが何だかスッキリしないぞ。。 COPDに罹っていても、他の死因で死亡する人もいそうな気がするし、そもそもCOPDの人がCOPDと診断される率をどう考慮しているのだろう?

このページにはタバコの消費量とCOPDによる死亡数との関係も載っているのだが、タバコの消費量の増加から10年遅れて肺がんによる死亡が増えて、それからさらに10年遅れてCOPDによる死亡が増加する、と書かれている。確かに、発病までの時間経過はそんなものかもしれないが、それにしても、20年前頃に喫煙率や受動喫煙やらの状況がどんどん悪化していたようには思えないのだけど。。

むしろ、高齢になるほどCOPDになる率が劇的に高まるようだし、この病気に罹ると今のところは有効な治療法がないようだから、この数十年の間に他の病気での死亡率が医療の進歩で減少した結果、長生きするようになったために、COPDが相対的に増えているだけのようにも見える。でも、本当に高齢者の有病率がこんなに高い(60歳代で12%、70歳以上で17%)と、身近にも沢山該当者がいそうなものだが、その割に知られていない病気だな。。

日本医師会の健康の森には、喫煙指数という目安が載っている。これってタバコをやめても数値は減らないのかなあ? COPDチェックをしてみたが、自覚症状は全くないのだが、過去の喫煙の影響で「COPDにかかる可能性があります」と判定されてしまった。

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2005/02/15

シックカー

MSN-Mainichi INTERACTIVE(2/15)の記事。自工会:「シック・カー」ストップへ統一基準 揮発性有機化合物、車内の濃度低減へ

 ◇07年度新車から

 日本自動車工業会は14日、頭痛やめまいが起きる化学物質過敏症「シックハウス症候群」の一因とされるホルムアルデヒドやトルエンなどの揮発性有機化合物(VOC)について、自動車内の濃度を低減する取り組みを始めると発表した。VOCの車内濃度などに一定の基準を設け、07年度から国内で生産、販売する新型乗用車に適用。08年度以降はトラックなど商用車にも取り組みを広げる。自動車業界が一体となってVOC低減に取り組む「シック・カー」対策は世界初という。

 VOCは、新築や改装直後の住宅、ビルなどで鼻やのどに刺激を感じる体調不良を引き起こすシックハウス症候群の原因物質。厚生労働省が13物質について室内濃度の指針を定めて、低減活動を進めている。

 自動車でもシートやダッシュボード、内張りなどに使用される接着剤などが原因で「不快に感じた」というユーザーの声が自工会に寄せられている。このため、自工会は接着剤や塗料に含まれる溶剤の水性化などを推進して、車内のVOC濃度が厚労省の指針を下回る濃度になるよう業界全体で目指すことにした。

 具体的には、「車室内VOC試験方法」を策定。ドア、窓を密閉した車内でホルムアルデヒドの濃度を測定するほか、トルエンはエアコンを作動させた状態での濃度を測定するなど統一の指針を設けた。トラックについては、商用車用の基準を今年度中にまとめて08年度以降からの適用を目指す。

 日産自動車はすでに、昨年発売したミニバン「ラフェスタ」で、VOCが発生しにくい吸音材を活用するなど独自の対応に乗り出しているが、「自工会の指針に基づき、車内のVOC低減をほかの車種にも広げていきたい」と話している。また、マツダも車内での「シックハウス症候群」が指摘されたことを受けて、99年から一部車種にホルムアルデヒド除去装置付きフィルターをオプションで販売している。

シックハウス、シックスクールに続いて、ついにシックカーという用語が出てきたのか。。 それにしても、「化学物質過敏症」と「シックハウス症候群」をイコールとしたような冒頭の表現は如何なものか? このブログでは関連した内容として
 2004/02/15 「化学物質過敏症」最新情報
 2004/02/28 室内空気質健康影響研究会
 2004/10/21 「シックハウス」
という記事を書いているが、両者は区別するべきだと考えている。

同じニュースを扱っているFujiSankei Business iの記事にもシックカーという言葉が出てくるので、これは自動車工業会がそういう用語を使っているのかと思いきや、自動車工業会のニュースリリースにはシックカーという用語は出てこない。しかし、調べてみるとここのようにシックカーという用語は以前から使われているようだ。

シックハウス、シックスクール、シックカー、の他にどんなのがあるかと思って探すと、シックビルディング、シックオフィスなんてのが見つかる。さらには、シックホスピタルなんてのもあるが、シックハウスのことを知らないと何だかわからない単語だな。。

「シックハウス」(中井里史著)によると、シックハウス症候群は和製英語だが、1970年代に欧米でシックビルディング症候群(Sick Building Syndrome, SBS)が問題になったことが語源となっているそうだ。 ためしに Google で "sick car syndrome" を検索してみると、数は少ないが欧米のサイトもヒットするので、一応通じるようだ。さすがに "sick hospital syndrome" で検索してみると、こちらは相当違うニュアンスで使われているようだ。。

今後、他に出て来そうな用語を予想すると、シックトレイン、シックバス、シックエアプレーンなんてのが思い浮かぶが、シックトレインや、シックバス、あるいはシックシティなんて具合に、既に違う意味で使われてるようだ。。

ちなみに、世の中には新車の香りを好ましいと思う人もいるようで、新車の香り芳香剤なんてのもあるし、セルシオの香りなどのように車種限定の芳香剤もあるようだ。

もちろん、ここに書かれているように、個々の成分は決して身体に良いわけでもなし、気になる人は換気を十分にするのが一番だろう。最近だと光触媒による脱臭を唄った商品も多いようだ。(光触媒といいながら怪しいものもありそうだけど、ここのように効果がこれで十分かどうかはともかくも、一応脱臭されることが実証されているものもある。)

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2005/02/14

温泉からスカンジウム

MSN-Mainichi INTERACTIVE(2/12)の記事。希少金属:草津温泉から採取計画 原研が捕集布開発

 日本有数の湧出(ゆうしゅつ)量を誇る群馬県・草津温泉に溶け込んだ希少金属を採取しようと、日本原子力研究所高崎研究所(群馬県高崎市)と同県草津町が、4月から共同研究を始める。工業用触媒に使われるバナジウムや、1キロ200万円もするスカンジウムなど産出量が少なく高価な金属を、同研究所が開発した捕集用の布を使い、温泉から取り出すという世界初のユニークな試みだ。

 同研究所環境機能材料研究グループは、ポリエチレンでできた不織布に放射線を当て、さまざまな金属と結びつきやすい性質を加える技術を開発した。この布をフィルターに使うと、液体中に含まれる微量の金属元素を集めることができる。海水からのウラン採取実験では、沖縄県での採取量が青森県の2倍だった。「水温が高い方が捕集効果が高そうだ」と、温泉での採取を計画した。

 共同研究は2年間で、同研究所が温泉に適した捕集布の開発を進め、町は大量の温泉を効率的にフィルターに通すシステム作りに取り組む。1月下旬には、温泉を放流している同町の湯川で捕集布を使い実験した。白い捕集布が茶色に変色しており、狙った金属を採取できたかどうか分析作業を進めている。

 同研究所の試算によると、草津温泉の源泉の一つ「万代鉱」からは1分あたり6000リットルの温泉がわき出し、スカンジウムが年116キロ、バナジウムが年725キロ、ヒ素が年32トン採取できるという。スカンジウムはエックス線の研究材料として貴重、バナジウムは重要金属として国家備蓄の対象だ。ヒ素は半導体の原料になる。金が含まれている可能性もある。しかし、採算がとれるかなどのコスト面は今後の検討課題という。

 同研究所の玉田正男グループリーダーは「不織布を使った金属捕集材は、他では作られていない。適切な布のサイズや温泉に浸す時間、季節変動などを調べ、実用化に生かしたい」と話している。

というもの。まあ、温泉から流れ出て海に入って希釈されてしまうことを考えると、湧出した地点が最も濃度が高いだろうから、ここで有用物を採取しようというアイデア自体は悪くなさそうだ。

この原研の不織布による金属採取技術だが、日本原子力研究所の高崎研究所のサイトで環境浄化材料の研究で紹介されている。放射線グラフト重合という方法により、アミドキシム基を付与すると、金属イオンを取り囲んで捕集することができるようだ。

この技術は、1998年の報道発表によると、海水からバナジウムやコバルト、それにウランを採取しようという計画の一環として実際に実験されたようだ。まあ、吸着床を海に沈めておくだけで有用金属が採取できるのならば、言うことなさそうだが、この発表から既に5~7年が経過している割には実用化されていないようだし、コスト面や技術面で問題があるんだろうなあ。

草津温泉からスカンジウムが年間116kgも採れるというのも面白そうだが、6000L/minということは、スカンジウムの含有量は約 37ppbということになるかな。こんな低濃度のものを集めてこられるとしたら確かにすごい技術なのだが、捕集効率が100%あるわけもなし、どうなんだろう? 

それにしても、スカンジウムとはまた珍しい元素と思い、検索してみた。温泉関係では別府温泉粉末という商品が引っかかってくるが、含有ミネラルが「炭酸ガス、水素、、、窒素、、スカンジウム、ユウロビウム、ベリウム」になっている。炭酸ガスや水素や窒素は普通はミネラルとは呼ばないだろうし、ユウロビウムやベリウムなんて元素はない。(ユウロピウムとベリリウムだ。もっとも本当に含まれているのかどうかは疑問だが。)

それよりも驚かされたのは、スカンジウム製のバットテントフレーム自転車フレームが見つかったこと。

これはもちろんスカンジウム単体なわけはなく、アルミ合金の一種のようだ。韓国のYUNAN Aluminumや、アメリカのEASTON社のQ&AInstructionなどを読むと、元々は旧ソ連のミサイルやミグ29で使われた合金らしく、添加したスカンジウムが溶接等の熱処理の際のアルミ結晶粒子の粒成長を抑制し、結果として耐熱性軽量高強度合金となるようだ。詳しい内容は、Scandium Information Centerで入手できる。

チタンの場合には純チタンもチタン合金も「チタン」と呼ばれたりしていて紛らわしいのだが、それでも主成分はチタンである。スカンジウムの場合には、さすがに純スカンジウムということは金額からしてもありえなさそうだが、スカンジウム合金といってもスカンジウム含有量はせいぜい数%程度のようだから、ちょっとこの呼び方には抵抗があるなあ。それでも、アウトドア用品と自転車の世界では、既にある程度の知名度と地位を確立した材料のようだし、今後は一般用にも少しずつ使われるようになるかもしれない。

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2005/02/11

「子どもが減って何が悪いか!」

「!」が付いていることもあり、随分挑戦的なタイトルである。これを見たときは、今いろいろと議論を呼んでいる少子化問題や高齢化問題をシニカルに見たものか、あるいは日本では少子化が問題視されてるけど世界的には人口増加が問題であり何を騒いでいるのか、というような話かな、と思ったのだが、帯には『さらば、トンデモ少子化言説 「男女共同参画社会」は、少子化対策にならない!』とある。

「もう牛を食べても安心か」の書評を書くときにみつけた、群馬大学の中澤港さんのところで、この本の書評を見て読んでみる気になった。

ちくま新書 511
 子どもが減って何が悪いか!
 赤川 学 著、bk1amazon

著者のホームページに正誤表が載っているので、チェックするのが良さそうだ。

さて、amazonやbk1でも中々熱い書評が寄せられているようだ。自然科学系の本の場合に比べて、相当に話題性があることの表れだろう。本書の前半は、現在の主流派の「男女共同参画社会を目指すことが少子化対策として有効である」という主張の根拠となるデータを統計的に再検証して、これは誤った主張であると論破している。後半は、我々がどんな社会を目指すべきなのかという著者の主張となっており、子どもが減ったっていいじゃないかという結論へと導かれる。

特に前半の統計的な検証は、政府を始めとして随所で使われている統計データが欺瞞に満ちたものであることを丁寧に暴いている。いわゆるリサーチリテラシーの基本に忠実に、出てくるデータを鵜呑みにせずに、原典に当たってみたら、何と相当に恣意的に統計が利用されていたというわけだ。この主張の統計学的な確かさについては、中澤さんの書評を参考にしてもらうのが良いだろう。

問題は、数字や統計的な用語が沢山出てくる割には、平易な解説をする努力やグラフ等を駆使してわかりやすく説明する工夫がほとんど見られないことだ。そのため、恐らくこの本を読むであろう一般の人々や、男女共同参画社会の推進者に対して、著者が主張したいことが十分に伝わっているかどうか、かなり怪しい。縦書きの文章中に数字が沢山書き込まれていても、読んだだけではまるで理解できない。紙面の都合もあったのだろうが、ここが本書の確かさを決める部分なのだから、もっと図表を多用すべきだったと思う。

女性の社会参加が進んだ国ほど出生率も高いというようなデータは、統計的にはかなり都合の良いデータだけを抜き出したものだということが明らかにされるのだが、確かにこの手の複雑な、多変数が関与する問題を、そんなに単純な関係で表わそうとすることに既に無理があると言えるだろう。貧しい国々は一般的に子沢山なのに、それをとりあえず無視して、適当な範囲の先進国内だけで比較することの合理性も十分に怪しい。しかし、その先進国内だけの比較で見られる相関関係が、決して因果関係ではないことが明らかとされている。さらにここで選ばれた国は、かなり恣意的に選択されたものであることも指摘されているのだ。

子どもが減っている原因として、晩婚化や未婚化が大きいはずなのに、子育ての経済的な負担を減らしたり、男性の子育てへの参加を促進するような対策が少子化対策の切り札として出てくることへの違和感が、本書を読むとすっきりとさせられる。著者がしつこいくらい何度も書いているように、男女共同参画社会を目指すことを否定するわけではなく、それは少子化対策の決定打とはならないだろうということだ。

著者も指摘するように今さら昔の子どもが多かった時代に戻ることを目指しているわけでもあるまいし、何故、貧しい社会は子沢山で、豊かになるほど少子化していくのか、という一般的な傾向への考察も不十分なままでいいのかという疑問もある。むしろ少子化社会というのは、ある意味で我々がずっと目指してきた理想的な社会の一つの側面なのだろうという気がする。

本書では、従来の少子化問題に関する様々な主張がかなりバランス良く紹介されているようで、従来のそれぞれの立場の問題点を丁寧に述べている点も好感が持てるし、参考になる。もちろん、著者の主張に対する反論も収録されており、それに対する著者の反論も載っている。

少子化現象は避けることができないものであり、むしろ少子化社会の到来を前提として社会設計をするべきである、という本書の主張は極めて正論だと思う。ただし、では少子化の進んだ社会の行き着く先がどんな姿なのか、そこで豊かな生活を送ることができるのか、といったイメージがほとんど描かれていないので、読んだ後にちっとも元気が出てこない。むずかしい問題だろうが、あと一歩踏み込んで、あるべき社会像を提示してくれればありがたかったのだが。。

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2005/02/10

DNAセンサーチップ

asahi.com(2/10)の記事。極小チップで患者の体質の違い判別 日立が基本技術開発

 薬の効き方や副作用などに影響を与える遺伝子レベルの微妙な個人差を超小型チップ(2.5ミリ角)を使って解析する技術を日立製作所が開発した。これまで必要だった大がかりな解析用装置も不要で、短時間で簡単に診断できるという。患者の体質の違いによって薬を使い分ける「テーラーメード医療」の進歩に役立つ、と同社はPRしている。

 ヒトのDNAは4種類の塩基30億個でできている。その塩基配列の違いが姿形や体質などの個性を決める。

 日立は、データを送受信するためのアンテナを内蔵した超小型で水にも強いチップを開発。血液などから取り出したDNAの溶液に、新チップを入れ、そこに基準となる別のDNA断片の入った特殊な試薬をまぜる。塩基の配列に違いがあると試薬に反応してエネルギーによって光が生じる。チップがそれを感知してアンテナから容器の外に置いた読み取り装置に送る。読み取り装置では塩基配列の違いを解析できる。

 これまでは、機材は高額で小規模医療機関まで普及は見込めなかった。日立は「基本的な技術開発に成功した段階だが、5年後には医療現場で使える技術レベルを確立したい」と話しており、実現すれば、小さな病院でも、患者一人ひとりの体質にぴったり合った医薬品を処方してもらえることにつながる、としている。

どんな原理で塩基配列の違いを解析できるのか、よくわからない記事である。特に「試薬に反応してエネルギーによって光が生じる」というのがわからない。何だろう? 日立のサイトには今のところ関連報道は掲載されていない。FujiSankei Business iのニュースを読んでも、原理がわかるようには書かれていない。

一方、NIKKEI NETの記事によると、

 光センサーを内蔵したICタグを活用。血液などから採取した試料にタグと試薬を加える。試薬は見つけ出したいSNPとだけ反応し、わずかな光を発する。この光をセンサーでとらえ、タグから無線で読み取り装置に通信する。血液採取から1時間以内で結果が出るという。複数種のSNPの有無を同時に検査することも可能だ。
ということで、検査試薬が特定の塩基配列と選択的に反応し、(恐らく外部から紫外線等を当てて)その部分が蛍光を発する仕組みなのかな? 試料中に目的の遺伝子がなかったときには、未反応のままの試薬の発色部分が残りそうだけど、こいつは発光しないのかな? それにしても、コストと感度の兼ね合いだろうけど、別に無理に小さなチップにしなくても良さそうな気もしないではない。。

従来のDNAチップの場合には、反応させたチップを検査する装置(スキャナー)が高価だったのが、この技術だと電波を検知するだけだから安価な装置で解析できるということらしい。従来の方法であれば、例えば FUJIFILMのイメージアナライザのようなものが必要ということになる。一方、東芝のジェネライザーの説明によると、東芝方式は高価な検査機器が不要な電流検出型チップとコンパクトな検査装置を売りにしているみたいだ。また、松下と理研は、電気泳動法によってSNPsを検出する卓上装置を開発しているようだ。

ということで、今後はこの手の遺伝子解析はどんどん手軽で安価な方法になって、身近なものになっていきそうだ。

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2005/02/09

レバ刺しで食中毒

YOMIURI ON-LINE(2/9)の記事。「レバ刺し」食中毒のおそれ、厚労省HPで注意促す

 「レバ刺し」として食べられている生食用の牛の肝臓に、下痢や腹痛などを引き起こす食中毒菌カンピロバクターが存在することが、厚生労働省研究班の調査で分かった。

 肝臓表面の洗浄だけでは除菌されないため、厚労省は、抵抗力の弱い高齢者や乳幼児が食べないように注意を促すことを、近く都道府県などに通知する。1問1答式の注意文書も、厚労省ホームページに載せる。

 研究班は、全国9か所の食肉衛生検査所で、生食用に処理された牛の肝臓を調べた。その結果、胆のう内の胆汁で236検体のうち60検体(25・4%)、胆管内の胆汁142検体中31検体(21・8%)からカンピロバクターを検出。胆汁は肝臓でつくられるため、肝臓内部も汚染されていることが証明された。

 カンピロバクターは消化管で増殖することから、従来は肝臓には存在せず、内臓を処理する際に肝臓表面に付着すると考えられていた。

 研究班は「汚染は、消化管から胆のうへ、さらに肝臓の胆管へ移行すると考えられる。肝臓内部がカンピロバクターに汚染されていることなど、十分な情報提供が必要」と指摘。ただ、カンピロバクターは加熱すると死滅するため、厚労省は「レバーの内部までよく火を通せば、食中毒の危険はない」としている。

 ◆カンピロバクター=牛や豚、鶏などの消化管にいる細菌。食肉や飲料水を汚染し、少ない菌量でも発症するのが特徴。腹痛や下痢、発熱などを起こすが、重症化するケースは少ない。乾燥に極めて弱く、65度以上の加熱で死滅する。2003年の同菌による食中毒件数は491件(患者2642人)で、原因別では最も多かった。

ということで、厚生労働省のホームページに載ったのは、牛レバーよるカンピロバクター食中毒予防について(Q&A)

読売新聞の記事では、レバ刺しが危険であるということを指摘しているのだが、厚労省のQ&Aには、実際にこのカンピロバクターによる食中毒の発生状況について、「2003年に発生したカンピロバクター食中毒のうち、原因食品として鶏肉が疑われるものが89件、牛生レバーが疑われるものが10件認められています。」とあり、鶏肉が結構多いようだ。そもそも、この食中毒の症状が、

 症状については、下痢、腹痛、発熱、悪心、嘔吐、頭痛、悪寒、倦怠感などであり、他の感染型細菌性食中毒と酷似します。多くの患者は1週間で治癒し、通常、死亡例や重篤例はまれですが、若齢者・高齢者、その他抵抗力の弱い者は重症化の可能性が高いことに注意が必要です。また、潜伏時間が一般に2~5日間とやや長いことが特徴です。
とあり、おなかをやや激しくこわしたという程度のようにも見えるし、意外と多数の人がこの食中毒になっているけど、気付かないだけだったというような気もしないではない。それにおなかこわしたら、何が悪かったのかを考えるだろうけど、5日も前に食べたレバ刺しに当たった、とは普通は考えないだろうなあ。。

カンピロバクター菌(campylobacter)については、こちらなどに書かれているように、とってもポピュラーな食中毒菌のようだ。カンピロバクターって?によると、やはり鶏肉がらみでの食中毒が多いらしいから、牛レバだけでなく、鶏刺し、鶏レバ刺しなんかを食べる人は用心するべきだろう。最近はやりの(?)ノロウィルスは貝類が原因のケースが多いようだが、症状はカンピロバクターとも似ている。ただしこちらの潜伏期間は24~72時間と短いようだ。

ということで、レバ刺しには従来からカンピロバクター菌による食中毒の可能性が潜んでいたが、それは、あくまでも調理の段階での二次汚染によるもので、きちんと管理された調理をすれば牛レバ自身は安全であると考えられていたようだ。しかし、今回これが間違いで、牛の肝臓内にはカンピロバクターが存在する可能性があるということらしい。

食中毒になる菌の数が100個程度とのこと。今回の調査では牛の肝臓のうちカンピロバクターを検出したのが11%で、検出された肝臓では 1g当たり数十個の菌が見つかっているから、普通に食べれば菌の数としては十分な量に達するようだ。ということは、牛レバ刺しを食べて食中毒になる確率は10%程度ということかな? 

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2005/02/08

出生時の体重と将来の病気との関係?

東京新聞(2/8)の記事。増え続ける『小さな赤ちゃん』成人病に胎児起源説

▼飢餓と勘違い

 成人病胎児期発症説を主唱している英サウサンプトン大医学部のM・ハンソン教授は、厚生労働省の招きで来日講演して「胎児のとき、低栄養状態であると、遺伝子が発現する仕組みが変化して、高血圧や高脂血症、動脈硬化、糖尿病などの発症がプログラムされる」と述べた。

 第二次大戦末期、ひどい飢餓に苦しめられ、カロリー摂取量が通常の半分程度しかなかったオランダの母親から生まれた多数の子供の研究で、母親の栄養状態が悪いと、心臓病や糖尿病、肥満、高血圧を起こしやすいことが分かってきた。

 また動物実験から、栄養が不十分だと、腎臓糸球体の減少や、血管内皮機能の低下、肝臓タンパク質の機能変化などがみられることも示されている。成人後も正しく働く臓器を作るには、それぞれの臓器の大事な発育時期に、適切な栄養があることが必要なのだ。

 糖尿病に詳しい門脇孝・東大教授は「低栄養の母体にいる赤ちゃんは、外界は飢餓の状態であると勘違いして生まれてくる。栄養をため込み、糖尿病になりやすい性質をもって生まれてくると考えられる」と説明する。

 長く飢餓の時代を過ごした人間には、飢えに備える仕組みが備わっている。飢餓に備える代謝系が胎児期にできてしまうと、飽食の時代にはさまざまな生活習慣病を引き起こすことになる、というわけだ。

▼2500グラム未満が倍

 厚生労働省の調査によると、赤ちゃんの体重は、一九八〇年に三一九四グラムだったのが、九〇年には三一四一グラム、二〇〇〇年には三〇五三グラムと減り続けている。低出生体重児(二五〇〇グラム未満)は、一九七五年の5・1%から、二〇〇二年の9・1%へと倍近く増えている。とくに妊娠末期の体重の伸びが抑えられる傾向にあるという。

 妊婦の栄養摂取は抑えられている。神奈川県のある病院の調べによると、妊婦の体重増加は、一九九二年に十三キロ程度だったのが、二〇〇二年には十キロ程度になった。

 原因は、ダイエットの影響と行き過ぎた栄養指導にあると福岡秀興・東大助教授(発達医科学)はみる。「妊娠中に体重制限を厳しく課すような栄養指導をするのは疑問だ。小さく産んで大きく育てるというのは危険」とする。「赤ちゃんの平均体重が減り続けていることは、赤ちゃんに栄養が不足していること。また体重さえあればいいというものでもない。バランスのとれた十分な栄養が重要だ」と話している。

ということで、最近は赤ちゃんに低体重化傾向が見られ、成人してからの生活習慣病が懸念されるとある。まあ、戦時の極端な栄養失調状態と今の状況を単純に比較できるのかどうか怪しい気がしないでもないが、胎内での栄養状態が悪いと将来にも影響があるよ、と言われるとそれはそうだろう、という気がする。

一方、海外では逆に、生まれたときの体重が重い子は大人になってからの発がんリスクが高いというニュースが報道されているようだ。Birth Weight Linked to Cancer Riskによると、スウェーデンの11000人以上を調査した結果、出生時に体重が重かったグループは、最も軽いグループよりも乳がんになる確率が4倍高く、逆に子宮内膜がんになる確率は半分であり、また、リンパ腺がんの確率が17%高く、消化器系のがんの確率は13%高かったということが載っている。その理由については、

In pregnant women, for example, scientists hypothesize that fetal exposure to estrogen increases a daughter's lifetime risk of breast cancer, all things being equal, explained Richard G. Stevens, a cancer epidemiologist at the University of Connecticut School of Medicine.

"Higher estrogen [exposure] tends to make the baby bigger, if it's a girl," he added. So if there's higher estrogen exposure, you would expect a baby to be larger. In that way, this study helps support the idea that birth weight is a marker for some underlying risk, such as fetal exposure to estrogen, he said.

ということで、胎児が女性の場合には、子宮内で浴びる女性ホルモン(エストロゲン)の量が多いとその子が大きくなる傾向があり、一方で浴びる女性ホルモンの量が将来の発がんリスクと関係あるのではないかという推定のようだ。出生時の体重が、直接将来の発がんの原因となるわけではなく、あくまでもその子が過ごした胎内環境を示す一つのインジケータであるということらしい。こちらのケースでは、何がエストロゲンの量を決めているのかわかっているのだろうか? 

調べてみると、昨年の10月にもよく似た研究が報告されていて、So-net週刊World健康ニュースに載っている。こちらは胎内環境だけでなく、小児期の成長環境との相関も調べられているようだ。

たまたま、同じ日に日米で出生時の体重と成人になってからの病気との相関について、対照的なニュースが載ったのが面白い。

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2005/02/07

ココログ13か月

ココログを始めて1年と1か月が経過した。カウンターの伸びは、この1か月で22000程度とかなり順調だった。どうやら、今月始めの日亜科学と中村教授の和解のニュースを受けて、青色発光ダイオードをキーワードに訪ねてくれた方が多かったようだ。

 1か月目:900
 2か月目:4500
 3か月目:11700
 4か月目:19000
 5か月目:32300
 6か月目:43500
 7か月目:54500
 8か月目:72000
 9か月目:87700
 10か月目:105400
 11か月目:125400
 12か月目:140600
 13か月目:163000

この1か月の、Ninjaツールの集計によるアクセス解析結果は、(あまり当てにならないけど)

(1)リンク元
 1位 bookmark (お気に入りに入れてくれた方) 全体の17%(前回1位)
 2位 http://search.yahoo.co.jp (ご存知ヤフーサーチ) 全体の15%(前回2位)
 3位 http://search.msn.co.jp(MSNサーチ) 全体の3%(前回4位)
 4位 http://homepage3.nifty.com/junko-nakanishi 全体の1%(前回3位)
 5位 http://a.hatena.ne.jp 全体の1%(前回5位)

(2)検索キーワード
 1位 青色発光ダイオード(前回1位)
 2位 世界人口(前回3位)
 3位 合計特殊出生率(前回5位)
 4位 アメリカ(前回2位)
 5位 レーザーポインター(前回7位)
 6位 肥満(前回4位)
 7位 マメール(初登場)
 8位 大豆ペプチド(前回12位)
 9位 グラフ(前回11位)
10位 岩盤浴(前回9位)
11位 ポリ乳酸(前回8位)
12位 京都議定書(前回6位)

今回の初登場は1/20に取り上げたマメールと運芽icanだけのようだ。それにしても、ここのところ Google 経由で訪れる人が随分と減っている。確かに、以前はGoogleで上位に来ていたキーワードでも、表示される順位が随分と下位になっているようだ。

例えば「マメール」で検索すると、Yahoo! JAPANだと8位なのに、Googleだと65位だし、「青色発光ダイオード」では、Yahoo! JAPANでは4位なのに対して、Googleだと109位だ。ブログ対策でも打ったのか?と思いきや(参考)、「これからの環境論」で検索すると、Google、Yahoo! JAPAN、MSNなどほとんどの検索エンジンで、このサイトがトップに表示されているようだから、全面的に排除されているわけではなさそうだ。。 

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2005/02/04

立春は毎年2/4なのか?

今日2/4は立春で昨日は節分だったのだが、そう言えば立春は昔から毎年2/4だったような気がする。

立春は二十四節気の一つであり、決して2/4と決められているわけではなく、「てんきや」コラムの説明にもあるように、太陽が黄径315度に来る日と定義されている。(春分が黄径0度だから、その45度=約45日手前ということになる。)

丁度1年前の記事、来年の春分の日で書いたように、主として地球の公転周期が約365.2422日と365日からずれており、そのずれが4年に1度うるう年に修正される影響により、春分の日は4年周期で日にちが変動する。

ということは、その約45日前となる立春も2/4前後で周期的に変動している、というのが正しそうに思える。 しかし、ちょっと調べてみると少なくともこの10年程度は毎年2/4が立春である。暦要項によると、うるう年だった昨年の立春は2/4の20:56、今年の立春は(間に閏日をはさんで366日+約6時間後の)2/4の2:43、2006年は2/4の8:27とあるから、この調子でいけば、2007年は2/4の14:15頃、2008年は2/4の20:00頃となり、2009年には2/4の1:45頃となり、何とか変動は2/4の中で吸収されているようだが、徐々に2/3側にずれていっているようだ。

調べてみると、立春以外にも、清明、穀雨、小満、小暑、処暑、秋分、大雪も、ここ10年程度は毎年同じ日になっており、変動していないのだが、国立天文台のQ&Aによると、

 一方、秋分日は毎年変わらないものだと思っている方も多いかもしれませんが、春分日と同じ理由で、年によって変化します。最近毎年秋分日が9月23日なのは、たまたまそういう時期だというだけのことです。秋分日が毎年9月23日になるようになったのは、1980年からのことです。それ以前は、4年に一度9月24日が秋分日という年があり、2012年からは、4年に一度9月22日が秋分日になると予想されています。
となっていて、長い目で見ると変動は免れないようだ。

各年の二十四節気の日付は、こよみのページの二十四節気計算で計算することができる。各年の立春をこのページで計算してみると、確かにここ最近の立春はずっと2/4なのだが、2025年には2/3となるようだ。これ以降、2029、2033、2037、、、と少なくとも4年に1度は2/3が立春となる。逆に、過去に遡ってみると1984年の立春は2/5で、同様に1980、1976、1972、、、と4年に1度は2/5が立春だったようだ。結局、記憶に無かっただけのようだ。。

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2005/02/03

「安全と安心の科学」

最近「安全と安心」というキーワードを頻繁に見かけるようになってきたが、本書は正にそれをストレートにタイトルとしている。帯には「『安全』は、達成された瞬間から、その崩壊が始まる!」というもの。多くの場合は、むしろ安全は達成することがそもそも困難とも言えそうだが。。

集英社新書 0278G
 安全と安心の科学
 村上 陽一郎 著 bk1amazon

本書は、

序 論 「安全学」の試み
第一章 交通と安全 -事故の「責任追及」と「原因究明」
第二章 医療と安全 -インシデント情報の開示と事故情報
第三章 原子力と安全 -過ちに学ぶ「安全文化」の確立
第四章 安全の設計 -リスクの認知とリスク・マネジメント
第五章 安全の戦略 -ヒューマン・エラーに対する安全戦略
という内容であり、これを見ると明らかなように、「安心」についてはほとんど取り扱っていない。著者はここ数年、「安全学」という学問領域の設立を提唱しているらしく、「安全」については、さすがに充実した内容が書かれているのだが、「安心」については序論で多少触れられている程度である。恐らく「安心」というキーワードが流行しているので、タイトルに無理やり放り込んだような気配が感じられる。

まあ、それはともかくとして、本書は仕事などで安全に係る人達には一度目を通して欲しい本だ。正統派の教科書としても使えそうだ。化学系の会社で徹底的に「安全」を叩き込まれた身としては、当たり前の話も多いのだが、それでも、交通事故や医療事故に対する考え方などはとても参考になる。安全関係はどうしても狭い所をつつくようなことが多いけど、こういう本を読むと視野が広がる感じがする。

特に交通安全に関する著者の考えや提案は考えさせられる。そもそも現代社会で交通事故の被害が非常に大きなものなのに、そういう現実に慣れてしまったために、その被害の大きさを正しく認識していないという指摘。さらに事故情報の詳細は、警察と保険会社などに蓄積されていて、それが事故防止という観点から有効に使われているとは思えないこと。例えば航空機事故の際には、事故原因の究明と対策立案は、事故の責任追及とはまったく独立して行われていることと好対照であることが指摘される。

そして、交通事故被害を減らすための事故原因の解析や有効な対策の立案のために、警察が独占的に持っている情報を有効に利用し、国家的にもっとお金を使っても良いだろうという提案がなされる。これは、それなりの対策をとれば(道路環境や自動車の改良など)、相当に交通事故の被害を小さくできるはずだという信念でもある。

医療事故対策としても、「人間は必ず間違える」という基本的な思想が欠けているのが問題だという主張のもとに、いくつかの実例を交えて「フール・プルーフ」と「フェイル・セーフ」という考え方について展開する。

リスク・マネジメントについては、人間のリスク認知の特性(交通事故リスクは過小評価し、ダイオキシン被害リスクは過大評価するというような)にも触れている。なかなか興味ある論理展開がなされているし、正にここが「安全」と「安心」の接点となる部分でもあるので、もっと深く突っ込んだ議論が期待されるのだが、残念ながらこの部分は中途半端な印象だ。

また、これらのリスクにどう対処していくのか、という後半の議論もなかなか面白い。科学的合理性だけでは解決は困難で、社会的合理性(例:より安全な物質が規制される一方で、はるかに有害なタバコが社会で認められている)も重要であるという話や、予防原理や規制科学(regulatory science)についても軽く触れられているが、ここも中途半端だ。

本書は、安全と安心のうちの安全の部分を中心に書かれた本であり、安全と安心を考える上では、イントロに過ぎないと思う。著者には、是非、続編として安心の部分に突っ込んだ本を書いて欲しいものだ。

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2005/02/02

ヴィッツの環境性能

nikkeibp.jpの環境ニュース(2/2)。トヨタ、独自の環境評価システムを活用し「ヴィッツ」改良

トヨタ自動車は、「ヴィッツ」をフルモデルチェンジし、1日、全国のネッツ店を通じて販売を開始した。

2代目となる「新型ヴィッツ」は、走行・安全性能といった基本性能に加え、居住性・機能性・品質などあらゆる面で徹底的に向上を図ったという。

開発に当たっては、トヨタ独自の総合環境評価システム「Eco-VAS(エコバス)」を初めて活用。開発初期段階からリサイクルまでのあらゆる面で環境負荷物質の低減目標を設定し、各段階での環境影響をバランスよく減少させた。また、ライフサイクルアセスメント(LCA)を実施し、走行段階だけでなく、生産から廃棄するまでの全段階で排出する二酸化炭素(CO2)や大気汚染物質の総量を低減した。

新型ヴィッツは2WD全車で国土交通省の低排出ガス車認定制度における「2005年基準排出ガス75%低減レベル」「2010年度燃費基準+5%」を達成するなど、クラストップレベルの環境性能を実現しているという(日経エコロジー編集/EMF)。

というものだが、トヨタの最新の「総合環境評価システム」とはどんなものか? トヨタのサイトの、新型車技術広報資料によると、この Eco-VAS システムは、トヨタ社内での新型車開発プロセスのマネジメントシステムのことらしい。

ヴィッツはトヨタ車の中でも最も排気量の小さなクラスだから、燃費も排ガスのクリーン度も相当に優れているのだろうと思いきや、ここに載っているLCAのグラフを見る限り、4年前の同クラス車と比べての改善は意外と小さい。(とは言え、ざっと見てCO2排出量は10%程度削減されているようだけど。。)

ビッツの紹介ページの環境仕様というところを見ると、LCAの内訳が、素材製造から廃棄までの各段階に分けて表示されている。これを見ると、各排出物共に走行時の排出量は減少しているのだが、製造時の排出量が増えているようだ。水銀、鉛、カドミウムや塩ビの使用量を相当に削減しているので、その影響が出たのだろうか? ちょっと気になる。(それにしても、塩ビの削減は本当に必要だったのか?)

今回は平成22年度の燃費基準を5%上回る性能とのことだが、国土交通省の燃費基準を見ると、基準値は車両重量別に決められており、ビッツの場合は、基準値が16.0km/l、実際の燃費が最高24.5km/lであり、実は50%以上も基準値を上回っている。ただ、自動車の燃費性能に関する公表のように、基準を5%クリアするとその表示が可能となるということらしい。実は結構多数の車種が既にクリアしており、これだけならそれほど自慢できるものでもないようだ。

F1ドライバーの佐藤琢磨選手がCMで「燃費こそ環境性能だ」と言っているホンダの場合は、環境レポートによると、2005年中に全ての車がクリアするようだ。 この調子だと、もっと高レベルの目標を設定したり、本当に高性能の車をきちんと評価するシステムが必要のように思われる。

低燃費カーといえばハイブリッド車が注目の的で、世界的な潮流となりそうだ。実際、プリウスなどはヴィッツよりもクラスが数段上のはずなのに、カタログ燃費は35.5km/lと圧倒的だ。ヴィッツの最高燃費24.5km/lはアイドリングストップ機能がついている1.0Lエンジン車のものであり、プリウスのエンジンは1.5Lなので、これだけ違うということは、減速時のエネルギー回収と、加速時等のモーターでの適切なアシストの効果ということか。。

プリウスのLCAについては、環境仕様で見ることができるが、これをヴィッツと比較しようとすると、絶対値が書かれていないのですぐには比べられない。しかし、両車の燃費やNOx等の排出量は公表されているので、換算しようと思えば比べられそうだ。トヨタさんも、こんな中途半端なことをせずに絶対値を公表すればよさそうなものだが、儲けの大きい大型車の環境性能が見劣りすることを恐れているのだろうか?? そういうこともあってか、トヨタもこれだけ環境への取り組みをアピールしていながら、各車の環境性能を一覧できるような表やグラフは全く存在しないようだ。

プリウスの環境性能やLCAについては、安井先生のサイトのエコプレミアムラボで、プリウス環境負荷はどのぐらい低いで考察されている。自身がプリウスのオーナーということもあり、さすがに非常に充実している。しかし、いつの間にかこのページはトップページからのリンクがなくなってしまっているようだ。

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2005/02/01

4次元デジタル宇宙ビューワ「ミタカ」

1/24のYOMIURI ON-LINEに載ったネットで“宇宙探査”自在に、国立天文台がCG地図

 国立天文台は、宇宙の始まりから現在までの姿をコンピューターグラフィックス(CG)で再現できる宇宙地図を作製、2月1日からインターネットで公開する。

 天文学者の使う高精度の観測データと最新宇宙理論の成果を反映、全宇宙を網羅した映像を家庭で堪能できる。

 宇宙地図のソフト「4次元デジタル宇宙プロジェクト」は、時間と空間を超え、宇宙のどんな地点からも周囲の様子を眺めることができる。

 月のような小さな天体から、太陽系、銀河系、銀河団など様々な規模の宇宙の姿を収録。宇宙空間から見た恒星や銀河は正確な位置と大きさで表現され、宇宙船に乗った気分で本格的な“宇宙探査”を楽しめる。国立天文台は、宇宙地図のほか、月や渦巻き銀河などの形成の様子を2分程度にまとめたムービーも5本ほど公開する。

という記事を見て楽しみにしていたのだが、国立天文台のサイトに予定通り掲載された。これは、4次元デジタル宇宙プロジェクト(4D2U)の一連の活動の成果の一部をWebで公開するというもので、国立天文台での4次元デジタル宇宙シアターの一般公開で実際に使われているソフトを改造したものらしい。アストロ・トピックスによると、今回 4次元デジタル宇宙ビューワ「ミタカ(軽量版)」とシミュレーションムービー2本を公開し、今後はオンラインで操作できるFlash版のミタカの公開と、定期的に新しいシミュレーションムービーを公開していく予定とのこと。

ともかくも、ミタカをダウンロードして試しに動かしてみた。ミタカはウインドウズ専用で、要求スペックは Pentium4 2.6GHz以上、メインメモリ 512MB以上と相当に高い。ファイルはzip形式に圧縮されて34MBある。

起動してみたが、ともかく動きが重い。マウスでドラッグしても、画面に変化が現れるまでの時間差が大きく、慣れるまでは大変だし、待ち時間が長くてイライラしてしまう。まあ、このパソコンはCPUが PentiumM 1.4GHz、RAM 376MBなので、要求スペックに遠く及ばないので仕方ないか。これがサクサクと動いてくれれば、とっても楽しいだろうと思う。より軽快に動くように改良する予定らしいが、Flash版の操作性などはどんなものなのだろう? ともかくも改良を期待したいものだ。

プラネタリウムモードもあるが、何と言っても特徴は、宇宙空間モードだろう。地球からどんどん視点を遠くにズームアウトさせ、太陽系、銀河系、宇宙全体を俯瞰できるし、回転や移動ももちろんできる。しかも、少なくとも3000光年までの星は、きちんとした観測データに基づいて描かれているようだし、それ以上についてもきちんとした科学的なモデルに従って描いているとのことだ。

どんどんズームアウトしていくと、最後は137億光年離れた宇宙の果てに到達するわけだが、ここでは砂時計みたいに円錐形を二つ向かい合わせたような形で星が描かれている。空間全体に星(銀河団)が存在するのだが、現在まで観測されているのはこの範囲内ということらしい。ふむ。。

画面はリアルなせいか非常にきれいだ。でも、音の無い中で見ているのも淋しいものがある。どうせここまで重くなるなら、音声ファイルも添付して、要所要所で解説が聞けるようになってくれてもいいかもしれない。

また、今回同時に公開されたシミュレーションムービーは、mpeg形式の「宇宙の大規模構造」と「火星探検」の2本。こちらもなかなか美しい画像なのだが、特に宇宙の大規模構造の方などは、見ただけでは何がなんだかよくわからない。是非とも音声解説が欲しい所だ。

ちなみに「ミタカ」という名前は「見たか?」という意味ではなく、国立天文台のある三鷹にちなんだものだと思われる。。 ところで、この「4次元デジタル宇宙プロジェクト」は空間3次元に時間の1次元を加えたものらしいが、今回公開されたものは、どこが4次元だったのだろうか??

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