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2005/02/23

サメ撃退装置とロレンチーニ器官

CNN.co.jp(2/22)の記事。電流利用のサメ撃退装置が好評、害及ばさずと豪州企業

オーストラリア・アデレード──オーストラリア南部アデレードの企業が開発した、電流を利用したサメ撃退装置「シャーク・シールド」の利用者が増えている。オーストラリアの海岸部ではサメに襲われる事故が後を絶たないが、サメにも人間にも害を及ぼさないとするこの装置を使えば、海中に長時間、安全にいることが出来るとしている。

サメは獲物に襲いかかる際、目を守るために目を閉じ、頭部にある感知器官で、獲物が発する微弱な電流を察知する習性を持つ。

シャーク・シールドの仕組みは、この習性を利用したもの。海中にいる人間の周囲5~8メートルに、サメの吸収能力を超えた強い電流を流し、サメにとって嫌な場所にして撃退する。

強い電流に触れた場合でも、サメの器官を一時的にけいれんさせるだけで、電流の流れている場所から離れれば、けいれんはおさまるという。

装置を開発したシーチェンジ・テクノロジー社によると、この技術は10年以上前に、南アフリカで開発されたものだが、一般向けに商品化されたのは、ここ最近のことだという。

同社では、ダイバーや海中作業者向けのほか、漁師が使う網に取り付ける製品も出している。

サメにも人間にも害を及ぼさずにサメを撃退できるとはなかなか優れものだ。サメによる被害は、NEWS.com.auの記事によると、
The 2003 International Shark Attack Files reported 61 unprovoked shark attacks including seven deaths: two in Australia; two in the US; and one each in Brazil, Egypt and South Africa.

The attacks rose above 57 in 2003, but were fewer than 63 in 2002, 68 in 2001 and 78 in 2000.

However, the attacks have been rising since the beginning of the 20th century, and reached their high point in 1990, with 481 in 10 years, according to the group, which keeps the worldwide statistics.

ということで、全世界でサメに襲われた事件が1年間に数十件、死者は10人以下のレベルであり、予想に反して随分と少ない。20世紀に入ってから増えているが、それは決してサメの側に変化があったわけではなく、単純に海に入る人の数が増えたためということらしい。ということは、CNNのニュースの冒頭にある「オーストラリアの海岸部ではサメに襲われる事故が後を絶たない」というのも大げさなようだな。

一番気になるのは、サメが獲物を襲う際に目をつぶり、代わりに獲物が発する電流を察知するというところ。少なくとも、人は水中に電流を放出したりしないように思えるし、人を襲うときに目をつぶっているものなのだろうか? この記事の元はCNN.comのDivers embrace anti-shark deviceだが、問題の部分は

When a shark comes in to attack, it automatically closes its eyes as a way of protecting them. With no sight, it detects movement with a tiny sensor in its nose, which picks up the electrical current of its prey.
とあり、日本語記事は英文を忠実に翻訳しているようだ。

サメの部屋のサメの感覚によると、確かにサメは獲物を襲うときに瞬膜というもので眼を保護するし、生物の生体電流を感知するロレンチーニ器官というものを備えているのだそうだ。それだけでなく、よく言われるように、嗅覚が非常にすぐれていて、わずかな血の臭いをかぎ付ける能力があったり、視力や聴力も相当に優れているようだ。

このロレンチーニ器官について、今ひとつわからなかったのだが、どうやらサメの海に書かれているように、魚の動きを数十cm以内の距離で感知したり、地磁気を感知する、非常に高感度のアンテナのような物のようだ。獲物が水中に発する電流とは何だろう?と思ったが、そうではなくて生体内の電位の変化(筋電や神経パルス?)を感知するようだ。すごい能力である。。

なるほど、それだけ高感度であれば、水中に微弱の電流を流すだけで嫌がるだろうことは容易に想像できる。SeaChange Technology社のShark Shieldの説明ページに解説記事が載っているが、ざっと見た範囲ではロレンチーニ器官や装置仕様についての詳細情報は特に得られなかった。

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