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2005/02/25

食品添加物製の超撥水スプレー

FujiSankei Business i(2/25)のニュース。吸っても安心、撥水スプレー 慶大発ベンチャーSNTが開発

 慶応大学理工学部の白鳥世明(せいめい)助教授が社長を務めるベンチャー、SNT(千葉県市川市)は、体内に吸い込んでも安心な材料を主成分とした撥水(はつすい)スプレー剤を開発した。無色透明で、繊維、プラスチック、ガラスなどに幅広く使え、まずは自動車ボディーの保護向けに採用される見込みだ。

 市販の撥水スプレーは、フッ素系樹脂が多く使われているが、吸い込むと肺障害などを起こす危険があり、換気面で注意を要する。新しいスプレーは「人にやさしい製品」として普及が期待できる。

 SNTは、物質の構造をナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)単位で制御するナノテクノロジーの応用製品を開発している。新しい撥水スプレーを物質に吹きかけると、その表面に数百ナノメートルの細かい凹凸ができる。水がかかっても、この凸部分に水が支えられて水滴になるので、水を弾くというのがミソだ。

 スプレーには複数の無機や有機物質が混合されているが、すべて食品添加物として使用できるものを使った。溶剤も水系のものを使える。撥油性は市販のものに及ばないが、撥水性ではむしろフッ素系よりも優れているという。

というもの。化学的な手段ではなく、物理的に撥水性を実現しているようだ。この白鳥先生のベンチャー、SNTのホームページに行ってみたら、何とSNTとは「白鳥ナノテクノロジー」のイニシャルらしい。。。 今回のニュースについての情報は載っていないようだが、関連記事としてはハスの葉構造で超撥水  環境負担少なく繊維などに微細突起という記事が載っていた。
 開発したのは、繊維や有機系薄膜の表面を水をはじくように加工する技術。繊維や薄膜の表面で二書類の樹脂材料を反応させて大きさが数マイクロ(マイクロは百万分の一)メートルの凹凸を形成する。次にセラミックス溶液につけてから乾かすと、数マイクロメートルの凹凸の表面に数十ナノ(ナノは十億分の一)メートルレベルの微細な突起ができる。

 大きさが違う凹凸構造の組み合わせはハスの葉の表面と似た構造で、水をはじく。水を垂らすと球状になる。

ハスの葉の表面の顕微鏡写真は日立サイエンス ミクロアイで見つかった。実は、ハスの葉の撥水性はその物理的な構造だけではなく、ワックス状の疎水性物質で覆われていることも効いているようだ。

慶応大学理工学部 白鳥研究室で探してみると、超撥水膜の研究に原理が載っていて、超撥水膜の作製についてには、2種の高分子を交互吸着させる方法と溶液からチタニア膜を析出させる技術を組み合わせた超撥水膜の作製法が載っている。

ハスの葉状構造を利用するという点では、同じ慶応大学の理工学部の朝倉研究室でも周期的凹凸構造の形成による撥水性及び光学特性に優れた表面の作成というよく似た研究をしているし、こちらは光散乱性を化粧品に応用しているようだ。

また、従来のフッ素系等の撥水剤の撥水性をハスの葉構造で強化するアイデアは、フロロテクノロジーの製品説明にも出てくるから、既に実用化されている。また、帝人 RECTASという繊維はハスの葉構造を採用した超撥水繊維らしい。

超撥水性の理論的なお話は、ダイキン工業の最もよく水をはじく高分子材料はが参考になる。

今回の技術は、食品添加物として使用できるものばかりを原料として、しかもスプレーによって超撥水膜が形成できるということだから、かなり異なる技術というか、相当に技術的に進歩しているように思える。どうやって対象物の表面と結合させるのか、どうやってスプレーによって特異な表面構造を作るのか、という点が技術上のポイントだろうが、どう実現しているのかは謎だ。。

*数百ナノメートルというのは、以前はサブミクロンと呼ばれていたのだが、今や立派にナノテクノロジーの仲間だ。

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コメント

ホルムアルデヒドのような、経口摂取ではけっこう大丈夫でも、吸入で害があるような物質もあるわけですから、「すべて食品添加物として使用できるものを使ったので、体内に吸い込んでも安心」とは言えないように思います。

投稿: NATROM | 2005/02/26 00:21

ご指摘ありがとうございます。

確かに具体的に使用している物質が明らかではないので、安全性については確かなことは判断できませんね。

ちなみにhttp://www.jafa.gr.jp/01tenkabutu/tenkaichiran.html">日本食品添加物協会の食品添加物一覧を見てみると塩酸や硫酸なんかも指定添加物になってますね。要は摂取量次第ということですね。

まあ、撥水スプレーの使用状況を考えると、安全性が高いに越したことはないけれど、食品添加物が原料であることをことさらに強調することがそれほど重要とは思えないのは確かです。

投稿: tf2 | 2005/02/26 17:26

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