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2005/02/08

出生時の体重と将来の病気との関係?

東京新聞(2/8)の記事。増え続ける『小さな赤ちゃん』成人病に胎児起源説

▼飢餓と勘違い

 成人病胎児期発症説を主唱している英サウサンプトン大医学部のM・ハンソン教授は、厚生労働省の招きで来日講演して「胎児のとき、低栄養状態であると、遺伝子が発現する仕組みが変化して、高血圧や高脂血症、動脈硬化、糖尿病などの発症がプログラムされる」と述べた。

 第二次大戦末期、ひどい飢餓に苦しめられ、カロリー摂取量が通常の半分程度しかなかったオランダの母親から生まれた多数の子供の研究で、母親の栄養状態が悪いと、心臓病や糖尿病、肥満、高血圧を起こしやすいことが分かってきた。

 また動物実験から、栄養が不十分だと、腎臓糸球体の減少や、血管内皮機能の低下、肝臓タンパク質の機能変化などがみられることも示されている。成人後も正しく働く臓器を作るには、それぞれの臓器の大事な発育時期に、適切な栄養があることが必要なのだ。

 糖尿病に詳しい門脇孝・東大教授は「低栄養の母体にいる赤ちゃんは、外界は飢餓の状態であると勘違いして生まれてくる。栄養をため込み、糖尿病になりやすい性質をもって生まれてくると考えられる」と説明する。

 長く飢餓の時代を過ごした人間には、飢えに備える仕組みが備わっている。飢餓に備える代謝系が胎児期にできてしまうと、飽食の時代にはさまざまな生活習慣病を引き起こすことになる、というわけだ。

▼2500グラム未満が倍

 厚生労働省の調査によると、赤ちゃんの体重は、一九八〇年に三一九四グラムだったのが、九〇年には三一四一グラム、二〇〇〇年には三〇五三グラムと減り続けている。低出生体重児(二五〇〇グラム未満)は、一九七五年の5・1%から、二〇〇二年の9・1%へと倍近く増えている。とくに妊娠末期の体重の伸びが抑えられる傾向にあるという。

 妊婦の栄養摂取は抑えられている。神奈川県のある病院の調べによると、妊婦の体重増加は、一九九二年に十三キロ程度だったのが、二〇〇二年には十キロ程度になった。

 原因は、ダイエットの影響と行き過ぎた栄養指導にあると福岡秀興・東大助教授(発達医科学)はみる。「妊娠中に体重制限を厳しく課すような栄養指導をするのは疑問だ。小さく産んで大きく育てるというのは危険」とする。「赤ちゃんの平均体重が減り続けていることは、赤ちゃんに栄養が不足していること。また体重さえあればいいというものでもない。バランスのとれた十分な栄養が重要だ」と話している。

ということで、最近は赤ちゃんに低体重化傾向が見られ、成人してからの生活習慣病が懸念されるとある。まあ、戦時の極端な栄養失調状態と今の状況を単純に比較できるのかどうか怪しい気がしないでもないが、胎内での栄養状態が悪いと将来にも影響があるよ、と言われるとそれはそうだろう、という気がする。

一方、海外では逆に、生まれたときの体重が重い子は大人になってからの発がんリスクが高いというニュースが報道されているようだ。Birth Weight Linked to Cancer Riskによると、スウェーデンの11000人以上を調査した結果、出生時に体重が重かったグループは、最も軽いグループよりも乳がんになる確率が4倍高く、逆に子宮内膜がんになる確率は半分であり、また、リンパ腺がんの確率が17%高く、消化器系のがんの確率は13%高かったということが載っている。その理由については、

In pregnant women, for example, scientists hypothesize that fetal exposure to estrogen increases a daughter's lifetime risk of breast cancer, all things being equal, explained Richard G. Stevens, a cancer epidemiologist at the University of Connecticut School of Medicine.

"Higher estrogen [exposure] tends to make the baby bigger, if it's a girl," he added. So if there's higher estrogen exposure, you would expect a baby to be larger. In that way, this study helps support the idea that birth weight is a marker for some underlying risk, such as fetal exposure to estrogen, he said.

ということで、胎児が女性の場合には、子宮内で浴びる女性ホルモン(エストロゲン)の量が多いとその子が大きくなる傾向があり、一方で浴びる女性ホルモンの量が将来の発がんリスクと関係あるのではないかという推定のようだ。出生時の体重が、直接将来の発がんの原因となるわけではなく、あくまでもその子が過ごした胎内環境を示す一つのインジケータであるということらしい。こちらのケースでは、何がエストロゲンの量を決めているのかわかっているのだろうか? 

調べてみると、昨年の10月にもよく似た研究が報告されていて、So-net週刊World健康ニュースに載っている。こちらは胎内環境だけでなく、小児期の成長環境との相関も調べられているようだ。

たまたま、同じ日に日米で出生時の体重と成人になってからの病気との相関について、対照的なニュースが載ったのが面白い。

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