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2005/02/14

温泉からスカンジウム

MSN-Mainichi INTERACTIVE(2/12)の記事。希少金属:草津温泉から採取計画 原研が捕集布開発

 日本有数の湧出(ゆうしゅつ)量を誇る群馬県・草津温泉に溶け込んだ希少金属を採取しようと、日本原子力研究所高崎研究所(群馬県高崎市)と同県草津町が、4月から共同研究を始める。工業用触媒に使われるバナジウムや、1キロ200万円もするスカンジウムなど産出量が少なく高価な金属を、同研究所が開発した捕集用の布を使い、温泉から取り出すという世界初のユニークな試みだ。

 同研究所環境機能材料研究グループは、ポリエチレンでできた不織布に放射線を当て、さまざまな金属と結びつきやすい性質を加える技術を開発した。この布をフィルターに使うと、液体中に含まれる微量の金属元素を集めることができる。海水からのウラン採取実験では、沖縄県での採取量が青森県の2倍だった。「水温が高い方が捕集効果が高そうだ」と、温泉での採取を計画した。

 共同研究は2年間で、同研究所が温泉に適した捕集布の開発を進め、町は大量の温泉を効率的にフィルターに通すシステム作りに取り組む。1月下旬には、温泉を放流している同町の湯川で捕集布を使い実験した。白い捕集布が茶色に変色しており、狙った金属を採取できたかどうか分析作業を進めている。

 同研究所の試算によると、草津温泉の源泉の一つ「万代鉱」からは1分あたり6000リットルの温泉がわき出し、スカンジウムが年116キロ、バナジウムが年725キロ、ヒ素が年32トン採取できるという。スカンジウムはエックス線の研究材料として貴重、バナジウムは重要金属として国家備蓄の対象だ。ヒ素は半導体の原料になる。金が含まれている可能性もある。しかし、採算がとれるかなどのコスト面は今後の検討課題という。

 同研究所の玉田正男グループリーダーは「不織布を使った金属捕集材は、他では作られていない。適切な布のサイズや温泉に浸す時間、季節変動などを調べ、実用化に生かしたい」と話している。

というもの。まあ、温泉から流れ出て海に入って希釈されてしまうことを考えると、湧出した地点が最も濃度が高いだろうから、ここで有用物を採取しようというアイデア自体は悪くなさそうだ。

この原研の不織布による金属採取技術だが、日本原子力研究所の高崎研究所のサイトで環境浄化材料の研究で紹介されている。放射線グラフト重合という方法により、アミドキシム基を付与すると、金属イオンを取り囲んで捕集することができるようだ。

この技術は、1998年の報道発表によると、海水からバナジウムやコバルト、それにウランを採取しようという計画の一環として実際に実験されたようだ。まあ、吸着床を海に沈めておくだけで有用金属が採取できるのならば、言うことなさそうだが、この発表から既に5~7年が経過している割には実用化されていないようだし、コスト面や技術面で問題があるんだろうなあ。

草津温泉からスカンジウムが年間116kgも採れるというのも面白そうだが、6000L/minということは、スカンジウムの含有量は約 37ppbということになるかな。こんな低濃度のものを集めてこられるとしたら確かにすごい技術なのだが、捕集効率が100%あるわけもなし、どうなんだろう? 

それにしても、スカンジウムとはまた珍しい元素と思い、検索してみた。温泉関係では別府温泉粉末という商品が引っかかってくるが、含有ミネラルが「炭酸ガス、水素、、、窒素、、スカンジウム、ユウロビウム、ベリウム」になっている。炭酸ガスや水素や窒素は普通はミネラルとは呼ばないだろうし、ユウロビウムやベリウムなんて元素はない。(ユウロピウムとベリリウムだ。もっとも本当に含まれているのかどうかは疑問だが。)

それよりも驚かされたのは、スカンジウム製のバットテントフレーム自転車フレームが見つかったこと。

これはもちろんスカンジウム単体なわけはなく、アルミ合金の一種のようだ。韓国のYUNAN Aluminumや、アメリカのEASTON社のQ&AInstructionなどを読むと、元々は旧ソ連のミサイルやミグ29で使われた合金らしく、添加したスカンジウムが溶接等の熱処理の際のアルミ結晶粒子の粒成長を抑制し、結果として耐熱性軽量高強度合金となるようだ。詳しい内容は、Scandium Information Centerで入手できる。

チタンの場合には純チタンもチタン合金も「チタン」と呼ばれたりしていて紛らわしいのだが、それでも主成分はチタンである。スカンジウムの場合には、さすがに純スカンジウムということは金額からしてもありえなさそうだが、スカンジウム合金といってもスカンジウム含有量はせいぜい数%程度のようだから、ちょっとこの呼び方には抵抗があるなあ。それでも、アウトドア用品と自転車の世界では、既にある程度の知名度と地位を確立した材料のようだし、今後は一般用にも少しずつ使われるようになるかもしれない。

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