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2005/03/31

ミレニアム・エコシステム・アセスメント

MSN-Mainichi INTERACTIVEの(3/31)の記事。生態系評価報告書:生物種の絶滅速度「自然状態の1000倍」--国連が公表

 国連は30日、世界初となる地球規模の生態系評価報告書(ミレニアム生態系評価)を公表した。地球上の生命を支える多くの生態系の機能が急激な開発の影響で著しく低下していると指摘、「このままでは持続可能な開発は不可能で、貧困や飢餓の撲滅といった人類の目標は達成できない」と警告している。

 報告書は、日本など95カ国、約1300人の科学者が約4年間かけてまとめた。過去20年で世界のマングローブの35%が失われ、サンゴ礁の20%が破壊されるなど人間の活動で生態系の大幅な劣化が続いていると分析。生物種が絶滅する速度は自然な状態の1000倍の速さに達し、今世紀中に鳥類の12%、ほ乳類の25%が絶滅する恐れがあるとした。

今さら、驚くことは特にないのだが、改めて広範囲にわたる調査結果をまとめたということだろうか。生物種が絶滅する速度が自然な状態の1000倍の速さだというのはどうやって求めたのだろうか? 同じニュースを扱った NIKKEI NETの記事には
 報告書は95カ国の1300人の専門家らがまとめた。「過去半世紀の間に人類史上、例を見ないほど急速かつ広範に生態系破壊が進んだ」と指摘、化学肥料の使用により、土壌中で生態系に影響している窒素成分は1960年に比べ2倍、リンは3倍に増えたという。

 種の絶滅ペースも加速し、1000年以上前までは1000年に1000種あたり0.1―1種が絶滅していたが、現在は100種前後。ほ乳類、鳥類、両生類の10―30%は絶滅の危機にある。

とあり、1000倍の根拠は1000年間に絶滅した種の数で見積もっているようだ。1000年前や2000年前の生物種の数がほぼ推定できているということなのかな? それにしても、現在は毎年 約10%が絶滅する速度ということだろうか?  0.9の50乗が 0.005なので、この比率で絶滅が続くとすると 50年で 0.5%まで減ってしまうことになるな?? これだと、逆に過去に遡るとすごい数の種がいたことになってしまうけど。(大ボケなので訂正:1000年で10%が絶滅、定速だと1万年で全滅。定率でも5万年で0.5%まで減少することになる。生物の歴史時間スケールで見ると、いずれにしてもすごい速度で全滅に向かって急降下していることには違いがないだろう。)

種の数が何十億年の歴史の中でどのように増減したかについては、専門家の間にも議論があるようだが、生物多様性関連の情報については、この資料を始めとして、千葉大学の群集生態学講座資料が勉強になりそうだ。

生物の絶滅に関するデータは、環境省の生物多様性センターの生物多様性情報システムがまとまっている。ここの数字だと、この30年の生物絶滅速度は 40000種/年となっており、現在未知のものを加えて全部で3000万種いるとして、この数字を使って単純に計算すると750年で全生物が絶滅することになる。まあ、生物種の数の推移を予測するのは、相当に大変そうだけど。。

今回の発表に先立って2月に国連が案を発表していたようで、Sankei ECONETにも関連記事が載っている。

今回の発表についての国連のニュースはUN-backed ecological report warns of potential new diseases and ‘dead zones’で読めるが、少し探してみた範囲では Millennium Project 関連だと思われるのだが、肝心の報告書が見当たらない。国連のニュースによると、

Although evidence remains incomplete, the report finds enough to warn that ongoing degradation of 15 of the 24 ecosystem services examined - including fresh water, capture fisheries, air and water regulation, and regulation of regional climate, natural hazards and pests - increases the likelihood of potentially abrupt changes that will seriously affect human well-being.
とあり、調査した24の生態系のうち15において現在進行中の悪化が見られるということで、それらは、水や空気の汚染や気候変動などの他に、自然災害やペスト害虫なども含まれているようだ。

また、この国連のニュースではいわゆる自然破壊が進んでいるという警告よりも、生態系との共存を図らないと、結果として自分たちの将来だけでなく現在を生きる人々にも悪影響があるというニュアンスが強い。具体的には、森林の消滅がマラリアやコレラを始めとする感染症の蔓延に影響する懸念や、生態系の急激な変化は、結局最も貧しい人々の生活を直撃することを指摘している。生物多様性に関する危機感も、地域や分野によって随分異なっていることを知っておく必要がありそうだ。

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2005/03/30

水溶性フラーレンの化粧水

asahi.comのニュース(3/29)。ナノテク素材「フラーレン」が化粧品に 美白効果に注目

 ナノテクノロジー(超微細技術)の代表的な炭素素材「フラーレン」を使った初の化粧品を三菱商事の子会社「ビタミンC60バイオリサーチ」などが発売した。紫外線などによって発生する活性酸素の活動を皮膚から浸透したフラーレンが抑制。同じく抑制効果を持つビタミンCとフラーレンとの相乗効果で、肌を白く保つことや老化防止につながるという。医師の指導のもと、まず全国10カ所の美容皮膚科などで販売。価格は化粧水(50ml)が約1万円。
フラーレンが化粧品に使われるというのも、なるほどと言うか、驚きというか、ある程度高価でも受け入れられる分野から実用化されていくのは当然か。それにしても、三菱商事の子会社ながら、社名に驚かされる。ビタミンC と C60に引っ掛けたのだろうけど、ビタミンB12とかがあるから、ビタミンC60という物質があるかのように連想させるところが、何だかなぁ。。

本件については、三菱商事プレスリリースが、世界初のフラーレン入り化粧品、販売開始(2005/3/30)として出ている。関連する以前のプレスリリースとして水溶性フラーレンのメラニン生成抑制効果を確認(2004/9/8)という記事が読める。

これらによると、この会社が開発した水溶性フラーレン(Radical Sponge)について、広島県立大学の三羽教授らのグループと共同研究した結果、これが紫外線により生成する活性酸素を消去し、さらにメラニンの産生を抑制する効果が見られるということらしい。ただし、活性酸素のトラップは電子構造で説明が付くにしても、メラニン産生抑制のメカニズムはわかっていないようだ。

フラーレンは製造過程を考えると、煤の一種みたいに思えるのだが、意外なことにトルエン等の有機溶媒にはきれいに溶解する。だが普通は水には溶解しない。水溶性フラーレンや関連情報については、ケムステニュースが詳しいが、表面に水酸基を多数導入することで水溶性としているようだ。もっとも、三菱商事のプレスリリースによると、これはスターフラーレンと呼ばれる、C60(OH)40で表わされる物質で、活性酸素除去能力も、ポリフェノールと同じOH基に基づくものと説明されているから、Radical Spongeとは別物なのだろうか。

さて、フラーレンを有機溶媒に溶解した場合、溶液の色は、ここにあるように紫色となるようだが、今回のフラーレン水溶液は一体どんな色なのだろう? 美白効果をうたった化粧品だから、まさか黒ということはないだろうが、果たして無色(白色)なのだろうか? 先のスターフラーレンは何故か乳白色らしいが、何色なのか興味があるところだ。

朝日新聞の記事では『「ビタミンC60バイオリサーチ」など』と書かれているが、三菱商事のリリースによると、販売するのはアイ・ティー・オーというビタミンを主とした化粧品関連の会社だ。(社長が伊東さんなので ITO という社名らしい)

今回の美白化粧水(APP-F)は、医師の指導の下で使用されるドクターズコスメというもので、それなりにコントロールされて使用されるようだ。しかし、医薬品ではなくあくまでも化粧品という範疇のもののようだから、その安全性等の確認がどうなっているのかは不明だ。

美白効果のメカニズムも詳細が不明なのだから、水溶性のフラーレンが体内でどういう挙動を示すのかはまだわからない点が多そうだ。ラジカルをトラップするだけならともかくも、メラニンの産生を抑制するとなると、実際に何らかの細胞への関与が考えられるわけで、果たして化粧品という位置づけで使用して良いのかどうか?? もっとも、同じ水溶性フラーレンのがん転移抑制効果について医薬品としての研究も進めているようだから、安全性についても十分な感触を得ているのだとは思うのだが。

といいつつ、ドクターズコスメを調べてみるとケンコーコムキレイナオネエサン.comなどのように、通販で普通に買えてしまうものらしい。どうやら、ドクターズコスメとはきれいなんでもに書かれているように、必ずしも明確な定義がないままに使われている言葉のようだ。。

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2005/03/29

商標に関するトピックス

3/28の日経新聞の19面のスイッチオン・マンデーという欄で商標登録の最近のトピックスが取り上げられていた。3/15 の NIKKEI NET でも取り上げられた、政府、商標法改正案を閣議決定というニュースに関連した商標法改正の解説やその他の関連トピックスが書かれている。この商標法改正は、3/15の記事によると

 商標法改正案は「博多人形」のように地名と商品名を組み合わせた地域ブランドを生産者などの団体が商標登録しやすくし、模倣品が出るのを防ぐ。現在は「西陣織」などの極めて知名度が高く、生産する事業者が特定できるブランドにしか商標を認めていない。
とのこと。スイッチオン・マンデーの解説によると、現在は「博多人形」や「近江牛」などの、地名+商品・サービス名という組み合わせは商標登録が認められていない一方で、「西陣織」「三輪素麺」「宇都宮餃子」「夕張メロン」などは例外として商標登録が認められているのだそうだ。長年の使用で知名度が上がり、個人・団体などの出所が特定できるのが基本条件らしいが、その境界線は極めてあいまいだったようだ。一方、
 今回の法改正は、地域経済の活性化を目指している。全国的な知名度はないが、地域ではよく知られたブランドに大きな機会が与えられる見通し。
とのこと。「豊岡鞄」などが商標登録を狙っていると書かれている。ただし、改正法の運用にも不透明な面があり、複数の団体から同じ名称の登録希望が出てくることも考えられ、争いになる可能性もあるとのこと。今回の商標法改正の詳細は、特許庁の法令改正のお知らせに詳細が掲載されている。

ところで、この記事で面白かったのは、「一般的な名称と思われがちな主な商標」という一覧表。

味の素 (味の素)
アイスノン (白元)
ウォークマン (ソニー)
ウォシュレット (TOTO)
エレクトーン (ヤマハ)
固形肥料 (日本肥糧)
サランラップ (旭化成ライフ&リビング、ダウ・ケミカル)
ジープ (ダイムラークライスラー)
セロテープ (ニチバン)
宅急便 (ヤマト運輸)
タッパー (ダート インダストリーズ インコーポレーティッド)
デジカメ (三洋電機)
バンドエイド (ジョンソン・エンド・ジョンソン)
ファミコン (任天堂)
ポリバケツ (積水化学工業)
マジックインキ (内田洋行)
マジックテープ (クラレ)
万歩計 (山佐時計計器)
ラジコン (増田屋コーポレーション)
がリストアップされている。味の素、ウォークマン、サランラップなどは結構知られていそうだが、デジカメ、万歩計、ラジコンなどは意外だった。しかし、デジカメという用語は、ラジカセ(商標ではない)やエアコン(いわゆる空調設備の名称としては登録されていない)などと同列の日本語特有のカタカナ用語の省略形のような気がしないでもない。果たしてこれだけ一般名詞化して広まったのが、この商標の知名度なのか、あるいは、それとは別に省略形の用語が自然発生的に流通したのかどちらなのだろう?

商標は競合他社等が商品名等として使用することはできないけれど、一般の人が会話や文章で使用することが禁止されているわけではないから、ここまで一般名詞化してしまうと、商標権を持っていることのメリットもどこまであるのかわからなくなってしまうな。

この手の商標の一覧は、例えばWikipedia雑学大作戦:知泉などに載っている。ほー、タバスコ、フリスビーなど、まだまだ結構あるものだ。。(もっとも、この表にある「破魔矢」は調べてみると破魔矢寿製作所のものはみつからなかったし、「パンスト」も見つからなかったので、個別に確認が必要のようだ。)

そういえば、3/25のSankei Webに車名に「Q」 権利侵害 北米日産、アウディを訴えるという記事が掲載されている。

 北米日産は24日、高級車ブランド「インフィニティ」が車名に使用しているアルファベットの「Q」を、ドイツの自動車大手フォルクスワーゲン(VW)傘下のアウディがスポーツタイプ多目的車(SUV)に使うのは権利侵害だとして、アウディを米ミシガン州デトロイトの連邦地裁に提訴したと発表した。「Q」の使用差し止めと損害賠償を求める。

 アウディは従来、車名の一部に「A」を使用してきたが、2006-09年に市場に投入予定のSUVについては「Q7」など「Q」を使う計画を発表。これに対し、インフィニティブランドの車名に「Q45」などQを使用する日産は「Qはインフィニティの登録商標で、品質を象徴するものであり、顧客に混乱を引き起こす」として、アウディによる権利侵害を主張した。

というもの。これはアメリカの話だけれど、「Q」が登録商標ってのは本当かな? 日本の場合には、商標出願・登録情報検索で検索してみたが、「INFITITIQ45」のように車名と組み合わせたものしか登録されていないようだ。日本では車を呼ぶときに固有の車種名(カローラ、フィット、マーチ等)を使うけど、向こうの車名は「会社名+記号、数字」で表現されることが多いようだから、こういう問題が起こるのだろうけど、どう決着するのかな?

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2005/03/28

風力発電する自動車

NIKKEI NETの地域経済ニュース(3/26)。エコロ21、タクシーの屋根の風力発電機で携帯電話充電サービス

タクシー会社、エコロ21(京都市、五十嵐道和社長)は4月1日から車載の風力発電機で起こした電気で携帯電話を充電するサービスを始める。環境対策を通じて知名度を上げ、乗車率向上にもつなげる。まず1台で試験し、評判が良ければ全車に採用する。

 タクシーの屋根に付ける車屋灯を特注し、プロペラ式風力発電機を組み込んだ。1基30万円前後という。乗客は無料で充電できる。

 同社はタクシーの参入・撤退や運賃設定が自由化された2002年2月の設立。全車(16台)にアイドリングストップ機能付きの車を採用し、自転車搬送用の機具を取り付けるなどの環境対策を講じてきた。自転車搬送(無料)は月に300回程度利用されている。

環境をキーワードとしたビジネスの一種なのだろう。アイドリングストップ機能付きの車を採用しているというのは、間違いなくエコだろうと思うのだが、この風力発電機はどうだろう? わざわざ30万円もする発電機を特注で作ったようだが。

このエコロ21という会社、ホームページを見ると、今回の風力発電の話はまだ掲載されていないけれど、精一杯工夫を凝らして頑張っている雰囲気があって応援したくなる。

しかし、どう考えてみても、車に取り付けた風車が発電する分だけ抵抗が増大するはずで、エネルギー効率だけを考えたら、風車で発電するよりは素直に車のバッテリーから電気を持ってきた方が良いと思うんだが。。 もっとも、携帯充電程度の電力なんて微々たる物で、ほとんど大勢に影響はないだろうから、その辺を全部了解した上でなら、確かに屋根の上で回るプロペラはインパクトがあるだろうし、宣伝効果として悪くはないかもしれない。(30万円は高すぎるけど)

これなら、他にも自動車に風力発電機を搭載するというアイデアを思いつく人はいるだろうな、と思い特許を検索してみた。特許電子図書館の公報テキスト検索で、公開特許公報について「要約」が「自動車 AND 風力発電」を検索すると33件ヒットした。

ほとんどが、個人が出願しているもので、車載風力発電機で走行時に発電し、その電気を使ったり充電したりして効率を向上させた電気自動車に関わる発明で、中には風力以外のエネルギーが不用だと書いてあるものもある。皆さん、空気抵抗を少なくしつつ発電効率を高くするために色々と知恵を絞っているので、図面がとてもユニークで楽しい。減速時のみに発電するというエネルギー回収のアイデアもあり、これは可能性があるかもしれない。

さすがに自動車会社からは1件も出願されていないのだが、東芝(特開2003-269319)や日立製作所(特開平05-201261)のような大会社や、電波学園(特開平11-155203)のような学校が、こんな特許を出願しているのはどうかと思うぞ。。

風力発電と電気自動車としては、電気自動車で南極点を目指す ZEVEX という冒険プロジェクトが進行中のようだ。これは南極の強い風を利用した風力発電と太陽電池で発電した電気を充電して走行するもので、もちろん走行時に発電するのではなく、停止時に風車を組み立てて据え付けて発電するらしい。

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2005/03/25

燃える氷:NGH

YOMIURI ON-LINE(3/25)の記事。天然ガスを固体化して運搬、2010年めどに実用化

 三井造船は24日、石油に比べて二酸化炭素の排出量が少ないため、温室効果ガス対策として需要増が見込まれる天然ガスを固体化して運搬する事業に乗り出す方針を明らかにした。2010年をめどに、製造設備や運搬船を実用化する。

 現在天然ガスは、液化天然ガス(LNG)の形で輸入されているが、液化設備や輸送船などの建設・運用費用が高いのがネックだった。固体化できれば製造・運搬コストとも引き下げられるため、ガスの末端価格が下がる可能性もあるという。固体化技術は25日に開幕する「愛・地球博」(愛知万博)で「燃える氷」として披露される。

 天然ガスを水と混ぜて約マイナス20度まで冷やすと、固体状の水和物と呼ばれる物質になる性質を利用する。マイナス162度の低温で液化するLNGに比べ、固体化の場合は冷却する温度が高いため、比較的簡単な施設や船で製造・輸送できるのが長所。三井造船では、現在輸送船の基礎設計を行っている。2005年以降に模型船による実験や実証プラントの建設を行う計画だ。

燃える氷ねぇ。。 タイトルの「天然ガスを固体化」というのを見たときには何のことだろうか?と思ったけど、「天然ガスを水と混ぜて」冷却して「固体状の水和物」にするってまどろっこしい説明だけど、これってメタンハイドレートじゃないのか?

三井造船のホームページで探すと、愛・地球博「ガスパビリオン 炎のマジックシアター」にメタンハイドレートを展示というプレスリリースが見つかった。この燃える氷は、天然ガスハイドレート(NGH)と呼ばれるもののようだ。

天然ガスハイドレートについては、三井造船の技術力のページで詳しく解説されている。大気圧条件下、-20℃でNGH 1m3中に天然ガスを170Nm3貯蔵できる能力があるとのこと。ちなみに液化天然ガスLNGの場合には、-162℃のLNG 1m3はガス換算で 600Nm3分となるので、貯蔵能力としてはLNGの28%に過ぎないが、温度が大きく異なるので、コスト的には魅力が出てくるらしい。(参考:経済性試算)また、採算性が低い中小のガス田が有効利用できるということも大きなメリットらしいが、こちらは雑誌エンジニアリングビジネスに詳しい。

とは言え、液体と固体(ペレット)では取り扱いの容易さが随分違うように思える。特に低温で可燃性の固体を大量に移送する技術(貯槽とタンカーとの間等)は、安全性を考えると結構大変そうだが、ドライアイスを取り扱う技術が利用できるのだろうか?(参考:スラッシュドット)

よく話題になるメタンハイドレートの場合には、自然界でハイドレートになったものを利用するわけで、例えば産総研の 科学解説 燃える氷が人類を救う!?には明るい未来を約束する技術のように説明されている。しかし、今回の技術は、普通の天然ガスをわざわざ固体化して運ぶということで、確かに発想の転換ではある。

といいつつ、調べてみると2001年発行のブルーバックス「データで検証! 地球の資源 ウソ・ホント」(井田 徹治 著)(bk1amazon)の中でも、イギリスのブリティッシュガス社が積極的に天然ガスのハイドレート化技術の開発をしていることが紹介されていた(p.37~39)から、さほど最新の技術ということでもなさそうだ。LNGのようなパイプラインの敷設が不要ということもあり、途上国などでの使用が想定されているようだ。

ちなみに、「燃える氷」で検索したら、その名もBurniceなんてものが見つかった。これはローソクで有名なカメヤマローソク製の流動パラフィンを使用しているらしい。面白い。(このショップが取り扱っている商品は結構ユニークなものが多いようだ。)

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2005/03/24

今日は「世界結核デー」

Yahoo!ニュース経由、時事通信のニュース(3/24)。03年の結核死者175万人=患者はインドが最多

【ジュネーブ24日時事】世界保健機関(WHO)は24日、2003年の結核患者数は全世界で881万人、死者は175万人とする調査結果を発表した。死亡率は低下傾向にあるが、患者数は緩やかな増加が続いており、WHOは各国に適切な対策を講じるよう求めている。
 最も患者が多かったのはインドで179万人。次いで中国(133万人)、インドネシア(22万人)と人口の多いアジア諸国が続く。
世界規模では、結核での死亡者が175万人もいるとは。調べてみると、今日は世界結核デー(World TB Day)である。(結核:TB=tuberculosis) ロベルト・コッホが結核菌の発見を学会に発表したのが1882年の3月24日だったのが由来とのこと。結核については、(財)結核予防会が参考になる。

WHOの最新のリリースはこちら。冒頭の時事通信の記事を読むと、インドや中国が問題のように読めるのだが、このWHOのリリースによると、インドや中国は随分改善傾向が見られ、特にDOTSという結核対策の実施率が共に上昇しているということだ。むしろ問題はアフリカと東欧諸国であり、特にアフリカ諸国ではHIVとの複合感染が問題で、1990年と比べて発生率が3倍に上昇し、年率3-4%で増大中とのこと。

DOTSについては、(財)結核予防会のDOTS戦略を中心としてという資料に詳しく載っているが、"Directly Observed Treatment, Short-course" の略で、「直接監視下短期化学療法」と呼ばれる治療法に付けられた名前だが、現在ではより広い意味で総合的な結核対策戦略のことを指すらしい。

世界結核デーに合わせて、韓国の朝鮮日報には、

 世界経済規模トップ10入りを果たしている韓国で、毎年新しい結核患者が3万人以上発生、OECD加盟国のうち、結核発生率が最も高い国であるという汚名を払拭できずにいる。

 結核に関する限り発展途上国であるといえる。最近は「結核の薬に耐性を持つ細菌」に感染した患者が増え、これら患者たちが結核の“スーパー・スプレッダー(Super Spreader)”の役割をしており、対策が急がれるのが実情だ。
  (中略)
韓国が結核後進国であるのは結核発生率からも垣間見れる。人口10万人当たり結核発生率は韓国が91人であるのに比べ、米国は5人、英国は12人、日本は33人だ。

という記事が載っている。中国や韓国では結核がまだまだ終わった病気ではないようだが、よく見ると日本も決して自慢できる数字ではなさそうだ。厚生労働省の平成15年結核発生動向調査年報集計結果によると、日本では2003年に2300人以上の方が結核が原因で亡くなっていて、罹患率は24.8で、スウェーデンの4.2やアメリカの5.2に比べると随分と悪い数字であり、「世界的に見て、日本は依然として結核中進国である」と書かれている。その割には、新聞やTVでも結核予防キャンペーンのようなものはほとんど目にしないのだが、大丈夫か?

日本の結核の現状については、結核予防会の結核の常識 2004によると、結核は日本で最大の感染症で、高齢化の影響や、集団感染の問題などが指摘されている。何をもって最大なのか不明だが、患者数や死者数で言えばインフルエンザが最大のような気もするのだが。。。

世界各国の死因別死亡率統計を見ると、結核を含めて各国の死因の違いが見て取れて中々興味深いのだが、残念ながら中国やインド、あるいはアフリカ諸国などの統計が含まれていない。

そういえば、岩波ジュニア新書の「人類 VS 感染症」(岡田 晴恵 著)(bk1amazon)には、ペスト、コレラ、天然痘やインフルエンザなどの感染症の話が出てくるのだが、結核については全く触れられていなかったな。この本には天然痘の地球上からの根絶がどのように行われたのかや、その活動に貢献した日本人(蟻田さん)のことが書かれている。しかし、日本でさえもまだ結核がなくせないところを見ると、これを地球上から根絶するのは相当に大変なのかもしれない。

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2005/03/23

失敗知識データベースを覗いてみた

MSN-Mainichi INTERACTIVE(3/23)の記事。科学技術:国内外の失敗1000件「成功のもとに」 振興機構がデータベース化

◇タイタニック沈没、臨界事故、カネミ油症…

 科学技術振興機構(JST)は23日、国内外で過去に起きた科学技術分野の失敗約1000件を網羅したホームページ「失敗知識データベース」を開設する。タイタニック号の沈没(1912年)や茨城県東海村での臨界事故(99年)など、過去の大事故やよくある失敗を教訓に、失敗防止を目指す取り組みへの活用を呼びかける。

 「失敗学」の提唱者、畑村洋太郎・工学院大教授が中心となり、過去100年余りの事例を分析した。事故に関する公の調査報告書や報道を基に、各事例ごとに概要、原因、対処、対策、後日談など約30項目のデータを掲載する。

 「鉄道」「自然災害」「原子力」などの項目別に検索できるほか、「不注意」「検討不足」「操作変更」「連絡不備」「死亡」など、失敗の特徴から該当する事象を選び出すこともできる。

 臨界事故、03年の米スペースシャトル「コロンビア」事故、食用油にポリ塩化ビフェニール(PCB)が混入したカネミ油症事件(68年発覚)などは「教訓に富んだ典型的な失敗・事故」と位置付け、図や絵を多用して読み物風に紹介する。

 データベース(http://shippai.jst.go.jp/)の利用は無料。問い合わせ先はJST技術者能力開発情報部門(03・5214・8456)。

早速、失敗知識データベースにアクセスしてみると、本日から一般公開が開始されたとのことで、既に一通りのデータが見られる。数年前から失敗学に関して、畑村先生が多数の本を出されているようだが、あいにくと読んだことがない。(参考:失敗学会

このデータベースは過去の事故やトラブル事例を幅広い分野から集めたもののようで、なかなかの力作だ。こういうデータベースに無料でアクセスできるというのは歓迎したい。以前から主として企業での労働災害や事故を防止する目的で、自社や同業他社の事故や災害の事例を集めた書籍類はあったし、色々な場で活用されてきたのだが、このように世界中から広い分野の事例を集めて、統一した基準で分類整理され、しかもかなり詳細に記載されている点は感心する。このデータベースについてには、畑村先生自らが解説をしている動画ファイルも掲載されているのだが、うちの貧弱なブロードバンド環境では音が途切れ途切れで聞くに堪えなかった。

このデータベースの目玉とも言うべき、目新しい試みが「失敗まんだら」というものらしい。失敗知識データベースの構造と表現という解説は非常に難解な説明が延々と続いていて結局よくわからない。。 どうやら、従来からある事故や災害事例集では失敗知識の伝達がうまく行っていないので、繰り返し同じような事故や災害が起こっており、もっと失敗知識を構造化する必要があるということらしい。そして、そのために編み出されたのが「失敗まんだら」というもので、従来からのデータベースが原因と結果の単純な関係からなるのとは異なり、事例のシナリオなどを考慮して、検索者が欲しい情報に的確にたどり着けるようになっているのだそうだ。

実際には、「原因まんだら」「行動まんだら」「結果まんだら」の3つの切り口で過去の事例を分類し、例えば、原因が「調査・検討不足」、行動が「非定常操作」、結果が「身体的被害」などと指定して検索すると、該当する事例が検索できる。でも、従来からの事故事例の分類でも、似たような分類は普通にされていたと思うし、検索も同様に可能だと思うけどなあ。もちろん、分類の仕方は微妙に違うのだろうけど、本当にこの仕組みはそんなに新しいのだろうか? 

ともかくも、例えば過去の原発事故や航空機事故などの詳細を知りたい時などは、まずここを見てみるのが良さそうだ。古いものは戦前の事例などもあり、本当に今の時代の事故防止に役立つのかは疑問もあるけど、データベースとしては貴重だろう。

目的はあくまでも過去の事例を今後に活かすためのものであり、決して誰かの責任を追及するためのものではないとはいうものの、失敗百選なんてのに選ばれるのは、さすがにいつまでも晒し者になってるみたいでちょっと辛そうだ。。

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2005/03/22

ペコロジーボトルと3R

日刊工業新聞社ビジネスライン(3/22)でみつけた記事。

キリンビバレッジ、ペットボトル容器の環境対策を加速

 キリンビバレッジはペットボトル商品に対する需要の高まりを受け、以前から同ボトル容器の環境負荷低減を推進してきた。ペコロジーボトルはペットボトル容器としての使用時の強度を維持しつつ、軽量化を図った。2リットル容器で42グラムと国内最軽量を実現している。

 このため原料となるPET樹脂の使用量や製造時の二酸化炭素(CO2)排出量は従来に比べ1本当たり3分の1に削減できる特徴を持つ。また、手で簡単につぶせ、ラベルも簡単にはがせて分別回収を容易とした。

というもの。キリンビバレッジのサイトを探してみると、1/19のニュースリリースが見つかった。
 ペコロジーボトルは、使用時の強度は損なわずに、使用後にはラクにつぶせる、クラッシャブルボトルです。容器のつぶしやすさは、空容器を分別排出する際のお客様の負荷を軽減し、リサイクルの促進にもつながります。

 また、ボトルの重量は、当社で使用している2Lの現行容器に比べて、約2/3まで軽量化されており、日本に現存する2Lのペットボトルでは最も軽いものとなっています。容器の軽量化は、大幅な資源の節約を実現します。こうした観点から、新ボトルは、お客様の利便性だけでなく環境問題への貢献度も高く評価できるものです。

とある。内容積が同じままに同一素材で軽量化したんだから、ほぼ肉厚を2/3程度に薄くしたということか。昔、ヨーロッパの飲料用のアルミ缶を見た時に、その薄さと軽さに驚いた覚えがある。ペットボトルも確かに今の重さである必然性はないわけだ。しかも、これだけ量が増えると軽量化の寄与も相当に大きいだろう。ボトル自体の強度は弱くなっても、中に液体が入っていれば、そう簡単につぶれることはないのだから、確かに設計を見直す余地はあるのだろう。使用後に素手で簡単につぶせる様子は、こちらに載っている。実際に従来のものとどの程度違うのか、機会があったら是非一度体験してみよう。

他のボトルはどの程度の重量なのかを調べてみると、e-問屋で見つけたボトルは、確かに2Lボトルで62gであり、42gだと普通の1.5Lボトルよりも軽いわけだ。経産省の3Rの資料には、ガラス容器も含めて容器の軽量化の実例が載っている。

この手の軽量化の取り組みは3Rの中でも Reduce に該当し、下手なリサイクルを推進するよりもよっぽど効果的だろうから、どんどん進めて欲しいものだ。本当は、少々重くても丈夫なボトルを何度かリユースする方がもっと効果的だろうとは思うけど、それには社会システムの変化が求められる。リユースをしないのであれば、一回の使用に耐えられる最低限の強度を目指して軽量化する方向というのは一つの答えなのだろう。問題は最低限の強度の基準なのかもしれない。

ちなみに、冒頭の記事でCO2の排出量が従来の1/3に削減できるというのは、削減される量が1/3の間違いだろうと思われる。。

ところで、タイミングよく環境省の報道発表に3R推進キャンペーンの記事が載っているのだが、3Rを「さんあーる」ではなくて「スリーアール」と読むとは知らなかった。。 環境省だけでなく、経済産業省の3R政策でも「スリーアール」と書かれている。

ところが、EICネットの環境用語集は「サンアール」になっているし、東京都港区の今日から実践!「3R」でも「さんあーる」だし、科学技術振興機構のWebラーニングプラザの資料(環境-環境概論-持続可能型社会の実現)でも「さんあーる」と発音している。。。

「さん」と読むのは3K、3P、3S、3LDKなどに対して、「スリー」と読むのは3D、3M程度。どちらかというと「スリー」と読む方が少数派のような気がする。。

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2005/03/21

「世界最速のF1タイヤ」

早くも今シーズンのF1グランプリでは第2戦まで終了した。先日のマレーシアグランプリではトヨタが初の表彰台に上った一方で、ホンダは2台とも早々にエンジントラブル、王者フェラーリは7位がやっとという状態で、上位陣の顔ぶれも昨年とは大きく変わっており、この世界の技術的な進歩の早さを示しているようだ。そんな中で発売されたのが、今年もブリジストンのF1エンジニアを率いている浜島さんが書いた本書だ。

F1の成績を左右する要素の中でも、タイヤはその影響力が大きい割には目立たないというか、素人にはさっぱりわからない。エンジンはスペックの数字だけでも違いが感じられるし、悪ければ壊れちゃうし、良ければ最高速度や加速の違いとしてわかりやすい。空力も、見た目で違いがわかるし、それなりに解説書もあるし、情報も比較的豊富に手に入る。ところが、タイヤは見た目では違いがわからないくせに、タイムへの影響は相当に大きいらしい。

今回のフェラーリの惨敗も、どうやらタイヤの責任が大きいらしい。(有力チームの中で唯一フェラーリだけが旧型マシンなので、これもわかりにくいのだが。)そんなタイミングで出た本だけに、その秘密の一端でも垣間見れるのを期待して読んでみた。

新潮新書 110
 世界最速のF1タイヤ ブリジストン・エンジニアの闘い
 浜島 裕英 著、bk1amazon

本書は著者の浜島さんがブリジストンに入社して、F1に参戦するまでの経緯や、そのF1の現場での日々の闘いの様子、それにF1ドライバやチームの横顔などを紹介している。現在実際にF1に参加してライバルチームとしのぎを削っている状況なので、最新の技術の中身を公開するのはもちろん無理だろう。しかも、超多忙な中で本を書く時間などどこにあったのかと思うのだが、どうやら講演会などで一般の聴衆を相手に話した内容をまとめたもののようだ。

F1の世界での技術開発のスピードは、他の通常の企業内の技術開発とは大きく異なる印象がある。ともかく掛けるお金が桁違いに大きいのだが、それに見合ったスピードと成果を要求される。従来特にエンジンやエアロダイナミクスなどの開発については色々と紹介されていたけど、本書を読むと、タイヤの世界の争いも全く同様に厳しい世界だなということは十分に伝わってくる。

本書の主旨が技術的な中身を解説したり、レースタイヤのイロハを説明したりするものではなく、人間的な面などに焦点を当てたもののようなので仕方ないのだろうけど、もう少し技術面にも触れて欲しかった。。 残念ながらF1についてある程度興味があって知識のある人は、内容的に目新しかったり、今まで不明だった謎が解けたりという、お得感が感じられるような内容はほとんど期待しない方が良いだろう。

最近のタイヤをめぐるレギュレーションの違いや、それにも関わらずラップタイムがどれだけ上がってきたのか、その内タイヤの寄与分はどの程度なのか、といったことはタイヤ開発の熾烈さを示すのに格好の材料だと思うし、是非数値で紹介して欲しかったのだけどなあ。あるいは、基礎的なことだけど、レースタイヤの「ソフト」と「ハード」は何を変えているのかとか、レースタイヤの寿命を延ばすために何をしているのか、などの技術的なトピックというのは、よく聞く話の割にはほとんど詳しい情報が得られないのが実情だから、結構コアなファンにはニーズがあると思えるのだが。

なお、ブリジストンのモータースポーツ情報には、F1に限らず、モータースポーツ関連の各種情報が載っている。今回のマレーシアグランプリ終了後のリリースはまだ掲載されていないが、明らかな惨敗を受けてどんなコメントが掲載され、今後どんな巻き返しをするのか楽しみではある。何しろ成績を盛り返さないと、本書の「世界最速」のタイトルが泣くし。。

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2005/03/18

234回目の献血とvCJD対策状況

前回 2/17に続いて、丁度4週間ぶりの成分献血。またまた相模大野献血ルームで血小板成分献血。今日は外も暖かく、室内は暖房が効いていて暑いくらい。そのせいか、血の出も良かったようだし、痛みもなく快適な献血だった。

今日はおまけとして新たに電子体温計と万歩計がラインナップされていた。でもどちらも既にまともに機能するものを持っているので、今回はあっても邪魔にならないものということで、おコメをもらってきた。(新潟コシヒカリ 750g)

毎回のおまけとは別に、スタンプを押してもらっていたカードが今回10ポイントとなったということで記念品をもらった。『「ラーラ・トルニエ」モーニングセット 8PC』という奴で、ここで見てみると定価500円か。。 いかにも見るからに安っぽいし、貰っておいて言うのはなんだけど、あまりうれしくないなぁ。。

ところで、例の日本での vCJD患者の発生に伴う献血制限だが、赤十字の英国渡航歴がある方の献血の受入れについてによると、2/28以降は1980年以降に通算1ヶ月以上の英国渡航歴のある人は献血を断ることになっている。また、3/8付けの厚生労働省の発表によると、

 (1)  1996年までに英仏に1日以上滞在歴がある者の献血を制限する。(1997年以降はこれまでの6ヶ月以上の滞在歴の制限を継続)
 (2)  EU諸国(注)において、2005年1月以降の滞在者については献血における滞在歴の制限は行わないこととする。
という案を、今後安全技術調査会での検討後に施行することになっている。その後、赤十字のサイトにも厚生労働省のサイトにも新たなお知らせがないところを見ると、現時点では滞在期間が1ヶ月以上の場合に献血が拒絶されるということになりそうだ。

で、実際の献血ルームの対応はどうなっているのか、少し興味を持っていた。確かに、入口には英国に1ヶ月以上の渡航歴のある人は献血をお断りする旨のポスターが掲示されていたが、受付の応対や問診表には、特にそれらしい内容はなかったようだ。問診表は「海外に住んでいたことがありますか、またはこの1年間に海外旅行をしましたか、それはどこですか?」というような従来の内容のままだったから、献血する方が気を効かして「実はだいぶ前にイギリスに旅行に行きました」とでも正直に答えない限りはチェックできないはずだ。実際、医師による問診でも、この部分を特に念入りに聞かれることはなかったし。。

こんなんでいいのか? と疑問に思ったのだが、献血を終えてから「アンケートをお願いします」と言って紙を渡された。これは「1980~1996年の間に、イギリスまたはフランスに、1日以上もしくは6ヶ月以上滞在したことがありますか?」というような内容。

でも無記名だし、これでどうするつもりなのだろう? これで「あります」と答えていたら、どうなるのかなあ? 無記名だけど、対面式アンケートだから氏名はわかるし、採った血を廃棄したりするのだろうか? それなら、誰が考えたって献血前にチェックするべきだよなあ。そもそも6ヶ月以上(本当は1ヶ月以上)滞在していたら、その血は使ってはいけないと決まっているはずだし、1日以上の場合にはまだ最終決定はしていないはずだし。もしかして、この制限を導入したらどの程度献血量が減少するのかを調べているのかな?

うーむ、相変わらず赤十字の考えていることはよくわからん。。。

タイミング良く、NIKKEI NET(3/18)に、変異型ヤコブ病対策で献血者6%減?・厚労省試算という記事が載った。これによると、

 国内初の変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の患者が滞在していた英国、フランスへの渡航者からの献血を断る方針を決めた厚生労働省は18日、献血者が最大6%程度減るとの試算をまとめた。日本赤十字社が現在、より正確な予想のために献血者の渡航歴調査をしており、厚労省は結果をもとに、献血呼びかけの強化や輸血量抑制の要請などの対策を決める。
ということで、現在行っている調査というのがあのアンケートだったようだ。。

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2005/03/17

「進化しすぎた脳」

サブタイトルが「中高生と語る[大脳生理学]の最前線」となっているので、エッセンスだけを抜き出した入門書なのだと思って手に取らなかったのだが、ベストセラーとなっているようだ。ある日ペラペラと中を見てみたら、予想以上に高レベルで面白そうな内容だと思えたので読んでみた。著者の池谷さんの本としては、「海馬」(bk1amazon)が有名のようだ。それは読んでいないのだが、ブルーバックスの「記憶力を強くする」(bk1amazon)を以前読んでいて、難しい話をとても読みやすく、面白く、そしてわかりやすく、しかも刺激的に説明してくれたという印象がある。

進化しすぎた脳
 池谷 裕二 著、bk1amazon

本書に関連する情報も含めて、著者の Gaya's homepage は内容が充実しているようだ。

さて本書は、現役の高校生を少人数選び、4回に分けて著者が行った講義の内容を本にまとめたものだ。期待以上に知的な刺激を沢山受けることができて面白かった。とても良質の科学書だと思う。

この内容を高校生が読んだり聞いたりして一体どう感じるのかにも興味があるが、少なくとも僕自身が高校生の時にはここに書かれているようなことを、ほとんど考えたこともなかったような気がする。著者自ら「私自身が高校生の頃にこんな講義を受けていたら、きっと人生が変わっていたのではないか?」と自画自賛するだけのことがあって、確かにこんな講義を受けることのできた高校生は幸せだし、人生が変わるかどうかはともかくも、高校生にも迷わず勧めたい。

タイトルの「進化しすぎた脳」というのは、人間は脳のほんの一部の能力しか利用できていないということを指している。もしも人間に指が20本ずつあっても、足がムカデのように沢山あっても、あるいはコウモリのように超音波の受発信装置を持っていたとしても、それらを自在に操る程度は余裕でできるだろうし、逆に言うと脳が体を制御している一方で、身体が脳を規定している側面もあるということだ。

本書では、脳の仕組み、神経細胞の構造、神経信号伝達のメカニズム(ナトリウムチャネルだとかNDMA受容体なんて話ももちろん詳しく載っている)などを解明していく還元的な学問の進めかたの側面について、最新の実験の紹介を含めて十分にフォローしている。しかしそれと同時に、ミクロな部分をいくら見ていても脳全体のことはわからないという観点にも踏み込んでいて、複雑系や自己組織化の話にも話が及んでいる。

また、人間がものをどのように認識するのかとかクオリアの話などに加え、心や感情は脳から見たときにどう捉えることができるのか、など相当に広い分野を見渡している。普段ほとんど意識することがないけれど、人間の認識や行動、あるいは意識をめぐる、なかなか興味深い知見が紹介されている。そういう意味では脳科学だけでなく、ロボットやAIの分野にも通じているし、もっと言えば、広く人間を理解する上で知っておいて損はない基礎知識と言えるのかもしれない。

第一線の研究者が高校生に最新の研究成果を含めて、これだけ幅広く深い内容をたった4回の講義で説明しようという試みは、それだけでも相当に冒険的と言って良いだろう。人に何かを説明するためには、それも好奇心旺盛な高校生を相手となると、単に知識が十分にあるだけでは不十分だろうし、いわば全部まるごと自分の中で整理されている必要があるはずである。それを、ここまでわかりやすく、興味深い話に仕上げた著者の力量には脱帽だ。まだまだ若いし、研究者としても今後が楽しみだ。

なお、本書にはおまけとして「行列をつかった記憶のシミュレーション」という何だか騙されているような、わかったようなわからないような不思議な話が紹介されている。これは、そのまま著者の記憶を行列計算でシミュレートしてみようというページに掲載されているので、ちょっと覗いてみては如何だろう。

* 1箇所だけ気になったのは、p.222に「プラスイオン、マイナスイオンとかってあるでしょ。神経線維にはイオンが流れて、そのイオンの流れが電気信号になって、あっちこっちに伝わっていくんだ。」という部分。「プラスイオン」や「マイナスイオン」という用語は教科書には出てこない用語のはずだ。正しくは、陽イオン、陰イオン、あるいは正イオン、負イオンだろう。

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2005/03/16

健康食品のナノサイズカプセル化

産総研のプレス・リリース(3/15)。食品素材の「ナノサイズ」カプセル化技術を開発

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)環境化学技術研究部門【部門長 島田 広道】は、株式会社 沖縄発酵化学【代表取締役社長 山里 秀夫】(以下「沖縄発酵化学」という)と共同で、食品素材をナノサイズで封入、包装が可能な、新しいカプセル化技術の開発に成功した。

 本技術によれば、食品の有効成分の体内での安定性や吸収率等が大きく改善されるため、少量の摂取でもより大きな効果が期待できる。健康食品素材の場合、従来の製品に比べ、有効成分の量が半分から6分の1以下でも同様の効果が得られることが検証されている。本技術は加工プロセスも簡便であることから、今後は安価で高機能な健康食品の開発が期待される。
(中略)
食品分野へのナノサイズでのカプセル化技術の導入のため、今回の研究開発では、まず安価な食品素材からカプセル化材料を探索し、リン脂質を選定した。ある種のリン脂質は、特定の条件下で、自発的に集合・配列してカプセル状の構造を作ることが知られている。この特性を活用した混合技術を独自に考案し、ナノサイズでのカプセル調製と、カプセル内への有効成分の封入を同時に達成した。

 本技術によれば、有効成分の多くを100~500 nm(1ナノメートル:10億分の1メートル)サイズのカプセルに覆うことが可能で、カプセルで保護されているため、有効成分が胃で分解を受けにくい。また、カプセルのサイズが非常に小さいため、腸からの吸収率も高くなる。ウコン抽出エキス(主な有効成分:クルクミン)をナノサイズでカプセル化した場合、胃酸や膵液による有効成分の分解が抑制され、従来の製品に比べ、2倍近い有効成分の残存率であることがわかった。また、アガリクス抽出エキス(主な有効成分:β-グルカン)をナノサイズでカプセル化した場合、従来の製品に比べ、有効成分の量が半分から6分の1以下でも、同様の抗腫瘍効果があることが、動物試験から確認されている。
(後略)

というものだが、ナノテクノロジーが流行しているおかげで、これもサイズはサブミクロンというところだが、ナノサイズと呼ぶようだ。さて、このリリースによると、このカプセル化技術はリン脂質と閉じ込めたい物質を特定条件で攪拌混合するだけらしく、工業化も容易だと書かれている。実際に、きれいな球状カプセルの電子顕微鏡写真が載っている。

リン脂質のカプセルに包まれたことで、胃酸や膵液で分解されにくく、かつ腸で吸収されやすくなったということで、良いことずくめのようだ。例としてあげられているのがウコンの有効成分であるクルクミン。従来は胃で半分程度が分解していたが、このカプセル化により残存率が90%程度に増加したそうだ。しかし、カプセルが壊れずに腸まで到達したとして、そこでそのまま吸収されるものだろうか? 模式図では数百ナノメートルのカプセルのまま腸で吸収されるような絵になっているのだが。。

胃酸で分解されるのは生物が作り上げた防御システムの一つだろうし、この障壁をカプセル化ですりぬけるというのは、うまく利用すると確かに有効なのだろうけど、逆にいうと有害成分も防御システムをすり抜けてしまうことを意味しているのではないだろうか?

それにこの方法は、人体に対して有益な効果だけが都合よく効率アップするわけではなく、副作用などのネガティブな効果も増幅されると考えた方がよさそうだ。きちんと検証され、摂取量も厳密にコントロールされる医薬品ならともかくも、現在の健康食品の作られ方や売られ方を見ると、この技術がこの分野に広く応用されるのは何となく危険な印象もないではない。

例えばウコンについては、「健康食品」の安全性・有効性情報によると、

アキウコンは、俗に「肝臓の機能を高める」といわれ、消化不良に対しては一部にヒトでの有効性が示唆されているが、信頼できるデータは十分ではない。ドイツのコミッションE(ドイツの薬用植物の評価委員会)は、アキウコンの消化機能不全への使用を承認している。安全性については、通常食事中に含まれる量の摂取であれば、恐らく安全と思われるが、過剰または長期摂取では消化管障害を起こすことがある。アキウコンは胃潰瘍または胃酸過多、胆道閉鎖症の人には禁忌とされ、胆石の人は医師に相談する必要がある。
ということで、実は健康への効果も信頼性は不十分なようだし、マウスへの投与ではむしろ肝毒性も見られるようで、当然のことながら、多量に吸収すれば良いというものではなさそうだ。ということで、このカプセル化技術の効果が発表の通りに2~6倍もあるのだとしても、摂り過ぎは危険な場合もあるようだから注意すべきだろう。

この技術については、地元沖縄で報道されており、3/16の沖縄タイムスには、沖縄発酵化学が健康食品開発という記事が掲載されている。ところが皮肉なことにと言うか、健全なことにと言うべきか、同じ沖縄タイムスにはその前日、ウコン摂取上の注意促す/リスク表示で指針案という記事が掲載されており、沖縄県の健康食品産業協議会のウコン分科会が、摂取上の注意として「本品は多量摂取により疾病が治癒したり、より健康が増進するものではありません」など5項目の表示を決めたという記事が載っている。。

なお、株式会社 沖縄発酵化学は、いわゆる健康食品に特化した会社のようで、長寿県沖縄のイメージを活用し、オリジナリティのある色んな製品を生み出しているようだ。

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2005/03/15

エクステンド2005

河北新報ニュース(3/14)が、環境ホルモン研究で新戦略 すべての化学物質を対象に

 環境省は14日、ノニルフェノールなど65物質を対象として行ってきた従来の内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)の研究戦略「スピード98」を見直し、すべての化学物質を対象として人間や動物、自然界への影響を広く調べる新たな研究戦略「エクステンド2005」をまとめ、発表した。

 生殖機能を狂わせるなどの作用があるとしてリストアップされた65物質のうち、これまで26物質の動物試験を終了。うちノニルフェノール、オクチルフェノール、ビスフェノールAの3物質で、メダカの精巣に卵ができるなど作用が認められたものの、ラットでは作用が認められず、3物質が「人に作用する恐れは少ない」と結論づけた。

という記事を載せているが、何だかニュアンスが少し違っているような気がする。 それはともかく、少なくともネット上では朝日、読売、毎日等の大手新聞社はこのニュースを全く扱っていない。うちに配達されてくる日経新聞については、昨日の夕刊と今日の朝刊について探してみたけど、一言も触れられていないようだ。。 

結局、当時環境ホルモン問題に大騒ぎして作った、疑わしい物質のリストは意味がなくなったので廃止することになったわけだが、突然容疑者とされた多くの物質にとっては、ようやく正式に無罪放免となったのに、誰もそのことを報道してくれないというのは、何とも淋しいことだ。

大騒ぎしていた当時は、やれ子どもがキレル原因だとか、何でもかんでも全て環境ホルモンのせいにされかねない状態だったし、ひどいのになると人類が滅亡するなどと大騒ぎしていたのだから、その一翼を担っていたマスコミ各社や評論家の方たちから、反省も含めて何らかの反応があってもいいように思うのだが、無視かよ。。。

環境省の報道発表資料によると、今後の方針が「化学物質の内分泌かく乱作用に関する環境省の今後の対応方針について-ExTEND 2005-」としてまとまったので公表したとのこと。SPEED'98の SPEED は、Strategic Programs on Environmental Endocrine Disrupors の略で、日本語では環境ホルモン環境戦略と呼んでいた。今回の ExTEND は、Enhanced Tack on Endocrine Disruption の頭文字だそうで(ん? x はどこにも使われていないぞ)、tack というのは方針というような意味の単語として使われているようだ。どちらかというと、今回の EXTEND という単語には、突然はしごをはずすわけにもいかないので何気に期間延長するよ、みたいな印象があるけどなあ。

今回の方針は、前半が SPEED'98 のまとめ、後半が今後の取り組みとなっており、前半部分では、色々と多面的に調査と評価を実施したけど、ヒトへの影響は認められなかったことを淡々と述べている。後半の今後の取り組みは具体的な内容がよく見えてこないのだが、EICネットニュースが、内分泌かく乱物質についての新取組方針「ExTEND 2005」公表という記事で、非常に簡潔にまとめてくれている。

今後の取組みの柱として(1)実験によって検証することが困難な生態系への影響を調べるための野生生物の観察の推進、(2)生態系やヒトの健康への影響を捉えるための環境中濃度の実態把握や暴露状況の把握、(3)内分泌かく乱作用のメカニズムを解明するための個体レベルと細胞・分子レベルの変化の把握と、両者の関連性の調査、(4)生態系への影響を中心とした評価手法の確立と試験の実施、(5)総合的なリスク評価の実施、(6)将来的なリスク管理検討が可能な体制づくり、(7)正確な情報提供とリスクコミュニケーションの推進--などを示している。
SPEED'98 の物質のリストを廃止し、結局すべての化学物質を対象として、監視、調査、研究を継続するということのようで、要するに(特に目新しくはないけれど)日常的な活動を粛々と進めます、と言っているようにしか読めないのだが。。

少なくとも今回の方針の文章からは、環境ホルモンという言葉は姿を消して、かろうじて内分泌かく乱物質という用語が残ったものの、実態としては内分泌かく乱作用にこだわらずに、化学物質の様々な環境への影響を今後とも注意深く管理して行きます、ということになったようだ。 ということで、冒頭の記事のニュアンスとは異なり、正式に「環境ホルモン」という看板を降ろしましたよ、という宣言だと読むべきなのだと思う。

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2005/03/14

キャッサバ菓子事件の原因は農薬だった

3/10のブログ記事で紹介した、フィリピンでキャッサバ菓子が原因で数十人の小学生が死亡したという事件の続報。事件が起こったのが 3/9(水)であるにも関わらず、この土日に記事を読んだ限りでは、中毒の原因物質がなかなか特定されず、シアン化合物説と有機リン化合物説が入り混じっていた。原因物質の特定などは簡単にできそうなものだが、お国柄なのかもしれない。最近のニュースを見ると、死者の数も当初の29~30人から27~28人に減ったみたいだ。

今日(3/14)になって、だいぶ情報の精度も高くなったようなので、整理しておく。一つは、フィリピンのINQ7.netというところの Vendor admits using more poisonous cassava variety という記事。

NBI Director Reynaldo Wycoco said Anna Luyong, 68, the vendor who prepared the fried cassava that killed 27 pupils and hospitalized 105 others, admitted yesterday she had used the root crop's white variety for the first time.Luyong said that she usually used the yellow cassava, the less lethal variety, according to agricultural experts.
ということで、問題のキャッサバ菓子を作って売ったおばちゃん(自らそれを食べて入院中)が告白したことには、いつもは黄色い種類のキャッサバを使っているのに、この日は初めて白色の種類を使ったらしい。で、黄色のキャッサバと白のキャッサバのシアン含有率は、
Wycoco said agriculturists from the Philippine Root Crops Authority based at the Leyte State University said the cyanide content of the white variety, also called "pulotan," amounted to 330 to 360 parts per million (ppm).The yellow variety, on the other hand, contained only 30 to 60 ppm of cyanide.Experts stressed that the maximum tolerable cyanide content should only be 120 ppm, Wycoco said.
ということで、白色種の方はシアン含有率が黄色種の10倍以上で 330~360ppmあり、致死量の 120ppmと比べてみると確かに怪しいぞ、というようなニュアンスで報じられている。

問題のシアン化物をシアン化水素として良いのかどうかも怪しいが、シアン化水素(液体)の致死量は、経口LDL0が570μg/kg、経気道LCL0が120ppmである。ここでキャッサバの含有濃度と 120ppmを比較するのは如何にもずさんな比較方法だ。本来の経口致死量に相当するキャッサバの量は、子どもの体重を30kgとして、約50gとなる。調理の段階でどれほどシアンが残るのか不明だが、半分程度だとしたら、致死量が100gとなり、ちょっと多い気がしないでもないが、ありえない量ではない。。

もっとも、この記事の後の方には、

Although the NBI still had to officially conclude its investigation, there was growing suspicion that the children had eaten cassava laced with either pesticide or herbicide after a search of Luyong's house yielded a plastic container of a known insecticide brand whose white powdery substance was similar in appearance to flour.
とあり、このおばちゃんの家から、このお菓子を作るのに使う小麦粉の入った缶とそっくりの外観の農薬(殺虫剤)の入った缶が見つかったようで、おばちゃんは間違えて使用したことを否定しているらしいが、この疑いも消えていないと書かれている。そして、最新のINQ7.net ニュース DoH: Pesticide behind deadly poisoning of schoolchildren によると、
Health officials ruled out naturally-occurring cyanide for the deaths of the children at a school on Bohol island on March 8. (中略)Dayrit detailed "significant findings of pesticide poisoning" among 49 victims tested by the authorities, but no traces of cyanide that is naturally produced by cassava, a root crop that is popular across the Philippines.
とあり、被害者から農薬成分が検出され、シアンは検出されなかったようで、シアンの可能性は完全に排除され、農薬が直接の原因と断定されたようだ。ただし、その農薬の混入ルートまでは特定していないようだ。当初からシアンが原因というのは何だか納得しにくかったのだが、このおばちゃんが小麦粉と間違えて農薬を使って料理したことが、27人もの子どもを死なせてしまった原因だとすると、何ともやるせない事件である。

*この事件を受けて、厚生労働省が3/10に輸入食品に対する検査命令の実施について(キャッサバ)というのを出している。素早い対応には感心するが、残念ながら空振りだったようだ。。

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2005/03/11

ガソリンへのETBE添加?

日本化学会の雑誌「化学と工業」の3月号(Vol. 58, p.268 (2005))にガソリンのオクタン価向上の話題が載っている。

石油業界と自動車業界がレギュラーガソリンのオクタン価を95まで高める方向で調整を開始した。京都議定書発効に伴い二酸化炭素の排出削減が焦眉の課題となっており、特に温暖化対策が”待ったなし”の自動車排ガスについてはガソリンのオクタン価向上が最も効果的と考えられているからだ。ただ方法については不透明。環境省はバイオエタノールをガソリンに直接混合する方法を推しているが、ここにきてETBE(エチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)による方法が急浮上している。石油業界や複数の担当官庁の思惑も絡み、今後、オクタン価対策決定まで紆余曲折が予想される。

石油産業活性化センター(PEC)のJCAP II(大気改善のための自動車・燃料等技術開発)の専門WGは近く、「CO2と最適オクタン価」に関する調査研究成果をまとめる。ガソリンのオクタン価を向上させると熱効率が大幅に改善、燃費効率が向上することによってガソリンの使用の減少、CO2削減につながる。
 (中略)
オクタン価を向上させる方法にはリフォメートやアルキレートの石油系原料を基材とする技術、脂肪酸エステル、ETBE、バイオエタノールなど新燃料成分を添加する方法が考えられ、実施に向けたケーススタディ、経済効果などが具体的に検討されている。(後略)

ガソリンにバイオエタノールを混合した「E3」とか「E10」というのは聞いたことがあるのだが、これについては環境省が推進している反面で、石油業界から品質等を理由に強い反対がある他、ガソリン以上にNOx発生が増えるという懸念もあるらしい。

で、最近注目を浴び始めているのがETBEらしい。これを7%程度添加すると、E3と同等のCO2削減効果が期待され、石油業界も導入には前向きらしい。

そもそも、ガソリンへのオクタン価向上剤としては一時期は MTBE(メチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)が脚光を浴びていたのだが、有害性が指摘されてアメリカで使用禁止となり日本でも今は使われていないはず。調べてみると、MTBEがアメリカで使用禁止になった背景や問題点については、インチキ化学者の戯言市民のための環境学ガイドにまとめられている。結局、アメリカではガソリンが地下タンクから土壌中に漏れ出し、発がん性が疑われる水溶性のMTBEが地下水に混入したことが問題となって、使用禁止となったということだ。

MTBEの有害性については、環境省が昨年9月に発表した「化学物質の環境リスク評価 第3巻」に取り上げられている。これによると、実は発がん性は評価されていないということになっている。

では、今回候補に上っている ETBEについてはどうなのか? これについても、環境省の資料がよくまとまっている。これによると、フランス、スペイン、およびアメリカの一部では現在実際にETBEがガソリンに添加されて使用されているようだが、オーストラリアやカリフォルニア州等では毒性への知見が不十分として使用を禁止しているとのこと。

問題の毒性については、MTBEと比べてもさらにデータが少ないようだが、アメリカの作業環境基準であるTLVでは MTBEが50ppmに対して ETBEは 5ppmとなっており、MTBEに対して10倍厳しい基準としている。人体への影響としては、刺激作用、呼吸機能への影響、生殖機能への影響が挙げられていて、発がん性については十分なデータがないとしているようだが、いずれにしても、MTBEと比べてむしろ有害で、しかもデータが少なく不明点も多いという状況のようだ。

一方、ChemFinder.Comで水への溶解度を調べてみると、MTBE(CAS:1634-04-4)が 5.1g/100ml、ETBE(CAS:637-92-3)が 0.1g以下/100ml となっているので、ETBEは水への溶解性はMTBEよりも相当に小さい。恐らくETBEを使用するという根拠の一つはここにあるのだろう。

本来、添加剤の有害性を考える上では暴露ルートを想定する必要があるが、エンジンの排ガス中にはこれらの物質がそのまま含まれるわけもなく、日本の場合には、主要なルートは製造時、輸送時、およびガソリンスタンド等での使用時に気化したガソリンが直接大気に拡散するルートだろうか。まあ、日本では元々、地下への浸透や井戸水の汚染はほとんど考慮の必要はないのだから、MTBEが駄目で ETBEが OKという論理は考えにくいのだが。。

わざわざ有害性が疑われる代替物を使用するのもどうかと思うのだが、ガソリンの添加物というのは量が量だから、いろんな利害関係者の論理の綱引きがこれからも行われそうだ。それ以前に、これらのオクタン価向上剤で、どれだけ燃費が向上するのか? それは全ての車がその恩恵を受けるのか? NOxはどうなのか? 等々、データに基づいた話があっても良さそうなものだが、見つからなかった。。

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2005/03/10

キャッサバ菓子で大量死

CNN.co.jp(3/10)のニュース。キャッサバの菓子で食中毒、子供29人死亡 フィリピン

(CNN) フィリピン中部ボホール州マビニの小学校で9日、近くの売店で買った菓子を食べた児童が次々と食中毒の症状を訴え、29人が死亡した。菓子は、フィリピンで主食代わりにもなる植物キャッサバで作られていた。

地元当局によると、サンホセ小学校の子供たちは午前中の休み時間、校門外にいつもいる業者から菓子を買って食べたところ、次々に吐き気や腹痛を訴えた。ただちに近隣の4つの病院に運ばれたが、14人は搬送中に死亡。13人が到着後に死亡したほか、さらに2人の死亡が確認された。また35人が重体という。

マビニはマニラから南東約610キロ。隣接する町タリボンの病院の医師はAP通信に対し、「子供たちの中には、2口ほど食べたら苦かったので食べるのを止めたと話している者もいる。2口食べただけで、5~10分後にもう気分が悪くなったそうだ」と話している。

キャッサバの菓子を売った売店の業者はAP通信に対し、菓子には何の問題もないと主張して食べて見せたところ、自分も食中毒をおこして重体となった。

キャッサバには青酸配糖体が含まれているため、食用には加熱したり、水洗いで毒成分を抜くなど、種類に応じた処理が必要。

こんなにまとめて死者が出た割には、日本ではほとんど報道されていないようだ。キャッサバという名前は聞いたことがあるが調べてみると、タピオカってなんなのさに、結構詳しく載っていて、タピオカの元はキャッサバということだ。そして、今回の原因と疑われている毒性の元はファセオルナチンという青酸配糖体らしい。

キャッサバ(タピオカ)によると、甘み品種では外皮に多く含まれるので、皮を剥いて加熱することで無毒化できるようだが、苦み品種では全体に存在するらしい。しかし、シアン化水素は沸点が26℃程度なので、普通に加熱処理しておけばそんなに大量に残留するとも思えないのだが。。

フィリピンの philstar.com によると、死者は30人に達したようだが、このキャッサバのお菓子は地元で "maruya" と呼ばれているものらしい。(調べてみると、フィリピンのお菓子で maruya というのは バナナフリッターみたいだけど。。) 多分、揚げキャッサバ芋とか、カサバチップスみたいなものだと思うのだが、こんなにきちんとしたものではなく、おばちゃんが個人的に作って学校に持ち込んで売っていたみたいだ。(で、そのおばちゃんも入院しているということらしい。)

ABS-CBNNEWS.COMによると、夏場の乾燥期にはキャッサバにはシアンが多く含まれ、毒性も高いらしい。しかし地元で長年食べられているものだし、皮に毒があることは広く知られていたようだし、加熱すれば飛びそうだし、事件当日以前も日常的に食べられていたようだし、本当に青酸が原因なのだろうか? 日本のスギヒラタケのように突発的に毒性の高いものができたのだろうか? Asia Newsによると

It is traditionally boiled, or processed as an ingredient for native cakes and delicacies in the Philippines. The most popular form among school children is deep-fried cassava coated with sugar.

Health department officials in Manila on Thursday said their initial findings indicated that the deaths were caused by "cyanide poisoning," citing the speed with which the children were stiricken.

However they also looking into the possibility that pesticides may have been accidentally mixed with the cassave.

とあり、症状から見てシアン中毒が疑われているようだが、キャッサバのお菓子からシアンが検出されたわけではなさそうだし、農薬や殺虫剤が原因の可能性も念頭に置いて調査中ということらしい。

ちなみにデンプンを高熱で処理すると発がん性物質であるアクリルアミドが生成することが最近問題になっている。今回のお菓子も結構含んでいそうだが、まあこれは今回の食中毒とは関係ない話だ。

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2005/03/09

昨年の航空機事故

CNN.co.jp(3/8)のニュース。空の旅、2004年が「最も安全な年」に、IATA

ジュネーブ──主要航空会社などが加盟する国際航空運送協会(IATA)は7日、2004年に世界で起こった商業航空における事故件数が、第二次世界大戦後、最も少なかったと発表した。年間の輸送人数18億人以上に対し、死者は428人で、航空機事故で死亡する確率は、およそ1000万人に1人だった。

IATAによると昨年1年間の死者数は、第二次世界大戦が終了し、大規模な商業輸送が始まった1945年とほぼ同じ水準だった。当時の輸送人数は、およそ900万人だった。

離陸から着陸までに事故を起こした航空機は、96年の13機から02年には9機、04年の8機に減少。また、02年は輸送人数16億人に対し死者は974人、03年は16億5000万人に対し死者663人で、04年にかけて大幅に減少した。

IATAのビジニァーニ事務局長は、事故を減らすため安全基準を厳しくした結果だ、と言明。「2004年は航空輸送史上、最も安全な年だったといえる。今後も、この結果を続けるように努力していく」と語った。

輸送人数 18億人に対して死者 428人で、どうして1000万人に1人となるのかよくわからない(単純に割ると420万人に1人となる)が、回数当たりでいえば航空機事故で死亡する確率は無視できる程度に小さいのは間違いなさそうだ。IATAの元記事は2004- The Safest Ever for Air Transport。(ここに出てくる hull loss rate という数字はどうやって求めているのかよくわからない。。)

これと関連したニュースとして、朝鮮日報に【航空会社の安全度調査】大韓航空43位 アシアナ32位という記事が載っている。ドイツの航空専門誌『アエロ・インターナショナル(Al)』が分析した世界の航空会社の安全順位で、安全第1位がカンタス航空、最下位がトルコ航空とのこと。他にもフィンエアー、キャセイパシフィック、全日空が最高レベルで、エジプト航空、インド航空、台湾中華航空が最低レベルらしい。この雑誌はドイツ語だけど、航空会社ランキングの一覧表は見ただけで大体理解できそうだ。ちなみにJALは29位となっている。なお、朝鮮日報の記事によると

 Alは、昨年が民間航空機の運航史上「最も安全な年」で、世界の航空事故による死者数が514人と、これまでで最も少なかった1984年の627人より113人が減ったと指摘した。また、1970年代に比べると、今日の航空機事故の危険性は6分の1に減ったとAlは付け加えた。
ということで、昨年は航空事故死者が最も少なかったというのはIATAと同じだが、死者数が異なっている。事故の内訳まで知ろうと思うと、外山智士さんのホームページに、世界の航空事故総覧という素晴らしいデータが公開されている。

ここでは、航空機の機種別や航空会社別などに分類されており、非常によくまとまっている。1947年以降の世界の主な航空機事故が全部で725件収録されているが、これによると、2004年が9件、2003年が7件、2002年が18件、2001年が14件、2000年が9件となっている。ちなみに、ここの資料から2004年の死者を合計すると410人となり、これまた微妙に違う。(IATAのニュース記事では、昨年の事故件数は全部で103件となっているから、ここに収録されているのはあくまでも大きなものだけということのようだ。)

航空機事故のリスクは、日常のさまざまなリスクの大きさを考える上での指標の一つとしてよく使われるので、検索するといろんなサイトが出てくるが、例えば、ここなどが参考になる。また、原子力技術リスクC3研究の中にある、市民のためのリスクコミュニケーションガイドなどもわかりやすい。

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2005/03/08

化学反応で動く油滴

日経新聞夕刊(3/8)に「動く油滴を発見 動力は化学反応」という記事。

 小さな油滴がアメーバのように自発的に階段を上ったり、ぐるっと一回転したり--。生物ではない油滴がまるで生物のように周囲からエネルギーをもらって動く不思議な現象を吉川研一京都大教授らの研究チームが八日までに発見し、米物理学誌フィジカル・レビュー・レターズに発表した。

 洗剤の溶液中での現象で、油滴表面で起きる化学反応が駆動力になっているとみられる。吉川教授は「胃腸や血管の内部に入り込み、周囲の物質からエネルギーをもらって働く、衣料用の微小装置開発につながる可能性もある」と話している。
 チームは吉川教授のほか大学院生の住野豊さんと浜田勉さん、馬籠信之名古屋文理大講師。

 住野さんは「現在の技術では生物のように化学エネルギーから直接運動エネルギーを取り出せない。今回の現象を基に、それができる”化学エンジン”を作りたい」と意気込んでいる。

というもので、紙面には簡単なメカニズムを説明した図が載っているのだが、この説明だけではよくわからない。逆性せっけん分子がガラス基板表面に整然と並んでいて、油滴が「分子に引き寄せられ」、油滴が移動した後の「分子のいなくなったガラス表面が水を好み、油をはじく」という説明、およびその後逆性石けん分子が再び整然と並ぶような記載があるのだが。。

京都大学の吉川研究室で探してみると、この研究を担当した住野さんのページの研究内容に、実際に油滴がステップを登る動画が公開されている。階段を上るだけではなく、周期的に往復運動を繰り返しているのが興味深い。

Phys.Rev.Lett.のアブストラクトはこちらで読めるが、Physical Review Focusに、模式図と解説記事が載っていて、これがお勧めだ。この記事にも動画がリンクされており、ローラーコースターのような垂直の円形の壁をグルッと一回転する様子も納められていて、これまたなかなか衝撃的だ。記事の内容をまとめてみると、(間違っていたらごめんなさい)

 ・最初は界面活性剤分子がガラス基板表面に親水基側を向けて吸着し、疎水基が昆布の群落のように水中に突き出た状態となっている
 ・ヨウ化カリウムを含む油滴が、何らかのきっかけでガラス表面の疎水基を内側に向けて界面活性剤分子を取り込みながら少し移動する
 ・移動した後のガラス表面は界面活性剤分子が失われて親水性となり、結果として油滴をはじく
 ・はじかれた油滴はさらに前方の界面活性剤を取り込んで前進し、後方からは新たに生成する親水性のガラス面によって押される
 ・界面活性剤が剥ぎ取られて親水性となったガラス表面には水中にあるフリーの界面活性剤分子が吸着し、また昆布の群落のような状態に修復される
 ・油滴中に界面活性剤が取り込まれ飽和状態となるまでこの動作が継続する

ということらしい。なかなか面白いし、実際にこの動きを簡単なモデルで説明できるようだ。この運動をさせているエネルギーは何なのだろう? 最初と最後の状態を比べると、界面活性剤が水中に分散している状態から油滴中に取り込まれた状態へと変化しているだけだから、そのエネルギー差(水中にフリーで分散しているよりは油滴と(化学的に)結合した方が確かに安定そうだ)が運動に使われたということだろうか? 化学エネルギーが運動に直接使われるのは珍しいということだが、この手の相互作用で物質自身が移動するというケースは色々とありそうな気もしないではない。。

ただ、これで人体の中で仕事をするナノロボットのような機械に一歩近づいたというようなコメントについては、このままでは運動のコントロールが難しそうだし、最終形がどんなものになるのか想像がつかない部分もあるし、相当に実現までの道のりは遠そうだけどなあ。。

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2005/03/07

ココログ14か月

ココログを始めて1年と2か月が経過した。カウンターの伸びは、この1か月で16000程度とややペースダウン。

 1か月目:900
 2か月目:4500
 3か月目:11700
 4か月目:19000
 5か月目:32300
 6か月目:43500
 7か月目:54500
 8か月目:72000
 9か月目:87700
 10か月目:105400
 11か月目:125400
 12か月目:140600
 13か月目:163000
 14か月目:179300

この1か月の、Ninjaツールの集計によるアクセス解析結果は、(あまり当てにならないけど)

(1)リンク元
 1位 bookmark (お気に入りに入れてくれた方) 全体の18%(前回1位)
 2位 http://search.yahoo.co.jp (ご存知ヤフーサーチ) 全体の16%(前回2位)
 3位 http://search.msn.co.jp(MSNサーチ) 全体の3%(前回3位)
 4位 http://messages.yahoo.co.jp(Yahoo!掲示板の株式)全体の1%(初登場)
 5位 http://a.hatena.ne.jp 全体の1%(前回5位)

(2)検索キーワード
 1位 青色発光ダイオード(前回1位)
 2位 マメール(前回7位)
 3位 岩盤浴(前回10位)
 4位 世界人口(前回2位)
 5位 レーザーポインター(前回5位)
 6位 タカラ(前回14位)
 7位 合計特殊出生率(前回3位)
 8位 アメリカ(前回4位)
 9位 京都議定書(前回12位)
10位 立春(初登場)
11位 グラフ(前回9位)
12位 運芽ican(前回53位)

前月との変動が比較的少なかった。上位に来ているキーワードは、ほとんどがかなり以前に書いた記事に関するものだ。その中でも、今回は1/20に取り上げたマメールと運芽ican関係のアクセスが目立つ。リンク先の第4位は、運芽icanを販売しているイーディーコントライブの株価についての掲示板で、そこでここの記事がリンクされただけで結構な数のアクセスが集中した。

*少し気になるのは、「マメール 出てこない」というフレーズで訪ねてこられる方が時々おられるようなのだが、そういう問題があるのだろうか? 

「青色発光ダイオード」でのアクセス数は先月が1300件程度だったのに対して、今月は500件程度と大幅に減ってきたようで、このキーワードの連続トップの座(現在4ヶ月連続中)もそろそろ危うそうだ。

検索エンジンでは、依然としてMSNサーチが結構使われているのにも驚かされる。特に普通のMSN サーチは、キャッシュもないし、決して使いやすくはないと思うのだけどなあ。逆にMSNサーチ(beta)は、機能的には結構頑張っているようだが、これを使って訪れてくる人はほとんどいないようだし、今のところは使っている人も少なそうだ。なお、本家アメリカのMSN Search (beta)は、日本語版にはない新しい機能を色々と試しているようなので、そのうち日本語版も使いやすくなるかもしれない。

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2005/03/04

東京の積雪と転倒事故

YOMIURI ON-LINE(3/4)のニュース。関東大雪…東京などで転倒によるケガ人続出

 東京都心では4日未明から本格的な雪となった。幸い、通勤に大きな混乱はなかったが、足を滑らせるなどしてけがをする人が相次いだ。
    (中略)
 一方、東京都杉並区で4日朝、男性(47)が出勤途中に足を滑らせて転倒し、左足を骨折したほか、大田区内でも女性(61)がマンションの玄関先で転倒、右足の骨を折った。東京消防庁管内では、同日正午現在、ほかに男女16人がけがをして病院に搬送された。

 埼玉県内でも、春日部市内で男性(45)が右足首を骨折したほか、12人が転倒して軽いけが。横浜市鶴見区では、男性(37)が会社入り口前のスロープで足を滑らせて転倒、左足首に重傷を負い、川崎市内でも8人がけがをした。

一方、asahi.comによると、
 各地の消防などによると、4日正午までに、東京都や神奈川、千葉、埼玉など関東各県で約90人が雪で転倒するなどして骨折などのけがをした。
ということで、昨日のニュースや天気予報で、繰り返し雪が降るから注意してください、と呼びかけていたにも関わらず、たった数cm雪が積もった程度でこういうケガ人が出るというのも情けない。夜のTVニュースによると結局、東京で29人、関東地方で190人がケガをしたと言っていた。

しかも、雪の怖さを知らない子どもや、思うように体が動かせないお年寄りなどが被害に遭うのであればまだしも、ここに出てきた人たちは一体どんな状況で、そんな大ケガをしてしまったのやら。。 これだから「都会人は、、、」と特に雪国の人たちからバカにされるのだろう。

ところで、この人たちが雪が原因で転倒したのは間違いないのだろうけど、よく考えてみると、晴れた日や雨の日でもつまずいたり滑ったりで、転んでケガをしたり骨折をする人が結構いるような気がする。

ということで、総務省統計局でそれらしい統計を調べてみると、推計患者数(外傷)、外傷の原因×性・外傷分類×入院-外来別という資料がみつかった。これによると転倒・転落での入院総数が年間56000人、外来患者数が72000人とある。外来患者数が随分少ない感じがするが、それでも合わせて年間13万人、一日平均だと356人となる。東京都の人口は全国の約1/10だから、東京都では平均して毎日30~40人が転倒・転落事故で病院のお世話になっている計算となる。

一方、北海道での冬期の歩行者の転倒事故と歩行空間対策についてという資料があった。歩行者の転倒事故の解析やそれによる医療費を調べ、一方で安全確保対策に掛かる費用とを比べて、いわゆるコストベネフィット的な検討をしていて面白い。

これによると、小樽市の場合は1シーズンで人口55人に1人が転倒して通院し、250人に1人が入院、旭川市でも66人に1人が通院、366人に1人が入院している。年間降雪量は500~750cm程度であるが、雪国でも転んでケガをしている人が意外と多いという印象だ。この数字から、無理やりケガ人の数が降雪量に比例するとして、降雪が1cmの時の東京都のケガ人を算出すると、200~400人が通院、40~100人が入院する計算となる。

ちなみに、北海道の転倒事故について詳しく取り扱っている「転ばないコツおしえます」という札幌市のサイトも見つかった。スパイクタイヤが禁止になってから転倒事故が増えているのだが、因果関係がありそうだ、という話は初耳だった。

ということで、こうやって比較してみると、今日一日で東京都で病院に搬送されたのが29人という数字は、特に驚くべき数字ではないように思える。というか、逆に雪が降った割には少なかったと捉えるべきかもしれない。本当のところはどうなのだろうか?

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2005/03/03

「原子力と報道」

ダイオキシンだとか環境ホルモンなどでは、マスコミ報道の世論への影響の大きさが実感されたのだが、そういう意味では原子力というのはその元祖のようなものだろう。しかも、決して過去の問題というわけでなく、現在進行形の問題であり、しかも原子力をどうするのかというのは、我々の将来を大きく左右する重要な問題であろう。その原子力をめぐる報道が今までどうであったのかを正面から検証し、今後どうあるべきかを考えようという試みのようだ。

中公新書ラクレ 157
 原子力と報道
 中村 政雄 著 bk1amazon

著者の主張は、東京財団の刊行物で読めるが、ほぼ本書のエッセンスが書かれているようだ。

著者は工学部出身で読売新聞の科学部記者から解説部、論説委員等を経験してきた方で、今は「原子力報道を考える会」のメンバーとのこと。この本は極めて明確に、原子力を推進する立場から書かれた本である。とは言え、科学的に原子力発電の安全性やその必要性を一つずつ検証するというような話ではなく、日本で原子力に対するバッシングが激しいことや、最近の核燃料サイクルが批判されていることなど、原子力推進に立ちはだかる壁の多くはマスコミの不勉強とアメリカ政府の陰謀だ、というような主張である。

ということで、書かれていることをそのまま全部素直に受け止めるのはどうかと思うのだが、さすがにベテランジャーナリストが書いた本は読みやすいし、話としてはとても面白い。そもそも、日本で最初に原子力開発を進めていた頃には、朝日新聞を含めて新聞各紙ともに大歓迎ムードの記事ばかりだった、という事実が紹介されている。これは今の状況を考えると、なかなか意外な事実である。

結局、スリーマイル島の事故やチェルノブイリの事故が全世界的な原子力反対運動につながったのだが、その過程で核兵器の拡散を防ぎたいアメリカの意志が働いて、反対運動を裏で操っていたのだ、というような話が書かれている。どこまでが事実でどこからが推定なのかがよほど意識して読まないとわからなくなってしまう。

世界的に原発離れが起こっているが、実は国毎に事情も異なるし、ヨーロッパでも脱原発をうたっていながら、水面下では原発に戻る動きも起きているということで、一般報道からだけでは事実を知るのも大変なようだ。

ちなみに、桜井淳さんの市民的危機管理入門では、日本原子力界の裏話で、「原子力報道を考える会」の主張が徹底的に批判されている。主張が対立するのは別に構わないのだが、事実認識が両者で異なるとなると、素人はどちらが正しいのか判断するのが非常に困難となってしまう。本当は、事実認識の異なる点について、両者の主張をきちんと丁寧に比較検討すべきなのだろうが、一つが違うと全部を否定するみたいなやりあいになっている感じだ。ざっと見た立場からは、どっちもどっち、という気もするのだが。。

それはともかく、原子力に関連するマスコミ報道が、必ずしも科学的でなく、事実に基づいていないのも確かだろう。特にTVや週刊誌は面白いことを好むし、安全であることよりは、危険である方がニュースバリューも高いだろうから、どうしても真実を冷静に伝えるということができていないと思う。本書では、放射能漏れ事故の報道のされ方などについて、いくつか具体例を紹介し、その問題点を指摘している。

また、マスコミが事件や不祥事を起こした会社等を厳しく追及する反面、自分たちの報道に間違いがあった時の事後の責任の取り方が甘すぎるし、記事に対する品質保証が全くできていない、と批判している部分もその通りだと思う。

それにしても、原子力問題は難しい。その理由の一つは、良くも悪くも、この問題が純粋な技術的あるいはエネルギー的な観点からは論じられず、どうしても政治的な観点が入り込み、しかもアメリカの陰謀があるかどうかはともかくも、国際的な問題となってしまうことだろう。また、リスクとベネフィットで論じようとすると、リスクを受ける集団とベネフィットを受ける集団が大きく異なることや、想定するタイムスケールによって答えが変わってくることも問題を難しくしているのだと思う。

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2005/03/02

質量の定義とアボガドロ定数

Wired News(2/26)の記事。100年ぶりに変わるか? 「キログラム」の定義

 数人の科学者による提案が通れば、約2.2ポンドの金属の塊である国際キログラム原器は、間もなく時代遅れになるだろう。

 メートルを含む他の6種類の基本単位と同じく、キログラムの定義も、普遍定数に基づいた新しい定義へと移行される可能性がある。キログラムは長い間、国際キログラム原器の質量と同一であるとされてきた。

 キログラムを物理的なモデルで定義することから、相応する定数に切り替えようという作業は、およそ25年間にわたって行なわれている。2月28日に発表される論文では、アボガドロ定数とプランク定数という有名な2つの普遍定数のいずれかの値を定めることで、キログラムを再定義することが提案されている。前者は、質量数12の炭素0.012kgに含まれる原子の数を指し、後者は、量子――電磁エネルギーの最小単位――の大きさを説明するために使用されている。

 1889年に開催された第1回『国際度量衡総会』で、白金・イリジウム合金の円柱が、キログラムを定義する国際基準であると宣言された。この円柱はフランスの国際度量衡局(BIPM)に保管され、数個の複製が世界各国に配られている。(後略)

普段は気にもしないが、なるほど、質量は未だに実物のキログラム原器で定義されているんだな。ちなみにウィキペディアによると、国際キログラム原器は1870年代に作られたとのことで、それはこんな奴のようだ。他の時間や長さの単位の定義は無用の便覧のSI単位の定義がコンパクトにまとまっている。

ふむ。新しく採用されそうな質量の定義はアボガドロ定数かプランク定数をベースにしてキログラムを再定義するということらしい。ちなみにモルの定義を見ると「0.012キログラムの炭素12の中に存在する原子の数と等しい数の要素粒子を含む系の物質量」とあるから、今はアボガドロ定数は質量をベースに決めているのだが、今度はこれを逆にしようということらしい。

*SI単位におけるモルの取扱いは専門的にはややこしい議論もあるようだ。

さて、この新しい質量の定義に関する論文は、Metrologia 42(2005) 71-80で全文が手に入る。なかなか難しいのだが、プランク定数の方はよくわからないので、アボガドロ定数に関してのところを読むと、欠陥の極めて少ない純粋なシリコンの単結晶を用いてX線回折によって格子定数を求め、ここからアボガドロ定数を既知として質量を定義しようということらしい。

もっとも、プランク定数の場合もアボガドロ定数の場合も、要求される質量の精度である10のマイナス8乗に対して現時点では1~2桁精度が悪いようで、それが問題なのだが、この論文の著者はそれでも質量の定義は変えたほうがメリットが多いと述べているようだ。

ちなみにこの論文のAppendixによると、現時点で最も確からしいプランク定数とアボガドロ定数は
  プランク定数 :6.626069311×10-34
  アボガドロ定数:6.022141527×1023
というところらしい。ウィキペディアにはマイナス8乗の精度で測定できると書かれているが、ここの数字とは8桁目で異なっているから、やはりそんなに精度は高くなさそうだ。

さらに調べてみると、日本分析化学会の雑誌「ぶんせき」のアボガドロ定数はどこまで求まっているかという記事が、アボガドロ定数やプランク定数の測定法の解説と質量の定義を変える話にも触れていて、わかりやすい。

ん?? アボガドロ数は6.023×1023と記憶していたような気がしたので調べてみると、確かにかなり古い本には 6.0225×1023と書かれていた。。("アボガドロ 6.023"で検索すると、大学のページも含めていくつかヒットする。。)

*そもそも「アボガドロ数」と「アボガドロ定数」は違うのかどうか? というのは、化学の広場で話題になっているが、結論がよくわからないままのように見える。。

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2005/03/01

アメリカナマズと河ふぐ

MSN-Mainichi INTERACTIVE(3/1)のニュース。ナマズ:特定外来生物指定R入りに賛否論争 漁業関係者

 「食べて駆除を」「名物料理に悪いレッテルは困る」--。北米原産の「アメリカナマズ(チャネルキャットフィッシュ)」が環境省の特定外来生物指定リストに入ったことに対し、茨城、岐阜県内の漁業関係者らの間で、賛否を巡る論争が巻き起こっている。県庁食堂のメニューに登場した茨城県では、霞ケ浦の漁業者が指定に賛成。一方、名物食材として町おこしに利用する岐阜県飛騨市では、漁業者が指定反対の意見書を同省に送った。脂が乗った白身魚は「害魚」か「名産」か。

 茨城県では、ニホンナマズの代用目的で71年に輸入されたアメリカナマズが霞ケ浦で繁殖。在来種のテナガエビやハゼ類を食い荒らすため、漁協などが駆除に乗り出したが、被害は減らない。地元漁業者は少しでも収入につなげようと切り身の販売を開始。“食べる駆除”に賛同した県が納入し、県庁食堂の「天丼」の具材に使い始めた。程よく脂が乗った白身の評判は上々という。

 その霞ケ浦産の稚魚を82年に取り寄せて養殖し、名物料理にしたのが岐阜県飛騨市河合町。刺し身やかば焼きが好評で、「飛騨名物河ふぐ料理」として定着している。

 6月施行予定の特定外来生物被害防止法で特定外来生物に指定されると、生息地からの移動などが禁止される。河合漁業生産組合や飛騨市は「リスト入りはイメージが悪い」と、指定除外を求める意見書を同省などに送った。一方、霞ケ浦漁業組合連合会は「害魚であることに変わりはなく、指定は喜ばしい」と話す。

 環境省は指定生物のリストを公表し、2日まで国民からの意見を公募している。同省は「生業に利用されている生物は、外部に逃げ出さない環境が整備されていることを条件に、飼育などが認められることになるのではないか」との見通しを示している。

アメリカナマズとは、神奈川県の淡水魚図鑑によるとアメリカでは盛んに養殖されている魚のようだ。国立環境研ニュースでは、霞ヶ浦の生態系へのアメリカナマズの影響が述べられている。元々は養殖されていたのが今は自然繁殖し、既存の生態系の1段上の捕食者としてエビや魚を大量に食べているらしい。

岐阜県の河ふぐ料理は、例えばこんなのやこんなのが食べられるようだ。岐阜新聞によると、

同町の河ふぐ料理は一九八二(昭和五十七)年、地元の養殖業者が茨城県霞ケ浦からチャネルキャットフィッシュの稚魚を取り寄せ、同町保の下小鳥ダム湖で養殖を始めたのがきっかけ。最初は県内や富山市などの一部旅館に卸していただけだったが、地元の公営宿泊施設で宴会用料理として生け作りやかば焼きなどの提供を始めたところ、ナマズ特有の臭みがなく、珍味として評判を得た。九二(平成四)年には、料理を試食した梶原拓前知事が絶賛。「飛騨名物河ふぐ料理」と命名し、県内でも広く知られるようになった。
というわけで、前の岐阜県知事の肝いりだったようだ。魚を食べるくらいだからエサ代も高そうだが、先の料理の値段からすると意外と安い魚のようでもある。

環境省の外来生物法のサイトでは、飼育も禁じられるように書かれているが、毎日の記事のように例外として閉鎖環境での養殖は認められるのかもしれない。

一度食べてみたい気がするが、アメリカではこの魚を養殖して一体どうしているのだろうか? 「アメリカナマズ フィレオフィッシュ」で検索してみると、2ちゃんねるばかりがヒットするが、アメリカのマクドナルドのフィレオフィッシュには、このアメリカナマズが使われているという噂があるようだ。本家 McDonald's のFood Qualityには、

McDonald's uses white fish from the cold, deep waters of the Pacific Ocean and Bering, Baltic and North Seas.

The ocean-fresh quality of our Filet-O-Fish is a result of the process we use and our ability to freeze the fish at sea to maintain freshness.

とあり、海水魚を使っているように書かれているようだが、こんなページには、"Filet-O-Fish will now be made with catfish and kittenfish." などと書かれている。別に怪しい魚でもあるまいし、隠すことはないと思うのだが、どうなってるんだろう? ナマズを食べることにはさすがに抵抗があるのかな?

と思いきや、実はナマズ料理はアメリカ南部の名物料理の一つらしく、あっさりとしておいしい等の話がある。それどころか、何とアメリカはベトナムからナマズを輸入しており、貿易摩擦問題になったそうだ。そんなに食べられているんだな。この後この問題がどうなったのか調べてみたがよくわからなかった。。

*もともとフグを河豚と書くのは、ふぐの名の由来にあるように、中国で揚子江などに生息する川魚を河豚と呼んだことに関わるらしいし、実際に淡水に生息するフグもいるようだ。アメリカナマズを「河ふぐ」なんてまぎらわしい名前呼ぶのは、いたずらに混乱を招くだけのような気がするが。。

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