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2005/03/25

燃える氷:NGH

YOMIURI ON-LINE(3/25)の記事。天然ガスを固体化して運搬、2010年めどに実用化

 三井造船は24日、石油に比べて二酸化炭素の排出量が少ないため、温室効果ガス対策として需要増が見込まれる天然ガスを固体化して運搬する事業に乗り出す方針を明らかにした。2010年をめどに、製造設備や運搬船を実用化する。

 現在天然ガスは、液化天然ガス(LNG)の形で輸入されているが、液化設備や輸送船などの建設・運用費用が高いのがネックだった。固体化できれば製造・運搬コストとも引き下げられるため、ガスの末端価格が下がる可能性もあるという。固体化技術は25日に開幕する「愛・地球博」(愛知万博)で「燃える氷」として披露される。

 天然ガスを水と混ぜて約マイナス20度まで冷やすと、固体状の水和物と呼ばれる物質になる性質を利用する。マイナス162度の低温で液化するLNGに比べ、固体化の場合は冷却する温度が高いため、比較的簡単な施設や船で製造・輸送できるのが長所。三井造船では、現在輸送船の基礎設計を行っている。2005年以降に模型船による実験や実証プラントの建設を行う計画だ。

燃える氷ねぇ。。 タイトルの「天然ガスを固体化」というのを見たときには何のことだろうか?と思ったけど、「天然ガスを水と混ぜて」冷却して「固体状の水和物」にするってまどろっこしい説明だけど、これってメタンハイドレートじゃないのか?

三井造船のホームページで探すと、愛・地球博「ガスパビリオン 炎のマジックシアター」にメタンハイドレートを展示というプレスリリースが見つかった。この燃える氷は、天然ガスハイドレート(NGH)と呼ばれるもののようだ。

天然ガスハイドレートについては、三井造船の技術力のページで詳しく解説されている。大気圧条件下、-20℃でNGH 1m3中に天然ガスを170Nm3貯蔵できる能力があるとのこと。ちなみに液化天然ガスLNGの場合には、-162℃のLNG 1m3はガス換算で 600Nm3分となるので、貯蔵能力としてはLNGの28%に過ぎないが、温度が大きく異なるので、コスト的には魅力が出てくるらしい。(参考:経済性試算)また、採算性が低い中小のガス田が有効利用できるということも大きなメリットらしいが、こちらは雑誌エンジニアリングビジネスに詳しい。

とは言え、液体と固体(ペレット)では取り扱いの容易さが随分違うように思える。特に低温で可燃性の固体を大量に移送する技術(貯槽とタンカーとの間等)は、安全性を考えると結構大変そうだが、ドライアイスを取り扱う技術が利用できるのだろうか?(参考:スラッシュドット)

よく話題になるメタンハイドレートの場合には、自然界でハイドレートになったものを利用するわけで、例えば産総研の 科学解説 燃える氷が人類を救う!?には明るい未来を約束する技術のように説明されている。しかし、今回の技術は、普通の天然ガスをわざわざ固体化して運ぶということで、確かに発想の転換ではある。

といいつつ、調べてみると2001年発行のブルーバックス「データで検証! 地球の資源 ウソ・ホント」(井田 徹治 著)(bk1amazon)の中でも、イギリスのブリティッシュガス社が積極的に天然ガスのハイドレート化技術の開発をしていることが紹介されていた(p.37~39)から、さほど最新の技術ということでもなさそうだ。LNGのようなパイプラインの敷設が不要ということもあり、途上国などでの使用が想定されているようだ。

ちなみに、「燃える氷」で検索したら、その名もBurniceなんてものが見つかった。これはローソクで有名なカメヤマローソク製の流動パラフィンを使用しているらしい。面白い。(このショップが取り扱っている商品は結構ユニークなものが多いようだ。)

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コメント

三井造船って、確か平成12年に、配管網の漏洩検知法の特許を、個人発明者をだまして登記し、裁判で敗訴していますよね。この特許、その後10年(特許有効期限の半分)、妨害をして日の目を見ないようにしていたようです。今さら、「環境に優しい」なんて大見出しつけなくても、過去の特許の実用化による既存のパイプラインの安全対策の方が、効率が良いような気がしますよ。

投稿: 山吹太郎 | 2010/04/21 15:11

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