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2005/03/23

失敗知識データベースを覗いてみた

MSN-Mainichi INTERACTIVE(3/23)の記事。科学技術:国内外の失敗1000件「成功のもとに」 振興機構がデータベース化

◇タイタニック沈没、臨界事故、カネミ油症…

 科学技術振興機構(JST)は23日、国内外で過去に起きた科学技術分野の失敗約1000件を網羅したホームページ「失敗知識データベース」を開設する。タイタニック号の沈没(1912年)や茨城県東海村での臨界事故(99年)など、過去の大事故やよくある失敗を教訓に、失敗防止を目指す取り組みへの活用を呼びかける。

 「失敗学」の提唱者、畑村洋太郎・工学院大教授が中心となり、過去100年余りの事例を分析した。事故に関する公の調査報告書や報道を基に、各事例ごとに概要、原因、対処、対策、後日談など約30項目のデータを掲載する。

 「鉄道」「自然災害」「原子力」などの項目別に検索できるほか、「不注意」「検討不足」「操作変更」「連絡不備」「死亡」など、失敗の特徴から該当する事象を選び出すこともできる。

 臨界事故、03年の米スペースシャトル「コロンビア」事故、食用油にポリ塩化ビフェニール(PCB)が混入したカネミ油症事件(68年発覚)などは「教訓に富んだ典型的な失敗・事故」と位置付け、図や絵を多用して読み物風に紹介する。

 データベース(http://shippai.jst.go.jp/)の利用は無料。問い合わせ先はJST技術者能力開発情報部門(03・5214・8456)。

早速、失敗知識データベースにアクセスしてみると、本日から一般公開が開始されたとのことで、既に一通りのデータが見られる。数年前から失敗学に関して、畑村先生が多数の本を出されているようだが、あいにくと読んだことがない。(参考:失敗学会

このデータベースは過去の事故やトラブル事例を幅広い分野から集めたもののようで、なかなかの力作だ。こういうデータベースに無料でアクセスできるというのは歓迎したい。以前から主として企業での労働災害や事故を防止する目的で、自社や同業他社の事故や災害の事例を集めた書籍類はあったし、色々な場で活用されてきたのだが、このように世界中から広い分野の事例を集めて、統一した基準で分類整理され、しかもかなり詳細に記載されている点は感心する。このデータベースについてには、畑村先生自らが解説をしている動画ファイルも掲載されているのだが、うちの貧弱なブロードバンド環境では音が途切れ途切れで聞くに堪えなかった。

このデータベースの目玉とも言うべき、目新しい試みが「失敗まんだら」というものらしい。失敗知識データベースの構造と表現という解説は非常に難解な説明が延々と続いていて結局よくわからない。。 どうやら、従来からある事故や災害事例集では失敗知識の伝達がうまく行っていないので、繰り返し同じような事故や災害が起こっており、もっと失敗知識を構造化する必要があるということらしい。そして、そのために編み出されたのが「失敗まんだら」というもので、従来からのデータベースが原因と結果の単純な関係からなるのとは異なり、事例のシナリオなどを考慮して、検索者が欲しい情報に的確にたどり着けるようになっているのだそうだ。

実際には、「原因まんだら」「行動まんだら」「結果まんだら」の3つの切り口で過去の事例を分類し、例えば、原因が「調査・検討不足」、行動が「非定常操作」、結果が「身体的被害」などと指定して検索すると、該当する事例が検索できる。でも、従来からの事故事例の分類でも、似たような分類は普通にされていたと思うし、検索も同様に可能だと思うけどなあ。もちろん、分類の仕方は微妙に違うのだろうけど、本当にこの仕組みはそんなに新しいのだろうか? 

ともかくも、例えば過去の原発事故や航空機事故などの詳細を知りたい時などは、まずここを見てみるのが良さそうだ。古いものは戦前の事例などもあり、本当に今の時代の事故防止に役立つのかは疑問もあるけど、データベースとしては貴重だろう。

目的はあくまでも過去の事例を今後に活かすためのものであり、決して誰かの責任を追及するためのものではないとはいうものの、失敗百選なんてのに選ばれるのは、さすがにいつまでも晒し者になってるみたいでちょっと辛そうだ。。

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コメント

お久しぶりです。

持続可能な発展が唯一の最適解を持たない以上、意志決定において失敗しないこと、そしてそれ以上に失敗から教訓を得ることは極めて重要です。このような詳細な記述の他に、おおざっぱでもより分かりやすいまんだらがもう1セットあるといいかも知れないと思いました。

ただ、こうした構造化を行うときにはいつも「これで本当に要素は全部拾ったか」という疑問が頭をよぎります。普通は実用に足りれば多少の抜けがあってもいいのかも知れませんけれども、特に失敗学のデータベースとなると、その欠落そのものが失敗の原因ともなりかねませんし。

投稿: ESD | 2005/03/24 11:35

うーむ、完全な分類はそもそも無理ではないでしょうか? ただ、紙媒体の分類と異なり、電子情報DBの場合には、複数項目への重複登録が容易ですから、迷子情報の発生頻度は小さくできるとは思います。

過去の教訓を学ぶという点では、いかに立派なDBを用意しても、使用する側に考える力や感じる力がなければ駄目だと思います。ということで、結局は人の問題になってしまうような気もします。

投稿: tf2 | 2005/03/24 19:43

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