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2005/03/30

水溶性フラーレンの化粧水

asahi.comのニュース(3/29)。ナノテク素材「フラーレン」が化粧品に 美白効果に注目

 ナノテクノロジー(超微細技術)の代表的な炭素素材「フラーレン」を使った初の化粧品を三菱商事の子会社「ビタミンC60バイオリサーチ」などが発売した。紫外線などによって発生する活性酸素の活動を皮膚から浸透したフラーレンが抑制。同じく抑制効果を持つビタミンCとフラーレンとの相乗効果で、肌を白く保つことや老化防止につながるという。医師の指導のもと、まず全国10カ所の美容皮膚科などで販売。価格は化粧水(50ml)が約1万円。
フラーレンが化粧品に使われるというのも、なるほどと言うか、驚きというか、ある程度高価でも受け入れられる分野から実用化されていくのは当然か。それにしても、三菱商事の子会社ながら、社名に驚かされる。ビタミンC と C60に引っ掛けたのだろうけど、ビタミンB12とかがあるから、ビタミンC60という物質があるかのように連想させるところが、何だかなぁ。。

本件については、三菱商事プレスリリースが、世界初のフラーレン入り化粧品、販売開始(2005/3/30)として出ている。関連する以前のプレスリリースとして水溶性フラーレンのメラニン生成抑制効果を確認(2004/9/8)という記事が読める。

これらによると、この会社が開発した水溶性フラーレン(Radical Sponge)について、広島県立大学の三羽教授らのグループと共同研究した結果、これが紫外線により生成する活性酸素を消去し、さらにメラニンの産生を抑制する効果が見られるということらしい。ただし、活性酸素のトラップは電子構造で説明が付くにしても、メラニン産生抑制のメカニズムはわかっていないようだ。

フラーレンは製造過程を考えると、煤の一種みたいに思えるのだが、意外なことにトルエン等の有機溶媒にはきれいに溶解する。だが普通は水には溶解しない。水溶性フラーレンや関連情報については、ケムステニュースが詳しいが、表面に水酸基を多数導入することで水溶性としているようだ。もっとも、三菱商事のプレスリリースによると、これはスターフラーレンと呼ばれる、C60(OH)40で表わされる物質で、活性酸素除去能力も、ポリフェノールと同じOH基に基づくものと説明されているから、Radical Spongeとは別物なのだろうか。

さて、フラーレンを有機溶媒に溶解した場合、溶液の色は、ここにあるように紫色となるようだが、今回のフラーレン水溶液は一体どんな色なのだろう? 美白効果をうたった化粧品だから、まさか黒ということはないだろうが、果たして無色(白色)なのだろうか? 先のスターフラーレンは何故か乳白色らしいが、何色なのか興味があるところだ。

朝日新聞の記事では『「ビタミンC60バイオリサーチ」など』と書かれているが、三菱商事のリリースによると、販売するのはアイ・ティー・オーというビタミンを主とした化粧品関連の会社だ。(社長が伊東さんなので ITO という社名らしい)

今回の美白化粧水(APP-F)は、医師の指導の下で使用されるドクターズコスメというもので、それなりにコントロールされて使用されるようだ。しかし、医薬品ではなくあくまでも化粧品という範疇のもののようだから、その安全性等の確認がどうなっているのかは不明だ。

美白効果のメカニズムも詳細が不明なのだから、水溶性のフラーレンが体内でどういう挙動を示すのかはまだわからない点が多そうだ。ラジカルをトラップするだけならともかくも、メラニンの産生を抑制するとなると、実際に何らかの細胞への関与が考えられるわけで、果たして化粧品という位置づけで使用して良いのかどうか?? もっとも、同じ水溶性フラーレンのがん転移抑制効果について医薬品としての研究も進めているようだから、安全性についても十分な感触を得ているのだとは思うのだが。

といいつつ、ドクターズコスメを調べてみるとケンコーコムキレイナオネエサン.comなどのように、通販で普通に買えてしまうものらしい。どうやら、ドクターズコスメとはきれいなんでもに書かれているように、必ずしも明確な定義がないままに使われている言葉のようだ。。

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コメント

突然おじゃましてすみません。
テレビショッピングで、フラーレン入りのクリームを購入した者です。
色は薄いクリーム色です。
紹介されていた内容(すごい効果が出る)とのことでついつい買ってしまったのですが、
ナノテク化粧品の安全性がきちんと検証されていない、という記事を見て心配になってしまいました。
(ちなみに、ナノテク機能のクレンジングや、ドライヤーも使っています…。)
そんな中、サイト検索していたらこちらのページにたどりつきました。
私は化学のことは全く分かりませんが、参考になります。ありがとうございます。

投稿: sakura | 2005/09/23 17:56

購入情報ありがとうございます。クリーム色でしたか。。 どの程度フラーレンを含んでいるんでしょうね?

確かに、フラーレンなどのナノ粒子の安全性についてもっときちんとした検討が必要だ、という議論がなされているようです。でも、化粧品の場合には皮膚に塗るだけですから、飲食するものと比べれば不安になる必要はないと思います。

投稿: tf2 | 2005/09/25 16:45

フラーレンには発がん性があったはずだが、こんどは「がん転移抑制効果」とは、不思議ですね~

投稿: G.A. | 2005/10/04 11:18

http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20051003k0000m040108000c.html">MSN-Mainichi INTERACTIVEによると、フラーレンやナノチューブなどのナノ粒子の有害性について、これから具体的な調査を開始するということのようです。

http://www.aist.go.jp/aist_j/research/honkaku/symposium/nanotech_society/050201/sdata.html">産総研「ナノテクノロジーと社会」の資料集が参考になりそうですが、フラーレンの有害性についても種々懸念はあるようですが、発がん性を含めてまだ確証が得られていないのではないでしょうか。

投稿: tf2 | 2005/10/04 19:58

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