キャッサバ菓子事件の原因は農薬だった
3/10のブログ記事で紹介した、フィリピンでキャッサバ菓子が原因で数十人の小学生が死亡したという事件の続報。事件が起こったのが 3/9(水)であるにも関わらず、この土日に記事を読んだ限りでは、中毒の原因物質がなかなか特定されず、シアン化合物説と有機リン化合物説が入り混じっていた。原因物質の特定などは簡単にできそうなものだが、お国柄なのかもしれない。最近のニュースを見ると、死者の数も当初の29~30人から27~28人に減ったみたいだ。
今日(3/14)になって、だいぶ情報の精度も高くなったようなので、整理しておく。一つは、フィリピンのINQ7.netというところの Vendor admits using more poisonous cassava variety という記事。
NBI Director Reynaldo Wycoco said Anna Luyong, 68, the vendor who prepared the fried cassava that killed 27 pupils and hospitalized 105 others, admitted yesterday she had used the root crop's white variety for the first time.Luyong said that she usually used the yellow cassava, the less lethal variety, according to agricultural experts.ということで、問題のキャッサバ菓子を作って売ったおばちゃん(自らそれを食べて入院中)が告白したことには、いつもは黄色い種類のキャッサバを使っているのに、この日は初めて白色の種類を使ったらしい。で、黄色のキャッサバと白のキャッサバのシアン含有率は、
Wycoco said agriculturists from the Philippine Root Crops Authority based at the Leyte State University said the cyanide content of the white variety, also called "pulotan," amounted to 330 to 360 parts per million (ppm).The yellow variety, on the other hand, contained only 30 to 60 ppm of cyanide.Experts stressed that the maximum tolerable cyanide content should only be 120 ppm, Wycoco said.ということで、白色種の方はシアン含有率が黄色種の10倍以上で 330~360ppmあり、致死量の 120ppmと比べてみると確かに怪しいぞ、というようなニュアンスで報じられている。
問題のシアン化物をシアン化水素として良いのかどうかも怪しいが、シアン化水素(液体)の致死量は、経口LDL0が570μg/kg、経気道LCL0が120ppmである。ここでキャッサバの含有濃度と 120ppmを比較するのは如何にもずさんな比較方法だ。本来の経口致死量に相当するキャッサバの量は、子どもの体重を30kgとして、約50gとなる。調理の段階でどれほどシアンが残るのか不明だが、半分程度だとしたら、致死量が100gとなり、ちょっと多い気がしないでもないが、ありえない量ではない。。
もっとも、この記事の後の方には、
Although the NBI still had to officially conclude its investigation, there was growing suspicion that the children had eaten cassava laced with either pesticide or herbicide after a search of Luyong's house yielded a plastic container of a known insecticide brand whose white powdery substance was similar in appearance to flour.とあり、このおばちゃんの家から、このお菓子を作るのに使う小麦粉の入った缶とそっくりの外観の農薬(殺虫剤)の入った缶が見つかったようで、おばちゃんは間違えて使用したことを否定しているらしいが、この疑いも消えていないと書かれている。そして、最新のINQ7.net ニュース DoH: Pesticide behind deadly poisoning of schoolchildren によると、
Health officials ruled out naturally-occurring cyanide for the deaths of the children at a school on Bohol island on March 8. (中略)Dayrit detailed "significant findings of pesticide poisoning" among 49 victims tested by the authorities, but no traces of cyanide that is naturally produced by cassava, a root crop that is popular across the Philippines.とあり、被害者から農薬成分が検出され、シアンは検出されなかったようで、シアンの可能性は完全に排除され、農薬が直接の原因と断定されたようだ。ただし、その農薬の混入ルートまでは特定していないようだ。当初からシアンが原因というのは何だか納得しにくかったのだが、このおばちゃんが小麦粉と間違えて農薬を使って料理したことが、27人もの子どもを死なせてしまった原因だとすると、何ともやるせない事件である。
*この事件を受けて、厚生労働省が3/10に輸入食品に対する検査命令の実施について(キャッサバ)というのを出している。素早い対応には感心するが、残念ながら空振りだったようだ。。
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