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2005/04/19

ダイヤモンドコーティング調理器具

NIKKEI NET(4/19)の新製品記事から。松下電器、釜内にダイヤ微粒子コーティングした炊飯器

 松下電器産業は、釜の内面にダイヤモンドをコーティングしたIH(電磁誘導加熱)炊飯器を6月1日に発売する。従来機より米粒にむらなく熱を伝えられ、ふっくらツヤのあるご飯に仕上がるという。容量の異なる2機種を発売し、両機種で月産1万台を目指す。

 新発売の「SR―SS10」=写真=は銅釜の内面に約1億個のダイヤモンド微粒子をコーティングした「旨火ダイヤモンド銅釜」を、業界で初めて採用した。ダイヤモンドは従来の釜に使うフッ素樹脂より熱を通しやすい。でんぷんの分解を早め、ご飯の甘みが増す。

 加熱部分の面積を従来機比2.5倍に拡大し、蒸気温度セ氏130度までの昇温時間を2分の1に短縮。すばやく加熱してご飯にツヤを出す。炊飯の予約時間を音声で案内する機能も搭載。炊飯容量は最大1リットルで店頭実勢価格は7万3000円前後の見込み。容量1.8リットルの「SR―SS18」(同7万6000円前後)も同時発売する。

ということで、微粒子の使用量を個数で数えるのは、初めて見たが、本当にダイヤモンド微粒子が効くんだろうか?

松下電器のニュースによると、ダイヤモンド微粒子を使った部分については、

業界初 熱伝導率の高いダイヤモンドで一粒一粒しっかり加熱する「旨火ダイヤモンド銅釜」

ステンレスをはるかに上回る発熱性と、ステンレスの13倍の熱伝導率を持つ銅を表面に加工した当社独自の銅釜の内面に、約1億個のダイヤモンドの微粒子をコーティングしました。

ダイヤモンドは、最も熱伝導率の高い物質であり、従来のフッ素樹脂の約7700倍の熱伝導率をもっています。この熱伝導率の高いダイヤモンド微粒子に熱が集中し、従来のフッ素樹脂の約2.5倍の数の微細な泡(熱のかたまり)を発生させます。この大量の泡が対流となり、米粒の間を通過することにより一粒一粒に均一に熱を伝えます。

という解説が載っている。掲載されている断面模式図によると、外側から順に、銅、ステンレス、アルミ、備長炭加工、ダイヤモンドフッ素、という5層構造となっているようだが、「ダイヤモンドフッ素」って何?という疑問と共に、備長炭加工って何だ?という疑問も出てくる。単なるグラファイト処理ではないの? 備長炭というのはいわゆる「炭」だろうから、備長炭で鍋の表面を機械的にスリスリするんだろうか? 変なの。。

さて、Nationalの商品一覧の説明のページでは、従来の釜とダイヤモンド銅釜でお湯を沸かしたときの違いが動画で説明されている。微細な気泡を多数発生しながら沸騰するということが特徴のようだ。一般的には表面積を大きくすれば突沸を防げるので、この場合も表面に微細な凹凸を作れば同じ効果が期待できそうだが、さすがに釜の内面をあまり粗くもできないだろうからなあ。

でも、このページの上のほうで説明されているように、ダイヤモンド微粒子に熱が集中してそこから沸騰するというのが本当だとしても、別にダイヤモンドでなくとも、周囲のフッ素樹脂に対して相対的に熱伝導性が良ければ熱が集中しそうだし、金属微粒子でも十分のような気もする。(金属よりダイヤモンドの方が無害という観点もあるのかな?)

それはともかく、最新のIH炊飯ジャーという奴は消費電力もすごい。5.5合炊(1L)で1200kWだ。一方、IHではない普通の炊飯ジャーは600W程度なので、何と2倍の消費電力である。炊き上がり時間がどの程度短縮されるか不明だが、いかにおいしいご飯を食べるためとは言え、毎日のように使うものだし、いくら何でも電気を使いすぎじゃないだろうか?

ところで、フッ素樹脂とダイヤモンドという組み合わせを調べてみたら、スイスダイヤモンドフライパンというのが見つかった。

鉱物の中でも最も硬度の高いダイヤモンド。そのダイヤモンド粒子をフッ素原子でつなげてコーティングする「ナノコンポジット技術」により、銅の5倍もの高い熱伝導率、金ベラも使用できる耐久性が実現しました。
ということで、目的は違うようだが、構造は良く似ていそうだ。本家のSwiss Diamondにも技術的な説明は見つからなかったが、USAのサイトでDiamond Reinforced Non-stick Cookwareの耐久性のグラフが見つかった。フライパンのフッ素樹脂コーティングは使用と共に摩耗して効果がなくなってしまうが、このスイスダイヤモンドコーティングは、ダイヤモンドの耐摩耗性が効果を発揮しているらしく、抜群の耐久性を示すようだ。(ここでのテストはフライパンをサンドペーパーで擦りながら、焦がしたミルクの拭き取りやすさの変化を調べている。実際の使用時には、フッ素樹脂の熱劣化という側面もありそうな気もするのだが。。)

これは結構欲しいかも、でも高いし、と思って探してみると、日本で 14,700円 の直径24cmのフライパンが向こうでは、$54.99 で売っている。これだけ違うと、個人輸入もしたくなるはずだ。。

ところで、ダイヤモンド微粒子1億個というのはどの程度の量なのだろう? ものすごーく少なそうだが。。 ダイヤモンドの比重は約 3.5なので、粒子径が 10μm~0.01μm(=10nm)の球と仮定して、その1億個の重量を求めると10μmの時に 0.2g、1μmの時に 0.2mg、0.1μmの時に 0.2μg、0.01μの時には 0.2ngとなる。(体積は粒径の3乗に比例する) いずれにしても、使用されているダイヤモンド量は本当に微々たるものだろう。。(ちなみに、0.2gが1カラット)

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コメント

松下さんもいろいろ考えますね~。でも問題は熱伝導に対してどこが一番の抵抗を持つかであって、発熱体部分とダイアモンド部分が直に接していなければ、効果は少なそうに見えますね・・・。でも実際、どんな移動抵抗なのか、図示してもらわなければ、部外者にはわかりにくいですが。それをきちんとできない商品なら怪しいですね・・・。
それと、1200W、は多分昇温時(がぁっ~と上がるのが売りですよね)だけの消費電力ではないですか? 定常時に同じだけいるとは限らないですよ。これはFPDの評価も同じで、リビングも環境です、と怪しくのたまうシャープの液晶TVが、パイオニアのPDPより電力が少ないか、というとカタログでのMAX電力だけでは議論できないのと同じです。こんなの一般消費者は一々やってられないから、一ヶ月使ってみての消費電力をレポートしてくれるとこがあったら便利なのですけどね(省エネセンターあたりでしょうか?)。

投稿: KS | 2005/04/20 01:02

フッ素樹脂の板が均一に加熱されていると仮定して、その表面にダイヤモンドの粒子が分散している場合に、そのダイヤモンド粒子に熱流束が集中するのか?という問題ですかね。直感的には効果がありそうに思えます。

ちなみに、今回のIH方式の場合は、原理的にはそのステンレス部分が発熱体とみなせるはずです。

消費電力については、少し古いですが、http://www.kokusen.go.jp/cgi-bin/byteserver.pl/pdf/n-20010306_1.pdf">国民生活センターの資料がありました。実際の炊き上がりまでの消費電力量を比べていますが、IH式は 3割程度消費電力が多いようです。

高いお金を出して購入する価値があるかどうかは、炊き上がりの好みで決めるべきかもしれませんが、ここでは、おいしさの比較もしています。普通の人が炊飯器を購入する際に、全く同一条件で炊き上がりを比較検討することは不可能でしょうから、こういうデータは参考になりますね。結果として、IHとそうでないものとのおいしさの違いはかなり微妙のようです。。。

投稿: tf2 | 2005/04/20 19:38

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なんかこの頃食い物ばっかりだったんで 綺麗なもの でも紹介してやろうかと 今回は私が買えるような代物じゃないです それは ダイアモンド! ダイヤモンドかダイアモンドかどっちかわからなかったので適当です、はい 紹介するんだったらスゴイものをと..... [続きを読む]

受信: 2005/10/01 21:25

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