無農薬作物でアレルギー発症
日経新聞4/4の朝刊の科学面に載っていた「無農薬作物でアレルギー発症」という記事。
花粉症患者が無農薬栽培のリンゴなどを食べると、アレルギー症状を起こす恐れがあるとする研究を、近畿大学の森山達哉講師らがまとめた。無農薬作物が作る抗菌たんぱく質などが原因になるとみられ、注意を呼びかけている。ということで、アレルギーに対して良かれと思って、無農薬栽培した作物を積極的に摂取すると、もしかしたら逆効果になるという話のようだ。Biotechnology Japan の Food Science の 松永和紀のアグリ話●花粉症患者にはかえって悪い?無農薬栽培 で解説されている。これは、同じ森山さんの研究成果を元に、もう少し深く突っ込んだ内容となっていて、有機農作物の安全性には必ずしも根拠がないことを指摘(参考)した上で、農薬を使って病害を防いだリンゴと無農薬で栽培したリンゴに、それぞれアレルギー物質がどれくらい含まれるか、花粉症でリンゴにもアレルギーを示す患者の血液を使って調べた。無農薬リンゴからは農薬を使った場合の2-5倍見つかり、農薬を少しでも使うとアレルギー物質が半減することが分かった。無農薬作物は病害虫の攻撃を受けやすく、それに対抗しようと盛んに抗菌たんぱく質などを作る。
しかし、この研究は、農薬という1つのリスクが下がった時に、アレルゲンという別のリスクが上がるという、「リスクのトレードオフ」の可能性を示したもの。と結んでいる。この研究をした森山さんは、3月までは京都大学で、この4月から近畿大学に移られたようだが(近畿大学農学部応用生命化学科)、本件に関連する情報はホームページ上には見つからなかった。
さて、植物が病害虫などに対する防衛策として有害物質を作り出す話は、天然農薬と自然農薬と呼ばれるようで、農薬のお話や農薬ギライのためのバラ作りのページで説明されている。生成される成分には発がん性のあるものも多いようだ。もっとも、野菜を食べることは、その発がんのリスクを上回るメリットがあるというのが結論のようだ。
我々の日常生活の発がんリスクの中で、食品添加物や残留農薬などの人工的な物よりも、普通の食べ物の方が何倍も大きいというのも今までに何度か聞いている話なのだが、何故かなかなか一般常識にはならないようだ。
このような話と共にBSE問題も含めて、唐木英明さんが東京都の食の安全都民フォーラムで昨年秋に公演したときの資料食の安全と安心の違いが勉強になる。
ところで、この無農薬リンゴが生成する天然アレルゲンは、最近になって突然できたものではなく、恐らく人間とリンゴとの付き合いの長い歴史の中でずーっと関わってきた物質だろう。あくまでも、有機栽培されたリンゴが、天然農薬として自分で作り出す成分の中に、リンゴアレルギーの人のアレルゲンが存在していたということだろう。
アレルギーを持つ人が食生活に注意をする必要があるのは言うまでもないことだが、リンゴアレルギーの人でも、農薬を使用したリンゴの場合は大丈夫というのが面白いところだ。だからと言って、この実験結果から、無農薬栽培の食物は花粉症に対して有害であり、農薬使用栽培された食物は無害である、という結論には必ずしもならないはずなので、要注意だ。
というか、この実験は結局のところ「花粉症」とどういう関係があるのだろう? 単なるリンゴアレルギーと無農薬リンゴの関係の話ではないのだろうか?
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