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2005/04/06

輸血血液が大幅不足

MSN-Mainichi INTERACTIVE(4/6)の記事。献血:輸血血液、大幅不足 「A」「O」は特に深刻--若者離れ…渡航者禁止も影響

 全国で輸血用血液が大幅に不足し、特にO型とA型は、治療への影響が懸念されるほど少なくなっていることが、日本赤十字社の調べで分かった。少子高齢化で献血者が年々減っているうえ、変異型(新型)クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)に国内で初感染した男性の渡航歴から決まった英仏渡航者の献血禁止方針も原因とみられる。厚生労働省は献血推進本部を設置し、都道府県に対し、初めて対策本部設置を要請するなど血液確保に懸命だ。【玉木達也】

 日赤によると、今年3月31日現在、血液製剤(赤血球製剤)の適正在庫(前年度実績などを基にした1日平均供給量の3日分)率は、全国平均ですべての血液型が100%を下回った。70%を切ると、大きな手術や突発的な治療に必要な血液が足りなくなる恐れが出てくるが、O型は66%、A型は69%しかなく、B型とAB型はそれぞれ87%と85%だった。

 昨年3月31日の血液製剤の在庫状況は、O型が77%、A型が94%で100%を下回ったが、B型は127%、AB型は114%を確保していた。現在のようにすべてが100%を下回るのは「異例の事態」という。
 (中略)
 今年は3月7日にvCJDの国内初感染者の渡航歴から、80~96年に英仏両国に1日以上滞在した人の献血中止を決定。その後、急激な血液不足を避けるため、英国滞在者を先行し、一定期間後に仏国滞在者も禁止する2段階式に変更した。

 実際の禁止措置の開始は、献血時の問診表の改訂などの準備を終えてからで、早くとも来月だが、日赤は対象者の中には、既に「できない」ものと勘違いして献血を中止している人がいて、減少に拍車をかけているとみている。

 対象となる80~96年の英仏渡航者は延べ757万人に上るため、禁止措置が始まれば、さらに献血者が減るとみられる。(後略)

ということで、血液不足らしい。英国渡航者は今はまだ献血可能なのに、既に「できない」ものと勘違いして献血を中止している人がいたとしても、それが問題であるかのように読み取れるのだが、そういう問題なのだろうか?? (禁止されるまではどんどん献血してくれってことか?)

そもそも輸血用血液が減少している理由は何なのだろう? 在庫率は昨年比で表わすと、O型が -14%、A型が -27%、B型が -31%、AB型が -25%となる。1年でこれだけ減少したのを、少子高齢化で献血者が年々減少していることが原因と説明するのは無理だろうに。。 しかも3月の1点データでは vCJD の影響かどうかも判然としない。もう少し時系列に数字を追いかける必要がありそうだ。

厚生労働省の献血者及び献血量の推移には平成14年までの数字しか載っていないので、これでは最近の状況はわからない。むしろ、血液製剤調査機構の血液事業関係資料集 平成15年度版の方が、新しいし、細かな数字などはいろいろと充実している。これを見ると、少なくとも平成15年度までは献血者が特に減少している傾向は見られないのだが。。

毎日新聞の新聞記事には、ここで問題になっているのが赤血球製剤と書かれている。赤血球製剤は、血液及び血液製剤についてに書かれているように、輸血用の血液製剤で、いわゆる全血献血から作られる。(2004/9/9にこのブログで話題にした赤血球成分献血が行われれば別だが。)

延べ献血者数で見ると、成分献血者は全体の3割程度のようだが、多くの献血リピーターは肉体的な負担が少ないことと、短いインターバルで次の献血が可能になることから、大体成分献血を行っている。まあ、こういう人たちは黙っていてもまた献血に来てくれるから今回の呼びかけの対象外なのかな? それとも、次回献血に行くと400ml献血をお願いされちゃうのだろうか?(いつもは、「今回も成分献血をお願いできますか?」と聞かれるのだが。。)

ちなみに、今回の英国旅行者の献血制限については、厚生労働省が献血時の変異型クロイツフェルト・ヤコブ病対策についてというお知らせを出している。(これを読む限り、成分献血から全血献血への誘導を行うようなことはなさそうだ。) 英国旅行者の献血制限の影響は 5~10%と見積もっているようだから、冒頭の記事の血液製剤の在庫量の減少はやはり説明できそうもない。

この厚生労働省の資料では、輸血によるvCJD発症の潜在的なリスクと、血液不足による出血死の顕在的なリスクとのトレードオフに言及していて、なかなか興味深い。何故かマスコミ報道ではこの辺のニュアンスは伝わってこないのだが。。 どうせなら、もう少し詳細に検討してもらうと、リスクを考える具体例として面白いものになると思うのだが、中途半端で終わってしまっているのが残念である。

この件に関連しては、松永和紀のアグリ話でも取り上げられていて、英国滞在1カ月の献血線引きは非科学的では、この男性が日本国内の牛肉を食べて感染した可能性を否定することができないことを指摘した上で、もしもイギリスで感染したのだとしてもその滞在日数で線引きすることにも疑問を呈している。もっとも、今回の滞在1日で線引きするという最新の方針は、まあそれはそれでアホらしいほどに徹底していると言えるのかもしれない。

でもよくよく考えてみると、イギリスで輸血を必要とする人は当然イギリス国内で献血された血液を主として使用しているのだろうし、それでも現時点で大して問題になっていないとすると、日本のこの対応はやっぱり大げさすぎるのだろう。

2004/9/24に取り上げた献血経由のクロイツフェルト・ヤコブ病リスクによれば、確かに輸血患者の発症率はやや高いようだが、それでも献血や輸血は行われているようだし、血液感染のリスクは白血球が原因と考えられているようだから、白血球の除去という対策もあってよさそうだ。(血液事業報告によると、赤血球製剤には、白血球除去赤血球除去浮遊液というのがあるから、通常のものは白血球を除去していないのだろうか。)

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コメント

今日ふらっと献血所に立ちよったところ、「海外から帰国一ヶ月以内(アメリカでした)」の規定ではねられました。そのほか、現在確認中ですが「80年以降にイギリスに計1ヶ月以上の滞在」もグレーゾーンだったりします。前のパスポートで20日以上だとアウトです。確かそんなには居なかったと思うのですが…。
帰り際に「2X日以降にまた来て下さい。2X日です。」と念を押されたのは、5月以降は「英国滞在者全面禁止」を見越しての駆け込みを推奨されたのかとこの記事を読んで何となく思いました。

そして自宅に帰ってみると「献血協力のお願い」葉書が。「ご協力いただいて、すぐにこのはがきが届いてしまった場合はご容赦下さい。」の文字が大変空しく響きました。ちなみに私は今まで200, 400, 200, 400と全血でやってきたからなのか「400mL献血のお願い」が来ました。

投稿: ESD | 2005/04/08 22:49

http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/iyaku/kenketsugo/7m2.html">厚生労働大臣緊急アピールなんてのも出ていますね。

ルールとはいうものの、英国滞在経験者に今のうちに献血してもらおうというのも、何だか納得しにくい対応ですよね。リスクは何も変わらないのに。。

私も今月中には献血ルームに行って様子を見てくるつもりです。

投稿: tf2 | 2005/04/08 23:42

>血液事業報告によると、赤血球製剤には、白血球除去赤血球除去浮遊液というのがあるから、通常のものは白血球を除去していないのだろうか

普段使っている赤血球輸血の際には白血球除去フィルターを使っています。ということはつまり、通常のものについては、製剤化のときには白血球の除去はなされていないということでしょうね。白血球除去フィルターが必要かどうは議論があるようですが、白血球由来の感染症予防を考えるのなら、使用したほうが無難なのでしょうか。コストと見合うかどうかが問題になりそうです。

投稿: NATROM | 2005/04/10 09:51

なるほど、輸血の際に白血球除去が可能なのですね。http://www.ketsukyo.or.jp/seizai/index.html">日本血液製剤協会の説明を見ると、赤血球と白血球はサイズが結構違いますから、確かにフィルターで白血球が除去できそうですね。

福井大学医学部付属病院輸血部のQ&Aの、http://www1.fukui-med.ac.jp/BLO/QA/QA-2.html#Q&A8">質問16やhttp://www1.fukui-med.ac.jp/BLO/QA/QA-3.html#Q&A1">質問17あたりにも関連情報がありました。白血球除去赤血球には、コストの問題のほかにも保存の問題もあるようですね。

投稿: tf2 | 2005/04/10 19:04

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受信: 2005/05/17 15:23

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