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2005/04/22

「猛速度こそ我が人生」

「メタルカラーの時代」の文庫版シリーズの第10巻。このブログでは、第6巻「ロケットと深海艇の挑戦者」、第7巻「デジタル維新の一番走者」、第9巻『「壊れぬ技術」のメダリスト』を紹介している。

小学館文庫
 文庫版 メタルカラーの時代 10
 猛速度こそ我が人生
 山根 一眞 著 bk1amazon

タイトルからは、車や列車などの開発裏話かな、と思うのだが、実は結構スピードとは関係ない内容も扱っている。前半は、新幹線、ジャンボジェット、高速船関連なのだが、後半は、世界一の工作機械、世界一の炒り卵製造機、世界一の鋼板製造設備など一応はスピードに無理やり関連したものもあるのだが、他にも製鉄所のメンテナンスや超小型コンデンサなんてのも含まれている。

いつものように、山根さんのインタビューは非常にわかりやすい比喩が多く使われていて、難しい技術の概要をさらりとやさしく伝えてくれる。ただ、今回のシリーズでは、技術のすごさやその実現までの困難さの部分があまり語られてなかったような感じで、今一印象に残った内容が少ない。

一方、本書で初めて知ったのだが、マシニングセンタを作る松浦製作所の松浦さんは、人物的にとても魅力のある方のようで、さらに、この会社の歴史や成し遂げたことを考えると、ソニーやホンダなどと同列とまではいかなくとも、もっと日本で知名度が高くても良さそうなものだと思わされる。

興味が湧いたのは、新幹線の線路や架線を検査する「ドクター・イエロー」の話。時速200km以上の速度で走行しながら、線路や架線の異常の有無をチェックしてしまうというのは、ものすごい話だ。本書では具体的な内容にはあまり触れられていないのだが、実際にどういう原理や技術で測定しているのかを詳しく知りたくなる。

さらに本書では、新幹線に関しては、ドクター・イエローによる検査以外にも、多くの人の手や目を使った点検が日常的に行われていることも紹介されている。いかにも裏方作業なので、ほとんど知られていないが、あらためて新幹線の安全を支える努力の大きさを感じさせられる。新幹線技術を台湾や中国などに輸出するのもいいけど、安全技術やメンテナンスは、ハードだけでなくソフトの部分や、それ以上に「人」が重要そうだし、本当の意味での技術移転というのは、相当に大変そうだ。。

ところで、猛速度というテーマを扱うのだったら、やっぱりF1などのモーターレーシングの世界も扱って欲しかった。それこそ、エンジン、シャーシ、タイヤ、オイルや燃料、様々な電装部品など日本の様々なメーカーが貢献している分野は数多いはずだし。

それと、もう一点。山根さんは地球環境問題を考えて「環業革命」というのを提唱しているらしいのだが、だとするとこの手の対談でも、単にスピードを追求するのでなく、それは環境という観点からはどういう位置付けになるのかにも言及して欲しかった。様々なトレードオフの存在やライフサイクルという概念を、多くの人に広める役目も担ってくれるとうれしいのだが。 特に、新幹線や船に関しては、これ以上スピードを追求しても、果たしてエネルギー効率の面からはどうなんだろう? という疑問もあるし。。

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