ビタミンPとヘスペリジン
河北新報ニュース(4/11)で見つけた記事。半年服用で中性脂肪3割減 ビタミンPと糖の結合物質
林原生物化学研究所(岡山市)は11日、ビタミンPの一種に糖を結合させた物質に、血液中の中性脂肪を減らす作用を確認したと発表した。現在も食品の原料に使われているが、動脈硬化予防に役立つとして医薬品などへの応用も検討する。ビタミンPってあまり聞かないが、どんなものだろう? 林原グループのプレスリリースに、詳細な説明が掲載されている。ビタミンPは血管強化などの作用があるとされる。同研究所は糖と結合させて水溶性を高め、吸収しやすくした「糖転移ヘスペリジン」を開発した。成人男性25人で実験。500ミリグラムを6カ月間毎日摂取し、高脂血症の人は中性脂肪が平均3割減少。正常値の人はほとんど影響がなかった。
肝臓細胞で調べると、この物質によって中性脂肪の分泌が制御されていた。
かんきつ類の皮を原料にしており、副作用はないという。5月に東京で開かれる日本栄養・食糧学会で発表する。
ミカンなどに含まれているフラボノイドの一種であるヘスペリジンという物質がビタミンPと言われているそうだ。(ビタミンPの Pはpermeability(透過性)が由来らしい。 実際にはビタミンPはヘスペリジンとルチンの混合物のことみたいだ。) これは、水に溶けないので、グルコースを結合させて水溶性にしたのが、糖転移ヘスペリジンで、現在すでに食品分野で使われているらしい。(このリリースには、溶解度が100mlの水に200gまで改善とあるが、製造元の東洋精糖によると、20gのようだ。)
今回のポイントは、従来から血管強化等の健康効果が言われていた糖転移ヘスペリジンのヒトの健康への効果を定量的に明らかにしたということらしい。確かに実験結果を見る限り、これを摂取した被験者で血中中性脂肪が顕著に低下しているように見える。また、別の実験によって作用機序も明らかにできたと説明されている。
従来から健康食品として出回っているということで、例えば、江崎グリコのαGヘスペリジンによると、みかん加工品の添加剤などとして使われているようだし、素材豆知識によると、血管強化やコレステロール値の改善以外にも、抗アレルギー作用とか発がん抑制効果まで宣伝されている。他にも、骨粗鬆症に効くとか、リウマチに効くとか、探すと色々出てくるが、何にでも効果があるとなると、かえって怪しいような気もしてくる。
この林原の実験の被験者は、成人男性25名とのことだが、中性脂肪量で3つのグループに分けて評価している。グラフを見ると今回の効果は、高中性脂肪血症の11名の平均をプロットしているようだが、この程度のデータ数で本当に効果が確認できたと言えるのだろうか?
生データを見ないとわからないが、7か月目には中性脂肪量が元に戻っているけど、そんなに急に戻るのだろうか?(バラツキが相当に大きいのではないか?) もちろんこれは、医薬品の評価とは異なるレベルの実験なのだろうが、せめて二重盲検法を使用して、統計的な処理をして評価するという程度のことは行うべきなのだろうと思う。それと、中性脂肪が標準値を上回っている人にだけ減少させる効果があり、標準以下の人には何も影響がないというのも、提案されたメカニズムで説明できているのだろうか?
この効果が本物ならば、医薬品としても十分に使えそうなレベルのような気もしないではない。もっとも、医薬品とするのは色々と大変ということで、結局は健康食品や健康サプリメントのような形で使われるのだろうか? こうしてみると、医薬品と健康サプリメントとの境界は実に微妙だ。。
いずれにしても、こうして一応のお墨付きが得られたということで、今後はヘスペリジンとビタミンPは今まで以上に注目される成分となりそうな予感。
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