ジェノグラフィック・プロジェクト
NIKKEI NET(4/13)の記事。人類の「足跡」、DNAで解明へ・米科学団体など調査
人類が起源の地とされるアフリカからどのように世界各地に移動したかを探る国際研究プロジェクトを始めると米科学教育団体のナショナルジオグラフィック協会とIBMが13日、発表した。先住民族や各地の希望者から数十万人規模のDNA(デオキシリボ核酸)を集めて分析する。地域をまたぐ遺伝的なつながりを洗い出し、人類の足跡を5年間で解明する。先日、「DNAからみた日本人」という本を紹介したばかりだが、まさにこの本で紹介されていたような試みを、世界規模で大々的にやろうというプロジェクトのようだ。各国の研究チームが世界の先住民族からDNAを収集。IBMのデータ解析技術などを活用し、数百世代にわたって保存されてきた遺伝的な特徴を調べ、それぞれを突き合わせる。
研究プロジェクトには希望すれば参加できる。専用キット(約100ドル)を購入して、ほおの内側を軽くこそいで送り返す。
試料の分析結果は同協会のデータベースに登録。参加者はインターネットを通じて研究プロジェクトの進ちょく状況や自分の祖先がたどった移動ルートを知ることができる。個人情報保護のため、試料や遺伝情報は匿名で厳重に管理する。
日本語版の正式なリリースが、ナショナル ジオグラフィック 日本版および日本IBMから出ている。このプロジェクトは「ジェノグラフィック・プロジェクト」と名付けられており、フィールド・リサーチ(世界各国の先住民族のDNAサンプルを採取して解析する)、一般参加と周知キャンペーン(専用キットを購入した一般の人たちのDNAからルーツをさぐる)、ジェノグラフィック・レガシー・プロジェクト(専用キットの販売代金の一部を資金とした先住民族の教育および文化保護活動)の3本柱となっている。
現時点では日本語の情報はこれだけだが、本家のThe Genographic Projectのサイトは非常に力が入っている。今回のプロジェクトの解説やFAQに加えて、DNA解析の基礎知識や人類のルーツに関する地図などがとても充実している。英語だけなので、ちょっと理解は大変そうだが、きれいな絵が沢山のっており、見るだけでも楽しめる。
一般の人が専用キットを購入して参加するプロジェクトについては、How to Participateに解説されており、キットはOnline Storeで購入できそうだ。
これによると、キットを購入すると、ランダムに生成したIDナンバーが付いてきて、以降はこのIDナンバーのみで追跡することで匿名性を確保しているようだ。DNAサンプルを返送後4~6週間で解析が終了し、このWebページにIDナンバーを入れることで自分の祖先についての情報が見られるようになるらしい。なお、単に自分の祖先についての情報を知りたいだけの場合には、このDNA情報はデータベースには記録されないようで、
If you'd like to contribute your own results to the project's global database you'll be asked to answer a dozen "phenotyping" questions that will help place your DNA in cultural context. This process is optional and completely anonymous, but it's also important.とあり、希望した場合のみ、そのDNAサンプルの色々な背景(地理的、文化的などか?)を明確にするための質問に答えることで、データベースに(匿名のまま)登録されるようだ。
また、今回の解析で調べる部分は、
Samples will be analyzed for genetic "markers" found in mitochondrial DNA and on the Y chromosome. We will be performing two tests for the public participants:とあり、男性の場合にはY染色体、女性の場合にはミトコンドリアDNAについて調べるようで、それ以外の病気などに関係する部分には手を付けないらしい。Males: Y-DNA test. This test allows you to identify your deep ancestral geographic origins on your direct paternal line.
Females: Mitochondrial DNA (mtDNA). This tests the mtDNA of females to identify the ancestral migratory origins of your direct maternal line.
なかなか面白そうなプロジェクトだが、DNAを解析目的で他人に渡すという行為にどの程度のリスクを感じるかということがポイントかな? 全世界から均一にサンプルを入手したくても、民族とか宗教の影響を受けて、うまく集まらない可能性もあるだろうか?
ちなみに、アメリカやカナダ以外からの参加については、法律等により遺伝情報を持ったサンプルを国外に出せないような規制がされている国(例えば中国)以外は特に制限はなさそうだ。
なお、ナショナル ジオグラフィック 日本版のリリースの末尾に、「プロジェクトのスケジュールと分析内容、専用キットの入手方法などにつきまして、詳細が分かり次第、順次、情報を提供していく予定です。」と書かれており、今日の日経新聞の夕刊にも、「キットの購入方法など詳細は同協会ホームページに表示する。日本語で説明したサイトやキットの製作も検討しているという。」とあるので、キットの購入等を考えるのは、もう少し待った方が良いかもしれない。
スラッシュドットジャパンで議論されているが、かなり専門的なコメントも出ているようなので参考になりそうだ。
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