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2005/05/31

日本の子どもの死亡率は最悪?

asahi.com(5/31)の記事。日本の1~4歳児の死亡率 先進国の3割増で「最悪」

 長寿命を誇る日本だが、1~4歳児の死亡率は先進国の平均より3割高く、実質的に「最悪」なことが厚生労働省の研究班の調査でわかった。原因ははっきりしないが、主任研究者の田中哲郎・国立保健医療科学院生涯保健部長は「小児救急体制が十分に機能していないのかもしれない。医師の教育研修なども含め、幼児を救う医療を強化する必要がある」と指摘する。

 国内総生産(GDP)上位20カ国のうち、世界保健機関(WHO)の統計資料がない中国、韓国、保健医療面で遅れるメキシコ、ブラジルなどを除いた14カ国で主に99年のデータを比べた。

 年間の死亡率を10万人当たりで見ると、日本の1~4歳児は33.0人で、ほかの13カ国平均より3割多く、米国(34.7人)の次に高い。米国は他殺(2.44人)の占める割合が大きく、この分を除くと、日本が最悪になる。最も低いスウェーデンは14.3人。

 病気別には、先天奇形や肺炎、心疾患、インフルエンザ、敗血症などが13カ国平均に比べ高い。不慮の事故は、平均とほとんど変わらなかった。

 ほかの年齢層の死亡率は、すべての層で13カ国平均より低く、全体では10万人当たり783人で、13カ国平均より15%低い。0歳児については340人で、13カ国平均の約3分の2で、スウェーデン(337人)に次いで低い。新生児医療の整備が大きいとされる。

タイトルが刺激的なこともあり、パッと読むと日本の小児医療に大きな問題があるように思えるのだが、この記事は相当に引っ掛け問題的な書き方がされている。ポイントは「1~4歳児」というところ。確かに最後の段落では、「0歳児」についても触れており、0歳児の死亡率は日本は世界トップクラスの低さなのだが。

ちょっと整理してみよう。日本の最新の死亡率統計は、平成15年簡易生命表で入手できる。これによると、各年齢の人口10万人当たりの死亡数は
       男性   女性
   0歳  308  287
   1歳   38   36
   2歳   28   26
   3歳   21   19
   4歳   17   15
   5歳   16   12
  10歳    9    8
  20歳   55   25
  30歳   76   37
  40歳  150   74
  50歳  377  177
  60歳  901  367
  70歳 2234  934
  80歳 5980 3027
となっており、全体で見ると死亡率は0歳で高く、その後徐々に低下していき、10歳前後を最小として、再び増加に転じるという傾向がある。その意味では1~4歳を問題にする意味もあるだろうと思う。実際、従来の統計では、例えば世界の主要国の死亡率の比較のように、乳児(=0歳児)死亡率という観点や、年齢階級別死亡率推移のように、0~4歳を一まとめにした資料しかなかったようだし。

しかし、他の国と比べて1~4歳の死亡率が高いから小児救急体制に問題があるというのは、直感的には納得しにくいものもあるし、早計かもしれない。もちろん、まだまだ改善の余地があるということだろうが、もしかしたら、他国では0歳で死亡してしまうような子が、日本では1~4歳になってから死亡しているのかもしれないし。。

なお、新聞記事の数値、0歳児の340や、1~4歳児の33人は、古いデータのようで、上記平成15年の数値では、男女単純平均すると、0歳児で298、1~4歳児で25となる。また、各国比較でも2001年の乳児死亡率はスウェーデンよりも日本の方が明らかに低いので、最新のデータで比較すると、既に問題は解決しているのかもしれない。。(まさか、意識的に古いデータで比較しているんじゃないんだろうね?)

*それにしても、全年齢で女性の死亡率が男性の死亡率を大きく下回っており、特に20歳以上では、半分以下というのには改めて驚かされる。。。

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もんじゅ判決と科学高裁

高速増殖炉「もんじゅ」の建設許可の無効を争っていた行政訴訟の最高裁判決が昨日出たことにより、各社が社説で取り扱っている。各社の原子力や核についての姿勢が極めて鮮明に出ていておもしろい。

朝日新聞毎日新聞日経新聞読売新聞産経新聞

面白いのは、毎日新聞が

 だが、判決はもんじゅの安全性そのものにお墨付きを与えたわけではない。まして、高速増殖炉推進政策の可否を問うものでもない。
と書いている一方で、産経新聞では
 今回の最高裁判決で、国とサイクル機構は、もんじゅの運転再開に向けての完全なお墨付きを得た形だ。
と、それぞれの立場が明確となる対立した主張をしている点。裁判所が判断するのは、あくまでも行政手続に違法性があったかどうか、という点であり、科学的あるいは技術的な判断を行うわけではないと思うのだが。 それに、もしも最高裁判所が原子力発電の安全性にお墨付きを与えたからといって、それで皆が納得するならそれでいいのだろうか? その場合には、事故が起きたときには誰が責任を取るんだろう? これでは技術者などの専門家が浮かばれないよな。。

もう一つ、安全性の判断とは別に、核燃料サイクルの問題のように、国のエネルギー政策の根幹に関わるような問題の最終判断まで裁判所にお任せしてしまうような流れは非常に問題だと思う。このような問題は、科学的なデータなどに基づき、きちんとした情報公開と利害関係者に対する説明の上で、国民や住民が最終的に判断すべきだし、そうできるように関係者が努力するべきものだろう。

ところで、産経新聞の主張には、ちょっと面白いことが書いてあった。

 高速増殖炉などの原子炉は非常に高度な科学と工学の集合体である。その審査や判断には数理科学の専門知識が必要とされる。

 今後もこの種の訴訟が予想される。審理の正確さを期し、かつ迅速化をはかるためにも、今年四月に発足した「知財高裁」の例にならって「科学高裁」の導入を提案したい。

これを読んで思わず連想したのが、ガリレオの地動説に対する裁判なのだが。。。 知財高裁の場合には、発明の新規性や進歩性の有無の判断や、侵害の有無の判断などに専門知識が必要である、という趣旨だったと思うのだが、科学高裁では一体何を判断するのにどんな知識が必要だと言いたいのだろう?

今回の裁判は確かに相当に専門的な部分で争ったように見えるが、今回の最高裁判決では、その高裁の判断は必要以上に専門的な部分に入り込みすぎていた、と判断し、今後はそんな細かなことは専門家に任せなさいということじゃないのか??

科学高裁というのが、科学理論そのものの正当性の判断を行おうというものではないと思いたいが、もちろんそんな判断は裁判官に可能とは思えないし、それは科学や技術の世界で片を付けなくてはいけない問題だろう。

ここの部分に引っ掛かったのは、最近少し話題になっている、中西準子さんの名誉毀損問題が頭にあるせいかもしれない。
  参考1:J. Nakanisi Home Page 雑感
  参考2:kikulog
  参考3:食品反全情報blog

産経新聞の主張には、京都議定書 原発へのシフトしかないなどのように、論理的な展開なしに、何故か唐突に結論だけが出てくるケースが時々あるのだが、今回の科学高裁も、是非詳細内容の提案を展開して欲しいものだ。

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2005/05/30

桜開花予想式の精度

MSN-Mainichi INTERACTIVE(5/30)のニュース。桜開花予想:高精度の予測式作りに着手 気象庁

 東京の桜の開花予想について、気象庁は今より精度の高い予測式作りに着手した。今年の開花が予想より3日遅れ、数十件の苦情が殺到したため。同庁観測部の担当者は「3日程度の遅れは許容範囲と考えていたが、甘かった。桜に関連するイベントは多く、開花予想への注目が高いことが分かった」と話す。汚名返上へ向け、過去30年分の膨大なデータの分析に取り組んでいる。

 現在の方法では、東京の場合は2月15日を起算日として、1日の予想平均気温を「成長度」に換算する数式を使って予想する。予想平均気温が15度の日は成長度を1日、18度の日は1.5日などと換算し、起算日からの成長度が積算で19.6日を超える日を開花日とする。同庁は96年にこの数式を導入した際、誤差を3日程度と設定した。

 同庁が今年3月初めに予想した開花日は同28日だった。実際の開花は31日で、誤差は3日に収まった。東京の過去30年の記録では、数式導入前は誤差が最大5日あったが導入後は99年と今年の3日が最大で、同庁は「外れたと思っていなかった」という。

 ところが、予想日前後から「サクラはまだ咲かないのか」などという問い合わせが殺到。同庁だけで数十件あった。

 想定外の反応に、同庁は「東京での誤差は、わずかでもインパクトが大きいことに気付いた」。このため「サクラは冬の気温が高いと開花が遅れやすい」という学説に着目し、冬の平均気温をデータ化して数式に導入する検討を始めた。この方法が有効かどうかの分析には数カ月以上かかるため、結論が出るのは今年末以降になるという。

というものだが、桜の開花や杉花粉の飛散開始は、気温の累積値が何度になると開花する、というような説明を見たような記憶があるのだが、少なくとも気象庁の桜開花予想は単純な累積気温ではなく、少し手の込んだ方法を使って予想しているようだ。

しかし、気象庁のホームページで、東京地方の今年の桜開花予想を改めて調べてみると、第1回予想(2005/3/2) では 3/30、第2回予想(2005/3/9) では 3/29、第3回予想(2005/3/16) では 3/27となっていて、3/28なんて予想は一度も出していないようだが。。

しかし、最も精度が出るはずの最後の発表で誤差が4日と一番大きくはずしてしまったのは事実だ。もっとも、この気象庁の資料では「さくらの予想開花日は、過去の開花日と気温のデータから予想式を作成し、これに、昨年秋からの気温経過と気温予報をあてはめて求めています。」と書かれており、新聞で紹介されている方法とは異なるように読めなくもない。

東京地方 過去の天気予報一覧というデータ収集を行っている身としては、この予想のずれは式の問題なのか、気温の予測精度の問題なのかが気になるところ。(何故か冒頭の記事を読む限りは予測式に問題があるという視点のみから書かれているのだが。。)

色々と探してみたら、みんなでつくろう北東北ふるさと季節前線というページに、さくら開花予想の計算表と、桜の開花予測をやってみようという解説書が掲載されている。どうやら、この表は新聞で紹介されている計算式に準拠しているように見える。

で、この表に実際の東京地方の平均気温の実績値を入れてみた。解説書には、計算の開始日が2/1以外の場合の対処法が書かれていないが、計算開始日を2/15に変え、気象庁の観測データから平均気温を持ってきて入力してみた。結果はワークシートに示したが、温度換算積算値が19.6を越えるのは3/29となった。これは、実際の開花日よりも2日早いということになる。

3月前半に出された予測は3/30、3/29、3/27で実際の開花日が3/31。何とも微妙な話ではあるが、確かに温度の予測の誤差よりも計算式自体の方が影響は大きいのかもしれないが、最終の予測で大きくはずしたのは、3/16以降の気温の予測の誤差が大きかったためではないか?という疑いも残る。

そこで、実績値と7日前予報値の偏差を調べてみると
  3/1~3/15 最高気温偏差平均:-0.98℃、最低気温偏差平均:-1.61℃
  3/16~3/31 最高気温偏差平均:+0.09℃、最低気温偏差平均:-0.09℃
となり、むしろ3月前半の予報が大きく高めサイドに外れていたものの、3月後半は比較的良く一致しているように見える。ということは、やはり気温予測の誤差よりは計算式の精度が問題ということでよいのかもしれない。

なお、平均気温が15℃の日は1日、18℃の日は1.5日というような、温度換算日数の実際の計算方法は、このエクセルの計算式で見てみると
  exp(9500*(t+273.15-288.15)/((t+273.15)*288.15))
となっており、気温15℃を基準として、何故か絶対温度を用いて、無理やり回帰式を作った気配がうかがわれる。いずれにしても、相当に経験的な式のようだから、実はこの9500という係数を変えるだけでも調整可能なような気がしないでもない。

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2005/05/15

約2週間ほど更新はお休み

事情により少しの間、海外に行くことになりました。ネットへの接続もかなり限定されることになりそうですので、2週間程このブログの更新をお休みします。その間、コメントにもすぐにはお応えできないと思いますが、ご了承願います。

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2005/05/13

「バイオマス」

シリーズ「地球と人間の環境を考える」の新刊。このブログでは、今まで
  No.5 エネルギー
  No.7 水と環境
  No.8 ごみ問題とライフスタイル
  No.9 シックハウス
  No.12 これからの環境論

を紹介している。帯には「芋(イモ)からできたプラスチックは、環境にやさしい? いま、注目されるバイオマスの功罪を科学の視点で明らかにする。」とあり、「バイオマス」というと何だか地味な印象があるが、バイオプラスチックに鋭い突っ込みを入れている本のようだ。

シリーズ 地球と人間の環境を考える 10
 バイオマス 誤解と希望
 奥 彬 bk1amazon

著者は有機合成の専門家のようだが、プラスチックリサイクル関係に深く関わっている立場らしい。今はプラスチックのケミカルリサイクルに取り組んでいるらしく、本書の中でもPETやポリカーボネートのモノマーへのケミカルリサイクルについては、比較的高い評価を与えている。それはともかく、本書が主張することはかなり明確だ。

一つは、生物由来プラスチック(BBP)がカーボンニュートラルの考え方からみて優れているとしても、それを使い捨てるような使い方は却って環境に対して悪影響が出る。その理由としては、植物や動物を育てるためにも化石エネルギーを多量に使用していること、それをプラスチックにする過程では石油由来プラスチック以上のエネルギーを使用すること、さらに生分解性プラスチック(BDP)として、使い捨てやポイ捨てを許容もしくは奨励するかのような風潮は、結局エネルギーや資源を無駄使いするライフスタイルを助長するだけであることを挙げている。

二つ目は、地球温暖化対策として、短期的な炭素収支の有利さから、単年性の植物(ケナフ、イモ、トウモロコシなど)を育てる傾向が見られるが、長期的視点に立って森林の回復を行うべきであること。これは、単年性植物を育てるためには、多大なエネルギー、労力や肥料などが必要で、カーボンニュートラルとはならないことや、さらに土地が徐々に痩せ、いずれは荒廃する恐れがあることなどを理由としている。

このブログでも、生分解性プラスチックが地球温暖化対策として高く評価されている最近の傾向に疑問を投げかけてきた。

  難燃性バイオプラPC
  ソニーの植物原料樹脂
  旭化成の生分解性ラップ
  ポリ乳酸は処理が簡単?
  トヨタがバイオプラスチックに本格参入?

マスコミでは、何故かこれらについて、ほとんど批判的なことは書かれないので、ちょっと自分の判断に自信を失いかけていたところだったが、本書は強い味方が現れたという感じである。さすがに会社名はTとかSとかイニシャルになっているが、沢山の具体例をあげてコメントしている。多くの製品例に対して、製品の回収・分別・リサイクルを進めるのが本筋なのに、生分解性を免罪符とし、さらにそれを宣伝文句として使いながら、実際には環境に対してむしろ有害でさえあると厳しく批判している。

また、開催中の愛・地球博の会場で生分解性プラスチックの食器を採用し、これを堆肥化していることについても、これでは一度限りの使いきりであり、どこが環境に優しいのか? と疑問を投げかけている。何度も回収・再利用するのが、環境への負荷を考えた使い方であることは間違いないだろう。

ただし、本書の主張は、議論のたたき台としては非常に有効だと思うし、最終的な結論も一部を除いて納得がいくのだが、途中の論理にはやや問題があるように感じる。というのは、科学的な話と倫理的な話がごっちゃに扱われたり、対象となる問題のタイムスケールが長短混ざり合って混乱している部分があるように思うのだ。

出てくる数字も、自分に都合の良いところだけ持ってきているような印象もある。細かな部分は数値で議論している一方で、著者が提案する持続可能性のある生活に関しては、地球全体でのカーボンバランスがどうなってるのか何も数字が出てこない。現在の石油の用途は、プラスチックに使われる分よりもエネルギー資源として使用されるのが圧倒的に多いのだから、その視点を欠いてしまうと、何だか話がおかしくなってしまうように思う。

本書では、プラスチックを焼却処理して熱エネルギーを回収したり、土に戻してCO2にしたりするのは、最終手段であり、石油由来もバイオ由来も含めて、プラスチックをリユース→リサイクル→マテリアルリサイクル→ケミカルリサイクルと骨までしゃぶりつくすべきだという主張である。これ自身間違っていないのだが、残念ながら、このブログのコメント部分で議論したような、むしろバイオ資源は下手にプラスチックにせずにエネルギー源としてしまう方が効率的ではないか?というような話は出てこない。

本書を読み終えても、結局のところ、どんなバイオ資源をどのように、食料、プラスチック原料、およびエネルギー資源として使用していくのが望ましい姿なのか、については余り語られていないため、全体像をつかもうとしてもやや欲求不満気味ではある。。

ところで、本書では、以下の生分解性プラスチックの使用例に著者が評価を下しているのだが、それぞれ、○か×か、またその理由は何かわかるだろうか? 

  1. 魚網
  2. 疑似餌と釣り糸
  3. 農業用マルチシートとハウス栽培用シート
  4. 生鮮野菜、魚介類の保冷箱
  5. パソコンの筐体
  6. CD
  7. 包装フィルム
  8. 食品用ラップフィルム
  9. レジ袋
 10. 使い捨て食器、食品トレイ
 11. 生ごみ袋
 12. おむつ
 13. 生分解性繊維製品
 14. 自動車部品

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2005/05/12

セイヨウオオマルハナバチとはどんな奴?

YOMIURI ON-LINE(5/12)の記事。輸入ハチから高山植物守れ、北海道大雪山で監視強化へ

 野生化した欧州産のハチが、北海道最大の原生自然を残す大雪山国立公園の直近まで分布域を広げてきた。

 環境省は「公園内の高山植物が生育できなくなる恐れが高い」として、異例の監視活動を始めることになったが、面積約22万7000ヘクタールもある同国立公園のレンジャー(環境省職員)は5人だけ。このためボランティアにも監視活動の協力を求める。

 このハチは、トマトの受粉用に輸入されているセイヨウオオマルハナバチ。花の上から入り込むトマト以外の植物では、花の横に穴を開けて蜜(みつ)を採る「盗蜜」行動をするため、逆に受粉が阻害される。

 ところが、このハチが栽培ハウスから逃げ出す例が各地で急増。特に北海道内では野外の目撃情報が多く、同国立公園まで十数キロ・メートルしか離れていない東川町でも昨年、野生化したセイヨウオオマルハナバチが見つかり、専門家らが「公園内の高山植物は受粉を妨げられ、種子を作れなくなる」と指摘していた。 (後略)

タイトルを見たときは、どうしてハチが高山植物に有害なのか疑問だったが、花に穴を開けてしまうとは、変わったハチだ。そもそも、トマトの栽培のためにわざわざハチを輸入しているものなのか? 世の中には知らないことが色々とあるもんだ。

セイヨウオオマルハナバチで検索してみると、東京大学の保全生態学研究室のセイヨウオオマルハナバチの目撃情報を集めていますというページが見つかった。正に上に引用したニュースで懸念されている事態に対応することを目的としたページで、わかりやすく、詳しい情報が得られる。

セイヨウオオマルハナバチは、ヨーロッパに生息する舌の短いマルハナバチです。日本には温室トマトの授粉に利用するため、原産地のオランダやノルウエーから大量にコロニー(女王を中心とする家族)が輸入されています。マルハナバチを使えば手間のかかる植物ホルモン剤処理をしなくてもトマトを結実させることができるため、農家には大いに歓迎され、本格的な輸入が1992年に始まってからその使用量は急激に増加し続けています。現在、年間3~4万コロニー(推定)が輸入されています。
ということだが、非常に競争力の強い種のようで、植物への影響についても、盗蜜による直接的な影響よりも、在来種を駆逐してしまうことによる間接的な影響が懸念されているようだ。情報提供のお願いを見ると、黄色と黒と白の3色でかなり特徴のあるハチのようだ。読売新聞も、どうせならハチの写真や絵を載せてあげれば良かったのに。。

で、寄せられた目撃情報をまとめたのがこちらで、日本全国にかなり広まっているようだし、環境への影響も、読売新聞で紹介されている高山植物への被害だけでなく、もっと多方面に及ぶものと考えるべき問題のようだ。

ポプラビーチでは、農水省と環境省の対立構造を視点としてこの問題を取り上げている。一方、松永和紀のアグリ話のセイヨウマルハナバチ規制先送りの意味によると、ブラックバスの場合とは異なり、規制に向けた関係者の合意が既にできていて、現在は調整期間中ということのようだ。セイヨウオオマルハナバチは悪いのか?には、このハチが農家にもたらすメリットや、ハチを販売する企業側の努力などについての取材結果が書かれている。

なるほど、この問題は単純な外来生物問題ではないわけだ。最終的にはトマトなどの作物の価格に影響する話であり、環境を守るためのコストを消費者が納得して負担できるようにしなくてはならないようだ。そのためには、もっと積極的な広報・宣伝活動が欠かせないのではないだろうか? なお、最初に紹介したページでは、農業利用には在来種をと呼びかけているが、まだ在来種のマルハナバチを改良中の段階で実用化まではあと一歩というところらしい。

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2005/05/11

満月の日は・・・である

FujiSankei Business i(5/10)の記事。株価揺り動かす「満月」 騰落率平均で10倍

 満月の日は株価変動が大きい-。

 欧米では古くから「満月は人の心を狂わせる」との言い伝えがある。そこで、証券系調査会社の大和総研が「月の満ち欠け」と「株価」の関連性を調べたところ、満月の日の株価変動はそれ以外の日よりも大きいことがわかった。
(中略)
 月の満ち欠けと株価に関する調査では、まず今年3月までの20年間で、日経平均株価の1日当たりの変動を示す騰落率を満月の日とそうでない日で集計した。満月の日は168日あり、騰落率平均はマイナス0・1%だった。これに対し、そうでない日の騰落率平均はプラス0・01%と、満月の日のほうが10倍も大きいということがわかった。

 さらに、新月や上弦、下弦の日とそうでない日でもそれぞれ調べてみたが、平均騰落率は新月がマイナス0・03%、上弦がマイナス0・07%、下弦がプラス0・04%と満月の日ほど大きな騰落率が見られなかった。また、そうでない日との騰落率の開きも満月の日とそうでない日ほど開いていない。このため、大和総研では満月の日は株価に影響を与える何らかの力が働いているとみている。

何だかなあ。これは、典型的な帰無仮説という奴で検定すべき命題だろうから、その統計的な取扱いの結果は、有意水準5%で棄却されるとか、支持されるというような形でまとめられるべきだろう。(参考:統計的検定など) 従って、満月の日とその他の日の平均騰落率を比較しても、満月と株価の関係について何の結論も出たことにはならない。大和総研ともあろう専門家集団がそんなことを知らないわけはないから、これは、単なるウケ狙いなのか、或いは、株式市場関係者が所詮は無知な集団であると見なした上でのミスリード狙いなのだろうか? 

調べてみたら、大和総研 クオンツ情報として公開されている。これを見ると、さすがに統計的に検定を行っており、何と「片側30%の範囲で有意」と書かれている。有意水準片側30%? 両側だったら60%だぞ?? これって完全に棄却されてるんじゃないの?

225の推測によると、この大和総研の調査は結構面白いものが多いようで、サザエさんの視聴率と株価の関係、宝くじの売り上げと株価の関係、インフルエンザの流行と株価の関係、犬の話題と株価の関係、などのような怪しげというか、かなり意識的に話題作りをしているような傾向があるようだ。。

それにしても、「満月の日は○○である。」という説はとても多く存在しているようだから、なかなか目の付け所は良いのかもしれない。ざっと調べてみたら、

  ・満月の日は出産が多い
  ・満月の日は緊急手術が多い
  ・満月の日にはギックリ腰が多い
  ・満月の日は交通事故が多い
  ・満月の日は殺人や放火が多発する

などが見つかる。どうやら「バイオタイド理論」という名前で流行っているようで、「月の魔力」という本が元となっているようだ。この本は読んでいないけど、関連するウエブページを見る限りは、大抵は伝説の域を出ていないようで根拠のないものが多いようだし、統計的に調べている場合でも、発生率の数字の大小を比較しているだけで、いわゆる統計的な検定を行っているわけではないようだ。

これだけでは、これらの命題が正しいのかどうかは判断できない。本当にそうだと主張したいのならば、数学的に確立された手続きを踏んで証明してみればいいだけの話。もちろん、あらゆる事象の発生には多少のばらつきはあるわけで、たまたま発生率の高い時期が満月の時期と重なることがあるかもしれない。しかし、それが月の引力がどうのこうのというような理屈と関係あるのかどうかは、また別の話だけど。。

ただし、少なくとも株価に関して言えば、いわゆる「テクニカル」と称するトレンド分析による将来予測や、経験則に基づく多くの格言などと同様に、理論的な根拠があろうがなかろうが、市場への参加者がそのことを知って行動することにより、(或いは、他の多くの参加者がそのように行動するだろうと予測することにより)、結果としてその影響を受ける可能性もあるので、知っていて損はないのかもしれない。

もっとも、逆というか当然というべきか、月齢と株価の動きには特別の関係は見られなかったという結果もあった。。

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2005/05/10

地震危険度マップ

NIKKEI NET(5/9)の記事。防災研、「地震危険度マップ」をネットで公開

 防災科学技術研究所は9日、地震で強い揺れに見舞われる確率を色分けして示す「地震危険度マップ」の全国詳細版をインターネットのホームぺージで公開したと発表した。鉄道の駅名や市町村名を入力すれば、自宅や勤め先が強い揺れに襲われる確率が地図上に色違いで表れる。

 ホームページはhttp://www.j-shis.bosai.go.jp

 マップは強い揺れが想定される確率を、5段階で1キロメートル四方ごとに色別に表示している。

 例えば「大手町駅」(東京都千代田区)と入力して検索した場合(左図)、大手町駅が十字マークで地図上に示される。その色により、30年以内に震度6弱の揺れに見舞われる確率は「6%以上26%未満」(約500年から約100年に1回発生)であることが分かる。

 その右側、海寄りには浅草など、より色の濃い「30年以内の発生確率は26%以上」(約100年に1回以上発生)の地域が広がっている。

ということで、早速、地震ハザードステーションにアクセスしてみた。何はともあれ、国の公的機関が日本全国の地震の発生確率をここまで具体的に公表したことに感心させられる。この手の情報は、受け取り方によっては、土地価格の変動などを含め、社会的な影響力が大きいように思えるので。

もっとも、震度5以上の地震が今後30年以内に起きる確率を色分け表示させてみると、ほとんど日本全体が真っ赤になってしまうくらい、日本は地震大国だから、今さら地震の発生確率が公表されてもあまり驚かないのかもしれない。あるいは、震度6以上で見ると四国から静岡あたりにかけての太平洋岸が特に高確率を示しているのだが、例えば最近大きな地震が起きた新潟や福岡辺りの確率はさして高くないようなので、所詮は確率、あまり当てにはならないじゃないのとも言えるのかもしれない。

それにしても、このマップは誰を対象として公表したものなのだろう? 地震動予測地図解説書には、かなり詳細な解説が記載されているし、用語解説もそれなりに充実しているけど、どう見ても一般国民を相手に理解を求めるような記載はされていないようだ。

それでも一通り目を通してみると、このマップの元となる地震の震度予想は、2種類の方法で行われているようだ。二種類の地震動予測地図によると、一つは「震源断層を特定した地震動予測地図」であり、もう一つが「確率論的地震動予測値図」。前者は、既に判明している特定の断層(全国98か所)で想定される地震が起きた場合の各地域の揺れを計算したもので、後者はそれも含めた多種多数の地震発生モデルから各地の地震の震度とその発生確率をモデル計算したもののようだ。

1km四方の領域ごとに確率が出てくるので、自宅近辺で揺れの大小を比較したりすることもできる。だが、それをどう活用するべきなのだろう? この手の確率的な数値を有効に活用できるのは、集団への影響を考慮する必要のあるケース、例えば地震保険の保険料の算出をする保険屋さん、地震時の被害を推定して対策を立案する自治体関係者、周囲への影響の大きな施設の立地を検討する環境アセスメント屋さんなどだろう。

たとえば、一個人が自宅の立地を検討する際に、この数値を参考にすることはできたとしても、発生確率の低い場所を選んだからといって、それに見合ったメリットを必ず受け取れる保証はないわけで、なかなか判断に迷う所だろう。手術の成功確率などもそうだが、確率的な事象に対して、個人がたった一度の意思決定をする場合につきまとう問題と言えるだろう。

ということで、この地図は眺めてみるのはそれなりに興味深いし、ある種の人たちや行政にとってはとても有益なものだろうと思うのだが、一個人にとっては、だからどうなのよ、というようなある種の諦観をもたらさないでもない。

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2005/05/07

ココログ16か月

ココログを始めて1年と4か月が経過。カウンターは、この1か月で10500程度とかなりペースダウン。この間ゴールデンウィークもあって、休日が多かったこともあり、記事の更新数も少なかったことも影響しているようだ。だが、最近は平日のアクセス数も減少しているようだ。

 1か月目:900
 2か月目:4500
 3か月目:11700
 4か月目:19000
 5か月目:32300
 6か月目:43500
 7か月目:54500
 8か月目:72000
 9か月目:87700
 10か月目:105400
 11か月目:125400
 12か月目:140600
 13か月目:163000
 14か月目:179300
 15か月目:194700
 16か月目:205300


この1か月の、Ninjaツールの集計によるアクセス解析結果は、(あまり当てにならないけど)

(1)リンク元
 1位 bookmark (お気に入りに入れてくれた方) 全体の27%(前回1位)
 2位 http://search.yahoo.co.jp (ご存知ヤフーサーチ) 全体の8%(前回2位)
 3位 http://search.msn.co.jp(MSNサーチ) 全体の2%(前回4位)
 4位 http://www.google.co.jp (グーグル) 全体の2%(前回6位)
 5位 http://a.hatena.ne.jp 全体の2%(前回3位)

(2)検索キーワード
 1位 過去の天気予報(前回31位)
 2位 青色発光ダイオード(前回3位)
 3位 レーザーポインター(前回2位)
 4位 フラーレン(前回22位)
 5位 合計特殊出生率(前回14位)
 6位 献血(前回8位)
 7位 岩盤浴(前回4位)
 8位 発光ダイオード(前回60位)
 9位 水質検査(前回20位)
10位 キャッサバ(前回1位)
11位 天気予報(初登場)
12位 過去の天気(初登場)
13位 ETBE(前回21位)
14位 過去(初登場)
15位 虹彩(前回)

東京地方の過去の天気予報の蓄積を行っているが、その関連のキーワードがトップに来た。今のところ、過去の天気予報データが見られるのは、多分ここだけなので、どの検索エンジンでも「過去の天気予報」で検索すると、上位にランクされている。

この1か月はアクセス数も減少したためか、リンク元やキーワードにも少し変化が見られるようだ。

このブログは、主として興味を引くニュースなどをネタに、インターネットから様々な情報を入手して、自分なりに調べた結果を記事にしてきているが、最近はちょっとネタに詰まることも多くなってきた。本業の方も少し忙しくなってきて、今後は出張などもあり、定期的な更新は難しそうだ。ということで、自分の勉強という観点からもできるだけ更新をしていくつもりだけど、非定期更新となる予定なので、よろしく。

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2005/05/06

「光触媒とはなにか」

最近は、光触媒という言葉も随分と一般的になり、色々な用途で様々な製品に実用化されている。しかし、その一方で本当に光触媒機能を発揮するのかどうか、さすがにウソじゃないのと思うようなケースも見られるように思う。もっとも、このブログでも関連するコメントを書いたりしている割には、実は光触媒についてきちんと書いてある本を読んだことはなかった。

本書はサブタイトルが「21世紀のキーテクノロジーを基本から理解する」となっており、触媒について、光励起について、光触媒について、ホンダ・フジシマ効果についての説明にそれぞれ1章ずつを割いており、正に光触媒を理解するための基本的な知識をきちんと説明しているように思える。

講談社 BLUE BACKS
 光触媒とはなにか
 佐藤 しんり 著 bk1amazon

著者の佐藤しんり氏は、1978年から光触媒の研究をしてきたこの道の専門家。サトシンの光触媒のページを開設しており、ここでも一般向けのわかりやすい説明が展開されている。

本書では、酸化チタン光触媒の反応機構としてよく使われる「ヒドロキシラジカル」による酸化反応機構を明確に否定している。それが証拠に水がなくて酸化反応が進むこと、さらに水が存在しても反応が促進されないことを指摘した上で、この反応は「原子状酸素」によるものであるということを、他にも具体的な証拠を上げて説明している。

そもそも、酸化チタンの光触媒反応にヒドロキシラジカルが関与しているという「誤解」のルーツは、著者の調査によると 1995年にカリフォルニア工科大学のホフマン教授らの書いた総説らしい。

本書では、光触媒による酸化反応のメカニズムを丁寧に説明するだけでなく、通常の触媒反応との違いを踏まえて、その研究の難しさや、それ故に巷に蔓延している誤解についても解説している。説明は非常にわかりやすい部分と、妙に専門的で具体的な説明を省略した部分が同居しているようで、何度か読み返してみる必要のある部分もないではないが、総じて信頼できる本と言えるのではないだろうか。

例えば、現在の酸化チタン系の光触媒が実際に反応させることのできる量は決して多くはなく、これを塗布したパネルで表面の汚れを除去するような用途には非常に有効ではあるが、大量の大気を浄化するような応用は最初から無理であることや、当然のことながら、魔法のように都合のよい反応を起こすような特別なものではないことも指摘されている。

一方で、超親水性と光酸化反応を活かすことによって、非常に効果的な応用がなされているのは事実であるし、今後ますます応用が進んでいくだろう。しかし、メカニズムが完全に解明されていないという現状につけ込むかのように、事実をベースにした怪しい理論的仮説に基づいた怪しい製品が出回っていたりするので、理論の面でも製品の面でも、本物と偽物の区別をきちんとする必要があるようだ。

また、本書を読んで初めて知ったのだが、いわゆるホンダ・フジシマ効果(光による水の電気分解)を個々の触媒粒子で実現させたとも言える「光電気化学型光触媒」と呼ばれるものがある。具体的には白金つき酸化チタン光触媒がその実例で、粉末を水に濡らして光を当てると、本当に水が電気分解されて、水素と酸素が出てくるようだ。これは実に面白い発想だと思う。もっとも、現実には色々な制約もあって、実用的に使えるレベルにはならないようだが。。

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2005/05/02

4月の天気予報の傾向

先月、天気予報の的中率と過去の天気予報で、天気予報の的中率などを統計的に解析するために、東京地方の天気予報を保存して貯め込み始めたことを紹介した。こちらのサイトでその後も順調にデータの採取と保存が続いている。

これで、3月分と4月分のデータがフルに集まったので、ちょっと眺めてみると、4月は季節が冬から初夏まで一気に変わった月でもあり、かなり天気予報も苦戦したようだ。何しろ、最高気温の振れ幅が、9.9℃(4/12)から28.1℃(4/29)まで18℃以上もある。最高気温と最低気温の予報の的中率を見てみると、前日の予報はそこそこ的中しているのだが、2日前の予報値だと既に実績値との相関係数が 0.5~0.6程度まで下がる。3月と比べると、特に2日前や3日前の予報の的中率の低さが目立つようだ。

さて、天気予報データを貯め込んでいて気づいたのだが、やけに「晴れ 時々 くもり」という予報が多いような気がする。ということで、天気予報と降水確率の出現頻度を集計してみた。これ がその結果。確かに、「晴れ 時々 くもり」が41%を占めている。第2位の「くもり 時々 晴れ」が17%であり、これらを合計すると58%になる。まあ、たまたま4月の東京の天気は「晴れ」or「くもり」と予報しておけば、ほぼ当たるような天候だったのだろうけど、実は3月も同様の傾向があったようだ。

よくわからないのは、「晴れ 一時 くもり」や「くもり 一時 晴れ」という予報が、調べた範囲では一度も出てこないこと。「くもり 一時 雨」という予報は時々出されているので、もしかして「一時」というのは「晴れ」や「くもり」に対しては使わないルールなのだろうか?

気象庁の子供向けの「はれるんランド」の中では、どうして天気予報では「ときどき」をつけるの?によると、「時々」は半分以下、「一時」は4分の1以下を目安として使用しているようだが、「一時 雨」や「時々 晴れ」があるのに、「一時 晴れ」がない理由は見当たらなかった。。

降水確率についても、こうやって傾向を見てみると、3日前以前の予報では 10~60%という数値しか出されていない。梅雨になればまた傾向が変わるのかもしれないが、あらためて並べてみると色々と面白い発見があるものだ。

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