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2005/05/12

セイヨウオオマルハナバチとはどんな奴?

YOMIURI ON-LINE(5/12)の記事。輸入ハチから高山植物守れ、北海道大雪山で監視強化へ

 野生化した欧州産のハチが、北海道最大の原生自然を残す大雪山国立公園の直近まで分布域を広げてきた。

 環境省は「公園内の高山植物が生育できなくなる恐れが高い」として、異例の監視活動を始めることになったが、面積約22万7000ヘクタールもある同国立公園のレンジャー(環境省職員)は5人だけ。このためボランティアにも監視活動の協力を求める。

 このハチは、トマトの受粉用に輸入されているセイヨウオオマルハナバチ。花の上から入り込むトマト以外の植物では、花の横に穴を開けて蜜(みつ)を採る「盗蜜」行動をするため、逆に受粉が阻害される。

 ところが、このハチが栽培ハウスから逃げ出す例が各地で急増。特に北海道内では野外の目撃情報が多く、同国立公園まで十数キロ・メートルしか離れていない東川町でも昨年、野生化したセイヨウオオマルハナバチが見つかり、専門家らが「公園内の高山植物は受粉を妨げられ、種子を作れなくなる」と指摘していた。 (後略)

タイトルを見たときは、どうしてハチが高山植物に有害なのか疑問だったが、花に穴を開けてしまうとは、変わったハチだ。そもそも、トマトの栽培のためにわざわざハチを輸入しているものなのか? 世の中には知らないことが色々とあるもんだ。

セイヨウオオマルハナバチで検索してみると、東京大学の保全生態学研究室のセイヨウオオマルハナバチの目撃情報を集めていますというページが見つかった。正に上に引用したニュースで懸念されている事態に対応することを目的としたページで、わかりやすく、詳しい情報が得られる。

セイヨウオオマルハナバチは、ヨーロッパに生息する舌の短いマルハナバチです。日本には温室トマトの授粉に利用するため、原産地のオランダやノルウエーから大量にコロニー(女王を中心とする家族)が輸入されています。マルハナバチを使えば手間のかかる植物ホルモン剤処理をしなくてもトマトを結実させることができるため、農家には大いに歓迎され、本格的な輸入が1992年に始まってからその使用量は急激に増加し続けています。現在、年間3~4万コロニー(推定)が輸入されています。
ということだが、非常に競争力の強い種のようで、植物への影響についても、盗蜜による直接的な影響よりも、在来種を駆逐してしまうことによる間接的な影響が懸念されているようだ。情報提供のお願いを見ると、黄色と黒と白の3色でかなり特徴のあるハチのようだ。読売新聞も、どうせならハチの写真や絵を載せてあげれば良かったのに。。

で、寄せられた目撃情報をまとめたのがこちらで、日本全国にかなり広まっているようだし、環境への影響も、読売新聞で紹介されている高山植物への被害だけでなく、もっと多方面に及ぶものと考えるべき問題のようだ。

ポプラビーチでは、農水省と環境省の対立構造を視点としてこの問題を取り上げている。一方、松永和紀のアグリ話のセイヨウマルハナバチ規制先送りの意味によると、ブラックバスの場合とは異なり、規制に向けた関係者の合意が既にできていて、現在は調整期間中ということのようだ。セイヨウオオマルハナバチは悪いのか?には、このハチが農家にもたらすメリットや、ハチを販売する企業側の努力などについての取材結果が書かれている。

なるほど、この問題は単純な外来生物問題ではないわけだ。最終的にはトマトなどの作物の価格に影響する話であり、環境を守るためのコストを消費者が納得して負担できるようにしなくてはならないようだ。そのためには、もっと積極的な広報・宣伝活動が欠かせないのではないだろうか? なお、最初に紹介したページでは、農業利用には在来種をと呼びかけているが、まだ在来種のマルハナバチを改良中の段階で実用化まではあと一歩というところらしい。

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