日本の子どもの死亡率は最悪?
asahi.com(5/31)の記事。日本の1~4歳児の死亡率 先進国の3割増で「最悪」
長寿命を誇る日本だが、1~4歳児の死亡率は先進国の平均より3割高く、実質的に「最悪」なことが厚生労働省の研究班の調査でわかった。原因ははっきりしないが、主任研究者の田中哲郎・国立保健医療科学院生涯保健部長は「小児救急体制が十分に機能していないのかもしれない。医師の教育研修なども含め、幼児を救う医療を強化する必要がある」と指摘する。タイトルが刺激的なこともあり、パッと読むと日本の小児医療に大きな問題があるように思えるのだが、この記事は相当に引っ掛け問題的な書き方がされている。ポイントは「1~4歳児」というところ。確かに最後の段落では、「0歳児」についても触れており、0歳児の死亡率は日本は世界トップクラスの低さなのだが。国内総生産(GDP)上位20カ国のうち、世界保健機関(WHO)の統計資料がない中国、韓国、保健医療面で遅れるメキシコ、ブラジルなどを除いた14カ国で主に99年のデータを比べた。
年間の死亡率を10万人当たりで見ると、日本の1~4歳児は33.0人で、ほかの13カ国平均より3割多く、米国(34.7人)の次に高い。米国は他殺(2.44人)の占める割合が大きく、この分を除くと、日本が最悪になる。最も低いスウェーデンは14.3人。
病気別には、先天奇形や肺炎、心疾患、インフルエンザ、敗血症などが13カ国平均に比べ高い。不慮の事故は、平均とほとんど変わらなかった。
ほかの年齢層の死亡率は、すべての層で13カ国平均より低く、全体では10万人当たり783人で、13カ国平均より15%低い。0歳児については340人で、13カ国平均の約3分の2で、スウェーデン(337人)に次いで低い。新生児医療の整備が大きいとされる。
ちょっと整理してみよう。日本の最新の死亡率統計は、平成15年簡易生命表で入手できる。これによると、各年齢の人口10万人当たりの死亡数は
男性 女性
0歳 308 287
1歳 38 36
2歳 28 26
3歳 21 19
4歳 17 15
5歳 16 12
10歳 9 8
20歳 55 25
30歳 76 37
40歳 150 74
50歳 377 177
60歳 901 367
70歳 2234 934
80歳 5980 3027
となっており、全体で見ると死亡率は0歳で高く、その後徐々に低下していき、10歳前後を最小として、再び増加に転じるという傾向がある。その意味では1~4歳を問題にする意味もあるだろうと思う。実際、従来の統計では、例えば世界の主要国の死亡率の比較のように、乳児(=0歳児)死亡率という観点や、年齢階級別死亡率推移のように、0~4歳を一まとめにした資料しかなかったようだし。
しかし、他の国と比べて1~4歳の死亡率が高いから小児救急体制に問題があるというのは、直感的には納得しにくいものもあるし、早計かもしれない。もちろん、まだまだ改善の余地があるということだろうが、もしかしたら、他国では0歳で死亡してしまうような子が、日本では1~4歳になってから死亡しているのかもしれないし。。
なお、新聞記事の数値、0歳児の340や、1~4歳児の33人は、古いデータのようで、上記平成15年の数値では、男女単純平均すると、0歳児で298、1~4歳児で25となる。また、各国比較でも2001年の乳児死亡率はスウェーデンよりも日本の方が明らかに低いので、最新のデータで比較すると、既に問題は解決しているのかもしれない。。(まさか、意識的に古いデータで比較しているんじゃないんだろうね?)
*それにしても、全年齢で女性の死亡率が男性の死亡率を大きく下回っており、特に20歳以上では、半分以下というのには改めて驚かされる。。。
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