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2005/06/30

「リスク眼力」

著者の小島正美さんという名前は、毎日新聞の署名記事で何度か目にしており、特にBSE問題を調べた時にみつけた資料に中々面白いことを書く新聞記者がいるもんだ、ということで記憶に残っている。毎日新聞の署名記事というのは、記事を書いた記者の顔が見える(気がする)ことや、何となく親近感を覚えるという点でも高く評価できるのではないだろうか?

北斗出版
 リスク眼力
 小島 正美 著 bk1amazon

本書は、身の回りのさまざまなリスクを複眼的に見ること、特にリスクとベネフィットを考慮することによって、バランスよく評価しようという主旨で書かれた本である。著者が現役の新聞記者ということで、本書で主張している著者の意見と、著者が所属する毎日新聞の主張が必ずしも一致しているわけではない点も透けて見えるのが、面白いというか悲しいというか。。ネットを探してみたら、著者が毎日新聞に書いたコラムがみつかったが、これは本書のダイジェスト版のような内容となっている。

本書で扱っているリスクは非常に多岐にわたる。1章から順に、自殺、過労、うつ、子どもの脳、24時間社会、抗菌グッズ、性感染症、協和香料事件、米、ヒジキ、マグロ、ポテトチップス、環境ホルモン、ダイオキシン、農薬、遺伝子組み換え作物、BSE、病気などについて、総じて社会一般で言われているような「危険」という一面的な見方に対して、もっと多面的に見る必要があるという立場から書かれている。

特に目立つのが、消費者の利益を守るためと称して取られる対策が、むしろ労働者の健康や経済を犠牲にして成り立っているのではないか?という視点。これは、いわゆる科学系のリスク本ではあまり見られない論点であり、例えばBSE対策によって日本の外食産業が苦境に立っており、それに関連する仕事をしている多くの人たちの生活が脅かされていること、遺伝子組換え作物により逆に農薬の使用量が減ったり過酷な農作業が減ることにより生産者に確かなメリットがあること、24時間社会のメリットの裏側で心身をすり減らして働いている人たちの心身の健康が蝕まれていること、などを例に上げている。

危険か安全かという二分論ではなく、リスクの大きさをきちんと考慮する必要があるということを明確にしていることや、毎日新聞を含めて新聞が危険性だけを強調しがちな傾向があるという問題点を指摘している点など、著者の立場や過去の経歴などを考えると非常に高く評価できる本である。(参考:中西準子さんの雑感

ただ、本書全体を通して統一された物の見方や考え方が確立されているか、というとまだそこまでの境地には達していないように感じる。あのゲーム脳仮説(?)を真に受けているような点も気になるけど、それ以上に、環境ホルモン、ダイオキシン、農薬、あるいは化学物質過敏症についての部分などは、どう見てもBSEに関する主張と比べると切れ味が悪い。まあ、フタル酸エステルとフタル酸、スチレンダイマーとスチレン、などをごっちゃにして記載している点から見ても、著者は化学が得意ではないと思われるのだが。。(これは化学を知っている人間から見るとちょっと許しがたい間違いである。)

また、個々の事例を全体の中できちんと位置付けをしてから評価すべきである、という主張がなされる一方で、その全体というのがあくまでも日本国内の現役世代だけで留まっている点もやや残念な点である。日本人は既に世界一の長寿を誇っているのに、なお独りよがりに自分たちの健康で豊かな生活のために、世界全体や将来世代にいろいろな迷惑を押し付けているのではないか?という視点を取り入れたら、もっと過激な結論に到達しただろうに。。 それと、人間はいずれ必ず死んでしまう、という視点も欲しかった。

なお、本書の冒頭で

 危険(ハザード)とリスクは違うというわけだ。リスクは健康被害など自分にとって望ましくない現象が生じる確率のことを指す。
と述べており、それ以降もリスクとは確率であるという定義で話が進んでいるのだが、これはどうだろうか? 日常的に頻繁に起きるけれども被害が小さい事象はリスクが大きいとは言わないのが普通である。リスクの現在最も一般的な定義は、ある事象の被害の大きさとそれが起きる確率の積のことであると思うのだが。。

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2005/06/29

グリシンで睡眠の質が改善

日経バイオテクニュースの記事(6/29)から。味の素、慈恵医大、太田睡眠科学セ、就寝前のグリシン3g摂取が睡眠問題を改善

 東京慈恵会医科大学精神医学講座の山寺亘講師は、就寝前のグリシン3g摂取が、睡眠問題を改善する効果を発揮しうることを11人を対象にした単盲検クロスオーバー試験で確認した。終夜睡眠ポリグラフ検査(脳波測定)や起床時および日中のアンケート調査、日中作業効率試験を、太田睡眠科学センター(川崎市、佐々木三男所長)で実施した。
というもの。味の素のサイトにアミノ酸“グリシン”の「睡眠の質」改善効果(第2報)というプレスリリースが掲載されている。普段、眠りに問題を感じている人が、睡眠前にグリシン3gを含む錠剤を飲んでから寝たら、眠りの質が改善し、睡眠中の脳波にも変化が出たとある。また、眠りに問題を感じていない人に無理やり短時間睡眠をさせた時にも、グリシンの摂取の有無で注意力等に差が出たようだ。

プレスリリースには、対照実験をどう行ったのかが書かれていないが、新聞記事には「単盲検クロスオーバー試験」とあるから、それなりに管理された実験のようだ。第2報とあるので、過去の分を検索してみたら、2004/9/14のプレスリリースが見つかった。これも同等の実験を行った結果が載っているが、マウスにもグリシンを投与して作用機序の検討を行っているようだ。

アミノ酸については、味の素のアミノ酸大百科が充実しているようだが、今話題ののBCAA(分岐鎖アミノ酸:バリン、ロイシン、イソロイシン)などについては詳しいのだが、グリシンについては、非必須アミノ酸ということもあって、ほとんど解説もされていないようだ。Wikipediaには、人間の必須アミノ酸の中で最も単純な形を持つ、と書かれている一方で、生体内ではセリンから生合成される、と矛盾した記載がされているが、グリシンは人の必須アミノ酸ではない。(ネット上では、グリシンは「人間の必須アミノ酸の中で、最も単純な形を持つアミノ酸」と書いてあるサイトがいくつか見つかる。)

グリシンは多くのたんぱく質に少量は含まれているようだが、例えばエビ二枚貝のエキスなどに多く含まれていたり、コラーゲンに比較的多く含まれているようだ。なお、その安全性については、「健康食品」の安全性・有効性情報に記載があるが、元々いろいろな食品に含まれているし、体内でも合成される成分だから、怪しげな健康食品に比べれば安全性の問題はないと言っても良いだろう。

このように、グリシンは日常の食生活で誰もが摂取しており、なおかつ人体にも普通に含まれているだけでなく、体内で合成される成分である。全く新規な成分の場合とは異なり、このように普通に摂取し、なおかつ体内で合成しているような成分を、サプリメントのように追加で摂取した場合の効果を確かめる場合には、コントロールが難しそうに思われるのだが。。 もともと、現れる差は微妙のようだし、当日にエビを沢山食べた人はぐっすり眠れたりするかもしれない。

ちなみにアミノバイタルゼリードリンクには、アラニン、プロリン、グリシンなどのアミノ酸が合計1500mg含まれているようだが、さすがにグリシン3gというのは結構な量なのかもしれない。。 各種アミノ酸製品の成分を比較しているアミノ酸製品徹底比較を見ても、グリシンを大量に含むものは少ないようだ。

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2005/06/28

18金のお風呂の厚さは?

Sankei Web(6/28)の記事。黄金風呂のホテルはいかが 18金製、1億2000万円

 黄金風呂でぜいたく気分はいかが―。貴金属販売の田中貴金属ジュエリー(東京)は28日、50キロの18金で作った浴槽をホテル三日月グループ(千葉県)の3ホテルに納入すると発表した。価格は1つ1億2000万円。各ホテルとも男性用、女性用1つずつで、合計6つの浴槽を今年11月までに納める。

 浴槽は、内側が縦1メートル10センチ、幅60センチ、深さ55センチ。板状にした金に圧力をかけて整形した。外側は体重や水圧に耐えられるように、格子状のステンレスで覆った。

 黄金風呂が設置されるのはホテル三日月グループの「龍宮城スパ・ホテル三日月」などで、小高志年司(おだか・しとし)社長は「明るい話題を提供したくて設置を決めた。ホテルの宿泊客数が5―10%増えてくれればいい」と笑いながら説明した。

というもの。何か以前のバブル時代を思わせるような景気の良い話ではあるが、それにしてもすごい値段だ。どのくらいの量になるんだろう?

金の価格が現在、約1650円/gなので、1億2000万円ということは、加工賃は無視できるとして、純金として約72kg。18金というのは、ここにもあるように、金の純度が18/24=75重量%の合金のことだから、合金の質量はざっと100kgということになる。

***後で見たら新聞記事の中で「50kg」って書いてあるじゃないの!! ちゃんと記事を読もうね。。。

ちなみに、18金のうちの残り25%が銅だとすると、銅の原子量が63.5、金の原子量が197なので、原子比で見ると金の割合は何と半分以下の49%となってしまう。うーむ、これってトリビア??

さて、18金の比重を約15とすると100kgの18金の体積は約6700cm3となり、浴槽を直方体と仮定して厚さを求めると約 2.6mm となる。(表面積 25300cm2(底面:1×6600cm2、側面:2×6050+2×3300cm2))さすがに薄いな。。18金のインゴットからプレスで成形するみたいだけど、なかなかすごい技術かもしれない。

***18金の量が100kgではなくて、50kgだということで、厚さも半分の1.3mmになる。よく考えてみると、スチールなんかだと、厚さが数mmというのは特に薄いとは言えないだろう。でも、金は柔らかいイメージがあるから、この浴槽がどんな剛性を持っているのか興味のあるところだ。

18金は純金よりは固いようだけど、さすがに2.6mmだと比較的容易に変形してしまいそうだ。ということで、ステンレスでサポートしているのだろうけど、いたずらされて凹んだり、穴開けられたりしないんだろうか? 熱伝導度が良さそうなのが、お風呂の入り心地にどう影響するのかも興味があるところだ。裏側をきちんと断熱しないとものすごく冷めやすそうだし。。

調べてみると、このホテル、ブロンズコレクションなんてのもあって、結構キンピカが好きみたいだ。 同じことを考える人はいるもので、既に湯川温泉の高繁旅館和倉温泉の金波荘などに金の風呂があるようだが、これらは金のタイル貼りのようで、今回のは金ムクの一体物というところがすごいかもしれない。。

***で始まる段落は後で書き込んだもの。

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2005/06/24

最新の電気二重層キャパシタ

日経新聞(6/24)の朝刊の記事。Webには掲載されていないようだ。

次世代電源キャパシタ 蓄電量10倍、充電も速く、パワーシステムが開発 ハイブリッド車向け

 パワーシステム(横浜市、寺尾一郎社長)は、短時間で充電が可能な次世代電源「キャパシタ」の性能を高める技術を開発した。蓄電量(エネルギー密度)は従来の十倍。ハイブリッド自動車に搭載している電池と置き換えて使えば、燃費改善につながり、電源の寿命も向上する。今秋から自動車メーカー向けにサンプル出荷する計画。

 佐賀大学の芳尾真幸名誉教授と共同で開発した。

 電極の炭素系材料の表面をナノテクノロジー(超微細技術)を応用して加工した。電極の表面積が拡大して性能が向上した。現在使われている活性炭電極と比べ、エネルギー密度が1キログラム当たり20ワット時と十倍に向上した。特別な材料を使わないため、従来のキャパシタと同程度のコストで製造可能という。

 ガソリンエンジンと電気モーターを併用するハイブリッド車の電源には現在30キログラム程度の重さのニッケル水素電池が主に使われている。従来のキャパシタを使うと重さ200キログラムになってしまう。今回の成果でニッケル水素電池とほぼ同レベルに軽量化でき、搭載できるようになる。

 ニッケル水素電池は充電に1時間程度かかる。一方キャパシタは約1分間で充電でき、自動車減速時に発生するエネルギーを電気として効率よく蓄えられる。その分、燃費が改善する。

 また、普通の電池と異なり、化学反応を伴わず蓄電するため、充放電を数十万回繰り返しても容量が低下せず、寿命が長い。生産から廃棄までに排出する二酸化炭素もニッケル水素電池の五十分の一に抑えることができるという。

単にキャパシタと書いてあるが、高容量ということだし、電気二重層キャパシタだろうか? 活性炭の表面積を10倍に拡大したのだとすると、これはすごい技術なのではないだろうか? パワーシステムのホームページには、このニュースに該当する記事は掲載されていないようだが、既存の製品は、やはり電気二重層キャパシタで、単セルエネルギー密度は 6.5Wh/kg とある。 ということは、新聞記事の「エネルギー密度が 20Wh/kg と10倍に向上」というのは、少なくともいわゆる「当社比」という奴ではなく「他社比」なのかもしれない。。

どうやらここの電気二重層キャパシタは、ECaSSフォーラムの成果らしい。このサイトに、詳細な電気二重層キャパシタの解説記事が掲載されている。これは、キャパシタ単独ではなく、専用の制御回路を含めたシステムとして性能向上を行ったものらしい。

関連記事を探してみると、オムロンのプレスリリース(2004/4/26)が見つかったが、この中には目標のエネルギー密度として、2004年度中に 40Wh/kg(ニッケル水素電池の実効容量)、2005年度中に 60Wh/kgとなっている。うーむ、今回の 20Wh/kgというのはどういう位置づけと考えるべきなのだろう? また、このリリースの解説によると、現在市場で最も蓄電量の高い電気二重層キャパシタの容量が 5Wh/kgとなっており、既にその12倍の容量(=60Wh/kg)に到達していると書かれている。

なるほど、電極に2つのタイプがあって、活性炭キャパシタタイプの場合には

活性炭キャパシタの電極はカーボンを高温で分解させ、多孔質化させることで電気となるイオンを吸着できる細孔を設けています。活性炭キャパシタは出力密度が高いのが特長ですが、電極の作製法上、容量に寄与できない細孔ができるのでエネルギー密度の向上には限界があります。
とあり、そのエネルギー密度は 6~12Wh/kgとある。一方、ナノゲートキャパシタタイプは
ナノゲートキャパシタの電極は、電解液のイオンが自らカーボンに穴をあけることによって生成されています。ナノゲートキャパシタは活性炭キャパシタと異なり、イオン自ら細孔を作るため、容量に寄与しない細孔ができないことや、イオンサイズに合致した細孔を設けることが可能となり、高いエネルギー密度を得られることが特長です。
とあり、エネルギー密度は 20~60Wh/kgとある。今回発表となったものは、どうやら後者のもののように読めるな。なお、ナノゲートについては、アドバンスト・キャパシタ・テクノロジーズの説明によると、日本電子が開発した技術のようだ。

既に、日産ディーゼルのハイブリッドトラックが電気二重層キャパシタを使用しており、組み込みネットの解説によると、エネルギー密度は 6.3Wh/kgらしい。また、ホンダの燃料電池 FCX も同様なキャパシタを採用している。一方、ホンダやトヨタのハイブリッド車やトヨタの燃料電池車は今のところニッケル水素電池を採用しているようだ。電池の方もまだまだ改良されていくだろうし、この分野の開発競争は今後とも注目に値しそうだ。

ということで、確かに電気二重層キャパシタの技術面で大きな進展があったのだろうと思うし、今後の実用化に期待したいところだが、こうやって調べてみると、エネルギー密度の数値は様々で、今一スッキリとはしないものの、いずれにしても日経の記事にある「容量20Wh/kgで従来の10倍」というのはちょっとどうかと思う記載のようだ。。

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2005/06/23

酸素・水蒸気透過性マニキュア

asahi.com(6/22)の記事。つめに優しいマニキュア素材開発 酸素・水蒸気を透過

 従来の25倍の酸素を通すマニキュアの新素材を化粧品のコーセーとコンタクトレンズメーカーのシードが共同開発した。両社が22日発表した。8月にもこの素材を使った新商品が発売される。拡大するマニキュア市場で「つめの負担を大幅に軽減できる」をうたって、売り上げ拡大をめざす。

 コンタクトレンズと同じアクリル系・シリコン系樹脂を用い、水蒸気も従来の3.8倍を透過させるという。従来のマニキュアは、つめの成分の7~12%を占める水分の蒸散を妨げ、利用者に圧迫感を与えることもある。

 ただ、製造コストも約15倍と高い。当面は高価格帯のブランドを中心に、従来素材に混ぜる形で製品化する。

爪は酸素や水蒸気を大気とやり取りしているんだろうか? 爪って死んで角質化したものだと思っていたのだが。。コーセーのプレスリリースには、従来のネイルエナメル素材であるニトロセルロースは、「水蒸気透過性や酸素透過性が低いため、閉塞感があり、爪への大きな負担になっていました。」と書かれているが、具体的に酸素や水蒸気の透過性がどこにどう影響するのか、については何も書かれていないようだ。

爪が呼吸するのか? というのは FAQ らしく、あちこちに記載が見つかるが、例えばここここなどにあるように、やっぱり爪の細胞そのものが直接呼吸したり、酸素を必要としているということはなさそうだ。また、爪の下にある細胞が爪を通して酸素や水蒸気を大気とやり取りしている、という可能性も低そうだ。

ちなみに、医学都市伝説や、皮膚呼吸って何?に書かれているように、人間は皮膚呼吸をしていないというのも、意外と知られていないことのようだ。

では、この製品は全く無意味なものなのか? わざわざ酸素透過性や水蒸気透過性を大幅に向上させた新規マニキュアを開発したのだから、何らかの具体的なメリットがあるんだろうと考えたいのだが、何しろ開発したメーカーが「爪への負担を軽減」という、何とも抽象的な効果しか宣伝していないので、何とも。。。 

あいにくとマニキュアをしたことがないので、具体的にどんな負担を感じるのかわからないが、はっきりと「気のせい」と書いてあるサイトも多いようだ。 もっとも、先に紹介したサイトにもあったが、風呂上がりに爪が柔らかくなるのはよく経験することだし、酸素透過はともかく、水蒸気透過は何らかの意味があるのかもしれない。 メーカーのプレスリリースでは不明確なのだが、朝日の記事では「水分の蒸散」がポイントだと書いてあるようにも読めるし。。 有名大手ブランドなんだし、正しい知識を広めるためにも、怪しげで抽象的な宣伝ではなく、もっときちんとした説明が欲しいところだ。

一方、目の場合には、ここなどに説明されているように、角膜は血管がないために涙などから酸素を供給してもらっているので、コンタクトレンズにとっては酸素透過性は重要な要素となるようだ。

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2005/06/22

食事バランスガイド

YOMIURI ON-LINE(6/21)の記事。「主食」「副菜」など食事の目安、簡単に確認

 1日に必要な食事の摂取量とメニューが一目でわかる「食事バランスガイド」を農水、厚生労働の両省が作成し、21日公表した。

 栄養の知識がなくても、大まかな食事の目安が料理の絵で把握できる。両省は、レストランやコンビニなどに表示の協力を求め、普及を図る。

 逆三角形のコマのような図柄には、1日の摂取量として望ましいメニューの例が「主食」「副菜」「主菜」「牛乳・乳製品」「果物」の5つのグループに分けて描かれている。

 料理の単位は、「1つ」や英語の「サービング(SV)」という言葉で統一。例えば、主食は1日に「5~7つ(5~7SV)」とることが必要とし、「1つ分」は「ごはん小盛り1杯」、「2つ分」は「うどん1杯」などとイラスト付きで説明している。

 料理のメニューが変わっても、グループごとに決められた量を守って食べると、日本人の大人に必要な2200キロ・カロリー前後のエネルギーを摂取でき、栄養バランスも保たれるという。

 肥満傾向のある男性や、外食に偏りがちな若者などがイラストを見てすぐ実行できるよう、わかりやすさを優先した。

 バランスの良い食事例は、カロリーや栄養素の組み合わせで示されることが多く、一般にはわかりづらいとの指摘がある。学識者などで作る両省の検討会が、ガイド作りを進めていた。

食事はバランスが大事というのは、よく言われることだけど、実際にどの程度実践できているか? というと自信はない。そもそも、バランス良く食べろと言われても、どの程度だとバランスが良いと言えるのかがわからない。。 正にそういう人たち向けに、わかりやすいガイドを作ってくれたようだ。

農林水産省のサイトに、フードガイド(仮称)の名称及びイラストの決定・公表についてというプレスリリースが載っている。どうやら、直前まで「フードガイド」という名前で検討していたのだが、最終的に「食事バランスガイド」という名称になったようだ。

その食事バランスガイドだが、左半分に食事の絵が描かれ、色分けされたコマのイラストがあり、右側に分類別の一日の摂取量の目安が載っている。農水省のリリースを読むと、このコマの絵には深ーい意味が込められているようだ。
  ・食事のバランスが崩れると倒れる
  ・運動を続けることでバランスが保てる
  ・菓子、嗜好品は楽しく適度に摂る必要性から、コマを回すヒモとして表現
  ・水は欠かせないものであり、象徴的な意味から中心の軸として表現
ということらしいが、パッと見てわかっただろうか? それはともかく、このガイドに則った食事を毎日続けるのは相当努力が必要そうだ。。

厚生労働省のサイトには、フードガイド検討会議事録しか掲載されていないが、こちらの添付資料を見ると、理想的な献立の具体例も載っているし、最近の日本人の食生活の状況についても比較的詳しく解説されている。また、参考資料として掲載されているイラスト中の料理データ及び食事摂取基準との比較表には、「食事バランスガイド」に描かれた各料理の栄養成分が一覧表となっている。

それにしても、この単位「つ(SV)」というのは何とかならないのかなあ? レストランでメニューに、「主食が4つ、副菜が4つ、主菜が3つです。」なんて書くのだろうか? あるいは家庭で、「今日はお昼に主菜を3つ食べたから、夜は主菜は1つにしてね」 なんて会話をするのだろうか? 確かに、数多くの栄養素を一つ一つ思い浮かべて食事のバランスを考えなくても良い、というメリットはありそうだけど、もう少し先進的な方向性は出せないものか?

たまたま今日の日経新聞の夕刊に「健康管理にICカード活用 社員食堂の食事もチェック」というコラムが載っていた。

 会社の診療所から携帯にメールが来た。「最近脂肪と糖分の取りすぎです。本日の夕食は焼き魚か刺し身定食を。ご飯はお代わりせず、ビールは1杯まで。」えー、今夜は合コンの予定なのに。

 これは架空のお話。だが、将来、こんなメールが届いたらどうする? 社員食堂などの支払いを電子マネー機能が付いたICカードの社員証で済ませる会社も出てきている。タニタとソニーコミュニケーションネットワークは、そこに健康管理の機能を組み込んだシステムを開発した。

 ソニー本社の社員食堂では希望者を募り、300人に試験導入している。それぞれが社員食堂のメニューを選んでカード決済すると、摂取カロリーや栄養素がデータベースに保存される。さらに体重、体脂肪、血圧などを定期的に測定、栄養士らがデータの変化を見ながら、適切な食事や生活習慣をアドバイスする。

というものだが、食事の内容をデータ化する方法を工夫すれば、社員食堂に限らず、外食や自宅での食事も取り込んで総合的な診断ができる可能性もある。

食事バランスガイドという取り組み自体はいいことだと思うけど、ポスターを作って掲示するだけでは、何十年も前のやり方そのままに見えなくもない。民間は既にこんな具合に独自に進んでいっているわけだし、国の取り組みも、時代に乗り遅れないように最新のIT技術を取り込むことを考えた方が良いのではなかろうか?

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2005/06/21

「著作権とは何か」

著作権については以前から興味を持って何冊か本を読んでいるのだが、結構複雑だし、判断は微妙なことも多い。ということで、いろんな本に目を通しておくのも悪くはない。本書は、著作権や芸術文化が専門領域の弁護士が書いた本であるが、法律の解説というよりは、サブタイトルにもあるように、著作権が果たすべき役割である文化や創造と保護のバランスの観点から考えていこうというものである。

集英社新書 0294
 著作権とは何か -文化と創造のゆくえ
 福井 健策 著 bk1amazon

著作権関係の新書として、このブログでは、「著作権の考え方」を紹介しているが、それ以外にも「インターネット時代の著作権」(bk1amazon)や、「勝手に使うな!知的所有権のトンデモ話」(bk1amazon)(これは著作権以外の知的財産権についても触れているが)も読んだことがある。

それぞれ特色があり、焦点を当てている面や切り口が異なり、補完的な意味合いもあるので、どれが一押しとは言えないし、全部読んで欲しいという気がする。しかし、これらの本を読んできた後で本書を読んでも、なかなか新鮮な部分も多いし、とても面白く読めた。これは、他の本を読んで、色々な知識を持っていたから楽しめたという部分もありそうだし、一方で本書単独でも十分に楽しめる内容であったという部分もありそうだ。

本書では、判断に迷うような微妙な事例をいくつか紹介しながら、単に著作権法ではこう考える、という判断に終わることなく、何を保護しようとしているのか? それはどういう意味があるのか? といった基本的な考え方に立ち戻って考えていくような構成となっており、これを読んで初めて知った内容も多い。

一つは、日本では著作権法上、パロディが引用とみなされており、かなり無理やり判断されていること。これで果たしてパロディが正当な評価をされていると言えるのだろうか? という問題提起である。とは言っても、著者は決して無条件にパロディを文化として認めろと言っているのではなく、アメリカのフェアユースという考え方を取り入れて判断する必要性を指摘している。

もう一つは、著作権が保護するのはあくまでも表現であり、そのアイデアではないのだが、ではアイデアと表現とは完全に分離できるのか? という問題提起である。どこまでが広く利用されるべきアイデアであり、どこからが守られるべき創作的表現と呼べるのか、考え出すとどんどんわからなくなる。面白かったのは、「磨かれた鶏卵」という芸術作品。これは、言ってみれば、単に卵を磨いただけなのだが、これに芸術作品として著作権を認めると、今後は許可を得ない限り、誰も卵を磨いた作品が作れなくなってしまうかもしれない、という話。(つまり、アイデアと表現が直結している例である)

また、古来文化芸術というのは模倣の歴史でもあり、例えばシェークスピアの作品の中には、元をたどると古くから伝わってきた話が何度も繰り返し多くの作者に改変され、最終的にシェークスピア作品が著名になったというもの(例えば、ロミオとジュリエット)が多くあるそうだ。もしもシェークスピアの時代に今の著作権法があれば、シェークスピアは明らかに著作権法違反となってしまう。これをどう考えるべきなのか?

著者は、このシェークスピアの例などを引きながら、最近の著作権の保護期間を延長する傾向に対して警鐘を鳴らし、それに対向する「コピーレフト」や「コモンズ」といった活動についても簡単に紹介している。結局著作権をめぐる「守られるべき権利」と「許されるべき利用」のバランスの問題は、時代と共に変わっていくものだろうし、常にその時点での最適なバランスを探ることになるということだ。

本書は「いま注目の『著作権』をわかりやすく解説!」という帯の宣伝文句とは裏腹に、具体的な問題について明確な回答が得られるようなものではなく、むしろ著作権は誰のため、何のための権利で、どの程度強い権利であるべきか? を考える入口となる本と言えるだろう。

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2005/06/20

喫煙は老化を加速?

NIKKEI NET いきいき健康のニュース(6/20)たばこでDNAも老化、1日1箱40年で7.4年分・英米チーム

 喫煙者はたばこを吸わない人に比べ、細胞のDNAレベルでも老化が早い―。ロンドンのセントトーマス病院など英米チームがこんな研究結果を19日までにまとめ、英医学誌ランセットに発表した。

 試算では、1日1箱を40年間吸い続けると、吸わない人に比べ細胞が7.4年分、余計に歳をとることになるという。

 研究対象は18―72歳の女性1100人余り。白血球の核DNAにある「テロメア」と呼ばれる部分に着目した。テロメアは、ひも状になったDNAの両端でほつれを防ぐ「キャップ」役を果たしている。細胞分裂の度に少しずつ短くなり、若者より高齢者の方がこの部分が短いため、老化の1つの目安にもされている。

 「喫煙者」「元喫煙者」「非喫煙者」の3グループでテロメアの長さを比べたところ、非喫煙者が最も長く、元喫煙者はやや短縮、喫煙者はさらに短かった。

テロメアについては、Wikipediaに詳しいが、やや専門的すぎて難しい。Sankei ECONETの解説も参考になる。
 
英語の新聞を探してみると、BBC NEWSなどがみつかった。でもこの元の論文は、喫煙と肥満が共にテロメアを短くすることを述べたものであり、何故か日本の記事では喫煙だけを取り上げたようだ。。 この記事によると、テロメアの長さは喫煙経験と共に単調に短くなる傾向があり、非喫煙者の標準的な1年間のテロメアの短縮量に対して、1日1箱の喫煙を1年続けると18%短くなると言えるのだそうだ。従って、40年で7.4年分に相当することになる。これから、1本の喫煙の影響を算出すると、

  3889440分(= 7.4年) ÷ 292000本 = 13.32分/本

となり、タバコ1本で 約13分DNAの老化を加速(寿命を短縮?)していることになる。なお、いわゆる寿命とテロメアの短縮との関係については、

Professor Thomas von Zglinicki from Newcastle University said: "Telomere length is related to age and might be one biomarker of ageing, but whether it really 'defines' biologiocal age is quite a different question."
とあり、何らかの関係はありそうだが、まだ不明の点が多いと考えるべきのようだ。

喫煙の害として、ガンなどの病気になる確率が高くなることがよく言われるし、例えばここのように、様々な危険因子と比較して損失余命という尺度で危険性を説明したりする。しかし、確率的な表現は、個人にとっては今ひとつピンと来ないのではないだろうか? 一方、このように、一本吸う毎に細胞の老化が進行するとなれば、特に若い世代にとってもインパクトが大きそうだし、この表現は結構使えるかもしれない。

もう少し詳しい記事を探してみると、Web MD Healthによると、

The women in Spector's study were all twins aged 18-76 years. The group consisted of 45 pairs of identical twins and 516 pairs of nonidentical twins.
 (中略)
Assuming their results pan out, the researchers were able to estimate the number of years lost to cigarettes -- or extra pounds.

The difference in telomere length between being lean and being obese corresponds to 8.8 years of aging.
Smoking (previous or current) corresponds on average to 4.6 years of aging.
Smoking a pack per day for 40 years corresponds to 7.4 years of aging.
Keep in mind that those time spans refer to telomere length, not overall aging.
"Our results emphasize the potential wide-ranging effects of the two most important preventable exposures in developed countries -- cigarettes and obesity," write the researchers.

They point out that there was "considerable variation" in telomere length between participants and call for larger studies on the topic.

とあり、肥満は8.8年分のテロメア短縮に相当するので、喫煙よりも影響が大きいとも言えそうだ。双子の女性だけを調査対象としたのが何故なのかがとても気になるのだが、その理由が不明だ。

テロメアの長さは個人差が大きいということなので、そのために双子を研究対象としたのだろうか? 今回の研究対象の双子として、その一方が喫煙者や肥満で、他方が非喫煙者や痩身、という組み合わせばかりを集めたのだろうか?(そんなに都合良い双子が見つかるものだろうか?)Lancetのサイトの Free Registration では、Summaryまでなので、詳細不明だ。

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2005/06/16

飛行機からのロケット発射の新方式とは

YOMIURI ON-LINE(6/16)の記事。飛行機から宇宙船を発射、新方式の分離テストに成功

 【ワシントン=笹沢教一】将来の宇宙観光飛行をめざして新方式の飛行機発射型ロケットを開発していた米スケールド・コンポジッツ社などのベンチャー企業チームが、カリフォルニア州で行ったロケットの分離テストに成功した。

 企業チームは昨年10月、民間宇宙船として高度100キロの有人宇宙飛行一番乗りを果たした。14日に行われたテストの成功は、安全なロケット開発への一歩で、宇宙観光飛行の実現にまた近づいたという。飛行機発射型ロケットは分離後、宇宙へ向けて機首を上に向ける必要がある。新型ロケットは飛行機の後方に落下後、エンジンの重量とパラシュートによる制御だけで、上向きに方向転換することに成功した。飛行機発射型ロケットはこれまでもあったが、機体に取り付けられた翼を動かして姿勢を変えており、分離後のエンジン噴射で飛行機の前を横切るなど、安全面に課題を残していた。

確かに最近のアメリカの民間ロケットが、飛行機から打ち上げられていたのが思い起こされるが、新たな方式とはどんな方法なんだろう? これから打ち上げるロケットをパラシュートをつけて飛行機から離すというのも、イメージしにくいのだけど。 

space.comによると、今回の発射方式の開発では、Scaled Composites社というよりは、Transformational Space(t/Space)社が主導的な立場にあるようだ。

The new air launch method is called Trapeze-Lanyard Air Drop (t/LAD) launch. The test drops utilized the Proteus aircraft built by Scaled Composites. That company, led by aerospace designer, Burt Rutan, also built and flew SpaceShipOne.

According to t/Space, in addition to greatly enhancing safety, eliminating the wings increases the payload a rocket can take to orbit. The innovation developed by t/Space is a device that remains attached to the nose of the deployed booster - all of a half-second after the center of the rocket is released.

That slight tug on the booster’s nose starts the hardware rotating as it drops. A small parachute on the rocket’s nozzle ensures this rotation does not happen quickly.

ということで、新方式の名前は直訳すると「空中ブランコ・ロープ型空中投下方式」とでもなるのだが、読売の記事にあるように、ロケットが飛行機の後方を飛び上がることで安全性が向上するのと同時に、翼が不要になった分だけペイロードを増やせるというメリットがあるのだそうだ。パラシュートはロケットが水平から垂直に方向を変える速度を遅くするために使われているようなのだが。

t/Space社のホームページに行くと、今回のニュースリリースと共に、テストの写真が掲載されている。特に2番目の"CXV Drop Sequence"という写真を見ると様子がよくわかるが、何とパラシュートはロケットのノズル側(下側)に取り付けられていて、パラシュートの付いている方が下側に来るとは。。 降下速度を遅くするためにあるんだから、てっきりパラシュートは上側に取り付けられるものと想像したんだけど、これは意表を付かれたなあ。。

このCXV(Crew Transfer Vehicle)と呼ばれる4人乗りの有人宇宙船については、こちらで構想図が見られるが、ザ スペース ツーリズム ソサエティ ジャパンに、とてもわかりやすくまとめられている。また、関連記事がHot Wired Japanにも載っている。今回の実験機は、実際の宇宙船の23%の大きさとのことだ。

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2005/06/15

浮かばないマリモが浮いた?

YOMIURI ON-LINE(6/15)の記事。阿寒湖で浮くマリモを確認

 浮かばないとされていた国の特別天然記念物「阿寒湖のマリモ」が、同湖の水中に大量に浮いているのを、北海道阿寒町学芸員の若菜勇さん(47)が確認した。

 今月8日、雄阿寒岳ふもとの同湖東端の入り江で、直径3~5センチのマリモ500~600個が、すき間に気泡をはさんだような状態で、水中を漂ったり、水面に上がったりしていた。

「ふ~ん」という感じのニュースだが、ちょっと検索してみると、マリモを元気にする方法によると、阿寒湖のマリモ養殖場でマリモが浮き沈みをしているのを見たと書いてあるし、水槽で育てていると、実際に光合成で発生した酸素が付着して浮かぶことがあるらしい。また、ここのQ&Aにも、同様の記述がある。

この記事では、「浮かばないはず」というのが誰の言葉なのかが不明だが、学芸員の方が浮かんでいるのを確認して、それがニュースになるのだから、やっぱり珍しいのだろうか? だとすると、水槽の中では浮かぶことがあっても、阿寒湖で実際に浮かんでいるのは極めて珍しいのかもしれない。 と思いきや、毬藻の唄という昭和28年の歌に「晴れれば浮かぶ 水の上、曇れば沈む 水の底」という歌詞があるじゃないの。。。

調べてみると、この学芸員の若菜さんは、マリモの世界では有名な方のようで、例えば、信越化学工業のサイトで若菜さんのインタビューが読める。マリモの生態について色々語られているのだが、残念ながら、ここにはマリモの浮き沈みに関する記載はないようだ。

マリモのことについて詳しく書かれたサイトとしては、マリモ・・・その愛・・・が非常に充実している。せっかくの機会だから、マリモとは?を読んで、マリモの基礎知識ぐらいは勉強しておこう。 ここのマリモの育て方Q&Aでも、マリモが水面に浮くことは特に異常事態ではないと書かれているし、マリモ生息地へでは、実際に阿寒湖の湖面に浮かんでいるマリモの写真やそれを手に取る話が載っている。

ところで、天然記念物のはずのマリモを育てている人が多くいるようなことに驚かされるが、このサイトのお土産のための天然マリモ減少中の記載によると、お土産のマリモは実は養殖したものではなく、釧路湿原国立公園のシラルトロ湖というところから採取した天然マリモを丸めたもので、その天然マリモが減っているとのこと。何とも悲しい話だ。

ということで、冒頭の記事の「浮かばないはず」というのは、500~600個ものマリモが一斉に浮かんでいる状況が珍しい、という意味のような気がするなあ。 というか、そういう状況がもしも異状だとすれば、何故起こったのかとか、生態系に何か大きな変化があったのではないか、といった方向にもう少し突っ込んだ記事にして欲しい気がする。

北海道発:YOMIURI ONLINEによると、

 水中に溶けている酸素の濃度を測ると130%もあり、過飽和状態であることが分かった。入り江は、正面にある大島が風、波を遮り、波は穏やか。8日は天気もよく、若菜さんは、「マリモが盛んに光合成して多量の酸素を出し、気泡として付いて、浮いたのでは」と分析している。

 土産などでガラス容器に入ったマリモは浮くこともあるが、研究者の間では1940年代から、「マリモは浮かぶか、浮かばないか」という議論が交わされた。自然界でこれまで確認されなかったことから、「浮かばない」ことが定説とされていた。

ということなのだが、酸素濃度が130%というのも随分と乱暴な表現だけれど、「浮かばないこと」が定説とされていた、ってのも何だか変な話のような気もする。。

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2005/06/14

「鉄理論=地球と生命の奇跡」

帯には「生命誕生は鉄のおかげ!? 鉄が進化を演出した!? 地球温暖化は鉄で解決できる!?」という、本書が取り扱う鉄に関する3つのトピックを掲げている。本書の内容は、鉄(鉄道マニアの鉄ではなく、金属の鉄を作る人)をこよなく愛する著者が、鉄という元素の誕生から人類の未来までを語るという何ともスケールの大きな、ユニークな試みである。

講談社現代新書 1778
 鉄理論=地球と生命の奇跡
 矢田 浩 著 bk1amazon

著者は鉄鋼メーカーから大学教授へと転身された方で、専門はいわゆる金属工学や鉄鋼の分野のようだが、本書は宇宙、地球、生物、環境、鉄鋼、文明史というとんでもなく幅広い分野を扱っている。畑違いの生物分野などは中村桂子さんなどにチェックしてもらったとのことで、それなりに正しい記述となっているものと思われる。しかし、やはり著者の専門外のせいなのか、生命が微量元素である鉄をどう利用して、どう進化して、それが地球の大気や地質、水質の変化とどういう関係にあるのか、というこの前半のテーマについては、読んでいて今一ピンと来ないものがあるのだが、それでも、ほー、こんなモノの見方があったんだ、という軽い驚きを味わえる。

確かに、鉄という元素は最も安定した元素であり、宇宙での存在量も多い。そして、本書を読むまでは考えたことがなかったが、鉄という元素に特徴的な酸化還元特性や磁性といった性質があったが故に、今の地球環境や生物構成が存在しえるというのも事実だろう。それを奇跡と呼ぶかどうかは哲学的な問題だろうが、いずれにしても我々の存在に鉄という元素の存在が欠かせなかったと言われれば、確かにそれはそうだ。

もちろん、この元素がなければ今の我々はなかった、と言うだけならば、水素でも酸素でも窒素でも、あるいはリンやイオウやカルシウムなど、何でもそうだとも言えるけど、鉄が何かしらのマジックを秘めているのも確かだろう。

本書のタイトルである「鉄理論」とは、その生物に必須の元素である鉄を海に散布することが地球温暖化対策として有効だ、という説のことで、実はこのブログでも2004/3/4に鉄と海と光合成というエントリーで紹介したことがある。本書では、以前は「鉄仮説」であったのだが、大規模な実証実験により既に仮説ではなく理論に昇格したとして、実際の実験データもいくつか紹介されている。

ミネラル分の少ない「飢えた」海域に鉄をはじめとする無機塩類を補給することで、植物プランクトンが増えて、海洋の二酸化炭素吸収が増えるのは恐らく事実だろうと思う。ただし、本書で述べているような、今後どんどん増え続ける人為的に放出される二酸化炭素を、この方法で海洋に吸収させるというアイデアはどうだろう? 地球全体での長期的な炭素循環を考えた時に、本当に成立する話なのか? 最終的に海はどういう形で炭素を固定することになるのだろう? 生態系への直接間接の様々な影響をはじめとして、余りにも不明点が多すぎると思われるし、結局は人間の浅知恵だなぁという感じが拭えないのだが。。

もちろん、そうやって皆が二酸化炭素を自由に大気中に放出できる社会を望む考え方もあっていいのだろうが、その活動のエネルギーはどうするんだろう? 本書では、当面は石炭でまかなう考え方のようだが、結局は再生不可能な資源を使い果たしてしまうという問題に答えは見えないし、同時に二酸化炭素を大量に放出し、それを全部海洋に吸収させようというのは、人類史上最大の無謀な賭けとなるような気がする。誰がそんな決断を下せるのだろう? 

本書の後半の鉄鋼技術から見た人類の文明史の部分もとても面白かった。ちょっと駆け足気味で物足りない部分もあるのだが、何故中国が世界の強国であり続けられなかったのか、という疑問も製鉄技術から説明できるし、イギリスでの産業革命も製鉄技術の革新がキーテクノロジーであったという説明がされる。

総じて、著者の鉄への熱い思いが伝わってくるし、全てを「鉄」という切り口で説明してみようという試みも面白い。地球温暖化対策の部分はさすがにどうかと思うけど、全体的には、読んでみて新鮮な視点を持つことができたし、この試みは十分に成功していると感じられる。

参考
asahi.comの書評農業環境技術研究所の書評山賀進さんの書評

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2005/06/13

One Planet, Many People

MSN-Mainichi INTERACTIVE(6/12)の記事。環境破壊:人工衛星がとらえた破壊の様子--国連環境計画、写真集を公表

 国連環境計画(UNEP、本部・ナイロビ)は6月5日の世界環境デーに合わせ、各地で進む環境破壊の様子を人工衛星でとらえた写真集「一つの惑星、多くの人々」を公表した。クラウス・テプファー事務局長は「環境破壊は、国境を越えて他の国々に影響する。地球は一つなのです」と訴えている。

 写真集の作成には、米国地質調査所や米航空宇宙局(NASA)などの機関が協力した。イスラエル・ヨルダン国境にある塩湖の死海では、流れ込むヨルダン川からの過剰取水や塩類などを生産する蒸発池の設置で、湖の南部が干上がってしまった様子がとらえられた。砂漠に建設された米・ラスベガスの都市開発や南米で進む熱帯雨林の伐採なども紹介している。

ということで、写真集を探してみた。One Planet, Many Peopleは、US$150プラス送料で入手可能な写真付き地図(Atlas)らしい。これに含まれるいくつかのサンプル写真をこちらで見ることができる。なるほど、同一地域の過去と現在の衛星写真を並べて比較してある。古いものだと30年ぐらい前のものもある。30年前だと既に人工衛星から今と同じような写真が撮れていたわけだ。それにしても、高々数十年で随分と変化するものだ。

この写真集は、どうやらこのページのFTPサイトへのリンク先から、全頁のダウンロードができるようだが、さすがにファイルサイズが巨大だ。それでも試しに一部を見てみると、写真集以外にも、地球温暖化、オゾン層破壊などの地球環境変化についての、絵やグラフをふんだんに使った解説記事も豊富のようで、地球環境問題を扱ったグラフィカルなハンドブックのような内容に見える。とてもカラフルで充実していそうだし、是非とも日本語版を出版して欲しいと思わせるものだ。

一方、同じUNEPのサイトのUNEP Global Changeによると、過去30年の変化が激しいホットスポット50か所の衛星写真を比較して、解説した写真集のpdf版(全141ページ、約13MB) "Selected Satellite Images of Our Changing Environment" が入手できる。これは、2003年に出版されたもので、純粋に各地の衛星写真を比較したものだ。この写真の少なくとも一部が、今度のOne Planet, Many People にも使われているようだ。

この写真集もとてもきれいである。地球全体や各地の過去と現在の衛星写真が沢山掲載されており、それを眺めているだけでも十分に楽しめる。なお、日本からは諫早湾の干拓事業の写真が掲載されている。

地球環境変化を多くの人に考えてもらうきっかけとしては、こうやってビジュアルから入るのがやっぱりインパクトが大きいと思うし、こういうものを日本でも色々と活用できると良いのだが。。

参考:これに関連したGISの環境問題への応用に関するリンク集

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2005/06/10

飲む酸素?

FujiSankei Business i(6/9)の記事。濃縮酸素液「オーツープラス・ダイレクト」

 酸素を肺からではなく胃から摂取することで、安定した分子の状態で体液中に浸透させ、細胞のすみずみに酸素を供給する。100ミリリットルの水に対してローテーションポンプをワンプッシュするだけで、通常の水道水の2倍の酸素量になる。携帯に便利な25ミリリットル入りミニボトル。価格は1596円。販売中。
安定した分子の状態? 細胞のすみずみに酸素を供給? よくわからないが、健康業界では酸素は悪玉になったり善玉になったり、なかなか微妙な状況のようだ。それはともかく、魚じゃあるまいし、水中の溶存酸素濃度が人の健康に影響あるものだろうか? もしも本当に酸素が濃縮された液体だとすると、飲料用以外でもっと有用な使いみちがあるような気もするけど。

メーカーのエバニューは、スポーツ用品の製造と輸出入を行っている会社のようだ。探してみたら、オーツープラス・ダイレクトを確かに扱っている。なるほど、登山などでの酸素補給という考え方が発展したものらしく、スタミナアップと疲労回復などが期待される効果のようだ。製造法は最新のバイオ技術から生まれたとしか書いてないのだが、果たしてどんな方法で酸素を多量に含ませているのだろう? 楽天に出ている商品の宣伝には

・従来の酸素飲料と比較して酸素が放出されず、安定した分子の状態で体内に取り込まれます。
・胃で吸収された酸素は、肺からの吸収と比較して、新陳代謝と言う点で効果的です。
・付属のローションポンプをワンプッシュ(0.35ml)すると1,750ppmの酸素が供給されます。(1ml当たり5,000ppm)
とあり、さらに
原材料:精製水、ナトリューム、濃縮酸素液(1mlあたり5,000ppm)
成分:塩化物、クロミウム、ヨード、マンガン
内容量:=25ml
使用期限:開封後1年間
とある。0.35mlで1750ppmの酸素が供給され、1ml当たりでは5000ppmと言われてもなあ。。 ppmは濃度の単位だ。 0.35mlだろうが1mlだろうが濃度は一緒だろう。。 常温での酸素の水への溶解度は約9mg/Lなので重量基準で約9ppmとなる。100mlの水道水に0.35mlを添加することで、溶存酸素量が2倍になるという点から計算してみると、水道水中の酸素濃度を約6pppmと仮定すると、オーツープラス・ダイレクト中の酸素濃度は約1700ppmということになる。

しかし、クロム、マンガン、およびヨードがその形態や濃度が不明のままで含まれる水を安心して飲めるのだろうか? 原材料がナトリウムと水というのも相当すごいが、何故か成分にはナトリウムは含まれないらしい。。 成分からすると、最新のバイオ技術で作ったものには見えないような。 酸素はまさか単なる金属酸化物の形態で含まれているってオチではないだろうと思うけど、胃酸で分解して酸素が発生するということだろうか? もっとも消化器は基本的に呼吸器ではないし、ガス状の酸素が発生しても吸収できずに、ゲップになるだけのような。。

探してみると、この製品と似たコンセプトらしき製品としては、AquaO2飲む酸素 AEROBIC KO7というものがあるし、薄めずにそのまま飲む水としては、高濃度酸素水 オキシジャイザーなどもあった。さらには、食べる酸素なんてものもある。宣伝文句から酸素濃度だけを抜出して比べると AquaO2が27%で断トツなのだが、この27%というのは何基準の濃度なんだろう? いくら何でも高すぎないか? 

一方、オキシジャイザーの宣伝を読むと、酸素の泡が見えると書かれているから、本当に飽和濃度以上の(150ppm?)の酸素を含むのかもしれないが、常温・常圧での飽和溶解度の20倍近くの酸素を溶解させようとすると、20気圧程度まで加圧されていないといけないし、やっぱり何か化合物の形態なのかなあ?

ところで、驚くべきことに、AEROBICの宣伝には「液体酸素」と書かれているけど、さすがに液体酸素は危なすぎて飲めないだろう。。。

酸素バーだとか酸素発生器とかを使用して、呼吸器を通して高濃度の酸素を吸入すれば、確実に体内の酸素濃度に影響がありそうだけど、飲む酸素や食べる酸素はからだに直接影響を与えるとは考えにくい。

例えば、オーツープラス・ダイレクト1本(25ml)やオキシジャイザー1リットルに含まれると言われている酸素量は全部でせいぜい0.1~0.2g程度だ。気体の酸素にすると、その体積はたったの100cc程度。これは500ccの空気中に含まれている酸素量にすぎない。たった1回深呼吸するだけでも、これと同等程度の酸素が吸入できそうだ。

ところで、高酸素濃度をどうやって達成しているのか? 水中での酸素の形態はどうなっているのか? という疑問には依然として答えが見つからないままだ。。。

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2005/06/08

「使いきり」ビデオカメラ

asahi.com(6/8)の記事から。世界初、使い切りデジタルビデオカメラ 米で発売

 米ドラッグストアチェーン大手CVSは今週から、「世界初」となる使い切りのデジタルビデオカメラを発売した。価格は1台29.99ドル(約3200円)。録画時間は最大20分間。録画後は同チェーン店に返却して12.99ドル(約1400円)を支払えば、DVDに保存してもらえる。

 薄型のポケットサイズでタテ約10センチ、ヨコ約6センチ。重さは約140グラム。ズームなどの機能はなく、ボタンは3つだけの簡単な操作だ。映像は内蔵メモリーに記録し、裏面の1.4インチカラー画面を見ながら再生、消去ができる。保存後のDVDでは、映画ソフトのようにメニュー画面から見たい場面が選べる。

 製品は米ベンチャー企業ピュア・デジタル・テクノロジーズが開発。CVSが先行販売権を持ち、月内に米国内の主要4500店に展開する。日本での発売は未定。

ふむ。20分のビデオを撮影してDVDに保存するコストが43ドル(約4600円)とは、ちょっと高い気もするが、売れるのだろうか? 確かに、どうしても1回だけ動画を撮っておきたいという用途には使えそうではあるが、あまり魅力的な製品には思えない。それと共に気になるのは、「使い切り」という表現。ビデオカメラは店に返却するようだから当然再使用されると思うのだが、「使いきり」という語感は環境の3R的には余り好ましくない印象を与えるなあ。。アメリカのニュースを探してみると、latimes.comによると、
CVS Corp. began selling a disposable digital camcorder Monday that the nation's No. 2 drugstore chain hopes will boost its photo lab business and be as popular as single-use film and digital cameras.
という記事がある。記事タイトルが "Disposable Camcorder"となっており、「おいおい使い捨てかよ?」という感じだが、それはともかく、使いきりタイプの(静止画用の)デジタルカメラもあるようだ。

調べてみると、デジカメWatch(インプレス)に、去年の8月にアメリカで発売になった「使いきり」のデジタルカメラの試用レポートが載っている。画質とコストで見ると、どうやら決して割安というわけではないようで、デジカメ写真が欲しいけど、カメラを持っていないといったシチュエーション向け、という感じらしい。今では多くの携帯にデジカメがついているから、少なくとも日本ではこのビジネスモデルだと苦しそうだな。

今回の使いきりビデオカメラについては、imaging resourceのニュースが詳細な記事を書いている。店が回収した撮影済みのカメラについては、

CVS then refurbishes the device for another customer (replacing the batteries, clearing the memory, placing it in new packaging, etc.)
 (中略)
The business model revolves around the fact that the device will be used by multiple customers, allowing CVS to write off the cost of the hardware over a number of purchases - at least, if the camcorder is returned to the store for processing.
ということで、複数回の再使用を前提とした価格であり、そのために顧客には画像が取り出せないようにして、確実な回収を狙ったビジネスモデルと言える。しかし、少なくとも先に発売した使いきりタイプのデジタルカメラについては、
However, as with the original one-time use digicams from CVS and a number of other retailers, a number of enterprising consumers already seem to be working on bypassing the need to return the device for processing. Websites quickly detailed the interface for the digicam variants, and already we've found at least one website describing attempts to access the camcorder variant with modified cables and USB drivers.
ということで、店に返却せずに画像を取り出すためのハッキング情報が出回っているようで、ビジネスモデルが危うくなっているようだ。確かに、従来のフィルムカメラだと現像するのが容易ではないから、普通はお店に持っていくだろうけど、デジタルカメラの場合には画像を取り出すソフトとハードがあれば何とかなるからなあ。バッテリーの充電も可能だろうし、そうすると結構安い値段でカメラが入手できてしまうことになる。。

そもそも、この製品はカメラを購入するというよりは、撮影の権利を購入するとか、あるいは撮影権付きのビデオカメラを借りるというような感じだから、本来はこのカメラにはある程度高価なデポジットを付けて販売し、店に返してもらった時にデポジット金を客に返すような形であるべきなのだろう。そうしないと、Linux-Hacker.netでも議論しているような試みによって、カメラの回収率が低下して、結局カメラの価格の上昇に繋がってしまう可能性が高い。

それなら、むしろ普通の高級なカメラやビデオカメラを適正な価格で貸し出す、レンタルの方がすっきりしているような気もするけど、あまりそういう商売を見ないのは何故だろう? まあ、今やデジカメにも簡単なビデオはついているし、携帯だってビデオの撮れるものが増えているから、このビジネスモデルはやっぱり難しい気がするなあ。。 

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2005/06/07

ココログ17か月

ココログを始めて1年と5か月が経過。カウンターは、この1か月で11000程度の伸び。この間、海外に行っていたために2週間程更新が滞っていた割には順調と言えるかもしれない。

 1か月目:900
 2か月目:4500
 3か月目:11700
 4か月目:19000
 5か月目:32300
 6か月目:43500
 7か月目:54500
 8か月目:72000
 9か月目:87700
 10か月目:105400
 11か月目:125400
 12か月目:140600
 13か月目:163000
 14か月目:179300
 15か月目:194700
 16か月目:205300
 17か月目:216800

この1か月のアクセス解析結果は

(1)リンク元
 1位 http://www.google.co.jp 全体の30%
 2位 bookmark 全体の20%
 3位 http://search.yahoo.co.jp 全体の20%
 4位 http://www.google.com 全体の9%
 5位 http://search.msn.co.jp 全体の4%
 6位 http://search.goo.ne.jp 全体の3%
 7位 http://a.hatena.ne.jp 全体の1%

となった。実は先月までは忍者ツールの集計をそのまま載せていたのだが、ここの月間集計が明らかにおかしいので、週間集計を手で集計しなおしたのが上の結果。この方法で過去の分も集計してみると

          3/8~4/7 4/8~5/7 5/8~6/7
   Yahoo      36%    22%    20%
   Google     14%    23%    30%
   Bookmark    25%    27%    20%

となり、どうやらここのところアクセス数が減っているのは、ヤフー経由での訪問者が減っていることと関係していそうだ。逆に、最近はグーグルで来る人が増えている傾向も見られる。なかなか不思議というか、興味深い現象ではあるのだが、どうやら人々が検索する単語の傾向が変化するのに加え、検索結果の表示順位の変動が大きいようで、その結果として、検索エンジン経由のアクセス数が大きく変動することになっているようだ。

(2)検索キーワード
 1位 合計特殊出生率(前回5位)
 2位 BIZ(初登場)
 3位 COOL(初登場)
 4位 過去の天気予報(前回1位)
 5位 省エネルック(初登場)
 6位 アメリカ(前回18位)
 7位 水質検査(前回9位)
 8位 グラフ(前回21位)
 9位 コスモプラント(前回42位)
10位 肥満(前回圏外)
11位 ニコエン(前回圏外)
12位 天気(前回17位)
13位 過去(前回(14位)
14位 フラーレン(前回4位)
15位 献血(前回6位)

ここ数日は[合計特殊出生率」と「クールビズ」が人気のキーワードとなっていたようだ。まあ、あまりマニアックなキーワードはどうしても上位には来ないということだろうか。それでも、「セイヨウオオマルハナバチ」が20位にランクされていたりする。

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2005/06/06

ICチップ付きパスポート

YOMIURI ON-LINE(6/3)の記事。IC旅券導入、手数料減額で具体案まとまる

 集積回路(IC)チップ付き新型旅券(パスポート)を来年3月から導入するための改正旅券法が3日の参院本会議で成立したことを受け、政府は、短期間にIC旅券に切り替える際に発行手数料の「二重払い」が生じないための減額措置の具体案をまとめた。

 IC付き旅券発行手数料は、10年有効で1万6000円、5年有効で1万1000円(都道府県手数料を含む)となる予定。政府は政令で、10年有効の現行旅券から10年有効のIC旅券に切り替える場合、9000円の減額、5年有効の現行旅券から5年有効のIC旅券に切り替える場合、4000円の減額措置を行う方針。

 減額措置は、10月26日からIC旅券が発行される来年3月までに、旅券を取得・更新し、その後1年以内にIC旅券に切り替える人が対象となる。

 テロ対策が進む米国は、10月26日以降に発行された旅券がIC付きでない場合、短期滞在者にもこれまで不要だったビザ取得を義務づける方針だ。このため、同日からIC旅券が発行される来年3月までに現行の旅券を取得した人が、3月以降にビザ無しで米国を旅行するためにIC旅券に切り替える場合、「発行手数料の二重払いになる」との批判が与野党から出ていた。

あまり話題になっていないようだが、僕自身のパスポートの有効期限が来年6月までと、結構微妙なタイミングなので調べてみることにした。そもそも、アメリカがICチップ付きのパスポートを要求している背景はもちろんテロ対策で、当然、アメリカ国民向けにアメリカ政府が発行するパスポートのICチップ化も検討されている。

ところが、本家アメリカでも導入に向けてまだ議論が続いているようだ。例えば、迷えるRFIDパスポート構想(ITmedia)によると、セキュリティの要求から書き込まれるデータが暗号化されず、数メートル離れていても読み取れるものとなりそうで、このようなプライバシー上の問題があるにも関わらず、ICチップ化によるセキュリティの向上は限定的であるとも指摘されている。このように紆余曲折が予想される状況の上、予定通りに進んでも新規発行パスポートがICチップ化されるのは2006年になりそうな話となっているではないか。。

さて日本の状況に戻ると、MSN-Mainichi INTERACTIVEによると、

 IC旅券は国籍や氏名、生年月日といった身分情報のほか、顔画像や指紋、瞳の虹彩などの生体情報を記録したICを内蔵するもの。日本は生体情報のうち顔画像のみを記録する。05年度中の導入を目指してきたが、在外公館を含む一斉の発給体制を整備するため、発給開始は来年3月までずれ込んだ。
とあり、2005/10/26~2006/3までにパスポートを発行してもらった場合には、アメリカに入国するにはビザが必要となることになる。NIKKEI NETでは、
 このため付帯決議は、(1)米国に導入期限の延長を要求する(2)米国が応じなかった場合、旅券切り替えの際の手数料減額措置を政令で定める――とした。
ということで、準備が整うまで猶予してくれるようにお願いするようなのだが、アメリカはどの程度柔軟に対応してくれるのだろう? 

先日アメリカで飛行機を乗り継ぐ際の身体検査および荷物検査は、日本では考えられない程に念入りなものであったが、おまけに入国と出国の際に指紋と顔写真を撮られるのも、何だか気分の良いものではなかった。今回のICチップ化を見ると、アメリカの対応がエスカレートし続けていて、どこまでいったら安心できるのやら?という気がする。

ところで、アメリカへの入国時には出国時まで有効なパスポートがあればOKなので、アメリカに行くことだけを考えるとパスポートの切り替えタイミングは比較的考えやすい。しかし、入国時にパスポートの残り期間として6か月以上を要求する国もあるので(参考:ビザの必要国・不要国とパスポート必要残存有効期間)、これらの国のことも考えると判断はなかなか難しい。

本件に関する外務省のQ&Aがとても親切で参考になるが、アメリカが期限を延長する可能性もあるということで、なかなか微妙な表現だ。。 僕の場合、ICチップ付きでないパスポートがこの先も期間満了まで有効であると約束されているならば、アメリカ以外の国のことも考えて、有効期限を多少残して10/26以前に更新するのが得策のようだが、数年先には全面的にICチップ化が要求される可能性もあるような気がするし。。

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2005/06/02

ゲルマニウムと32℃の謎

FujiSankei business i(6/2)の記事。快適繊維「チオクリーン」を使用したゴルフウエア「MLU1650」

 「ミラー・ショーン スポーツ」ブランドに登場。「チオクリーン」は高純度のゲルマニウムをレーヨン繊維に練りこみ、半永久的に機能を発揮する新素材として注目されている。メンズ、レディースとも半袖、長袖1型ずつ計4型。カラーは、ブラック、ホワイトなど。価格は2万2050円。販売中。
最近、機能性繊維を使用したスポーツウエアやインナーウエアが各種出てきているようだが、有名ブランドであるデサントが採用したとなると影響力も大きいだろう。一体ゲルマニウムが半永久的に発揮する機能とは何だろう??デサントのサイトで探してみると、5/23のリリースに書かれている。ここではゲルマニウムの特性として
炭素族元素の一つで元素記号は「Ge」。金属と非金属の中間に位置し、金属であって金属で無い物質です。普通の状態では電気を流さず、温度が上がると電気が流れるという「半導体物質」です。ゲルマニウムは32℃以上になるとイオン化し、他の原子と結合して正常な状態に戻す働きがあります。
と書かれているが、ゲルマニウムが半導体であるのはいいとしても、32℃以上でイオン化するとはどういうことだろう? 正常な状態に戻す働きというのは、一体何を戻すんだ?? このイメージ図という奴も何だかなあ。。(電子が全部で7個しかないし、内側の軌道の電子は何故3個なんだろう? ちなみに Ge の電子配置は、1s2 2s2 2p6 3s2 3p6 3d10 4s2 4p2である。) こんな怪しげな解説記事を公式ページに載せてしまって大丈夫だろうか?

「チオクリーン」で探してみると、意外にも非常に多くのページが見つかる。健康市場では結構有名な素材らしい。例えば、こんなページの説明によると、

「チオクリーン」は、清川株式会社が開発、オーミケンシ株式会社にて製造している機能性繊維です。サブナノ単位にまで粉砕した粒度のゲルマニウム・ジリコニウムの天然鉱石をレーヨン繊維に練り込み
とあるが、「サブナノ単位まで粉砕」というのもすごい技術だけど、「ジリコニウム」とは何だろう?? ここのゲルマニウムの説明はさらに詳しいけど、
ゲルマニウムの接触面の温度が32℃以上になると、一番外側の軌道を回る4個のマイナス電子が外へ飛び出し、電子浸透圧が働き、イオン化して皮膚組織の下に浸透します。皮下組織中の毛細血管に到達したゲルマニウムのマイナス電子が浸透して、血液中に電子の移動が行われます。血液が酸性状態にあれば、ゲルマニウムのマイナスイオンが吸着され血液pHを中性にし、逆に、アルカリ状態であれば、電子反転作用でプラスイオンとなり、血液中のpHを正常に保つ働きをします。
身体の生体電流を活性化させ、血行をよくする事で筋肉のコリ、痛み、疲労を緩和させる働きがあります。
ゲルマニウムから電子が皮膚組織の中に浸透するというよくわからない説明なのだが、電子反転作用なんてすごいことが起こることで血液のpHを常に正常に保ってくれるらしい。。 で、この作用が半永久的に続くってことは、どこかから電子を供給しないと、ゲルマニウムがプラスイオンになってしまうけどどうなんだろう? もしもゲルマニウムイオンとなって体内に入ると危険かもしれない。何しろゲルマニウムは「健康食品」の安全性・有効性情報によると少なくとも経口摂取は危険とある。。

でも、日本成人病予防協会の認定証によると、少なくとも安全性は保証されているようだから大丈夫かな? もっともこの協会は検索してみると、色んな怪しげな商品も推薦してくれるところらしく、マイナスイオンサングラスなんてものにまでお墨付きを与えているらしいからなあ。。。

ちなみに、開発元の清川株式会社や販売元のオーミケンシ株式会には、この繊維についての情報はない。それにしても、どこを探しても、肝心のゲルマニウムの含有量などの情報が何も載っていないのも不思議ではある。どのくらい含んでいるんだろう?

さて、ゲルマニウムは最近非常に流行っているようで、ブレスレットなどでも同じような効能が宣伝されているようだ。どうやら、体温近くの32℃で電子が飛び出すということで、特別な機能を持つかのようにもてはやされているようなのだが、これって一体どこから来た話なのだろう? (原子番号が32なのと関係あるのかな?)

ゲルマニウムのバンドギャップは0.67eVということで、体温付近でもそれなりの電気伝導度を持つのは事実だろうけど、ここの説明にあるように、温度上昇によってゲルマニウム中に伝導電子が生成したとしても、金属中の自由電子に比べたら大した量でもないし、決してある温度を境にスイッチが切り替わるように急激に変化するはずもない。 (自由に動ける電子なら、普通の金属中にはいくらでも存在するのだが。。) もちろん、ゲルマニウムから出た電子だけが特別だというわけもないし、そもそも外部電圧等の助けもなしに、電子が勝手に外に出続けてしまったら、電気的中性が保てなくて困るだろうけど。。

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2005/06/01

5月の天気予報の傾向

3月から続けている、東京地方の過去の天気予報 の蓄積は、途中しばらく海外に出ていたためデータの取得に心配もあったが、何とか無事に欠落することなく続いている。

さて、そんなわけで5月は半分近く日本にいなかったため、実際に5月の天気がどうだったのか、よくわからないのだが、データで見ると相当に天気予報が苦戦したようだ。例えば、天候のトレンドでみると、5/19、5/25、5/30の天気の予報と実績との差が大きく、特に前日の予報が大きくはずしていることがわかる。また、気温の相関グラフを見ても、バラツキがとても大きいし、そもそもあまり相関があるように見えない程だ。

ということで、データも溜まってきたので、これらの数値を比較してみることにした。結果を表にまとめたのが、精度検証結果一覧表

天候については、実績の天候を予報の天候で一次回帰した結果の、直線の傾きとR2をまとめてみたが、5月はどちらも相当に低い数値を示していることがわかる。気象庁は、天気予報の的中率を降水の有無で判定しているが、果たして5月の的中率はどの程度となるのか興味のあるところだ。

また、最高気温や最低気温の予報精度についても、気象庁は偏差の二乗平均値の平方根を指標として評価している。しかし、こうして比べてみると、この数値は比較的動きが小さく、バラツキに対して感度が悪いようで、特に5月の気温予想が大きくはずれた印象はない。一方、回帰直線の傾きやR2で比べてみると、5月の予想が相当はずれているように見えてくるのだが、どうだろうか?

ところで先月、「晴れ 一時 くもり」や「くもり 一時 晴れ」という予報が、調べた範囲では一度も出てこないが、「くもり 一時 雨」という予報は時々出ていることを指摘した。その傾向は今月も続いており、「晴れ 一時 くもり」や「くもり 一時 晴れ」という予報は出さないルールが存在する可能性は否定されていない。

ついでにいうと、今のところ、「雨 一時 ・・・」や「雨 時々 ・・・」という予報も出ていないようだが、これについては今後の梅雨シーズンの様子を見てから判断したい。

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