飲む酸素?
FujiSankei Business i(6/9)の記事。濃縮酸素液「オーツープラス・ダイレクト」
酸素を肺からではなく胃から摂取することで、安定した分子の状態で体液中に浸透させ、細胞のすみずみに酸素を供給する。100ミリリットルの水に対してローテーションポンプをワンプッシュするだけで、通常の水道水の2倍の酸素量になる。携帯に便利な25ミリリットル入りミニボトル。価格は1596円。販売中。安定した分子の状態? 細胞のすみずみに酸素を供給? よくわからないが、健康業界では酸素は悪玉になったり善玉になったり、なかなか微妙な状況のようだ。それはともかく、魚じゃあるまいし、水中の溶存酸素濃度が人の健康に影響あるものだろうか? もしも本当に酸素が濃縮された液体だとすると、飲料用以外でもっと有用な使いみちがあるような気もするけど。
メーカーのエバニューは、スポーツ用品の製造と輸出入を行っている会社のようだ。探してみたら、オーツープラス・ダイレクトを確かに扱っている。なるほど、登山などでの酸素補給という考え方が発展したものらしく、スタミナアップと疲労回復などが期待される効果のようだ。製造法は最新のバイオ技術から生まれたとしか書いてないのだが、果たしてどんな方法で酸素を多量に含ませているのだろう? 楽天に出ている商品の宣伝には
・従来の酸素飲料と比較して酸素が放出されず、安定した分子の状態で体内に取り込まれます。とあり、さらに
・胃で吸収された酸素は、肺からの吸収と比較して、新陳代謝と言う点で効果的です。
・付属のローションポンプをワンプッシュ(0.35ml)すると1,750ppmの酸素が供給されます。(1ml当たり5,000ppm)
原材料:精製水、ナトリューム、濃縮酸素液(1mlあたり5,000ppm)とある。0.35mlで1750ppmの酸素が供給され、1ml当たりでは5000ppmと言われてもなあ。。 ppmは濃度の単位だ。 0.35mlだろうが1mlだろうが濃度は一緒だろう。。 常温での酸素の水への溶解度は約9mg/Lなので重量基準で約9ppmとなる。100mlの水道水に0.35mlを添加することで、溶存酸素量が2倍になるという点から計算してみると、水道水中の酸素濃度を約6pppmと仮定すると、オーツープラス・ダイレクト中の酸素濃度は約1700ppmということになる。
成分:塩化物、クロミウム、ヨード、マンガン
内容量:=25ml
使用期限:開封後1年間
しかし、クロム、マンガン、およびヨードがその形態や濃度が不明のままで含まれる水を安心して飲めるのだろうか? 原材料がナトリウムと水というのも相当すごいが、何故か成分にはナトリウムは含まれないらしい。。 成分からすると、最新のバイオ技術で作ったものには見えないような。 酸素はまさか単なる金属酸化物の形態で含まれているってオチではないだろうと思うけど、胃酸で分解して酸素が発生するということだろうか? もっとも消化器は基本的に呼吸器ではないし、ガス状の酸素が発生しても吸収できずに、ゲップになるだけのような。。
探してみると、この製品と似たコンセプトらしき製品としては、AquaO2や飲む酸素 AEROBIC KO7というものがあるし、薄めずにそのまま飲む水としては、高濃度酸素水 オキシジャイザーなどもあった。さらには、食べる酸素なんてものもある。宣伝文句から酸素濃度だけを抜出して比べると AquaO2が27%で断トツなのだが、この27%というのは何基準の濃度なんだろう? いくら何でも高すぎないか?
一方、オキシジャイザーの宣伝を読むと、酸素の泡が見えると書かれているから、本当に飽和濃度以上の(150ppm?)の酸素を含むのかもしれないが、常温・常圧での飽和溶解度の20倍近くの酸素を溶解させようとすると、20気圧程度まで加圧されていないといけないし、やっぱり何か化合物の形態なのかなあ?
ところで、驚くべきことに、AEROBICの宣伝には「液体酸素」と書かれているけど、さすがに液体酸素は危なすぎて飲めないだろう。。。
酸素バーだとか酸素発生器とかを使用して、呼吸器を通して高濃度の酸素を吸入すれば、確実に体内の酸素濃度に影響がありそうだけど、飲む酸素や食べる酸素はからだに直接影響を与えるとは考えにくい。
例えば、オーツープラス・ダイレクト1本(25ml)やオキシジャイザー1リットルに含まれると言われている酸素量は全部でせいぜい0.1~0.2g程度だ。気体の酸素にすると、その体積はたったの100cc程度。これは500ccの空気中に含まれている酸素量にすぎない。たった1回深呼吸するだけでも、これと同等程度の酸素が吸入できそうだ。
ところで、高酸素濃度をどうやって達成しているのか? 水中での酸素の形態はどうなっているのか? という疑問には依然として答えが見つからないままだ。。。
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コメント
友人が酸素飲料を酸素ボンベの代わりに持って行くと言っていました。
人間の胃袋にはエラが付いて無いのだから、
止めてくれ。と言ったが。信用してくれない。
宣伝で嘘は書かないだろう、と言ってるが。
それなら、これを飲んで息を止めろっと言ったが。
まだボンベの代わりに水を持っ行く気だあ。
重いだけだ、トホホ。
投稿: 山本です | 2005/08/03 20:43
コメントありがとうございます。
以前、富士山に登ったときには、確かに酸素不足を体感できましたから、そんなときにこの酸素飲料を飲んでみたら、本当に効果があるかどうかわかるんじゃないかと思われます。
でも、普通に運動して疲れた程度だと、単なる冷たい水を飲むだけでも相当に元気になってしまいそうですし、酸素の効果があるのかどうかわからないかもしれません。
怪しげなチタングッズなどの宣伝に使われることも多いスポーツ選手でさえも、この手の酸素飲料を飲んでいないようだ、というのは、効果が無いことの状況証拠にはならないんでしょうかねえ?
お友達の方が、実際に使ってみて、どんな感想を持たれるのか興味のあるところです。
投稿: tf2 | 2005/08/03 22:55
なぜか用語検索で辿りついてしまいました。
で、えっと。「宣伝は嘘を書かない」が、嘘(笑)です。
私は広告の仕事もしますが、広告屋は依頼主から渡される情報の科学的妥当性など検証しません。
この間「健康にいいクラスタの小さい天然水」やらの依頼があり、いろいろ調べて嘘臭いので「こういう表現はやめたほうがいいですよ」と、割愛したのですが、印刷されたときにはしっかり「復活」してました。
悪事に手を貸した気分でむかつきます。
あ、なんか小学生のような文章になってしまった。お邪魔しました。
投稿: ねお | 2005/08/09 19:22
ねおさん、コメントありがとうございます。
きちんと科学的な根拠を調べる広告屋さんもいらっしゃる、ということがわかっただけでも、まだ救いが持てます。でも立場上、広告主さんが圧倒的に強そうですから、なかなか難しそうですね。
少なくとも、ある程度知名度がある企業の場合には、それなりに影響力の大きさを自覚して、責任の持てる広告をしてもらいたいものです。。
投稿: tf2 | 2005/08/09 23:09
30年程前に白馬岳に数回のぼり毎回高山病で頭痛に苦しみました。今回、7人で富士山に登り液体(予防)と気体(治療目的)両方を持っていきましたが、全員が高山病になりませんでした。参加者はど素人で、だれもが効果があるとは言いませんでしたが、効果がある気がします。
投稿: 液体酸素君 | 2005/08/28 18:13
実際の使用感を教えていただきありがとうございます。
「効果がある気がします」というコメントまで否定するつもりはありません。ただ、その水に含まれている酸素量がどの程度なのかを今一度ご確認いただければと思います。
投稿: tf2 | 2005/08/28 19:41