最新の電気二重層キャパシタ
日経新聞(6/24)の朝刊の記事。Webには掲載されていないようだ。
次世代電源キャパシタ 蓄電量10倍、充電も速く、パワーシステムが開発 ハイブリッド車向け単にキャパシタと書いてあるが、高容量ということだし、電気二重層キャパシタだろうか? 活性炭の表面積を10倍に拡大したのだとすると、これはすごい技術なのではないだろうか? パワーシステムのホームページには、このニュースに該当する記事は掲載されていないようだが、既存の製品は、やはり電気二重層キャパシタで、単セルエネルギー密度は 6.5Wh/kg とある。 ということは、新聞記事の「エネルギー密度が 20Wh/kg と10倍に向上」というのは、少なくともいわゆる「当社比」という奴ではなく「他社比」なのかもしれない。。パワーシステム(横浜市、寺尾一郎社長)は、短時間で充電が可能な次世代電源「キャパシタ」の性能を高める技術を開発した。蓄電量(エネルギー密度)は従来の十倍。ハイブリッド自動車に搭載している電池と置き換えて使えば、燃費改善につながり、電源の寿命も向上する。今秋から自動車メーカー向けにサンプル出荷する計画。
佐賀大学の芳尾真幸名誉教授と共同で開発した。
電極の炭素系材料の表面をナノテクノロジー(超微細技術)を応用して加工した。電極の表面積が拡大して性能が向上した。現在使われている活性炭電極と比べ、エネルギー密度が1キログラム当たり20ワット時と十倍に向上した。特別な材料を使わないため、従来のキャパシタと同程度のコストで製造可能という。
ガソリンエンジンと電気モーターを併用するハイブリッド車の電源には現在30キログラム程度の重さのニッケル水素電池が主に使われている。従来のキャパシタを使うと重さ200キログラムになってしまう。今回の成果でニッケル水素電池とほぼ同レベルに軽量化でき、搭載できるようになる。
ニッケル水素電池は充電に1時間程度かかる。一方キャパシタは約1分間で充電でき、自動車減速時に発生するエネルギーを電気として効率よく蓄えられる。その分、燃費が改善する。
また、普通の電池と異なり、化学反応を伴わず蓄電するため、充放電を数十万回繰り返しても容量が低下せず、寿命が長い。生産から廃棄までに排出する二酸化炭素もニッケル水素電池の五十分の一に抑えることができるという。
どうやらここの電気二重層キャパシタは、ECaSSフォーラムの成果らしい。このサイトに、詳細な電気二重層キャパシタの解説記事が掲載されている。これは、キャパシタ単独ではなく、専用の制御回路を含めたシステムとして性能向上を行ったものらしい。
関連記事を探してみると、オムロンのプレスリリース(2004/4/26)が見つかったが、この中には目標のエネルギー密度として、2004年度中に 40Wh/kg(ニッケル水素電池の実効容量)、2005年度中に 60Wh/kgとなっている。うーむ、今回の 20Wh/kgというのはどういう位置づけと考えるべきなのだろう? また、このリリースの解説によると、現在市場で最も蓄電量の高い電気二重層キャパシタの容量が 5Wh/kgとなっており、既にその12倍の容量(=60Wh/kg)に到達していると書かれている。
なるほど、電極に2つのタイプがあって、活性炭キャパシタタイプの場合には
活性炭キャパシタの電極はカーボンを高温で分解させ、多孔質化させることで電気となるイオンを吸着できる細孔を設けています。活性炭キャパシタは出力密度が高いのが特長ですが、電極の作製法上、容量に寄与できない細孔ができるのでエネルギー密度の向上には限界があります。とあり、そのエネルギー密度は 6~12Wh/kgとある。一方、ナノゲートキャパシタタイプは
ナノゲートキャパシタの電極は、電解液のイオンが自らカーボンに穴をあけることによって生成されています。ナノゲートキャパシタは活性炭キャパシタと異なり、イオン自ら細孔を作るため、容量に寄与しない細孔ができないことや、イオンサイズに合致した細孔を設けることが可能となり、高いエネルギー密度を得られることが特長です。とあり、エネルギー密度は 20~60Wh/kgとある。今回発表となったものは、どうやら後者のもののように読めるな。なお、ナノゲートについては、アドバンスト・キャパシタ・テクノロジーズの説明によると、日本電子が開発した技術のようだ。
既に、日産ディーゼルのハイブリッドトラックが電気二重層キャパシタを使用しており、組み込みネットの解説によると、エネルギー密度は 6.3Wh/kgらしい。また、ホンダの燃料電池 FCX も同様なキャパシタを採用している。一方、ホンダやトヨタのハイブリッド車やトヨタの燃料電池車は今のところニッケル水素電池を採用しているようだ。電池の方もまだまだ改良されていくだろうし、この分野の開発競争は今後とも注目に値しそうだ。
ということで、確かに電気二重層キャパシタの技術面で大きな進展があったのだろうと思うし、今後の実用化に期待したいところだが、こうやって調べてみると、エネルギー密度の数値は様々で、今一スッキリとはしないものの、いずれにしても日経の記事にある「容量20Wh/kgで従来の10倍」というのはちょっとどうかと思う記載のようだ。。
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