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2005/07/18

「海馬 -脳は疲れない-」

本書は、脳科学者の池谷裕二さんと糸井重里さんとの対談。池谷さんの本は、今までにここで紹介した「進化しすぎた脳」と、ブルーバックスの「記憶力を強くする」を読んだが、いずれも面白かったのが印象に残っている。

新潮文庫
 海馬 -脳は疲れない-
 池谷 裕二、糸井 重里 著 bk1amazon

本書は、朝日出版社から出ている単行本(bk1amazon)を文庫化したもの。糸井さんとの対談なので、お互いに刺激しあって、発想が広がっていく様子が見えて、これはこれで興味深い。なお、文庫版には、単行本に収録されている内容に加えて、おまけとして「文庫版あとがき」と、20ページくらいの追加対談も収録されている。

「進化しすぎた脳」は高校生を相手にした講義形式だったので、脳に関する科学的な説明と解説が中心だったのだが、本書では、脳の仕組みの説明自体が主題となっているわけではなく、もちろんそれが二人の対談の軸となっているものの、むしろ話題の中心は、脳の仕組みから見た元気の出る生き方みたいなものになっている。

それにしても、池谷さんのものの見方はいつも前向きで、本書も読みながら、いつの間にか「よーし、前を向いて頑張っていこうか」という気にさせられる不思議な力がある。もちろん一般人向けの脳の本としては、読んでためになるレベルにうまくまとめられていると思うし、おまけにポジティブな気分にさせてくれるのだから、文句なしにお勧め本だろう。

ただし、対談の流れの中で、世の中の色々なものを脳の仕組みとのアナロジーとして語る部分で、さすがにそんなに単純じゃないだろう? という部分や、互いの発想が発展し合った結果として、やや行き過ぎじゃないの? という部分もあるみたいだが、まあ許せる範囲だろう。

各章ごとにまとめがあるのも、サービスが行き届いていてうれしい。第一章のまとめは、こんな感じ。
  1 「もの忘れがひどい」はカン違い
  2 脳の本質は、ものとものとを結びつけること
  3 ストッパーをはずすと成長できる
  4 30歳を過ぎてから頭はよくなる
  5 脳は疲れない
  6 脳は刺激がないことに絶えられない(ママ)
  7 脳は、見たいものしか見ない

なお、文庫版のための追加対談の中で、池谷さんが宗教やユダヤ人について語っているのだが、「神さま的な存在が必要」とか「本当の無宗教主義者になったら生きていけない」という部分や、「ユダヤ人が世界の中から孤立しがちといわれるのは、彼らが優秀すぎるため」なんて部分には、言葉足らずのためなのかもしれないが、ちょっと違和感を感じさせられた。これが普通の人の言葉なら別にどうでもいいのだが、脳科学の第一線の研究者が発した言葉としてみると、どうなのだろう? 考えさせられる。。

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