空気清浄機と超誘電体
nikkeibp.jp(7/21)のニュース。松下電器、アレルギー物質や菌・においを抑制する空気清浄機を発売へ
松下電器産業は、松下電工との技術融合製品として、新開発した「ペルチェ式nanoe(ナノイー)システム」を搭載した、アレルギー物質や細菌、においを抑制できる空気清浄機「エアーリッチ」2機種を10月1日から発売すると発表した。というものだが、一時のマイナスイオンブーム以降、空気清浄機の世界は何だかすごいことになっているような気がする。ペルチェ効果とは、いわば熱電対に逆に電圧を掛けて温度差を発生させるような奴で、冷却装置に応用されたりしているが、ペルチェ効果と空気清浄はどういう関係なんだろう?この機種は、松下電器が持つ12種類のアレルギー原因物質の抑制が可能な「スーパーアレルバスター」と、松下電工のナノテクノロジーを応用して水分を微細化してイオン化させる「ペルチェ式nanoe(ナノイー)システム」を搭載したのが特徴。これにより、フィルターや空気中での浄化ができるだけでなく、通常はカーペットなどに潜み、人の動きとともに舞い上がる花粉やダニの死骸、フンなどのアレルギー原因物質の抑制が可能。さらに、部屋のにおいの元である、カーテンやソファーなどの繊維に浸透して染みついたにおいを分解することもできるという。
さて、その松下電器のニュースリリースを読んでみたのだが、頭がクラクラしてきた。いかにもハイテク風の怪しげな用語が沢山出てくるのも困りものなのだが、
「nanoe(ナノイー)イオン」とは、最先端のナノテクノロジーから生まれた、水に包まれている電気を帯びたイオンのことです。水に高電圧をかけると、水が次々に分裂し、超微細な「nanoe(ナノイー)イオン」が生まれます。今回新開発した「ペルチェ式nanoe(ナノイー)システム」は空気中の水分を結露させて集めた水を使い、「nanoe(ナノイー)イオン」を発生させる方式なので、水を補給する手間が不要になりました。しかも直接水に高電圧を印加することにより、効率よく微細化できるようになり、さらに小さい6nm(従来品18nm)の「nanoe(ナノイー)イオン」を発生させることに成功。フィルター上だけでなく、ニオイ、菌、さらには花粉やダニの死がい、フンなどのアレル物質を空中で、さらに繊維の奥にまで浸透し、抑制することが可能になりました。花粉やダニの死がい、フン等は床面に堆積しやすくカーペット等の繊維に潜み人が動くことで舞い上がり、影響を与えます。このような、従来の空気清浄機では抑制が困難であったカーペットやカーテンに潜む汚れについても「nanoe(ナノイー)イオン」を繊維に浸透させることで抑制が可能になりました。を読んでも、全然理解できない。。 なんか、この文章は主語と述語の基本的な関係が壊れてないか? 抑制という言葉が何度も出てくるが、この用語もくせものかもしれない。分解したり殺菌するわけではなく、あくまでも抑制するだけよということだろうか。
帯電した微細な水粒子をナノイーイオンと呼ぶのもなんだか変だけど、肝心のペルチェ式システムとやらの説明も不親切だ。ペルチェ効果と、水補給が不要という記述から考えると、ペルチェ素子に電気を流して冷却することで、空気中の水分を凝縮させるのかな? それで、凝縮した水に高電圧を掛けて破砕して帯電粒子にするってことかもしれない。せっかくの新装置の説明なんだから、もっとわかりやすく書いて欲しいところだ。
次にわからないのが、ナノイーイオンによって、空中や繊維の奥のアレルゲンまで抑制できるという仕組み。もしかしたら、臭気成分が水と反応して、無臭化することはあるかもしれないし、あるいは菌が電圧で死滅することもあるのかもしれない(かなり疑問だけど)。けど、花粉やダニの死骸は一体どういう理屈で抑制されるんだろう? 水によって一時的には不活化できたとしても、乾燥したら元に戻りそうだな。おまけに、カーペットの繊維に潜んでいたものが舞い上がらなくなるって、よっぽど加湿し続けないと効果が持続しないのでは? もしも、普通の加湿とは違う特別なメカニズムが働くなら、是非その説明もして欲しいところだ。 というか、この装置は、空中の水蒸気を凝縮させて微細な液滴を作り出しているようだから、室内の加湿さえしていないようだけど。。
さらに、これは既に以前から採用していたらしいが「ifDPフィルター」というのも装備している。これは「超誘電体集じんフィルター」のことらしい。ifDPって何の略なんだろう? というか、超誘電体ってあまり聞いたことがないような気がするけど?? 試しに"超誘電体" by Googleしてみると、案の定、ヒット数はかなり少ないし、その多くはこのフィルター関連だな。松下さんの造語じゃないのか? ちゃんとした用語だとしても、相当にマイナーな用語のようだから、是非きちんと解説して欲しいものだ。ちなみに、誘電体についてWikipediaを見たけど、強誘電体はあっても超誘電体はなかった。
解説を求めて、松下のサイトで検索してみたらこんなリリースや、こんなページが見つかったが、「メガアクティブイオン」や「スーパーナノテク脱臭フィルター」なんていう怪しげなハイテク風用語がさらに出てきたのを見て、何というか。。。 で、肝心の超誘電体フィルターについては、絵は載っているけど、特に説明はない。 結局、超誘電体って何??
自社製品の差別化のために、いろんな機構を盛り込むことは当然だろうし、それが新しいものであれば、オリジナルでインパクトのある名前をつけるのも結構だ。でも、以前からあるものを、勝手に違う名前で呼ぶのは混乱を招くだけだろう。ハイテク風の用語を沢山ちりばめた宣伝文句は、見た目は派手だけど、実は空虚で、意味不明で理解不能だ。自分たちの成果を一般消費者にもわかりやすく説明しようっていう気持ちはないのだろうか? 新たな用語を持ち込めば持ち込むほど、本当に理解してもらうための説明は大変になるだろうと思うし、顧客にきちんと理解してもらう努力を怠っていると、結局最終的に困るのは売るほうじゃないかと思うけどねえ。
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