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2005/08/30

化学物質と環境に関する環境省のサイト

EICネットニュース(8/30)。化学物質と環境に関する学習関連資料データベースを更新

 環境省は化学物質と環境に関する既存の教材を紹介するための「化学物質と環境に関する学習関連資料データベース」の情報を2005年8月29日までに更新した。

 このデータベースは03年6月に、公募により収集した情報をもとに開設されていたもので、今回の更新にあたっては幅広く情報を収集した上で、「化学物質やその環境リスクに対する正確な理解を促すことに役立つ」、「小・中・高校生、一般市民を対象としている」、「誰もが入手可能」など16の掲載基準に合致する資料を掲載した。

 なおデータベースは環境省のリスクコミュニケーションのウエッブページ内から利用が可能で、情報を用途、対象学年・対象層、資料の形態ごとに検索できるほか、任意のことばでも検索することができる。

ということで、環境省のリスクコミュニケーション活動の一環らしい。環境省のサイトで情報を探してみると、トップページから直接リンクしている「新着・更新情報」にはこの情報は見つからない。よくよく見ると、こことは別に「報道発表資料」というページがあることに気付いた。。こちらには、新着情報にはない情報が沢山載っているではないか。 最近、環境省の新着情報がやけに少ないとは思っていたのだが、変なの。。 (報道発表資料へもトップページから直接飛べるのだが、そのリンクがページ右下にあって見つけにくい。)

で、今回のニュースに関連して以下の3つの報道発表資料が出ている。
  化学物質と環境に関する学習関連資料データベース」の更新について
  「化学物質ファクトシート―2004年度版―」の作成・公表について
  「かんたん化学物質ガイド」の作成・公表について

これらは、いずれも、化学物質などの環境リスクについて学び、調べ、参加するというサイトが入口となっている。(随分ユニークなサイトタイトルである) うかつにも、こんなサイトがあったことに今まで気付かなかったが、市民向け、子ども向け、専門家向けに分かれており、それぞれになかなか役に立つ情報が提供されており、かなり使いやすい構成になっているようだ。

ちなみに、8/23のエントリーで紹介した、内分泌かく乱作用のオフィシャルサイト、Official ED Websiteは、専門家向けのページで“「環境ホルモンHP(仮称)」作成中”となっているようだ。。

環境省は最近、このような形で積極的に情報発信をしているようで、内容的にも随分充実してきているようだし、これはこれでなかなか結構なことだと評価したい。しかしその一方で、例えば、ここからリンクしている化学物質に関するリスクコミュニケーションという、内容的にかなり重複したサイトがあったりする。(ちなみにこのサイトもタイトルは「化学物質などの環境リスクについて学び、調べ、参加する」になっている。。)

このように環境省の化学物質関連サイトには、どうも似たようなサイトが乱立しているような印象がある。環境省のトップページから飛べるようなポータルサイトを1つ作って、スッキリとさせて欲しい所だ。

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2005/08/29

血液から異常プリオンを検出

MSN-Mainichi INTERACTIVE(8/29)の記事から。異常プリオン:生体から検出可能に BSE診断に効果--米研究者が開発

 脳がスポンジ状に侵される難病、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)や牛海綿状脳症(BSE)の病原体「異常プリオン」を、血液中から検出することを可能にする方法を、米テキサス大などの研究者が開発し、28日付の米医学誌「ネイチャー・メディシン」電子版に発表した。極少量の異常プリオンを試験管内で1000万倍に増幅し、従来は事実上不可能だった生体からの検出を可能にした。実用化されれば、CJDやBSEの早期診断、治療や拡大抑制につながる。

 異常プリオンは主に脳などに蓄積するたんぱく質の一種で、正常プリオンに接触すると異常化させる。確実な検出にはこれまで、死後に脳の組織を採って検査するしかなかった。

 同大医学部のクローディオ・ソト教授(神経学)らは微量の異常プリオンに大量の正常プリオンを加えて培養した。すると両方のプリオンは固まりとなり、正常プリオンの一部が異常化した。この固まりに超音波を当てばらばらにし、さらに培養を続ける「PMCA法」を何度も繰り返すことで、異常プリオンの量を増やし検出を可能にした。

 異常プリオンを注射して発病させたハムスター18匹を検査すると、89%にあたる16匹の血液から検出できた。また健康なハムスター12匹の検査ではすべて「異常なし」との結果となり、検査の信頼性は高いと見られる。ソト教授らは「生化学的方法で血液から検出したのは今回が初めて」としている。

 異常プリオンの量を増やす手法そのものは4年前に開発したが、その後、作業の自動化を進め、増幅の効率もアップさせた。検査の際は電子レンジ程度の大きさの装置で144回の培養を行い、この過程を6回繰り返したという。

news@nature.comの記事Blood test detects deadly prionsによると、今回のキーとなる増殖方法についてもう少し詳しく書かれている。
The technique involves mixing normal proteins with tiny amounts of the infectious version in a test tube, causing the abnormal molecules to multiply and clump together over a period of about half an hour. A pulse of sound then breaks up the clumps, freeing the misshapen proteins to repeat the process.

Soto and his team have now improved and automated this process, making it a viable test. A microwave-sized machine can run 140 of these cycles in about 70 hours.

Tests on 18 diseased and 12 healthy hamsters revealed that this method could detect prions 50% of the time they were present after two 140-cycle runs. After six runs this was boosted to 89%. The test did not give any false positives, they report in Nature Medicine.

異常プリオンを正常プリオンと混合し、異常プリオンを増殖させる反応時間は1回がわずか0.5時間とのこと。これに超音波を当てて塊をほぐし、このサイクルを70時間かけて140回繰り返す。このセットを2回実施すると検出率が50%、6回行うと89%となったようだ。

最初に加えた異常プリオンの量(濃度)は、恐らく現実的なレベルなのだろうけど、わずか30分で反応するものなのか。実際の生体内での増殖よりも相当に加速しているんだろうけど、これを読むとその秘訣は超音波での解凝集操作にあるように見える。異常プリオンとの接触で異常化した正常プリオンを、正常プリオン中に再分散させることで、接触頻度を増加させたということだろうか。それにしても、それだけでこんなに簡単に増殖できたのだろうか?

Natureの記事は、BSEに感染した牛の検査のことには触れられていない。むしろ、人間の血液からvCJDの感染有無の検査ができることを大きく扱っている。イギリスにはまだ大勢いるであろう潜在的な感染者の検査ができることや、献血用血液の安全性検査への応用などが期待されると書かれている。

アメリカではどうかというと、例えばUSA TODAYでも、人間の感染を検出できることが大きい成果という基調で書かれており、牛の検査についてはほとんど触れていない。このSoto教授は、vCJDの危険性を結構煽っていて、

"It is very important because we could have an idea of the magnitude of the problem. We might be sitting on a time bomb and 20 years from now it could be too late," Soto said in a telephone interview.
ということで、ヒトへの爆発的感染が起こる前に、検査方法の確立が必要と訴えているようだし、実際、次の段階ではヒトの血液で感染がみつけられるかを検討すると言っている。

要するに、従来BSEの有無を調べるためには、脳などの細胞を検査する必要があったが、牛の場合に食用に適するかどうかを調べたいのであれば、今後とも従来どおり、食用に屠殺した牛の脳から試料を採取して検査すれば良いということだろう。一方、人間が罹患しているかどうかを生存中に検査する有効な手法は今までなかったので、これが大きな前進につながるということだ。もっとも、治療法がない以上、検査で陽性と診断されることの意味についての議論も必要ということがNatureにも書かれている。

ということで、この方法では、感染していないのに陽性と診断される「偽陽性」がないことが第一に重要で、感染してるのに陰性と評価されるケースがあっても、それはまだ許されるという理屈になっているようだ。

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2005/08/26

地球の中心は速く回っている

今日は、Yahoo!ニュース経由、日刊工業新聞のカネボウフーズなど、ガムの香りが皮膚から放出することを実証を取り上げようと思ったけど、カネボウフーズのニュースリリースを読んでも、バラやバニラの香り成分を含むガムを噛んだ後で、どうやって皮膚からその成分が放出されるのか、メカニズムが何も提案されていない。どういう経路でそんな分子(ゲラニオールバニリン)がそのまま皮膚に到達するんだろう? 不思議。。

ということで、US版Googleニュースを見ていてみつけた、LIVE SCIENCE.COMのニュース(8/25)Earth's Core Rotates Faster than Surface, Study Confirmsを取り上げよう。

The giant orb of iron and nickel that anchors Earth's center is spinning faster than the planet's surface, according to a new study that confirms scientists' expectations.

The finding is based on analyses of earthquake pairs that occur at roughly the same spot on Earth but at different times. On seismic recoding instruments, the earthquake signatures from waveform doublets, as they are called, look nearly identical.
(中略)
By analyzing the minute changes in travel times and wave shapes for each doublet, the researchers concluded that the Earth's inner core is rotating faster than its surface by about 0.3-0.5 degrees per year.

That may not seem like much, but it's very fast compared to the movement of the Earth's crust, which generally slips around only a few centimeters per year compared to the mantle below, said Xiaodong Song, a geologist at the University of Illinois at Urbana-Champaign and an author on the study.

というもので、簡単に要約してみると、ほぼ同じ場所で違う時期に起きた過去の地震について、離れた場所で観測された地震波を比較解析することで、地球の内核が他よりも速く回転していることを実証できた、というものだ。もっとも、その速度差は年間0.3~0.5度と非常に小さく、700~1200年で1回転する程度に過ぎないのだが、このイリノイ大学のSong先生によれば、それでも地殻の動きの5万倍もの速度であり、非常に大きな動きということになるらしい。

どうやら、地球の内核というのは不均一な構造であり、そのため、地殻の同じ場所から発した地震波でも、内核を通過した後の状態が、その時期によって微妙に異なることを利用したようだ。ただしその違いは、NATIONAL GEOGRAPHIC.COMによると、1993年の地震と2003年の地震で到達時間が1/10秒程度異なっているというもので、相当微妙なものらしい。しかし、今回の結論にはかなり自信を持っているようだし、他の研究者のコメントも肯定的のようで、どうやらかなり確からしい。また、この記事によると、今回わかった内核の自転速度は長い時間でみると変化しているらしいと推定されているようだ。

何となく、地球の核の部分、特に液体の外核は回転しているのだと思ったけど、Wikipediaには、「対流や地球自転などに起因する外核の金属流体の動きにより、電流が生じ、この電流により磁場が生じると考えられている。」と書かれている。東京大学理学部地球惑星物理学科のコアのダイナミクスによると、この外核の動きは単純な回転運動ではなく、熱対流のようなものらしい。

いずれにしても地球内部の構造や様子を調べるには、地震波の解析やシミュレーションで推定するしかないので、まだまだ不明な点も多いようだ。。 今回の発見により、

Circulating magma in the molten outer core generates a weak magnetic field, which the researchers suspect may be leaking into the inner core and generating an electric current. The twisting force generated by this electromagnetic interaction may be what drives the inner core's rotation.

Song said the difference in rotation of the inner core could in turn affect the Earth's rotation and have implications for satellites, rockets and spaceships.

ということで、地球内部の動きのメカニズムの解析や、衛星や宇宙船の運動への影響も考慮する必要があるようなことも書かれている。

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2005/08/25

「数学的思考法」

帯には「もっと試行錯誤を!!」と書かれているが、正にこれが本書の主張のエッセンスのようだ。前書きには、単純計算を素早く数多くこなして脳を鍛えよう、という最近のブームに対して

何よりおかしいと思われるのは、算数・数学は与えられた条件のもとでいろいろと「考えること」を学ぶものであるはずなのに、単純な計算練習の数をこなしスピードを上げることや解法を丸暗記することが数学力を上げる「救世主」であるかのように受け取られている風潮である。もちろん計算力は必要だ。しかしそのような「条件反射丸暗記」学習法は、「処理能力」は上がるかもしれないが、思考力を養うことにはつながらない。
と書かれており、主として教育面に焦点を当てて、現状の問題点とそれに対する考え方を述べたものである。

講談社現代新書 1786
 数学的思考法  説明力を鍛えるヒント
 芹沢 光雄 著 bk1amazon

本書は、
   第1章 間違いだらけの数学観
   第2章 試行錯誤という思考法
   第3章 「数学的思考」のヒント
   第4章 「論理的な説明」の鍵
という構成だが、首尾一貫した主張がそれこそ論理的に展開されており、非常にわかりやすい。数学の難しい話や数式は出てこないし、内容はある意味で常識的というか、納得できるものばかりである。教育という観点で書かれているけれど、一般社会でのさまざまな場面でのものの考え方や判断の仕方についても役立つエッセンスが多く出てくる。ある意味では、最近また流行っているらしい、「クリティカルシンキング」の具体的な解説本と言う側面もありそうだ。

マークシート方式の試験が主流となったために、数学の証明問題さえも穴埋め方式になったり、短時間に多数の問題を処理する能力を見る試験対策として丸暗記やテクニックに走ったり、といった弊害が出ており、むしろコツコツと地道に積み上げていく試行錯誤を伴う思考訓練が重要だという指摘はその通りだろうと思う。

ただし、実社会では時間は掛かるけど正しい答えを出す人と、そこそこの精度で即断即決ができる人のどちらが評価されるか、というと、スピードもかなり重要だと思うけどね。。

最近、基礎学力が低下しているという話をよく聞くが、本書を読んでみると、数十年前の自分の体験と比較してみて、確かに方法論としての問題を感じざるを得ない。とは言え、やっぱり時代は変わっているわけで、昔に戻せば済むというものでもないだろう。本書に書かれているエッセンスはとても重要なことばかりだと思うのだが、下手すると、本書に出てくるポイントだけをそのまま丸暗記するようなことになったりして。。

本書にも、数学と他の教科との時間の奪い合いのような話が出てくるが、世の中の情報量は時と共にどんどん増えているわけだし、勉強以外の場面でも脳みそを使う機会が圧倒的に増えているような気もする。その意味では、教えるほうも教えられる方も年々大変になっていっているのかもしれない。本書で指摘されている、試行錯誤や論理的な思考法の重要さには全面的に賛成したいのだが、数学教育だけを取り上げてどうすべきかを論ずるだけではバランスを欠いたものとなる恐れもあるしなあ。

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2005/08/24

238回目の献血

前回 7/29以来、26日ぶりの献血。今日もまた相模大野献血ルーム。血漿成分献血。

前回、献血後の水分補給についてのお医者さんのコメントが少し変なので、次回は聞いてみよう、と書いたのだが、残念ながら今日の担当医はいつもの先生ではなかった。。 おまけに今回から献血後の血圧測定が、手首に装着するハンディ血圧計を使ってベッド上で行う形になってしまい、お医者さんとお話する機会もなくなってしまった。。

今回のおみやげも、前回と同じ白の献血Tシャツ。今年のTシャツは生地もしっかりしているので、多めに持っていても困らないだろうし。

なお、今回は献血後に新しいパンフレットを手渡された。神奈川県の赤十字血液センターが作製したもので、表紙には赤字で大きく「お願い!」と書かれている。「以下に該当する方は献血をご遠慮ください」ということで、エイズ検査が目的の方、この1年間に不特定の異性との性的接触があった方、、、といった見慣れた項目が並んでいる。何で、献血終了後に手渡したんだろう? と思ってよく見ると、「献血へのご協力に心から感謝いたします。献血前にお読みいただき、ご不明な点は職員におたずねください。」と書いてあるじゃないの。。

ここに書いてある項目は、どこかで見たようなものばかりなのだが、さすがに海外渡航歴についての制限はややこしいので、「国名・期間等、詳しくは受付におたずねください」と書かれている。実際には、この早見表にあるように、5種類のクラス分けがされており、簡単に覚えられるものでもない。

ところで今回、このパンフレットに目新しい注意事項が付け加えられているのに気づいた。

※医薬品を服用されている場合は必ず問診の際にお申し出ください。

※以下の育毛医薬品(錠剤)を服用されている方は、一定期間献血をご遠慮ください。
  (1) AVODART(アボダート)(製造:Glaxo Smith Kline社)・・・・・・6ヵ月間
  (2) PROPECIA(プロペシア)(製造:Merck社)・・・・・・1ヵ月間
  (3) PROSCAR(プロスカー)(製造:Merck社)・・・・・・1ヵ月間

というもの。もともと、献血をご遠慮いただく場合にあるように、
 内服していても特に支障のない薬は、ビタミン剤及びごく一般的な胃腸薬などのいわゆる「保健薬」の類。それ以外は疾病の種類や薬の種類によって献血をご遠慮いただくことがあります。また、外用薬、坐薬、点眼または点鼻薬でも、その内容により献血できない場合がありますが、その判断は医師が行います。
ということになっているのに、何故これらの薬だけが名指しされているのだろう? 調べてみると、どうやらこれらの薬は個人輸入されているらしく、輸血を受けた妊婦に重大な副作用の可能性があるようだ。実際、こんな風に売られているようだ。 (注意事項を記載しているだけ良心的なのだろうが、これは個人輸入じゃないけど大丈夫なのかな?)

ちなみに薬の制限については、愛媛県赤十字血液センターの一覧表に詳しい。

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2005/08/23

内分泌かく乱作用のオフィシャルサイト?

8/9に内分泌かく乱作用の情報発信サイト?で書いた、環境省が開設したという、化学物質の内分泌かく乱作用に関するホームページなのだが、どうしてもそれらしいのが見当たらなかったので、情報元の化学工業日報社にメールで問い合わせてみた。

その結果、多少時間がかかったけれど、ありがたいことに担当者からお返事が来た。そこで教えていただいたのが、Official ED (Endocrine Disruption) Website。確かに、

このHPは、EIC(財団法人環境情報普及センター)が、様々な意見の紹介を含め、ED(Endocrine Disruption)=内分泌かく乱作用について総合的な情報発信を行うもので、環境省の協力を得て作成しています。
と書かれている。まだ、準備中のコンテンツも多いようだが、今のところ唯一掲載されているコラムが、あの渡辺正先生の書かれた不思議なコトバ:「化学物質」だったりするので、このサイトの方針も何となく見えるような気がする。ということで、今後に期待してみよう。

もっとも、「国内での取組」の中の「学界の取組」で紹介されているのが、あの、中西準子さんの訴訟の話で出てくる、環境ホルモン学会(正式名称、日本内分泌攪乱化学物質学会)なのが、ちょっと気になったりもするけど。。

改めて環境省や環境情報普及センターのページを見てみたが、やっぱりこの新たなサイトのことはどこにも出ていないようだ。本当に、「総合的な情報を発信することで、リスクコミュニケーションを推進することがねらい。」なのであれば、もっと積極的にこのサイトの存在を宣伝する必要があると思うのだが。。

ちなみに、検索キーワードチェックツールで、このサイトについて「環境ホルモン」や「内分泌かく乱作用」でチェックしてみたが、グーグルもヤフーも500位以内にはランクインしていない。ということは、一般の人々にとって、このサイトは存在していないも同然だろう。。 このブログがリンクしたことで、ランクインするかな?

それにしても、"Official ED Website" というタイトルだと、別のEDをイメージする人の方が(圧倒的に)多いだろうに、大丈夫かな?? (参考:「EDとは」define:ED

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2005/08/22

LPGボンベ方式の自転車用空気入れ

7/19にスーパーバルブとは何もの?で書いた自転車の空気漏れだが、スーパーバルブに替えたのに、やっぱり数日後には乗れない程度まで空気が抜けてしまう状態が続いた。だましだまし使っていたのだが、さすがに根本的に修理する必要があると判断し、パンク修理をすることにした。

実は、自転車用の空気入れとしてはフレンチバルブ用のポンプしか持っていなかったので、今まではスーパーで見つけたガスボンベ式の簡単空気入れを使っていた。これまでに、(株)サギサカの簡単な空気入れという奴と、マルニ工業(株)のらくらく空気入れというのを使ってみたが、後者の方が少し圧力が高いようで、結構パンパンに入れることができる。実は、両者ともに中のガスはLPGのようだ。可燃ガスをパンパンにタイヤの中に充填するというのは余り気持ちの良いものではないが、何と言っても値段も安いし、手軽だし、便利な優れものと判断していたのだが。。

さて、今回のスローパンク修理に際して、何度も空気を入れたり抜いたりする必要があるので、仕方なく英式バルブ用の空気入れを買ってきた。自転車を室内に持ち込んで、じっくりとパンク箇所を調べ始めた。前後共にチューブをタイヤから引っ張り出して、空気を入れ、水を張った洗面器に漬けて、漏れ箇所を探した。まあ、昔とった何とかで、それなりに要領よく進めたつもりだが、漏れ箇所が見つからない。。 繰り返し丁寧に調べたのだが、どうなってるんだ?

ここで、ふと気になってネットを検索。@nifty 自転車フォーラムでは、空気の抜けの話はあまりされていないのだが、可燃ガスを充填することの危険性や液化ガスを充填することの問題が語られている。一方、とくみつ録では、空気がすぐ抜ける、と書かれているし、2ちゃんねるでもママチャリ総合スレの#252で「ボンベはやめれLPGだからあっというまに抜ける」と書かれているじゃないの。。

なるほど、確かにLPGなんて典型的な炭化水素だし、ゴムへの溶解度や透過速度が速そうだ。ゴムのガス透過については、自転車探検!の自転車チューブや、伊藤工機(株)のゴム材料のLPガス透過現象についてや、新潟大学工学部の日常の化学工学 風船はなぜしぼむなどが参考になる。タイヤのゴムチューブから、LPガスが空気に比べてどの程度早く抜けるのか、そのものズバリの定量的な数値は見つからなかったが、これは相当に怪しい。

で、結局何もパンク修理をしないまま、チューブを元に戻し、今度は「空気」をパンパンに詰めて放置してみた。その結果、丸1日が経過したけど、全く空気が抜けている気配はない。これは、やっぱりLPGだから抜けていたというのが真相のようだ。。

確かに、楽に空気ガスを入れることができるし、このボンベに書かれている注意事項にウソはないようだから、緊急時の一時充填用としてはそれなりに有用な商品だとは思う。しかし、今回のようなガス漏れに関する注意事項が何も書かれていないのは問題ではなかろうか? 製造元や発売元が、こういう問題が起こることを認識しているのかどうか不明だが、発売前にテストくらいはしているだろうから、何も知らないとは思えない。

これを買って使った人は必ず、ガス漏れに悩まされ、多くの人は結局自転車屋さんに持ち込むことだろう。自転車屋さんは、やっぱりチューブを引っ張り出してパンク点検するだろうから、もしも異常なしということになったとしても、お金を取られてしまうだろうし、下手すれば原因不明でチューブ交換されちゃうかもしれない。この商品は、自転車屋さんの店先にも置いてあったりするけど、多分自転車屋さんも、そんな問題があることを知らないんじゃなかろうか? (知ってて売ってたらそれも問題だろうけど。。)

ちなみに、東邦金属工業のスプレー式 瞬間空気入れは、LPGではなく代替フロンらしいけど、これもゴムを透過しやすそうな気がするなあ。。

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2005/08/19

透明カーボンナノチューブシート

日本経済新聞の8/19朝刊の記事。「鋼鉄上回る強さ、極薄透明シート、米テキサス大」

 米テキサス大学の研究グループはカーボンナノチューブ(筒状炭素分子)でできた、鋼鉄を上回る強じんさを持つ極薄の透明シートを作製するのに成功した。自由自在に折り曲げられる電子回路や発光ダイオードなどさまざまな電子製品への応用が期待できるという。
 
 テキサス大ナノテクノロジー(超微細技術)研究所のボーグマン所長らの成果。19日付の米科学誌サイエンスに掲載する。

 開発した極薄シートは厚さがわずか50ナノメートルしかない。(ナノは十億分の一)しかしシートは外力に対して、同重量の鋼鉄を上回る強じんさを示す。幅5センチほどのシートを、毎分7メートルを超す速度で連続して製造できるので、量産にも向いているという。

ということで、厚さが 50nmということは、光の波長よりも遥かに薄いから、透明というのも納得ではあるが、一体どうやって作るんだろう? なかなかすごい技術だと思うのだが、何故か今のところ Web上には日本語の情報は見当たらない。サイエンスの論文は、Strong, Transparent, Multifunctional, Carbon Nanotube Sheetsというもの。残念ながら、このAbstractからは日経の新聞記事以上の情報はあまり得られない。

探してみたら news @ nature.com が Nanotube sheets come of age という詳細な記事を載せている。透明シートを引くところの動画も載っているのだが、これを見ても何だかよくわからない。この記事では、シートの作製方法に関して、

Baughman's team instead start with a 'forest' of half-millimetre-long nanotubes sticking upright on an iron-based platform. Pulling gently from the edge of the forest with an adhesive strip, such as a Post-It note, uproots a row containing millions of nanotubes. As these nanotubes pull out, they tangle with the next row, and so on.

The nanotubes tangle together just enough to keep a ribbon growing, without jumbling up into a huge ball. "They've found the magic spot," says Ian Kinloch, a materials scientist at the University of Cambridge. "A lot of people will now try this out with a Post-It in their own labs." The team says a one-centimetre-long forest of nanotubes can produce three metres of nanoribbon.

と書かれている。鉄製のプレート上に、長さ 0.5mm程度のカーボンナノチューブを上向きに多数成長させて「森」状にし、これの端からポストイットにカーボンナノチューブをくっつけて、剥ぎ取っていくようなことが書いてあるようだが、うまくイメージできない。それがどうして強度のある透明シートになるんだろう? MSNBCの記事では、
The researchers have now shown that by teasing nanotubes away from one side of a forest and attaching them to a strip of sticky tape they can draw the nanotubes into a continuous sheet. With this method they can produce nanotube sheets at up to seven meters per minute, which is fairly close to the rate of commercial wool spinning.

“It’s so surprising that this works,” Baughman said. “A trillion nanotubes must be automatically rotated by about 90 degrees and self-assembled in a parallel fashion for every meter-long, 7 centimeter-wide sheet that we make.”

とある。自動的に90度回転し平行に自己配列する、ということのようだが、これまたよくわからない。テキサス大学のNews Releaseも見てみたが、製造法についての詳しい情報は書かれていないようだ。やっぱりサイエンスの記事全文を読まないと駄目かな。。

応用としては、当面は透明性と導電性を活かして、加熱/アンテナ機能を持った自動車窓が考えられてるらしいが、フレキシブルなディスプレーや、果ては宇宙への軌道エレベータなんて話も載っている。

*ところで、新聞記事には未だに「ナノ」、「マイクロ」、「ppm」などの用語に、お約束のように解説(?)がついているけど、英文の記事では見られないような気がする。 いつまでこういう形で表記し続けるんだろう?

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2005/08/18

電気軽自動車の実用化は近いか

NIKKEI NETの記事(8/18)。富士重、軽の電気自動車を初公開

 富士重工業は18日、高性能のリチウムイオン電池を活用した軽の電気自動車の試作車「スバル R1e」を初公開するなど環境技術への取り組みについて発表した。

 自動車各社は低公害車の開発にしのぎを削っているが、竹中恭二社長は「家庭で一晩で充電できるようになれば、電気自動車は一定の地位を得るだろう」と述べ、ハイブリッド車や燃料電池車などの技術で先行するトヨタ自動車などに、独自の電池技術を駆使して対抗する姿勢を見せた。

 リチウムイオン電池は、富士重とNECとの合弁会社「NECラミリオンエナジー」が開発。5分間で90%の充電ができ、電池は交換せずに15万キロ以上の走行が可能という。

 また富士重は、リチウムイオン電池などを用いた独自のハイブリッド車を2007年度に試験的に市場に導入する方針も明らかにした。

ということだが、この記事では自動車の性能がよくわからない。調べてみると、1週間前(8/11)のNIKKEI NETに、富士重、次世代型電気自動車を09年メド商品化という記事が載っている。
 富士重工業は高性能のリチウムイオン電池を搭載した次世代型の電気自動車を開発した。軽乗用車ベースで走行コストをガソリン車の8分の一にまで抑えることができる。年内にも公道で実用試験を開始、2009年をメドに商品化する。富士重はエンジンとモーターを併用するハイブリッド車や燃料電池車の開発で後れをとっているが電気自動車で巻き返しを図る。

 富士重が開発したのは軽乗用車「R1」に、NECとの共同出資会社「NECラミリオンエナジー」で開発した高性能リチウムイオン電池と駆動用モーターを搭載した電気自動車。ガソリンを使わないため二酸化炭素排出量はガソリン車の半分以下となる。走行コストも低価格の夜間電力を使えばガソリン車の8分の1、ハイブリッド車の5分の1で済むという。

ということで、ランニングコストもCO2排出量もなかなか頑張っているし、自動車本体の値段次第では結構魅力的なのではないだろうか。一方、YOMIURI-ONLINE(8/18)には、家庭で充電できる電気自動車、2008年発売へという記事が載っている。こちらは三菱自動車の話で、
 三菱自動車と東京電力が、家庭のコンセントで充電して走る次世代電気自動車の開発と普及に向けて提携することが18日、明らかになった。

東電は電気自動車への充電や蓄電池の技術などを提供し、三菱が開発中の小型電気自動車「MIEV(ミーブ)」の商品化を後押しする。三菱はこれにより開発期間を短縮し、ミーブの発売時期を当初予定の2010年から08年に前倒しする。3年後には1回4時間程度の充電で250キロ・メートル走れる軽自動車クラスの電気自動車が、200万円以下で市販されることになりそうだ。
(中略)
 三菱は提携で充電関連技術の開発費負担も少なくできる。電気自動車の充電は夜間が主流になると見られるため、東電も余り気味の夜間電力の需要先を確保し、原子力発電所で発電した電力を有効活用できる。夜間の電力で充電した場合、電気代はガソリン代の10分の1程度で済むという。東電以外の複数の電力会社も次世代電気自動車に関心を示しており、今後、他の電力会社が提携に合流する可能性もある。

 三菱は次世代電気自動車を、年末にも発売予定の軽自動車「i(アイ)」をベースに開発する考えで、街中など近距離の利用が多い主婦などの女性層を主なターゲットとし、新市場の開拓を狙う。東電は家庭用コンセントを簡単に改造する技術なども研究する。

ということで、こちらは電気代が1/10とスバルよりも更に安く済みそうだ。この前、電気八輪車エリーカのことを書いたが、あんなモンスターマシンは別として、むしろこの手の軽電気自動車の展開が面白そうだ。燃料電池自動車の実用化にはまだまだ課題が多いのに対して、比較的短距離の市街地走行を主とする用途には電気自動車が向いているように思える。何といっても、インフラ整備にそれ程大きな投資が不要のようだし、技術的な実現可能性やコスト面のハードルも低そうだ。

ランニングコストがガソリン車の1/10だとすると、どれだけ走るとペイするのだろう? 現行の軽自動車の価格を90万円、燃費が20km/L、ガソリン価格を120円/Lとし、電気自動車の価格を200万円、燃料コストをガソリン車の1/10と仮定すると、
 (2000000-900000)÷(120÷20×0.9)= 203704 km
ということで、20万km走ると元が取れることになる。しかし、冒頭の記事によると電池の寿命は15万kmということらしいので、ペイするのはもっと長距離の走行が必要のようだ。もう少し頑張ってコストダウンするか、ガソリン価格の高騰が必要ということになる。

もっとも、現在のガソリンにはたっぷりと税金が掛かっているわけだから、もしも電気自動車がそれなりに普及したら、電気自動車用の電気には特別な課税をするなんてことも考えられなくもないが。。


ところで、SUBARUのニュースリリースを見ると、この電気自動車のニュースは何故か掲載されていないのだが、代わりに「ターボパラレルハイブリッド」と「リチウムイオンキャパシタ」についてのリリースが載っている。このリチウムイオンキャパシタというのが気になる。

リチウムイオンキャパシタは、従来のキャパシタの特長である大容量の電気を瞬間的に充放電できることや耐久性の高いことを生かしながら、課題であるエネルギー密度を飛躍的に増大させたものである。このリチウムイオンキャパシタは、負極にリチウムイオンを吸蔵する新開発の炭素材料を、電解質にリチウムイオンを、それぞれ使用し、あらかじめ負極にたくさんのリチウムイオンを吸蔵させる“プレドーピング”とよぶ手法により、負極の容量を増大させるとともに電位差を高め、正極の性能劣化を起こさずに高電圧を取り出すことを可能としている。

さらに、リチウムイオンキャパシタの原理は、最近のキャパシタの研究による大容量化のための新材料を正極に使用し、リチウムイオンキャパシタと組み合わせることで、理論上想定の容量のさらに倍の性能を引き出すことができる汎用性の高さも有している。

現在、試作セルによる性能確認を進めているが、将来、小型の自動車用リチウムイオンキャパシタを実用化すれば、バスやトラックなどの大型車のみならず乗用車などのハイブリッド車の需要や、一般的な鉛電池の代替需要にも応える可能性をもち、環境技術のひとつとして社会貢献が期待できる。

ということだが、調べてみても今年の電気化学会のシンポジウムぐらいしか情報が見当たらない。今後の注目アイテムかもしれない。

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2005/08/17

ヒトES細胞から脳細胞の分化に成功

夏休みで科学系のニュースも夏枯れ気味のようだ。US版のGoogle Newsで見つけたのが、Scotsman.comのScottish scientists grow human brain cells in world firstという記事(8/17)。

HUMAN brain cells have been grown artificially in the laboratory in a world first for Scottish scientists.

A team at Edinburgh University managed to turn embryonic stem cells into stable nerve stem cells used in the brain by adding a cocktail of chemicals.

The "brain in a bottle" will assist in developing drugs to combat diseases like Parkinson's or Alzheimer's and may eventually enable doctors to repair damage to the brain.

The process has already been patented and an Edinburgh-based company is set to develop commercial applications for the research.

However, other scientists said it would be "highly irresponsible" to create the false hope for patients that the research was even close to growing transplants for such a complex organ as the brain.

ということで、ヒトのES細胞から脳細胞の分化誘導に世界で初めて成功したようだ。これって、結構インパクトの大きい成果のような気がするが、今のところ国内のニュースサイトでは報道されていないようだ。

調べてみると、理化学研究所が今年の2月に、マウスのES細胞から大脳前駆細胞への分化誘導に成功しており、今後はヒトのES細胞に応用したいと書かれているから、スコットランドのグループに先を越されてしまったということだろうか。

英語記事に載っている、"Edinburgh-based company"というのは、他の記事を読んでみるとStem Cell Sciencesのことらしい。(日本語サイトもあるようだ。)今回のニュースについてのプレスリリースも出ている。

ついこの間も、理化学研究所がマウスのES細胞から視細胞を作り出すことに成功したというニュースがあったが、だからと言って、この手の人工的に作り出した細胞を生体に移植する、いわゆる再生医療がすぐに実現できるか、となるといろいろと問題も多そうだ。

その辺の現状や、技術的および倫理的な問題については、サイエンスZEROや、トランスレーショナル・リサーチ・コミュニティーの解説記事がわかりやすくまとまっている。技術的に見ても、脳の病気の治療に使えるレベルまでは相当に遠いように思えるのだが、ともかくも研究室レベルでは、既にこの辺まで来ているということは知っておかなくては。。

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2005/08/11

特殊レーザーと画期的分析技術?

YOMIURI-ONLINE(8/11)の記事。環境汚染物質の濃度、レーザーでスピード測定

 ダイオキシン類など環境汚染物質の濃度を特殊なレーザーを使って素早く測定する画期的な分析技術を、大阪市立大理学研究科の中島信昭教授、財団法人レーザー技術総合研究所(大阪市)の島田義則・副主任研究員らが開発した。

 ダイオキシン類の場合、日本工業規格(JIS)による測定法では前処理などを厳密に行う必要があり、結果が出るのに7~30日もかかっており、免疫抗体などを用いた簡易測定法でも1日から数日かかるが、この方法だと1時間程度で済むという。

 測定は、土壌や水、ごみ焼却炉の排ガスなどに簡単な前処理を行い、ダイオキシン類やPCB(ポリ塩化ビフェニール)、ベンゼンなどの有機化合物を濃縮・抽出した後、まずエネルギーの小さなレーザーを当ててガス状にする。

 次に、大きなエネルギーを出す近赤外線レーザーを使い、約10兆分の1秒という“超瞬間的”な照射を繰り返し、分子を壊さずに電気を帯びた状態にする。それらの分子が装置内を移動する時間を計測することで、質量を割り出す。化学処理でより分けていく従来の分析法と異なり、不純物が混じったままでも検出できるため、スピーディーな測定ができる。

 ダイオキシン類の場合、1グラムあたり、1ピコ・グラム(ピコは1兆分の1)レベルの検出も可能で、土壌などの汚染レベルの把握に十分な精度。現場へ運搬できる装置も作れるという。中島教授は「2年以内に実用化できる水準になるだろう。レーザーの価格が下がれば、普及するのではないか」と話している。

一般紙の記事だと、こんなものなのかもしれないが、少しは分析のことなどを知っている人から見ると、この記事は何を説明しているのか、とてもわかりにくい。そもそも 10兆分の1秒という表現が何だかなぁ。10-13秒だから、0.1ピコ秒または 100フェムト秒ということになる。検出方法はTOF(飛行時間)型の質量分析のようだが、これ自体は別に珍しくもないだろう。どうやら、ポイントはイオン化方法にありそうだが、記事ではこの技術のどこが新しいのかがわからない。せめて、分析方法の名前くらい載せて欲しいものだ。

財団法人レーザー技術総合研究所で探してみると、どうやら今回の記事と関係していそうな高強度レーザー微量分析技術の絵が載っているが、これでは何もわからない。さらに探してみたら、中島教授が書いた高強度フェムト秒レーザーを用いた微量計測という記事と、島田氏が書いたフェムト秒レーザーを用いたダイオキシン類検出研究という記事が載っている。大阪市立大学の研究室のページにも関連情報が載っている。

今回の方法のポイントは、レーザーの波長などの条件を選ぶと、高強度のフェムト秒レーザーを照射することで、ダイオキシンのような分子でも壊さずにそのままイオン化できる(フラグメント化しない)という点にあるようだ。通常ダイオキシン類は多数の同族体や異性体の混合物だと思うけど、サンプルに含まれている多くの目的化合物の全てがフラグメント化しない条件が見つかったということだろうか?

この技術で使用するレーザーは、チタンサファイアレーザーと呼ばれる、Tiドープしたサファイア(Al2O3)を使用するようだ。これは波長可変固体レーザに詳しいが、アルゴンレーザなどと組み合わせて使用し、660nmから1180nmの波長が出せるようだ。

記事では、「化学処理でより分けていく従来の分析法」と書かれているが、現行のダイオキシン類の分析方法は、確かに前処理は複雑で大変だと思うけど、最後は高分解能のGC-MSを使用するはず。(参考) 化学処理でより分けるというニュアンスとは随分違うと思うけど。。

それにしても、分析できるというレベルと、実際に使用できるというレベルでは相当に大きな差があると思われる。特にダイオキシン類の分析の場合には、類縁体や異性体を全てきちんと同定・定量できるのかという基本的な分析性能に加え、JISで定められた現行法の分析結果と比較してどうなのか、という点が重要だと思うのだが、この記事や、調べた範囲の情報では、その辺については何もわからない。

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2005/08/09

内分泌かく乱作用の情報発信サイト?

化学工業日報の記事(8/9)から。環境省、内分泌かく乱作用の情報発信でHP開設

 環境省は、化学物質の内分泌かく乱作用に関するホームページを開設した。総合的な情報を発信することで、リスクコミュニケーションを推進することがねらい。環境情報普及センターが運営主体となり、環境省が監修する。内分泌かく乱作用は、現段階では科学的に不明確な点が多く、立場によって意見が大きく異なる。同省は、適切なリスク管理を進めるため、信頼性の高い最新情報を継続的に提供し、意見交換を活発にする。
ということなのだが、環境省の新着情報を見ても、それらしいニュースは出ていない。環境省のサイト内検索で探すと、そのものずばり化学物質の内分泌かく乱作用に関するホームページが見つかった。だけど、このページは何度か見に来たことがあるから、結構前からあったと思われる。それに、このページのコンテンツでは、「総合的な情報発信」や「リスクコミュニケーション」が進むようには思えないし、見に来た人が意見を書き込むような場所もないから、「意見交換を活発にする」とも思えないんだが。。

記事に出てくる、環境情報普及センターは、環境省のホームページやEICネットの設計・構築・運用を行っているようだから、今回ニュースになったのが、環境省のサイト内に作られたページのことであっても不思議はないのだけど。。

うーむ、なんか釈然としないな。これからできるのだろうか? 化学工業日報に確認してみようかな?

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2005/08/08

ココログ19か月

ココログを始めて1年と7か月が経過。カウンターの伸びは、この1か月で19000程度に増え、何故か以前のペースに戻ってきたようだ。。

 1か月目:900     2か月目:4500    3か月目:11700    4か月目:19000
 5か月目:32300   6か月目:43500   7か月目:54500    8か月目:72000
 9か月目:87700   10か月目:105400  11か月目:125400  12か月目:140600
13か月目:163000  14か月目:179300  15か月目:194700  16か月目:205300
17か月目:216800  18か月目:231700  19か月目:251100

この1か月のアクセス解析結果は、前回に続いて週間集計を1カ月分合計して求めてみると、以下の通り。

(1)リンク元
 1位 http://search.yahoo.co.jp 全体の45%(前回1位)
 2位 http://www.google.co.jp 全体の21%(前回2位)
 3位 bookmark 全体の16%(前回3位)
 4位 http://www.google.com 全体の6%(前回4位)
 5位 http://search.goo.ne.jp 全体の2%(前回5位)

ということで、リンク元の順位は上位については安定しているようで、前月と一緒。Yahoo!やGoogleを経由しての訪問者の絶対数が増えたことに加え、Yahoo!経由の比率が非常に高くなっている。一方、最近はMSNサーチ経由の訪問者はほとんどいなくなってしまったようだ。MSNの使用者が激減したとも思えないから、たぶん検索エンジンの中身が大きく変わったのだろうと思われる。

(2)検索キーワード
 1位 合計特殊出生率(前回1位)
 2位 過去の天気予報(前回8位)
 3位 食事バランスガイド(前回7位)
 4位 ETBE(前回75位)
 5位 キャパシタ(前回40位)
 6位 スペースシャトル(初登場)
 7位 フードマイレージ(前回15位)
 8位 にんにく注射(前回圏外)
 9位 青色発光ダイオード(前回3位)
10位 グリシン(初登場)
11位 ポリ乳酸(前回37位)
12位 献血(前回17位)
13位 アメリカ(前回5位)
14位 パスポート(前回2位)
15位 温室効果ガス(前回6位)

ということで、このブログの人気キーワード第1位は3か月連続で「合計特殊出生率」となった。「過去の天気予報」は、夏休み中の人気キーワードになるのだろうか? ちょっと興味あるところだ。今月はスペースシャトル関連ニュースも多かったのにも関わらず、「スペースシャトルの落日」の書評を書いた以外はほとんどシャトルの話題は書いていないのだが、結構上位に来ている。

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2005/08/05

サイコロ状のシリカ結晶

Yahoo!ニュース経由の共同の記事(8/5)。天王星の“水晶”は立方体 300万気圧再現で実証

 天王星や海王星の内部の深い場所では、二酸化ケイ素の結晶が地球上で一般的に見られる水晶のような6角柱状ではなく、サイコロ形(立方体)をしていることを、東京工業大の広瀬敬・助教授らのグループが高温・高圧環境を再現する実験で突き止め、5日付の米科学誌サイエンスに発表した。

 両惑星の核にある結晶が立方体をしていることは、1980年代に理論的に予想されていたが、実証したのは「今回が初めて」(広瀬助教授)という。

 赤道半径が2万5000キロ前後の両惑星は、外側から順に水素やヘリウムのガス、水やメタンの氷で覆われ、深さ8000-1万2000キロ付近から中心にかけ、二酸化ケイ素などを含む核があるとされる。

 この場所と同じ約300万気圧は、これまで実験室で再現された最大圧力の2倍以上だが、グループは、カットの仕方を工夫したダイヤモンドで二酸化ケイ素を挟むことにより実現に成功。

記事のタイトルの“水晶”はきれいな石英のことを指すのであって、この場合には“シリカ”とか“二酸化ケイ素”が正しい、という指摘はともかくも、結晶形状が立方体であることがわかったのか? 結晶構造が立方晶であることが分かったということではないのだろうか?

探してみたら、YOMIURI-ONLINEでも記事になっている。天王星や海王星の核を作る鉱物の合成に成功

 海洋研究開発機構などの研究チームは、天王星や海王星内部の核を作る鉱物を合成するのに成功した。
 (中略)
 この状態の試料を、大型放射光施設スプリング8で分析したところ、「パイライト型」と呼ぶ立方体の結晶構造を持つ新しい鉱物に変化したことがわかった。
 (中略)
 同機構地球内部変動研究センターの広瀬敬・研究員は「水晶は高温高圧でサイコロ状の鉱物に変わった。実験条件よりも高温高圧で、鉄などでできている地球の核も再現したい」と話している。
研究者の広瀬さんの所属が先の記事では東京工業大学だったのに、こちらでは海洋研究開発機構になっているんだな。。 「立方体の結晶構造を持つ新しい鉱物」という表現も微妙だけど、研究者のコメントで「サイコロ状の鉱物」と書いてあるから、実際に立方体の結晶が得られたのかな?

海洋研究開発機構のプレスリリースには、装置や結晶の写真が掲載されているが、

研究グループは、大型放射光施設(SPring-8)の強力X線を用いたX線回折法によってシリカの相転移の解明を進めた結果、270万気圧以上の圧力で、パイライト型と呼ばれる新鉱物を発見した。この新鉱物の安定圧の範囲は、ガス惑星深部に相当する。

 特に、天王星・海王星の核はこのパイライト型のシリカから構成されている可能性が高い。

 シリカ鉱物は常温常圧では石英(水晶)として知られており、水晶は六角柱状の結晶である。一方、パイライトはサイコロ状の鉱物である。

 今回の結果は、六角柱状の水晶に高い圧力、高い温度をかけていくと、サイコロ状の鉱物に変化することを示している。

とあり、スプリング8に高圧装置を持ち込んで、高温高圧下でin-situで構造解析をした結果、立方晶のパイライト型構造であることが確認されたということのようだ。でも、その状態で結晶の形状まで確認されたんだろうか? 何故か「サイコロ状の鉱物」という表現にこだわっているようだけど。。

共同の記事にあった「カットの仕方を工夫したダイヤモンド」はプレスリリースでは「ブリリアントカットされた宝石用の2つのダイヤモンドの先端同士を向き合わせて、その間に実験試料を挟んで加圧」とある。何故、わざわざブリリアンカットなんて複雑な形状を選んだのだろう? この写真を見ると、確かにブリリアントカットされているな。面白い。。 (参考

シリカの多形についてはKato's Collectionの解説がとても充実している。

太陽系惑星の内部構造については、水星、金星、地球、月火星、木星、土星天王星、海王星、冥王星にまとまっている。天王星や海王星は、表面はガス惑星だけど、中心には固体状態の岩石の核があったんだな。

サイエンスの記事
Science, Vol 309, Issue 5736, 923-925 , 5 August 2005
"The Pyrite-Type High-Pressure Form of Silica"
Yasuhiro Kuwayama, Kei Hirose, Nagayoshi Sata, Yasuo Ohishi

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2005/08/04

「こわくない物理学」

帯には一言、「文系でも最先端がわかる!」と書いてある。サブタイトルが「物質・宇宙・生命」。どうやら単行本として出版された本の文庫化のようだし、こういう広い範囲を物理の視点で俯瞰的に見てみるのも楽しそうだ、と思って買ってみた。

新潮文庫
 こわくない物理学  物質・宇宙・生命
 志村 史夫 著 bk1amazon

裏表紙には

生命体を刻めば、細胞、核、遺伝子・・・・・・やがて炭素や酸素や水素といった元素にたどり着く。しかし、いくら元素を混ぜても生命体は生まれない。「生命とは何か」この超難問に第一線の物理学者が挑む。その挑戦は、ギリシャ哲学、古典力学、相対性理論、量子論、宇宙物理学、生命哲学を巻き込む壮大な知的大冒険となった。難しい数式なしで、哲学としての物理学を追求した画期的名著。
とある。「画期的名著」の割には、2002年に発行されている単行本(bk1amazon)のamazonやbk1のサイトに読者のレビューが全く載っていない。この手の本は書評も書きにくいのは確かだろうけど、読んでみての感想としては、「画期的」の意味にもよるが、名著とは呼べないような気がする。。

この本の内容は、物理学ではない。まあ、文庫本一冊で物理学の最先端を概観しようとすると、こんな感じにならざるを得ないのかもしれないが、それぞれの部分の説明は相当に粗っぽいし、そこに歴史的な認識だとか哲学だとかが混入してくるから、よけいややこしくなっているような気がする。

著者の提起する、生命とは何かという疑問や、自己組織化の不思議さ、などは特に目新しいものではないし、正に最新の科学がこれらの問題に取り組んでいると思う。本書では、何故か最新のそういう成果や考え方はあまり出てこないかわりに、昔の哲学者などの言葉を多く取り上げて、彼らの哲学が現在でも通用する部分があることが強調されている。

哲学的な部分については「こうでなくてはならない」というものでもないだろうし、こちらや、こちらのように、様々な受け止め方があって良いと思う。

科学的な部分で少し気になった点を3点指摘しておく。1点目は、結晶が成長するときに固有の晶癖を維持して成長することの不思議さに言及し、雪の結晶が全体として正六角形に成長する過程を

それはまるで、一個一個の分子が雪の結晶(雪華)全体の形を把握しているかのようである。つまり、既存の結晶に近づいてくる分子が順に”正しい位置”に付くための、全体秩序に関する情報が各分子に伝わっているのではないかと思わざるを得ないのである。あるいは、一個一個の分子が全体秩序を保つために”正しい位置”に付く”意志”を持っているということであろうか。(p.188~189)
と書いているが、どうだろう? 例えば雪の結晶が気相から成長する場合、決してこのように水分子が結晶表面にひとつずつ静的に付着するようなイメージではなく、気相からの析出と同時に結晶からの蒸発(昇華)が激しく起こっていて、結果として全体として最もエネルギー的に安定な形を保ちながら成長すると説明されているはずでは。。 もっとも、だからと言って、あの様々な形状をした雪の結晶の一つ一つが、何故その形にならなくてはならなかったのかを説明できるわけではないだろうけど。

2点目は、著者が「シンカ」という言葉を多用する点。いわゆる進化と全く同じ意味で使っているのだが、何故カタカナを使っているかというと、一般に進化は進歩するという意味で使われているが、生命の変化・分岐は必ずしも進歩や良くなるということを意味していないから、らしい。

ラマルクやダーウィンに端を発する科学的「進化論」によれば、原始生命を起原とする生物は「下等生物」から「高等生物」へと「進化」した。また、「進化論」の自然淘汰説の根底には「優勝劣敗」の原則があり、「優れたもの」が勝ち、「劣ったもの」が敗けることになっている。そして、われわれ人類(ヒト)はサルから「進化」した最も高等な生物ということになっている。(p.204)
と書かれているが、ダーウィンがそんなことを言ったのだろうか? 進化を正しく取り扱った本を何冊か読めば、著者のこの思いは単なる思い込みに過ぎず、正等な生物学では、下等生物が高等生物に進化したなんて誰も考えていないと思うのだけど。。

3点目は、アインシュタインの有名な式、E=mc2 が「物質から生命へ」を解く鍵になる、として本書の最終章で出てくる以下の記述。

繰り返し述べたように、生物の生物たる根源であり、生物を無生物と分かつ生命が「物質を組織し、個体を形成し、種を形成していく無限の力であり、どこまでも自己を創造していこうとする目に見えない意志」であることを思えば、その目に見えない意志はすなわちエネルギー(E)であり、そのエネルギーは物質(m)を生み、さらに、そのようにして生まれた物質が目に見えない意志であるエネルギー、すなわち生命を生むのではないか。(p.239~240)
この文章は物理学者が論理的に書いた文章とは思えない。哲学的な意味で思索にふける分にはどんな空想を巡らすのも自由だろうけど、物理学をベースとして書いた本なのだから、「エネルギー」という用語を、従来の物理学の定義とは異なる意味で使用するなら、それこそ「えねるぎー」とでも表記して区別する必要があると思うけどなあ。。 

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2005/08/03

国内最大の木質バイオマス発電

nikkeibp.jp(8/3)の記事。三菱商事と中国木材、国内最大規模の木質系バイオマス発電事業開始へ

三菱商事と中国木材は、茨城県鹿島郡神栖町に建設している中国木材の関東工場において、木材の樹皮やおがくずなどの木質系バイオマスをボイラーで燃焼して電力と蒸気を取り出す発電事業を共同で実施すると発表した。両社は、それぞれが50%ずつ出資した事業会社「神之池(ごうのいけ)バイオエネルギー」を2005年7月に設立しており、2008年7月から2万3000kW級の発電事業を開始する予定。
三菱商事のニュースリリースによると、この事業の特長は、
1.従来の大型バイオマス発電とは異なり、木質系バイオマスの発生場所で消費する事で、木質系バイオマス収集時に使用するトラック等車両のCO2 が一切発生しない事。

2.「カーボンニュートラル」という性質を有する木質系バイオマスの専焼プラントである事から、中国木材関東工場の必要とする電力・蒸気及び電気事業者に販売する余剰電力は、CO2 を全く発生しない木質系バイオマス起源のエネルギーである事。

今回の発電事業により、温室効果ガスである二酸化炭素の排出量削減効果は、化石燃料の効果として、工場内の電力需要と蒸気需要分として原油換算で20,000 キロリットル/年相当、余剰電力分として原油換算で18,000 キロリットル/年相当、合計で38,000 キロリットル/年相当の一次エネルギー使用量の削減が達成される見込みです。

とある。中国木材は、製材を作っている会社のようで、この会社のホームページのバイオマス発電のページには、
 製品製造時に副産物として発生する木材チップは製紙用原料に、オガ粉は活性炭に、また樹皮などはバイオマス燃料として大型自家発電ボイラーに供給し、木材乾燥に必要な蒸気と工場稼動に必要な電気エネルギーに変換するなど、原木は副産物を含め余すことなく活用されます。
と書かれており、既存の工場で従来からバイオマス発電を行っているようだ。製材工場から出る樹皮やおがくずなどを発電に利用するということは、広く行われているようで、つい最近も asahi.com にバイオマス発電に愛・地球賞/真庭の会社なんて記事が載っている。同じようなバイオマス発電をしている会社が他にもあるとすると、この会社が愛・地球賞を受けた理由は何なのだろう? (愛・地球賞

バイオマス発電については、調べてみるとサイエンスゼロでも特集されていたようだし、おうみ木質バイオマス利用研究会のように、地球温暖化対策として国際的に注目されている技術と言えそうだ。現時点では廃材などは、それなりにしっかりと有効活用されているのかと思いきや、まだまだ無駄に燃やされたりしているのだろうか?

とは言え、生の木材をそのまま燃焼させて発電させるのも、あまり効率が高いとは思えない。木材をガス化させる方法も有望視されて開発されているようだが、単に燃焼させる場合については、環境gooの資料によると、ポイントは、
  ・コージェネレーションとして、熱も有効に使用する
  ・発電設備の規模を大きくして、効率を向上させる
  ・原料木材の長距離輸送は避ける
なんてところらしいが、今回の国内発電設備はこれらの条件をクリアする方向にあるようだ。

ところで、従来の国内最大規模のバイオマス発電はどれくらいだろうと思って、調べてみたらnikkeibp.jp(2005/7/23)に、

ファーストエスコは、大分県日田市に建設する木質バイオマス発電所の起工式を行い、建設に着工した。製材産業が集積している日田市で木質バイオマス発電所を建設することにより、周辺で排出される木質資源の活用を図る。運転開始は2006年11月の予定。発電出力は1万2000kW。
という記事が見つかった。なんと、つい先週のニュースだった。。 ん? こちらには、
住友商事(本社東京)と明星セメント(同)は、(2002年)10月31日までに合弁で設立した新会社が、糸魚川市の明星セメント糸魚川工場内で、国内最大のバイオマス(生物資源)発電施設を建設し、発電事業を行うと発表した。発電施設は、産業廃棄物である建築廃材や間伐材を明星セメントで再資源化した木くずチップを主燃料にする。出力は5万キロワットで、同種の発電施設では国内最大。総工費は約70億円。
というのがある。これは2004年稼動予定になっているけど、どうなっているんだろう?

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2005/08/02

マントルまで掘り進む船

nikkeibp.jp(8/1)の記事。マントル層への到達を目指す地球深部探査船「ちきゅう」引き渡しへ

三菱重工業は2005年7月29日、世界最大級の掘削やぐら(デリック)を搭載した地球深部探査船「ちきゅう」(5万7087トン)を独立行政法人海洋研究開発機構に引き渡した。海洋研究開発機構が600億円をかけて2000年から建造を進めてきた最新鋭探査船で、長崎市の三菱重工業長崎造船所で引き渡し式を行った。

ちきゅうは、科学研究目的の深部探査船としては初めて、海底油田の掘削に使われる「ライザー掘削方式」を採用。海底下7000mまで地質サンプルを採取できる。ライザー方式は、探査船と海底下の掘削孔の間をライザーパイプと噴出防止装置でつなぎ、その中に泥水を循環させながら地層の圧力を制御して掘削孔が崩れるのを防ぐ。

科学調査目的の掘削最高記録は、米国のノン・ライザー型船の海面下2111mm。ちきゅうは、記録更新を目指し、水深2500mの海域で海底下7000mの掘削を行うほか、将来的には水深4000mの海域で海底下7000mの掘削に挑戦し、マントル層への到達を目指す。全長210.0×全幅38.0m。掘削やぐらは水面上高さ120m、重さ約1000トン。

洋研究開発機構は、同造船所や洋上で主要機器の操作確認などを行ったあと、10月ごろから下北半島東方沖でライザー掘削に向けた装置試験を行う。

ということで、マントルまで到達しようというのは相当にすごいかもしれない。マントルに到達してどうするの?ってのも興味があるし。三菱重工のサイトで探すと、ニュースリリースがみつかったが、上のニュース以上に詳しい情報はあまり得られない。

もう一方の当事者、独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)側を探してみたら、地球発見という専用サイトが見つかった。このサイト、とても力が入っているようで、写真や動画、Q&A、広報誌やパンフレットなど、ちょっと見には盛りだくさんなのだが、肝心の深海掘削の目的や技術についての分かりやすい説明は見当たらない。(このサイトはこども、学生、教育関係者、など対象者別に入口が用意されているのだが、結局たどり着く先のコンテンツは共通だったりする。)

もう少し探してみたら、同じ "jamstec.go.jp" ドメインで地球深部探査船「ちきゅう」というサイトが見つかった。こちらは、ライザー掘削システムの説明や、そもそもの深海探査計画の目的の説明などが比較的丁寧に書かれている。

なんか、この二つのサイトは合体させた方が、情報を探しに来た人には親切だと思うけどなあ。そもそも、似たようなコンテンツを両方で展開して維持していくのはすごい無駄だと思うし。。

そう言えば、地殻の厚さは、陸地で厚く深海で薄い、というのは大昔に習ったような記憶がある。(参考:大陸域で平均30km、海洋域で5km程度)ということで、マントルに到達するには、地殻の薄い深海から掘り進めたいということのようだ。マントルのサンプルを入手するというのは、確かにおもしろそうだし、何か新たな発見などもあるかもしれない。もっとも、ほんの数点のマントルのサンプルを分析しても、それでここに書かれているような目的が達成できるのかどうかは、激しく疑問なのだが。。

ちなみに、マントルってドロドロに溶けているんじゃないの? というのはFAQのようで、ここに回答が載っている。

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2005/08/01

2005年7月の天気予報の傾向

3月から続けている、東京地方の過去の天気予報 は、順調に継続中。

7月は梅雨から夏へと気候が変わる時期であったのと同時に台風7号が7/26に関東地方に上陸した影響もあり、なかなかバラエティに富んだ天気だったので、天気予報もかなり苦戦した模様である。

さすがに台風が来る前日の予報では、今まで見たことがなかった降水確率が100%の予報や、「雨で暴風を伴う」なんて珍しい予報も出された。しかし、7月の統計グラフで見ると、週間予報で 4日前以前に出す予報を見ると、実際に出される天気予報は、先月までの「晴れ 時々 くもり」「くもり 時々 晴れ」「くもり」「くもり 一時 雨」の4通りに加えて「くもり 時々 雨」というのが加わった程度で、降水確率も10~50%の範囲の予報しか出ていない。要するに、先の予報は余り極端なものは出しにくく、どうしても平均的なものにならざるを得ないということだろう。

ただ、7月の気温の予想はその傾向が極端だったようで、トレンドグラフ気温の相関グラフを見ると、実際の気温の変動に比べて非常に狭い範囲の予報を出している傾向があるようだ。例えば、最低気温について見ると、2日前以前の予報は 20~25℃の範囲に収まっているが、実績は18~27℃の範囲で変動している。どうも、何日も先の気温の予想をきちんと行っているようには見えないんだけど、どうなんだろう? 

もしも、統計的に処理した後の、予報と実績との差やばらつきが小さいことだけが重要なのであれば、下手な予報をするよりも、平年値(過去の平均値)を予報値として出しておいた方が、的中率の数値だけは良くなりそうな気もするが、それも何か変だしなあ。。 週間予報の存在価値ってのはどこにあるのか、なかなか考えさせられるのだが、思ったよりも難しい問題のような気がする。

それと、少し気になるのは、8月の予報が今までの傾向と大きく変わって、「晴れ」の予報が続出していること。今まで「晴れ」は前日の予報以外では、ほとんど出たことがなかったのに、8/1の予報を見ると、3日先以上が全部「晴れ」になっている。最高気温と最低気温も、ほぼ横並びなのも何だかなあ、と思わされるけど、どうなってるんだろう?? 例えば、予報を出す担当者が変わったとか、予報の基準が変更になったなんてことがあるのだろうか? 今後注目していきたい。

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