透明カーボンナノチューブシート
日本経済新聞の8/19朝刊の記事。「鋼鉄上回る強さ、極薄透明シート、米テキサス大」
米テキサス大学の研究グループはカーボンナノチューブ(筒状炭素分子)でできた、鋼鉄を上回る強じんさを持つ極薄の透明シートを作製するのに成功した。自由自在に折り曲げられる電子回路や発光ダイオードなどさまざまな電子製品への応用が期待できるという。ということで、厚さが 50nmということは、光の波長よりも遥かに薄いから、透明というのも納得ではあるが、一体どうやって作るんだろう? なかなかすごい技術だと思うのだが、何故か今のところ Web上には日本語の情報は見当たらない。サイエンスの論文は、Strong, Transparent, Multifunctional, Carbon Nanotube Sheetsというもの。残念ながら、このAbstractからは日経の新聞記事以上の情報はあまり得られない。
テキサス大ナノテクノロジー(超微細技術)研究所のボーグマン所長らの成果。19日付の米科学誌サイエンスに掲載する。開発した極薄シートは厚さがわずか50ナノメートルしかない。(ナノは十億分の一)しかしシートは外力に対して、同重量の鋼鉄を上回る強じんさを示す。幅5センチほどのシートを、毎分7メートルを超す速度で連続して製造できるので、量産にも向いているという。
探してみたら news @ nature.com が Nanotube sheets come of age という詳細な記事を載せている。透明シートを引くところの動画も載っているのだが、これを見ても何だかよくわからない。この記事では、シートの作製方法に関して、
Baughman's team instead start with a 'forest' of half-millimetre-long nanotubes sticking upright on an iron-based platform. Pulling gently from the edge of the forest with an adhesive strip, such as a Post-It note, uproots a row containing millions of nanotubes. As these nanotubes pull out, they tangle with the next row, and so on.と書かれている。鉄製のプレート上に、長さ 0.5mm程度のカーボンナノチューブを上向きに多数成長させて「森」状にし、これの端からポストイットにカーボンナノチューブをくっつけて、剥ぎ取っていくようなことが書いてあるようだが、うまくイメージできない。それがどうして強度のある透明シートになるんだろう? MSNBCの記事では、The nanotubes tangle together just enough to keep a ribbon growing, without jumbling up into a huge ball. "They've found the magic spot," says Ian Kinloch, a materials scientist at the University of Cambridge. "A lot of people will now try this out with a Post-It in their own labs." The team says a one-centimetre-long forest of nanotubes can produce three metres of nanoribbon.
The researchers have now shown that by teasing nanotubes away from one side of a forest and attaching them to a strip of sticky tape they can draw the nanotubes into a continuous sheet. With this method they can produce nanotube sheets at up to seven meters per minute, which is fairly close to the rate of commercial wool spinning.とある。自動的に90度回転し平行に自己配列する、ということのようだが、これまたよくわからない。テキサス大学のNews Releaseも見てみたが、製造法についての詳しい情報は書かれていないようだ。やっぱりサイエンスの記事全文を読まないと駄目かな。。“It’s so surprising that this works,” Baughman said. “A trillion nanotubes must be automatically rotated by about 90 degrees and self-assembled in a parallel fashion for every meter-long, 7 centimeter-wide sheet that we make.”
応用としては、当面は透明性と導電性を活かして、加熱/アンテナ機能を持った自動車窓が考えられてるらしいが、フレキシブルなディスプレーや、果ては宇宙への軌道エレベータなんて話も載っている。
*ところで、新聞記事には未だに「ナノ」、「マイクロ」、「ppm」などの用語に、お約束のように解説(?)がついているけど、英文の記事では見られないような気がする。 いつまでこういう形で表記し続けるんだろう?
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