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2005/08/19

透明カーボンナノチューブシート

日本経済新聞の8/19朝刊の記事。「鋼鉄上回る強さ、極薄透明シート、米テキサス大」

 米テキサス大学の研究グループはカーボンナノチューブ(筒状炭素分子)でできた、鋼鉄を上回る強じんさを持つ極薄の透明シートを作製するのに成功した。自由自在に折り曲げられる電子回路や発光ダイオードなどさまざまな電子製品への応用が期待できるという。
 
 テキサス大ナノテクノロジー(超微細技術)研究所のボーグマン所長らの成果。19日付の米科学誌サイエンスに掲載する。

 開発した極薄シートは厚さがわずか50ナノメートルしかない。(ナノは十億分の一)しかしシートは外力に対して、同重量の鋼鉄を上回る強じんさを示す。幅5センチほどのシートを、毎分7メートルを超す速度で連続して製造できるので、量産にも向いているという。

ということで、厚さが 50nmということは、光の波長よりも遥かに薄いから、透明というのも納得ではあるが、一体どうやって作るんだろう? なかなかすごい技術だと思うのだが、何故か今のところ Web上には日本語の情報は見当たらない。サイエンスの論文は、Strong, Transparent, Multifunctional, Carbon Nanotube Sheetsというもの。残念ながら、このAbstractからは日経の新聞記事以上の情報はあまり得られない。

探してみたら news @ nature.com が Nanotube sheets come of age という詳細な記事を載せている。透明シートを引くところの動画も載っているのだが、これを見ても何だかよくわからない。この記事では、シートの作製方法に関して、

Baughman's team instead start with a 'forest' of half-millimetre-long nanotubes sticking upright on an iron-based platform. Pulling gently from the edge of the forest with an adhesive strip, such as a Post-It note, uproots a row containing millions of nanotubes. As these nanotubes pull out, they tangle with the next row, and so on.

The nanotubes tangle together just enough to keep a ribbon growing, without jumbling up into a huge ball. "They've found the magic spot," says Ian Kinloch, a materials scientist at the University of Cambridge. "A lot of people will now try this out with a Post-It in their own labs." The team says a one-centimetre-long forest of nanotubes can produce three metres of nanoribbon.

と書かれている。鉄製のプレート上に、長さ 0.5mm程度のカーボンナノチューブを上向きに多数成長させて「森」状にし、これの端からポストイットにカーボンナノチューブをくっつけて、剥ぎ取っていくようなことが書いてあるようだが、うまくイメージできない。それがどうして強度のある透明シートになるんだろう? MSNBCの記事では、
The researchers have now shown that by teasing nanotubes away from one side of a forest and attaching them to a strip of sticky tape they can draw the nanotubes into a continuous sheet. With this method they can produce nanotube sheets at up to seven meters per minute, which is fairly close to the rate of commercial wool spinning.

“It’s so surprising that this works,” Baughman said. “A trillion nanotubes must be automatically rotated by about 90 degrees and self-assembled in a parallel fashion for every meter-long, 7 centimeter-wide sheet that we make.”

とある。自動的に90度回転し平行に自己配列する、ということのようだが、これまたよくわからない。テキサス大学のNews Releaseも見てみたが、製造法についての詳しい情報は書かれていないようだ。やっぱりサイエンスの記事全文を読まないと駄目かな。。

応用としては、当面は透明性と導電性を活かして、加熱/アンテナ機能を持った自動車窓が考えられてるらしいが、フレキシブルなディスプレーや、果ては宇宙への軌道エレベータなんて話も載っている。

*ところで、新聞記事には未だに「ナノ」、「マイクロ」、「ppm」などの用語に、お約束のように解説(?)がついているけど、英文の記事では見られないような気がする。 いつまでこういう形で表記し続けるんだろう?

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