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2005/08/11

特殊レーザーと画期的分析技術?

YOMIURI-ONLINE(8/11)の記事。環境汚染物質の濃度、レーザーでスピード測定

 ダイオキシン類など環境汚染物質の濃度を特殊なレーザーを使って素早く測定する画期的な分析技術を、大阪市立大理学研究科の中島信昭教授、財団法人レーザー技術総合研究所(大阪市)の島田義則・副主任研究員らが開発した。

 ダイオキシン類の場合、日本工業規格(JIS)による測定法では前処理などを厳密に行う必要があり、結果が出るのに7~30日もかかっており、免疫抗体などを用いた簡易測定法でも1日から数日かかるが、この方法だと1時間程度で済むという。

 測定は、土壌や水、ごみ焼却炉の排ガスなどに簡単な前処理を行い、ダイオキシン類やPCB(ポリ塩化ビフェニール)、ベンゼンなどの有機化合物を濃縮・抽出した後、まずエネルギーの小さなレーザーを当ててガス状にする。

 次に、大きなエネルギーを出す近赤外線レーザーを使い、約10兆分の1秒という“超瞬間的”な照射を繰り返し、分子を壊さずに電気を帯びた状態にする。それらの分子が装置内を移動する時間を計測することで、質量を割り出す。化学処理でより分けていく従来の分析法と異なり、不純物が混じったままでも検出できるため、スピーディーな測定ができる。

 ダイオキシン類の場合、1グラムあたり、1ピコ・グラム(ピコは1兆分の1)レベルの検出も可能で、土壌などの汚染レベルの把握に十分な精度。現場へ運搬できる装置も作れるという。中島教授は「2年以内に実用化できる水準になるだろう。レーザーの価格が下がれば、普及するのではないか」と話している。

一般紙の記事だと、こんなものなのかもしれないが、少しは分析のことなどを知っている人から見ると、この記事は何を説明しているのか、とてもわかりにくい。そもそも 10兆分の1秒という表現が何だかなぁ。10-13秒だから、0.1ピコ秒または 100フェムト秒ということになる。検出方法はTOF(飛行時間)型の質量分析のようだが、これ自体は別に珍しくもないだろう。どうやら、ポイントはイオン化方法にありそうだが、記事ではこの技術のどこが新しいのかがわからない。せめて、分析方法の名前くらい載せて欲しいものだ。

財団法人レーザー技術総合研究所で探してみると、どうやら今回の記事と関係していそうな高強度レーザー微量分析技術の絵が載っているが、これでは何もわからない。さらに探してみたら、中島教授が書いた高強度フェムト秒レーザーを用いた微量計測という記事と、島田氏が書いたフェムト秒レーザーを用いたダイオキシン類検出研究という記事が載っている。大阪市立大学の研究室のページにも関連情報が載っている。

今回の方法のポイントは、レーザーの波長などの条件を選ぶと、高強度のフェムト秒レーザーを照射することで、ダイオキシンのような分子でも壊さずにそのままイオン化できる(フラグメント化しない)という点にあるようだ。通常ダイオキシン類は多数の同族体や異性体の混合物だと思うけど、サンプルに含まれている多くの目的化合物の全てがフラグメント化しない条件が見つかったということだろうか?

この技術で使用するレーザーは、チタンサファイアレーザーと呼ばれる、Tiドープしたサファイア(Al2O3)を使用するようだ。これは波長可変固体レーザに詳しいが、アルゴンレーザなどと組み合わせて使用し、660nmから1180nmの波長が出せるようだ。

記事では、「化学処理でより分けていく従来の分析法」と書かれているが、現行のダイオキシン類の分析方法は、確かに前処理は複雑で大変だと思うけど、最後は高分解能のGC-MSを使用するはず。(参考) 化学処理でより分けるというニュアンスとは随分違うと思うけど。。

それにしても、分析できるというレベルと、実際に使用できるというレベルでは相当に大きな差があると思われる。特にダイオキシン類の分析の場合には、類縁体や異性体を全てきちんと同定・定量できるのかという基本的な分析性能に加え、JISで定められた現行法の分析結果と比較してどうなのか、という点が重要だと思うのだが、この記事や、調べた範囲の情報では、その辺については何もわからない。

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